第247話 ≪イリス視点≫
≪イリス視点≫
最後にタイラスさんへと声を掛けると、私はグウェル殿下へとこれからの動きを問いかけます。
「グウェル殿下、ここからはどうするんですか?タイラスさんをやっつけたと言っても、それを触れ回ったところで信じてもらえないんじゃ?」
「かもしれないな。だが、緑の魔王である僕が暴れてそれを止めに来るものが居ないとなったら?それで向こうも理解するんじゃないか?」
「自分達のトップはもう居ない、と?」
「そうだ」
グウェル殿下はこの後の事も考えていたのか、この後の動きをサラリと答えます。『ならそれを早く実行しないと』そう考えたのですが、私達の仲間も満身創痍だった事を思い出し、先ずは皆の治療が先だと皆の方を向いた・・・その瞬間の事でした。
「・・・青の・・・大海蛇・・・」
「あぶねぇ!赤の波動っ!ガッハッ!」
「「!?」」
一瞬の出来事に最初は何が起こったのか理解が出来ませんでした。
しかし遠くに見える青い大きな蛇と、それを受け止めるフレアさんの姿を見て攻撃された事を理解します。
「・・・生きていたんですね」
「勝手に・・・殺してくれるな・・・っぐ・・・」
そう・・・タイラスさんに。
「僕の最大魔法でも無理なのか!?」
私も知っていましたが、タイラスさんを飲みこんだ樹はグウェル殿下の最大魔法。てっきり私も『あれをまともに食らったのならタイラスさんはもう生きてはいない』、そう思っていたのですが、どうやらそうでもなかった様です。
しかしダメージ自体はしっかり負っていた様で、片腕は無くなり片脚はあらぬ方向を向いており、内臓にもダメージを負っているのか顔を顰めながら『コヒューコヒュー』と変な音を出しながら呼吸しています。
しかし・・・
「あ・・おの・・・はど・・・う」
「・・・え?」
「なっ・・・化け物か!?」
「・・・ふぅ。お前もその化け物の一員だろうに。緑の魔王よ」
タイラスさんがあの反則とも思える魔法を唱えると、変な方向を向いていた脚も呼吸音も元通りになってしまいます。・・・反則でしょう。
ですが流石に無くなった片腕は戻らなかった様で、タイラスさんはそれを見て眉根を寄せていました。
「っち・・・流石に腕は3日程かかるか」
訂正、戻るようです。反則極まれりです。
「っちぃ・・・お前の身体強度だとてっきりぺちゃんこだと思ったんだがな。しぶてぇじゃねぇか」
「・・・貴様もアレを受けて無事とは。しぶといという言葉はそのまま返そう」
「っはん!」
タイラスさんの化け物っぷりに慄いていると、青の蛇に連れていかれていたフレアさんが戻ってきました。しかし体には大きな傷が出来ており、大分ダメージを負っている様に見えます。
「フレアさん!傷が!回復薬を出しますね!」
「させると思うか?青の狼」
「っとぉ!バーニング☆ナックル!」
私は直ぐに回復薬を渡そうとしますが、それを見てかタイラスさんが回復を阻害する為か、速度重視の魔法を絶え間なく放ってきます。
そうなると回復手段が回復薬しかない私達にはどうする事も出来ないので、見ている事しか出来ません。
「くぅ・・・回復魔法が使えたら・・・」
「無いモノは仕方がないだろうイリス!こうなれば僕達も攻撃だ!もう一度緑の王樹を使うから援護を!」
「はい!」
こうなればこちらも攻撃するべきだというグウェル殿下の意見を取り入れ、私達もタイラスさんとフレアさんの戦いに混じろうとしますが・・・
「厄介なモノは潰させてもらおう。青の蝶。そして青の蜂」
同じ手は二度も通じない様で、こちらにも数とスピードを重視した魔法を放ってきます。私も覚えたての赤の魔法で応戦はしますが、圧倒的に手数が足りません。
「うぅっ・・・!殿下!私だけでは防御しきれません!」
「っちぃ!緑の硬樹!」
その為グウェル殿下も防御の為に魔法を使うしかなく、先程の様に強い魔法が唱えられなくなります。
「おいおい!俺ももっと構ってくれよ!赤のは・・・じゃなくて、ラブ☆パワー!」
「ふざけた魔法名だ・・・」
「うるせぇぇぇえ!!おらぁぁぁっ!」
ですがこちらに魔法のリソースを割けばフレアさんの方は緩くなるので、フレアさんは攻撃の勢いを強めます。若干ですが押している様にも見えるので、もしかすればこのままイケるかもしれません。
・・・なんて思ったのがいけなかったのでしょうか
「っち・・・僅かに分が悪いか」
「何が僅かだ!圧倒的だからさっさと負けとけやタイラス!うらぁっ!」
「・・・っ!・・・青の蜘蛛!」
「あん?今更足止めか?何の意味があんだ?」
「それはこれから見るがいい」
どうやらタイラスさんには何か手がある様で、それを使おうとしてきました。
(まさか奥の手でも隠しているんですか!?止めなきゃ!・・・ってそれどころじゃ!っく!)
