第68話 ブモボス合宿編6
ロマンスは乙女ゲーという分類ではありますが、RPG要素もそれはそれは沢山盛り込まれています。
なのでモンスターも居ればレベルもあり、ダンジョンもあれば・・・ボスモンスターも居ます。
「ボ・・・ボスですか!?一体それって・・・!?あ、もしかしてあの広場と森の境目がおかしいのも何か関係が!?」
「ええ・・・モンスターから逃げる事が出来ないための結界みたいなものですわ」
「えぇ!?に・・・逃げられないんですか!?」
「ええ、この広場は所謂ボスフィールドと呼ばれるモノですわ。よって逃げる事はできませんの」
大体のRPGゲームでもそうだとは思うのですが、ロマンスのボスモンスターの特徴の中には逃走不可というモノがあり、それは戦闘が始まると今の様に逃走防止用のフィールドが出来上がります。
その法則はここ『王都周辺の森1』のボスも例外ではないのですが・・・
「ですけどおかしいですわね・・・ここのボスは『森大狼』なはずですわ。間違ってもあんな強力なモンスターではない筈ですの」
「強力・・・ち・・・因みにですが、どのくらい強いんですか?」
「ザッとそうですわね・・・5~10イリスくらいかしら?」
「単位おかしくないですか!?」
「では5~8グウェル?」
「それもおかしいですっ!」
「おほほ・・・まぁ、かなり強いって事ですわ」
イリスがカトブレパスの強さを聞いてきたので答えたのですが、基本PTを組んで戦うので5~10イリスでも優しいかも知れません。ソロなら倍はいるかも・・・?
しかし本当に何故こんな所にカトブレパスが居るのでしょう?考えられる可能性としては・・・
「ブモォォォオオオ!」
「「・・・っ!?」」
このおかしい状況について考えを巡らせていたのですが、どうやら時間切れが来たみたいです。・・・カトブレパスが動き出しました。
「話はここまでっ!今は動かなければ死にますわっ!」
「はっ・・・はい!」
「貴女は後ろで私のサポートっ!前に出るんじゃありませんわよっ!」
「はいっ!・・・っえ?大丈夫なんですか!?」
「大丈夫も何もやるしかありませんのよっ!」
正直カトブレパスは今の私だと少し手に余ります。ですがだからといって逃げる事も出来ないので、やるしかないのです。
私は走りながら軽い魔法を使い、カトブレパスの注意を惹きながら近づいて行きます。
「『火の矢』!さぁさぁこっちですわよ!」
「ブルルルゥゥッ!」
魔法が着弾する辺りで時計回りに回り込み、装備していた剣で側面を切りつけます。
「イヤァアッ!・・・っく、硬すぎですわっ!」
「ブルルゥッ・・・ブモォォオ!」
しかし全く歯が立たず、こちらを向いてきたカトブレパスから反撃を受けない様に離脱します。
「魔法主体で攻めるしかありませんわね・・・イリィィス!」
「はい!」
「魔法主体で攻めますわっ!貴女は様子を見て私に魔力補給をっ!」
「はいっ!・・・あれっ?何で知ってるんですかっ!?」
「いいからっ!おやりなさい!『火の矢』!」
イリスは教えたことのないイリスの秘密に驚いていましたが、プレイヤーであった私は勿論それは知っていました。
主人公であるイリス、彼女の持つ藍色の魔力は少し特殊で、最初は魔法が使えない代わりに他人の魔力補給が出来るのです。
後々魔王と絆を交わすか倒すかすると魔法が使えるようになるのですが、今の彼女は他人の魔力を補給する事しかできないんですよね。
(まぁ今の状況だと逆にそれでいいんですけど・・・下手にヘイトを買われてもやばいですもの・・・っと)
「火の矢では威力が足りませんわね・・・火は確か弱点の筈ですのに。ならっ・・・『火の槍』!」
「ブルルルッ!」
火の矢では威力が足らなかったみたいなので、もう1つ上の魔法である火の槍を使って攻撃を仕掛けますが、これも今一つ効いた様子が見えませんでした。
「ではこれでどうですの!?『水の矢』!からの・・・『雷の矢』!」
私はこれまで修行して来た甲斐もあり、現在では闇、火、水、雷と4属性の魔法を使える様になっていました。
そしてこれは魔法を修行する中で偶然見つけた事なのですが・・・どうも現実になった事で魔法にも一部物理法則が働いている様なのです。
つまりです、水魔法を使った後に雷魔法を使えば・・・
「ブモゥッ!?」
若干効果が上がるのです!
