第248話 黄の魔王戦(本番)5
「・・・お・・・お姉様・・・!?」
「・・・え?」
少々恥ずかしい事を考えながらペアリングを指に嵌めると、シーラがギョッとした感じでこちらを見てきます。
(え?もしかして私の乙女思考ばれてますの?でもそんなに驚かなくても・・・私だって一応は・・・)
最初はシーラが指輪をジッと見ていたのでそんな事を考えていましたが、その視線が私の周り、頭、目、そして指輪とグルグルグルグルし始めたのに気付くと、そうではない事を覚ります。では一体何にギョッとしているのか、それは恐らく彼女が忙しなく移動させている視点の場所に答えがあるのでしょう。
という訳で、最も簡単に確認が出来る周りを見てみる事にしたのですが・・・
「私の周りに何かあります・・・のほぉっ!?」
驚き過ぎて変な声が出てしまいました。クッコロです。
(何故赤色の魔力が!?というか魔力をお漏らしだなんて恥ずかしすぎますわ!いえいえそうじゃなく、何故赤色の魔力だけが!?)
知っての通り私は全属性が使えるチート持ち、なので魔力は様々な色がキラキラと輝くとってもビューティフル&エレガントな色をしています。なので意識しない限りは単色のみが出て来ると言う事は無く、ましてや魔力をお漏らししてしまうとなれば全色出てしまうはずなのです。
(・・・待って下さいまし?頭と目も何か妙な予感がしますわね)
そんな魔力の色を見て、頭と目もどうにかなっているんじゃないかと思ってしまい、戦闘中にもかかわらず悠長に鏡何て取り出してしまいます。
「え・・・えぇっ!?」
ですがこれは正解だったかもしれません。何故なら髪と目の色が赤一色になっている事に気付けたからです。
「そ・・・それはそれで似合うとるで・・・お姉様。ちょい緑も差してオシャレさんや・・・でも出来るなら・・・ウチとお揃いが・・・ぐぅ・・・」
「・・・サマンサ・・・今まで意識が戻っていなかったのに・・・あ・・・また反応が無くなりました・・・」
「大阪人の血がそうさせたのでしょう。・・・って、サマンサはファースタット産まれでしたわね」
そんな私の姿を見てサマンサが一瞬起きて何やら言って再び気絶しましたが・・・中々にグッジョブです。いえ、私の容姿を褒めたことにグッジョブと言っている訳ではなく、ほのかに緑が混じっていると指摘してくれた事についてです。
(赤と緑の魔力、そしてペアリング。これらを持っているのは・・・イリス!)
現在イリスはフレッドから貰った?赤の魔力、そしていつの間にか持っていた緑の魔力を保持しており、魔力の比率的には正式な手順を踏んだ赤の魔力の方が殆どな筈です。恐らくですが、それがペアリング通して私へと流れて来たのでしょう。・・・原作にもそんな描写は無かったので、何故起きたのかとか原理とかは全くの不明ですが。
しかしです、イリスが使える魔力が流れて来たのなら私も赤や緑の魔法が使える筈。そしてそれは、今のどうしようもない状況を打破する一筋の光となる筈なのです。
「・・・赤の・・・火花」
なので私は祈る様に赤の魔法を唱えてみます。
すると・・・
「つ・・・使えましたわ!」
フレッドが使っていたモノと同じ魔法が、私の力により現出していました。
「一応緑の方も・・・緑の硬樹」
緑の魔力も持っているのでそちらも試してみると、そちらも使えはしました。ですが緑の魔力は色の割合同様あまり強くないのか、引き起こせる事象がかなり小規模で、ガッツリ魔力を練り込んでもそこまで威力は出せそうにありませんでした。
とはいえ本来緑の魔力は補助的な力が強いので、そこまでは問題ないのかもしれません。・・・今は兎に角、火力が欲しいですからね。
「甲冑No.6換装。よし、それでは戦いに戻ります。シーラ、サマンサを頼みますわよ?」
「・・・は・・・はい!・・・お気をつけてください・・・!」
私は魔力の確認を終えると途中だった鎧の換装を済ませ、マクシムの元へと向かいます。
その途中で落ちていた武器を拾い上げると、マクシムへと飛びかかる前にバフを掛ける為魔力を練ります。
「赤の波動!」
そして魔力が練れたら魔法を使用。・・・続けて再び魔力を練ります。
「続けて緑の波動!よし!掛かりましたわね!」
続けて魔力を練ったのは攻撃魔法を使うためではなく、バフを重ねがける為・・・そう、赤と緑の波動を重ねて掛けるためです。
(ゲームでは重ねがけ出来なかったけど出来るんですのね!ナイス仕様変更ですわよコレェ!)
