第6話 悪役令嬢達のお茶会
招待した客も集まり、いよいよ貴族令嬢達のお茶会が始まりました。
先ず私は招いたホスト側として改めて挨拶をすることにしました。
「改めまして皆様、本日はご招待をお受け頂きありがたく存じますわ。お茶とお菓子は良い物を揃えましたので、どうぞ楽しんでいってくださいませ」
マシェリーとして体に染みついた貴族の挨拶を済ませると着席し、招待客をチラリと見て記憶を探ります。
それと言うのも、私の人格はややマシェリー、記憶はやや転生して来た早乙女玲の方がメイン、とこんな感じに複雑になっています。なのでマシェリーとしての記憶は少しだけ曖昧となっているのです。
私は使用人達がお茶とお菓子を配っている隙に招待客、トリム家、マルドール家、キーピス家のご令嬢の事について思い出す事にします。
先ずは円形のテーブルで左側にいるトリム家のご令嬢『マルシア・トリム』。
彼女は赤色の髪をポニーテールにした釣り目の少女で、見た感じはとても勝気そう。
確か実家は鉱山を持っていて、鉱物関係が強い家でしたか・・・?
続いてテーブル正面にいるのは、招待客の中で一番先に到着したマルドール家のご令嬢『サマンサ・マルドール』。
彼女は金髪をツインテールにした糸目の少女、ゲームや漫画でもよく糸目の子はいるが、前は見えているんでしょうか?
確か実家は商会を持っていたはず・・・これで関西弁だったら似合っていましたね。
最後はテーブル右側にいるキーピス家のご令嬢『シーラ・キーピス』。
青色の髪をおかっぱにした少女、細く小さくてかわいらしいのに目が少しどよーんとしていて、少し暗そう?
確か実家は薬品関係を取り扱っていた筈です。
何とか準備が終わる前に全員の事を軽く思い出すと、いよいよお茶会が始まりました。
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「あら、私の所では・・・」
「そうですか?なら・・・」
「うふふ・・・私の所は・・・」
「ホホホ・・・」
少し舐めてました・・・、このくらいの少女ならキャッキャウフフとかギャイギャイとかもっと子供らしい感じかと思っていましたが、蓋を開けて見るとあら吃驚、マウント合戦勃発ですわ。
貴族令嬢怖いですわー・・・でもまぁ、流石に皆さん私にはちょっと気を使っていますわね。
「ですよね?マシェリー様」
「本当に流石ですマシェリー様」
「うふふ・・・マシェリー様すごい・・・」
「ホホホ・・・」
でもやっぱり地獄ですわー。
その後もマウント合戦と私へのヨイショが続き、終わりの時刻を迎えたところでようやく解放されました。
「本日はありがとう皆様。また御招待させてもらいますので、その時はお受けしていただくと嬉しいですわ」
「もちろんですマシェリー様」
「私は御呼び頂けるなら必ずお受けいたしますので、よろしくお願いしますマシェリー様」
「うふふ・・・もちろん受けますマシェリー様」
強きには巻かれろなのか3人の少女は押し気味で私の言葉に答えます。正直私のこれ社交辞令で言っているだけで、もうお茶会は勘弁と言った感じなんですが・・・
私はその後3人を見送る為に家正面に回りました。
「「「それではマシェリー様御機嫌よう」」」
「御機嫌よう皆様、またのお越しをお待ちしておりますわ」
挨拶を交わしそれぞれの馬車へと乗り込むのを確認すると、ようやく終わったという感じになりました。
(やれやれ・・・将来あんな感じの人達が取り巻きになりそうですわね・・・)
気付かれない様にため息を吐き出し、最後にもう一度3人が乗り込んだ馬車を見ると、私はある事に気付きました。
(あれ・・・?あれって・・・)
「お嬢様、そろそろ日も落ちて寒くなってまいります。家の中へ入りましょう」
「ええ、解りましたわ」
ノワールが家に入ろうと言ってきたので、私は馬車に書かれていた《《ある物》》について考えながら家に入って行きました。
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「思い出しましたわ!」
「・・・!?何をでしょうかお嬢様!?」
「あ、いえ。何でもないんですのよ。オホホホ」
またあの両親と一緒に楽しくない食事を終え、部屋でくつろいでいた時の事、ずっと頭に引っかかっていた事を思い出した瞬間叫んでしまい、部屋にいたノワールを驚かせてしまいました。
その時ノワールには「何でもない」と言いましたが、本当は何でもありました!
