第251話 ≪イリス視点≫
≪イリス視点≫
(あ・・・終わったかも・・・)
魔法の反動を受け動けない私は、何処か他人事の様にそんな事を考えていました。
そんな状態ですから『あっ!やべっ!』という様な顔をしたフレアさんや、こちらに手を伸ばし『避けろイリス!』と言っているグウェル殿下の様子を観察出来、なんだかおもしろくなってしまいました。
(あはは・・・まぁ・・・うん。良い人生でしたよね・・・昔に比べれば)
諦めの境地とでもいいましょうか、足掻く事もせずそんな事をぼんやり考えてしまいます。
(色々ありましたね・・・始めは突然絡まれたんでしたっけ・・・)
そうしていると今までの思い出・・・出会い、過ごした日々、受けたインパクト、一時の別れ等々の記憶が思い出され、最後にはあの人の怒った様な、それでいて励ましている様な顔が浮かびあがります。
(あー・・・もう会えませんね、ごめんなさい。でもいいですよね?なんだか最近冷たくもあったし・・・あれ?そんな事も無かったかも?どっちでしょう?)
私は幻想の中のあの人に語りかけます。と言ってもそれは大体が謝罪の言葉で、続けるうちに幻想の中の顔があきれ顔へと変わっていきました。
そして最終的には『フゥ』とため息を吐き・・・
(イリス勝ちなさい。負けたら・・・承知しませんわよ)
一方的にそんな言葉を告げ、フッと消えてしまいました。
(勝ちなさい・・・ですか。無茶を言いますね。いえ、何時もの事ですか)
私はその言葉に『あの人らしい』と感じましたが、同時に『あの人の言葉には応えたい』そんな思いが沸きあがってきました。
だから・・・
「こ・・・こんのおおおぉぉぉ!!!」
私は体が悲鳴を上げているにも関わらず、無理矢理に体を動かして見せます。無理矢理すぎて体から『ブチブチッ』と音が聞こえてきた気がしましたが、気にせず動いて見せます。
「いい加減に・・・倒れてくださぁぁイイっ!!」
咄嗟に無理矢理体を動かしたものだから武器等を持っておらず、私は右手を硬く握りしめそれをタイラスさんにぶつけて見せます。
「ぐぼぉっっ!!」
すると良い所に入ったのか吹き飛んできた勢いで予想以上に威力が出たのかは解りませんが、タイラスさんは私の拳を顔面に受けると大きく呻き、そのまま倒れてぐで~んと伸びてしまいました。
「た・・・たおした・・・?」
立ち上がりタイラスさんへと拳を叩きつける。正直それが本当の本当に限界だった様で、私は倒れたタイラスさんの様子を確認する事も出来ませんでした。
なのですぐに駆けつけてくれたフレアさんが確認してくれるまでの短い時間は天に祈る事しか出来ず、非常に緊張した時間になってしまいました。
「・・・ん。完全に伸びてるわ。でも生きてんのな。しぶてぇ!」
しかしフレアさんの決着がついたとの言葉を聞くとその緊張が一気に解け、私は再び倒れてしまいます。
「だ・・・大丈夫かイリスっ!」
「だい・・・。でも・・・・寝かせ・・・・」
それを見て近くまで来ていたグウェル殿下が介抱しようとしてくれましたが、今は寝かせておいてほしかったのでそう伝えます。
「・・・解った。ならば他のメンバーも心配だし、取りあえず彼らの様子を見て来るとしよう」
するとグウェル殿下は頷き、フレアさんに私の様子を見ている様にと頼むと他のメンバーを助けに行きました。
私はと言えばもう限界ギリギリだったので、目を瞑り休む事にします。
「ま、頼まれたから見といてやるぜ嬢ちゃん。だからぐっすり眠りな。・・・おつかれさん」
目を瞑るとフレアさんのそんな言葉が聞こえてきたので、私は気も抜きいよいよ意識を落としていきます。
(ふふっ・・・やりましたよマシェリーさん。最後のパンチは・・・マシェリスパンチとでも名付け・・・ましょ・・・)
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。今回はかなり短めとなっております。そして@2話で6章終了となっております。そのあたりからガクンと投稿頻度が下がると思いますので、ごゆるりとお待ちいただけると幸いですわ。




