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第69話 ボスカレー合宿編7

「・・・っは!?・・・あぐっ・・・」


 ハッと目が覚めて直前にあった事を直ぐに思い出した私は起き上がろうとしましたが、激しい痛みに顔を顰めてしまいます。

 しかし痛みがあるという事は未だ生きているという証拠、なので一旦起き上がるのを諦めて見える範囲だけを確認する事にしました。

 すると・・・


「・・・樹?」


 すぐ傍には不思議な生え方をした細い樹が何本も有りました。


「カトブレパスは・・・見えませんわね。それに音も聞こえないですわ」


 見える範囲にはカトブレパスは見えず、何かが近くにいるような音も聞こえませんでした。

 なので死ぬ気で動くという事はしなくてもよさそうだという事が解りました。

 しかしです、悠長にしてはいられないという事は確かなので、何とか体を動かす方法はと考えると、そういえば1本だけ回復薬が残っている事を思い出しました。


「・・・ぐっ・・・むっ・・・んぐんぐ・・・ふぅ・・・」


 四苦八苦しながら腰のポーチに入っていた回復薬の入れ物を取り出し何とか飲むと、何とか体の痛みは取れたようで、体も起こせそうな具合になりました。

 なのでゆっくりと体を起こして、改めて周りを見回すと・・・


「なんですの・・・これ?」


 相変わらずカトブレパスの姿は見えなかったものの、傍に生えた樹の異質さが解ってしまいました。

 この生え方だと、まるで何か大きな動物を捕らえていた様な・・・


「いえ・・・捕らえていた『様な』ではなく、まさしく捕らえていたんですわね」


 よくよくその樹の周辺を見ると色々なモノが落ちており、それは恐らくモンスターを倒した時に出るドロップアイテムなのでしょう。

 つまりです・・・この樹達はカトブレパスを捕らえていたが何かがあってカトブレパスは死亡、死体はダンジョンモンスター特有の法則通りにドロップアイテムへと変わった、という事でしょう。


「しかし一体誰が・・・って、彼女しかいませんわよね・・・」


 原則閉じられたボスフィールドには出入りが出来ないので、この状況を引き起こせるのは中に居た者のみ。

 それが私でないと言うのならば・・・イリスしか考えられません。


「・・・で?そのイリスは・・・いましたわね」


 この状況を引き起こしたであろうイリスを探してみると少し離れたところで倒れていたので、私はイリスへと近づき様子を確認します。

 口元へ手を持っていったり、体をザッと確認してみるも問題はなし。


「気絶しているだけの様ですわね」


 しかしどうしてと考えてみると、カトブレパスを捕らえていた樹が目に入り納得します。


「魔力切れですわね・・・確か私が気絶する前に『これで魔力供給打ち止め』と言っていましたので、そこからさらに振り絞ったなら解らなくもないですわ。ですけど・・・」


 気絶している理由は解りましたが、私には未だわからない事がありました。


「何故樹を・・・?イリスは未だ魔法が使えない筈ですわ・・・」


 ロマンスの法則から行くと『魔王と絆を交わす』か『魔王を倒す』でしか魔法が解禁されない筈・・・なのに何故イリスは森属性の樹魔法を・・・?

 実は知らない所で緑の魔王ルートへと入っていたのでしょうか・・・?


「うーん・・・?一応グウェル殿下に『浮気者のクソ野郎!』とか言って聞いておくべきかしら・・・?・・・あら?」


「ん・・・んん?マシェリー・・・?」


 特に興味が無いけれど情報を把握する為にグウェル殿下に問い詰めるべきか?と考えていると、イリスが目を覚ましました。

 なので取りあえずイリスに事情を聞いてみる事にします。


「イリス・・・貴女・・・殿下と寝たのかしら?」


「殿下と寝る・・・?サークル活動でですか?テントは別々でしたけど・・・?・・・ってカトブレパスはっ!?」


「あー・・・。うん、カトブレパスは多分貴方が倒しましたわ。覚えてなくて?」


「・・・え!?私がですか!?」


 イリスがオロオロしているのを見て、私は内心ホッとしました。『寝た』の意味がよく解っていなかったので『イリスビッチ説』は回避でしょう。

 というか、魔法を使ったのはやはり覚えていないのでしょうか?