ゲーム時代は強すぎる為か重ねがけが出来ない様になっていた色魔法のバフ。しかしそれは現実となって仕様変更が成されていたのか、若干反発し合っているのか1割ほど出力が落ちた気もしますが重ねがけが出来る様になっていました。
しかしです、1割落ちても2種類重ねた方が強い事は強いので、私は気にせずそのままマクシムへと特攻をかまします。
「2人共避けなさい!赤の牡丹!」
「「・・・っ!」」
「っがぁぁぁっ!!」
「『フルスイング』!」
目くらまし・・・には少々強いですが、範囲攻撃の赤の牡丹を使い、走った勢いそのままでウェポンスキルをぶち当ててやります。
するとバフの効果もあってか、マクシムの持つ魔導具武器のシールドを突き破り、そのままマクシムを吹き飛ばす事に成功しました。
「また私が前に出ます!貴女達は後ろから援護を!」
「「はい!」」
「それでは・・・の前に貴女達にも。赤の波動!よし、いってきますわ!」
吹き飛ばすと少しだけ合間が生まれたのでその間に指示&魔法を使用、それが終わると再びマクシムへと特攻をかけます。
「せい!はっ!やぁっ!」
「ががぁ!ぐっ!ぐぉおおお!!」
「オーッホッホッホ!どうしましたのゴリシムさん!足が笑っていますわよー!そーれっ!『覇断斧』!おまけに赤の火花でも食らっときなさいな!」
すると今までの苦戦が何だったのかという位、余裕をもって戦う事が出来ました。フレッド達ならこうはいかないでしょうが、所詮マクシムは暴走して理性が無い状態、技もへったくれもないので出力で優れば押せるという事でしょう。
「それそれぇ!赤の火花!からの『振り下ろし』、緑の寄生木で動きを規制してからのぉぉ『トルネードアックス』!」
「ごっ・・・げはぁぁぁっ!!」
こんな状況でなんですが、私は色魔法が使えるのが楽しいという事もありノリノリで攻撃を仕掛けます。
その際赤の波動で攻撃に補正を掛けているという事もあり、マクシムはあっという間にボロ雑巾の様になっていき、私が戦いに復帰して10分も経つ頃には・・・
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「ぐ・・・ごぉぉ・・・ゲホッゲホッ・・・」
「あらあら、小鹿ちゃんみたいですわねマクシム」
マクシムは凄まじい動きの反動もあってか、手足がプルプルと震え動きものっそりしたモノになっていました。
しかし・・・
「さぁ~て・・・そろそろ引導ふぉ・・・?あら・・・?あららら?ち・・・力が・・・ぐぅぅぅ・・・」
私の方も凄まじい力の反動というモノが合ったのでしょう、急に手足から力が抜け、マクシム同様手足がプルプルとし始めてしまいます。更に私は重い甲冑もつけていますので負担は酷く、思わず膝をついてしまいまいそうになります。
「ま・・・不味いですわ・・・甲冑No.1換装」
取りあえず負担を軽くするために鎧を換装、皆がつけている様な軽い感じの装備へと変更します。
するとどうにか膝をつく事は回避出来たので、それは良かったのですが・・・
「あら・・・髪色が戻ってますわね。つまりラブパワータイム終了という訳ですのね・・・オホホホホ・・・」
謎のパワーアップタイムが終了して仕舞った様です。
ですがここで気持ちを切らすと不味いので、空元気を出すために無理矢理笑ってやります。
(でも体力はどうしようもないと・・・もって後2,3発が限界ですわね、これ)
しかし体は言う事を聞いてくれない様で、終わりが近い事を覚ってしまいます。
「っく・・・」
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