それは・・・
(あの3人娘!ロマンス学園時代の私の取り巻き、信号機3人娘ですわ!)
あの3人娘・・・通称『信号機トリオ』、ロマンスの悪役令嬢『マシェリー・フォン・オーウェルス』の取り巻き令嬢のポジションにいる娘達の事です。
取り巻き令嬢の信号機トリオは、恐らく製作陣が「悪役令嬢なら取り巻きも必要だよな」という感じで創りだされたキャラクターで、出て来た時の台詞などは「そうですわ!」「私達は関係ないですわ!」の同調する言葉と、最後にマシェリーを見捨てて逃げる時の台詞くらいしかないモブです。
一応RPGパートでも出て来るんですが、正直雑魚なので影が薄く、あまり記憶に残るキャラ達ではないんですよね。
(そうですわよね・・・取り巻きになるくらいですから、昔から親交があってもおかしくないですわよね)
恐らく昔から付き合いがあり、学園に入ってそのまま取り巻きになった・・・というパターンなのでしょう。超有りそうな設定ですわ。
(となると・・・あの子達とは定期的に合わなきゃ駄目なのかしら?)
ロマンスの設定でいくならば、あの信号機トリオとは定期的にあって親交を深め、最終的に学園に入った時には取り巻きにするべきでしょうが・・・ねぇ?
(別に私としては取り巻きなんて必要もないですし、いいんじゃないでしょうか?)
悪役令嬢マシェリーでなく、魔王を目指す私としては学園の取り巻き等必要ではありませんし、ほしいとも思いません。
なので今後お茶会等は行わず、親交を断つようにしてもいいんじゃないでしょうか?
正直あのマウント合戦とヨイショはもう勘弁ですし・・・
「ノワール、今後はあの3人、マルシア、サマンサ、シーラとの接触は無しでいきますわ。招待状も送らなくていいし、来ても何か理由をつけて断っていいですわ」
という訳なので、私はノワールにあの3人から何か来ても受けなくていいと言ったのですが・・・
「それは・・・出来かねますお嬢様」
「えぇ!?何でですの!?」
予想外にもノワールからの返事はノー!てっきりノワールはマシェリー全肯定マシーンだと思っていましたのに!?
「あの方達との親交は御当主様のご命令でもありますので・・・親交を断ってしまうとお嬢様が叱られてしまいます・・・」
「あー・・・そういう事ですのね・・・」
ゲームだと思ってあまり深く考えていませんでしたが、現実ならそりゃぁそうですわよね。
貴族の付き合いは利権の付き合い、あの当主ならば尚の事ですわ。唯々娘の友達を増やすために関わりを持たさせている訳ないですものね。
嫌な所でファンタジーの現実を見た気になった私はげんなりしました。
「ふぅ・・・なら今後もあの子達と定期的に合わなければなりませんのね・・・気が滅入りますわ・・・」
「申し訳ありませんお嬢様」
ノワールが深々と頭を下げていますが、別にノワールが悪いわけではないですわ。
なのでノワールに頭を上げる様に言ったのですが、頭を上げたノワールは若干ションボリしていましたわ。
「本当にノワールのせいではないから落ち込むことはありませんわ。誰のせいかと言えば無理矢理関わりを持たせているお父様か、あの子達との関わりを楽しめない私が・・・ふむ、そうね・・・」
自分で言って何ですが、確かに悪いのはあの子達との関わりを楽しめない私ですわ。なら逆転の発想で、楽しめるのなら関わりたくなるのではないでしょうか?
それにあの子達は学園で私の取り巻きとなる子達、この機会に少し性格を矯正すれば皆ハッピーに成れるのでは?
「お嬢様?」
いきなり何かを考え始めて唸りだした私をノワールが心配していましたが、今の私はそれどころではありません。
私はその後もノワールの心配を余所に、信号機トリオ矯正計画とも呼べるものを知恵を振り絞り唸りながら考えました。
マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「やはりこの作者ネーミングセンスが・・・」等思ったら、☆で評価やブックマークをして応援してくだされば幸いですわ。
☆がもらえると お茶会が、私が、作者のセンスを矯正いたしますわ!
マシェリーの一口メモ
【基本的にこの世界は、ロマンスの製作陣が設定した似非中世風ファンタジー世界・・・という作者の設定ですわ。ですから色々本当の中世ではありえない様な事もありますわ。例えば紙が安価だったり、現代の物品が出て来たりと。ですからあまりおかしく思わずに頭を軽くして読んでくれると幸いですわ。】