「あ・・・でも、イリスが死んじゃうと思った瞬間ブワッと魔力が沸き出て変な感じになった様な・・・」


「ふむ・・・」


「でもよく覚えてません・・・」


 言いたくはないのですが・・・所謂『主人公補正』という奴なのでしょうか?あれですよあれ、味方がピンチの時に覚醒して万事解決みたいな。


「ってそんなモノあるわけないですわよね。でも情報が少なすぎて解りませんわね・・・」


「え・・・?なんです?」


「いえ、なんでもありませんわ。それより、動けるのなら帰りますわよ。起こるとは思いませんが、またこのような事態になってもあれですわ」


「あっ!はい!そうですね。それに魔力も回復薬とかも空っぽですしね」


「ええ。帰りは敵から逃げつつ帰りますわ」


 考えても答えが出なさそうなので、取りあえずさっさとダンジョンを出る事にして移動準備を始めます。

 カトブレパスと戦う時に放り出した荷物やドロップアイテムを回収して更には武器防具の確認、それらが終わったところで移動する事にしました。


「では、一層気を付けて行きますわよ」


「はい」


 帰りは何も起こらない様にと願いつつ、私達は森へと歩を進めました。


 ・

 ・

 ・


 結局あれから何も起こらずにダンジョンから脱出する事が出来た私達は、有った出来事の報告をシフロート先生へと報告します。

 シフロート先生もそんな事例は聞いたことが無くて信じていませんでしたが、私がカトブレパスの魔石を見せるととても慌て始め、これ以降はダンジョンへと入らない様にと皆に通達がなされました。

 その後に、国の方へと報告を上げて調査してもらうので、明日の朝一の帰還予定を変更、国の調査隊が来るまで待機となりました。


「ここもあまり人気が無い場所とはいえ、他に人がくるかもしれませんからな。そう言った人に警告しなくてはなりませんからな」


 との事なので、少し帰りの時間は遅れるでしょうが、大体予定通りに合宿は進みそうです。


「では夕食の準備を開始・・・なのですが、マシェリーさんとイリスさんは休んでおきますかな?」


「いいえ先生、やらせていただきますわ」


「大丈夫なのですか?」


「はい、先生に魔法をかけてもらいましたし、体力と魔力の回復薬も貰いましたもの、問題ないですわ」


「私も同じくです!ピンピンしてますよ!」


 時間も時間でしたので夕食準備となりましたが、シフロート先生が私達を気遣って休んでいてもいいと言ってくれます。

 しかしカトブレパスとの戦いではそこまで外傷も負わず、多少疲れはありましたが、既に魔法と薬によって治療もされていたので、普通に活動する分には全く問題なくなっていました。

 ですが私を心配したのでしょう、横からノワールが口を挿んできました。


「なら私達が手伝うという事でどうでしょうか?それならお嬢様の負担もかなり軽くなる筈です」


「成程・・・確かにそれなら大丈夫そうですな」


「はい。というより、負担になりそうな男性方は全員外れてもらった方がよろしいかと思われます」


「う・・・うぅむ・・・まぁよいでしょう」


「ありがとうございます教諭」


 ノワールは料理に使えなさそうなペイル班を追い出してしまいましたが・・・まぁ確かに彼らは料理出来なさそうなので居ない方が楽かもしれません。

 という事で女性チームで夕食を作ることになったのですが、先日BBQときたらやっぱり次はあれですよね?

 私達は準備して来た食材や調味料を駆使して料理を作り・・・


 ・

 ・

 ・


 完成した所で、それを今か今かと料理を待つ男性方へと差し出しました。


「さぁさ!おあがりなさいな男性方!皆様大好きでしょう!?」


「「「これは・・・何?」」」


「何って・・・『カレー』ですわ!え・・・?ご存じないんですの?」


 そう、作ったのはみんな大好き『カレーライス』!・・・なのですが、差し出した瞬間『ワーイ!カレーダー!』となるかと思っていたら、『ワーイ!ナニコレ?』と言われてしまいました。


(ああ・・・そういえば男性方は全員貴族でしたわね)


 ここで気づいたのですが、恐らく貴族はカレーを食べないのでしょう。

 そういえばマルシア達も、私が最初作って食べさせた時はこんな感じだったかもしれません。


「まぁ食べてくださいな。美味しいですわよ?」


「確かに匂いはいいですな。スパイスの香りがしますぞ」


「ふむ・・・では頂こう」


「「「「では俺達も・・・」」」」


 最初は全員恐る恐る口へと入れていましたが、一口食べて味わった次の瞬間・・・次々に口へとスプーンを運び始めました。


「オーッホッホッホ!お代わりもありますわよ!たんとお食べになって?」


「「「お代わり!」」」


「オーッホッホッホ!よろしくてよー!」


 やはりカレーは偉大な食べ物の様でした。


 その後男性方は2,3杯とお代わりを繰り返しカレーは大盛況となり、この日も多少アクシデントはあったモノの、楽しい一日といった感じで幕は下りました。



 ・

 ・

 ・



 そして翌日、合宿最後の日。




「アナタとの婚約は破棄させて頂きますわっ!」


「・・・!?」



 悪役令嬢からの婚約破棄劇が、キャンプ地の一角にて行われていました。



 マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「!?!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですわ。

 この物語は現在コンテストに参加しておりますの。なのでイイネ☆ブックマークがもらえると 断罪劇も始まりますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【ゲームだと石化はアイテムや魔法で一発で治りますが、現実だと治るのに時間が掛かりますわ。森魔法は主に植物を操る魔法ですわ。他にも土等も多少操れますわよ。】


 マシェリーより宣伝

【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。

最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

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