第74話 4泊5日の旅行1
ある夏の日の夜、私はオーウェルス家にある自室の椅子に座り、お茶を一口飲んだ後ため息を吐き出していました。
「ふぅ・・・思ったより時間が掛かりましたわね」
ジェレミアンのビー親子襲撃事件より5日が経ちましたが、この日漸くあの事件のアレコレから解放されました。
当初は襲撃の証拠と証人を国、若しくはお父様へと引き渡し、私は少しだけ状況を説明すればいいかなと思っていたのですが・・・ガッツリと動く羽目になりました。
流石に公爵家の者が同じ公爵家の者を告発したので、色々とややこしかったみたいです。
ですがガッツリ動いた甲斐もあり、ジェレミアンと手下たちは廃嫡の後に国外追放にできましたし、少しの金品の授与とビー家のミスリル事業への関与権をゲットする事ができました。
「まぁまぁのリザルトですわね。しかし・・・疲れましたわ」
「お疲れ様でございましたお嬢様」
「・・・ええ。ありがとうノワール」
ノワールが労ってくれますが・・・実はこの疲れの中にはノワール達によってもたらされた物もあるのです。
それは何かというと・・・ノワール達による《《逆》》撫で撫でタイムです。
(私がする側だと思っていたのに・・・される側になるだなんて・・・)
これはビー親子をサマンサが叱りつけていた時にサマンサを宥めるために撫でていたら、『ずるい!私達も!』といった視線を受けたので、『後でやってあげる!』と言った事が発端でした。
その後、時間が出来た時に有言実行とばかりに撫で撫でタイムを行おうとしたのですが、何故か『いや、ここは撫でられるより撫でさせてもらう』と、満場一致でそんな意見が出て、ノワール達による私の撫で撫でタイムが行われたのです。
こちらが撫でる分には疲れないのですが、遠慮なく色々な所を撫でなれると・・・ねぇ?まるで疲れた体に鞭打たれた気分でしたよ。
「まぁいいですわ・・・明日からは待ちに待ったリフレッシュタイムですしね・・・クフフ・・・」
撫で撫でで疲れさせられたから、明日からは私が彼女達を撫でて癒される!私が頭の中でそんな誓いを立てていると、ノワールがヤレヤレといった顔で注意してきました。
「お嬢様、またお顔がはしたのうございますよ?」
「・・・失礼。明日からの事が楽しみで仕方ありませんの」
「成程・・・なら今日はもうお休みになられますか?」
「ええ、そうしますわ」
そうして私は明日からの楽しい日々を思いながら休むことにしました。
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そうして翌朝、寝ぼけ眼をこすりながら私はベッドから起き上がりました。
「ふぅぁ~・・・」
「おはようございますお嬢様」
「おはようですわノワール・・・」
ノワールへと挨拶をしてベッドから降りた私は、そういえば今日から楽しい休みだと思い出します。
「・・・あ!ノワール!早く朝の準備をしますわよ!」
「畏まりましたお嬢様」
早くしないとマルシア達が来ると思い慌てて準備をしていたのですが、ふと目に入った時計を見て動きを止めます。
「・・・まだこんな時間でしたのね。まだ慌てる時間じゃありませんでしたわ!」
時計の針は朝の6時を少し過ぎた辺りで、流石にこの時間から慌てる必要はないと思いゆっくり支度をする事にします。
慌て損だったと息を吐き、化粧台の前で髪を梳いてもらっているとノックの音が聞こえました。
「あら?食事にしてはまだ早い気がしますわね?」
「見てまいります」
ノワールが扉へと向かう間、私は化粧台の前で目を瞑りながら待っていました。そしてノワールが帰って来たので目を開けると、鏡にはノワールともう1人、イリアスが映っていました。
「イリアス?」
「はいマシェリー様!おはようございます!」
「どうやらイリアス様もお早く目が覚めた様で、お嬢様に会いに来たとの事でございます」
「えへへ・・・ついつい今日からの事が楽しみで、朝早くに目が覚めちゃいました」
「オホホ、私と一緒ですわね」
「あ、でもベッドが良かったからかもっていうのもあるかも知れません!泊めてもらって本当にありがとうございます!」
「ああ、いいんですのよ。私も大切なお友達を家に招けて嬉しいんですもの」
まぁ実の所イリアスを家に泊めたのは『平民単独ではゲートが使用できないので、待ち合わせに不便だったから』という理由もあるのですが、それは言わないでもいいでしょう。
「た・・・大切なお友達・・・はぃ・・・」
だって嬉しそうに小声で返事をするイリアスにそんな事を言うのは野暮ってものでしょう?