流石にそれを見過ごすわけにもいかないので止めようとはしますが、こちらもそれどころではないので止める事は出来ませんし、フレアさんもタイラスさんの魔法により動きを止められているので邪魔する事は出来なさそうでした。
「あまり使いたくはないのだがな・・・」
タイラスさんはそう言った後、懐から何かを取り出します。私の位置からでは良く見えませんが、恐らくは針でしょうか?
(針?でも小さいからあれじゃあ攻撃には使えないんじゃ・・・?・・・えぇっ!?)
それは確かに攻撃には使いませんでした。
なら何に使ったのか?
なんと・・・自分の頭に使ったのです。
これには私以外も吃驚した様で、グウェル殿下も『何をしているんだ?新手の回復法方か?』と呟き、フレアさんは『自殺をしたかったのか?』と口に出してしまう程です。
しかしこの行為は回復法方でもなく自殺でもありませんでした。この行為は・・・
「これをすると暫くは意識が飛ぶから予め言っておこう。謝るのも降参も無駄だ。すまないな・・・ぐっ・・・ぐぎっ・・・っがぁぁぁぁっ!!」
(意識が飛ぶ?え?どういう事・・・?)
「何叫んでやがんだっ!っと。漸く外れたぜ。んで?ごめんなさいだってか?あ?」
「がぁぁっぁあああ!!」
「あ?・・・ん?意識が飛ぶ・・・んで頭・・・脳を弄る・・・っ!そう言う事かテメェ!リミッターを外しやがったな!?」
(リミッターを外す・・・?・・・そう言えば昔タイラスさんから聞いたような。普段無意識に加減している力だったっけ?え?まさか・・・?)
そう、この行為は脳のリミッターを外して普段以上の力を出す、というモノだった様です。普通はそんな事出来ないし、出来たとしても精々50キロのモノを持てていたのが60キロ持ち上げられたとかそんな気持ちの持ちよう程度のモノ、つまり気合を入れて力を振り絞ったみたいなモノでしょう。
しかし現在のタイラスさんは彼が言っていた『普段無意識に加減している力』というモノが本当にありそれを解放している、そう見てもいいほどの動きを見せていました。
「ぎぃがぁぁぁぁ!」
「クソッ!力も強いし魔法もやたらめったら撃ってきやがる。っが!?」
「タイラスさん・・・腕が・・・脚も・・・」
具体的に言うと、タイラスさんは攻撃すると自分の力が強すぎるのか腕や脚が折れたりしているのです。更に魔法も無理して使い体に負担を掛けているのか、口や鼻から血を出しています。
しかし青の波動が直ぐにそれを回復しているのか、腕や脚が折れても構わず動きながら攻撃を続けていました。・・・無茶苦茶です。
ですがその無茶苦茶な行動は確かにすさまじく、今まで押していた雰囲気のフレアさんが逆に押され、私達に対する魔法攻撃も苛烈になっていました。
「くそっ!ラブ☆パワーダブルだ!」
「がぁぁぁあっ!!うがぁぁっ!」
「っちぃ!これでトントンかよ!嬢ちゃん、坊主!俺のこれは長く持たねぇ!だからなんかあったら早めに頼むぜ!」
フレアさんも奥の手を出したのか何とか応戦していましたが、それも長くは続かない様でこちらにどうにかしろと声を掛けてきます。
しかし私達には奥の手も現状を打破する案も特になく、その声に返事を返す事が出来ませんでした。
(うぅっ・・・何か・・・何か良い作戦は・・・思いつかない!思いつかないよぉ!こんな時マシェリーさんなら・・・)
そんな八方塞がりな状況の中、私はあの人ならばどうするだろうと考えてみます。そうすれば何かいい案が浮かぶかもしれないと、そう思ったから。
そうしていると無意識に私は首に下げたリングの上に手を当てていたのですが・・・
(・・・っ!)
突如そのリングが熱くなったような気がして、私は吃驚してそれを胸元から引き揚げます。
(一体何!?今は・・・・・・)
すると何故か私はそれを着けなくてはならない気がして・・・気が付くと指にリングを嵌めており・・・
次の瞬間・・・体から色鮮やかな魔力が吹き出しました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「タイラスもバーサーカーに!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと タイラスがウオウオ言いますわ。
マシェリーの一口メモ
【何となく題名を隠しましたわ!イリス視点でなんとなく勘づくかもしれませんがね!】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