そして私と同様マルシアとノワールも限界が近い様なので、早々に決着をつける必要が有りそうです。
「・・・マルシア、貴女は目くらましを。ノワールはその間に魔法で拘束を。そうしたら私が決めますわ」
ですが早々に決着をつけるにしてももう派手な動きは出来ないので、シンプルな作戦を2人へと伝えます。恐らくですがマクシムも私達とどっこいどっこいな状態なので、これでも通用する筈です。
「3カウントで仕掛けます。イケますわね?」
「は・・・い!」
「・・・お任せください」
長く引き伸ばしても状況は悪くなる筈と考え、作戦を伝えると即座に動き始めるとします。
私は心の中にマクシムを倒す絵を思い浮かべると、短く息を吐いた後カウントを始めます。
「では・・・3,2,1、今!」
「火の幻想神秘」
「・・・ぐっ!?がぁぁっ!?」
カウントが終わると同時、マルシアの目くらましが発動したので私はなるべく音を立てずにマクシムへと近づき・・・
「闇の拘束影」
「ぐぅ!?ぐぅがぁっ!!ああっ!!」
ノワールの拘束が決まると同時、力を振り絞り大きく飛び上がります。
そして大きく飛び上がったと同時に振り上げた斧を・・・
「そろそろ沈みなさい!『次元断』!」
振り下ろしました。
(・・・漸く終わりましたわね)
暴走したての元気な状態なら拘束も振り切るでしょうが、弱り切った現状ならば先ず拘束は破れません。
ですので私の攻撃はスッとマクシムの脳天へと入り、股下まで・・・
「ぎっ・・・ぎがぁぁぁ!!」
「なっ!・・・でも今更っ!!」
真っ二つに切り裂いたかと思ったのですが、その一瞬前にマクシムが拘束を打ち破り、魔道具のシールドを張りました。
それによりマクシムはマクシムの開きになる事を阻止し、一命をとりとめました。
『・・・ギ・・・ギギ・・・バギィッ!!』
しかしその代償は大きく、マクシムが持っていた武器型の魔道具は砕けちりシールドも霧散、その手には魔道具の残骸のみが残る事となりました。
「往生際がっ・・・悪いですわよっ!・・・もう一発お食らいなさいっ!」
私も限界ではありましたが、もう一発ウェポンスキルを放つくらいならばどうにかといった具合だったので再びウェポンスキルを放つ動作を取ります。先程はシールドで防がれましたが、もうマクシムの手には何も残っていないので今度こそ決まる筈です。
「っく・・・あぁぁぁぁぁっ!!」
しかし私が先程使ったのは威力が物凄い代わりに反動も物凄いウェポンスキル。
それなのに無理をしてもう一度攻撃を仕掛けるのですから体の負担が酷く・・・
(いいいいっ!!ブチブチィって何かが切れぇぇ・・・でもぉぉおおお)
筋肉か筋かが切れる音が聞こえてきました。
ですがここは無理のしどころ、決めなければ終わりです。
「あぁぁぁぁぁっっ!!」
私は体が壊れるのも構わずにウェポンスキルを発動させます。
『・・・ギィン!!』
「破断斧っっ!・・・え?」
しかしそれは・・・マクシムがその手に持った魔道具の残骸で斧を吹き飛ばされる事により阻止され・・・
(あ・・・これ死にますわね)
逆にその魔道具の残骸の攻撃を受ける事となってしまい・・・破損して尖った部分をゾブリと体に突き刺されてしまいました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【あれ?私お話の主人公ですわよね?まさか?え?】
マシェリーより宣伝
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