ですが・・・
「ブモオオオォォォ!!」
「まぁ・・・そうですわよね・・・」
若干効果が上がったものの焼け石に水状態とでもいいましょうか・・・あまり効いている気がしませんでした。
「ですが塵も積もれば山となる!ですわ!『水の矢』!からの・・・今度は『雷の槍』!」
効いていないならば効くまでやればいい。無茶苦茶な考えでしたが今はそれしかありません。
「マシェリー!確かに私は魔力を供給できますけど、効果は微妙ですからねっ!『魔力供給』!」
「十分ですわっ!その調子で頼みますわよっ!」
私は持っていた剣と盾でカトブレパスをけん制しつつ魔法を使い始めました。
・
・
・
「これで打ち止めです!『魔力供給』!」
「解りましたわ!『水の矢』!『雷の槍』!」
既に戦闘開始から1時間程が経っていて、私達の魔力や回復アイテムも殆ど空になっていました。
しかしその甲斐あってか・・・
「ブルルゥゥ・・・」
カトブレパスの体は硬い毛皮が所々剥げ、足取りも心なしかフラフラとしていて、『もしかしたら倒せるのでは?』という感じになっていました。
(一番警戒していた攻撃も使ってこないし、イケそうですわね・・・)
私達も大分ボロボロですがここが勝負どころと思い、魔力を振り絞って攻撃を仕掛ける事にしました。
「『水の球』!」
「えっ!?マシェリーも魔力切れですかっ!?」
「いいえっ!もう一発いけますわよっ!ファイアァァァランスッッ!イキなさいっ!」
最後にはなった火の槍は魔力を込めに込めた特別製。これが先に放っていた水の球に着弾すれば・・・
『ゴボボッ・・・ッドォォォン!!』
水蒸気爆発です。
「ば・・・爆発!?凄いですマシェリー!これはやりましたねっ!」
「ふぅぅ・・・ええ、トドメに使うために見せても来なかったからまともに食らった筈ですもの・・・これなら・・・っ!?」
大分体力を削っていたし、先程ので倒しただろうと思っていると・・・嫌な予感を感じました。
私は咄嗟に持っていた盾に身を隠し縮こまります。それが功を奏したのでしょう・・・
『カッ!!』
(か・・・間一髪でしたわ・・・。しかし・・・やはりしてくるのですわね『石化攻撃』!)
私が一番警戒していた『石化攻撃』がカトブレパスより飛んできて、構えていた盾が石化してしまいました。
ゲームではもっと頻繁に使ってきていたので、ここまで使ってこないという事はしてこないのだと思っていましたが・・・甘かったです。
(っく・・・盾がもう使い物になりませんわ!イリスから借りるしか・・・でもそうするとイリスの万が一の時に・・・)
「マシェリー!避けてっ!」
「え・・・?」
ここからどうしようと考えていると急にイリスが叫び、何?と思った瞬間には・・・
「キャァァアアア!?」
凄い衝撃が私を襲い、宙を飛んでいました。
「あぐぅっ・・・がはっ・・・」
盾を構えた状態だったとはいえ完全に気を抜いていたのが仇となり、私は受け身も取れずに地面に激突してしまいます。
その時頭を打ったのでしょう・・・私の視界はグワングワンと揺れていました。
(不味いですわ・・・追撃が・・・でも体がいう事を利かない・・・)
揺れる視界の中で、ボロボロになったカトブレパスが此方を見ている様な気がしましたが・・・今の私はまともに動くことが出来ませんでした。
「マ・・・ー!・・・・っ!・・・・・・あ!」
イリスの叫び声らしきものも聞こえましたが、体を起こす事も出来ませんでした。
(こんなところで・・・死ぬわけには・・・いきませんの!たち・・・あがれぇぇええ!)
懸命に体に力を入れようとしますが・・・
(このぉぉぉおおお!!・・・・っ!?)
「ブ・・・・ゥ・・・」
カトブレパスが私に近寄ってくる方が早かった様で・・・大きな影と低く響く様な音を近く感じました。
(あ・・・)
「・・・ルゥ・・・!」
「・・・・・リィーー!!」
イリスが叫んでいる様な気がしましたが私の意識はドンドンと薄れていき、最後に見えたのは・・・巨大な・・・
マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですわ。
この物語は現在コンテストに参加しておりますの。なのでイイネ☆ブックマークがもらえると ・・・
マシェリーの一口メモ
【ゲームだと石化はアイテムや魔法で一発で治りますが、現実だと治るのに時間が掛かりますわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】