そうして嬉しさが爆発したイリアスは何かをせねば気が済まなかったのか、私の身支度を手伝うと言ってきました。
なので私は途中だった髪を梳かす作業を頼みます。
「上手いじゃありませんの・・・」
「任せてくださいよ!」
そうして身支度を整えていると再びノックが聞こえ、今度はマルシアとシーラが入ってきました。
「え・・・?貴女達早すぎませんの?」
「ごきげんようお姉様。すいません、昨晩早く寝過ぎてしまって・・・」
「ごきげんようお姉様・・・うふふ・・・それに家にはちょっと・・・」
マルシアとシーラはそれぞれの実家にいた筈でしたが、彼女達も今日が楽しみで早起きしてしまったようでした。
そしてまだ朝食も取っていないとの事だったので、移動先で朝食を取る事を提案してみます。
「いいですね、そうしましょう。そしてお姉様、私も髪を梳かさせてもらっても?」
「うふふ・・・私も・・・」
「え!?わ・・・私が頼まれたんだから渡しませんっ!」
そうやってキャイキャイ騒ぎながら身支度を終えると、お父様とお母様へと言づけを頼み、出掛ける準備をします。・・・と言っても、既に荷物などはノワールのアイテムボックスへと収納してあるので、馬車へと乗るだけですが。
私達が家の外へと出ると馬車が2台用意されており、ノワールは御者席へ、私達は馬車の座席へと座ります。・・・因み後1台にはパルフィ達4人の使用人が乗っています。
「では出発いたします」
そうして馬車に乗った私達はゲートへと向かいました。
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ここで今回の旅の日程を説明しておきます。
今回は4泊5日で海へと出かけることになっており、その海はサマンサの家で保有しているリゾート地の一角を貸し切りにしてあります。なので出かけるのにサマンサだけ居らず、彼女だけはゲートで飛んだ先と合流になっている訳ですね。
そしてこの4泊5日の日程ですが、初日の今日はサマンサのマルドール家が治める領地の一番大きい街『ドドール』で遊んで1泊。
2日目は港町へ寄って少し遊んでからリゾート地へ移動、別荘で3泊。
そして5日目に、リゾート地から初日の『ドドール』へと戻り、全員でゲートを使ってオーウェルス家へ、となっています。
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何時もの様に待つことなくゲートを通過し『ドドール』へと辿り着いた私達を出迎えたのは、大きな看板を持ったサマンサでした。
『ようこそお姉様御一行』
「あの子・・・何やってますの?」
前世だと空港とかで偶に見かける光景ですが、この世界に来て初めて見ました。
私はノワールへと指示し、邪魔にならなさそうな所へと馬車を停めると、馬車を降りてサマンサの方へと向かい声をかけます。
「サマンサ!」
「あ、お姉様。ごきげんよう」
「ええ、ごきげんよう・・・って違いますわサマンサ、何ですのそれ?」
「あ、これですか?解りやすくてええでしょ?」
「ま・・・まぁ・・・うーん・・・そうですわね?」
「でしょでしょ!?だからこれ、看板のレンタル始めようかと思てね?お試しですわ」
サマンサが指さす方を見ると、確かにゲートの近くに『待ち合わせにぴったり!レンタル看板。1枚5ガント』と看板をレンタルする屋台がありました。
「まぁ・・・よいのではなくて?・・・で、最初はマルドール家の屋敷へ向かう予定でしたのに、何故ここで?」
「いやまぁ、どうせやったら家やなくてホテルに泊まってもらおう思て、そっちに案内しようかと待ってました」
「成程ですわ」
当初の予定を思い出し尋ねてみると、どうやらそういう事らしいのでサマンサの案内でホテルへと向かいます。
そして付いたホテルは・・・とても豪華なホテルでした。
「どやお姉様!家の自慢のホテルや!」
「ピ・・・ピカピカですわね」
「「「ピカピカですねぇ」」」
その豪華なホテルの何が豪華かって・・・?そりゃもう・・・見た目ですよ!なんせ金閣寺?かってくらいに金ぴかなんですよ?ピッカピカのピーですよ!
興奮してわけのわからない感じになりましたが、要するに凄い派手って感じのホテルでした。
しかしこのホテル、中に入ると意外と落ち着いた感じで、どうやら派手なのは外見だけみたいです。
「まぁ外見は見た目、中身は質って感じになってますね」
との事でした。
まぁそれは置いておき、取りあえず私達はフロントでチェックインだけ済ませると、ホテルを一旦出る事にします。
「まぁホテルのサービスなどは後でゆっくり確認するとして、取りあえず遊びに出かけましょうか?」
「「「はーい」」」
「案内は任せてや!」
今日一日はこの町で遊ぶことになっていたので、私達は歩いて街を回る事にしました。
マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
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イイネ☆ブックマークがもらえると 次回の水着回が物凄いことになりますわ。
マシェリーの一口メモ
【今回はネタ切れですわ】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】