第246話 黄の魔王戦(本番)4
「えぇ?そんな・・・返してくださいよ・・・」
未だ喚いているマクシムを横目に、私はマルシアとノワールにこっそりと指示を伝え・・・
「2人共、使える中で再高威力の魔法を。30秒後に私の合図で放ちなさい」
「はい。熱の中に住まう者、火の元となりし・・・・」
「はい。其は冥界依りの使者、闇の中より・・・・」
そしてそれを伝え終わると、30秒を稼ぐためにマクシムへと話しかけます。
「マクシム。ああマクシム。何故私達が貴方の魔道具を持っていると思います?」
「え?」
「それはまだまだじっくりと観察したりないからですわ。だってどれもこれも素晴らしいんですもの。特にこれ。これって恐らく針が飛び出し、刺さった針から何かが出る仕組みでしょう?」
「流石解ってらっしゃいますね会長!そうなんですよ!でも針からは何かが出るんじゃなく、振動するんですよ!その際の振動がその針の穴を伝って・・・」
『30秒は短いけれど、この状況で稼ぐのには長い!』・・・そう思っていましたが、マクシムが勝手に時間を消費し始めたので易いオーダーだった様です。
(22。23。24)
そんなマクシムの話を聞き流しつつ頭の中でカウントをし続け、3秒前に差し掛かると私は後ろにいる2人にハンドサインを送ります。
そして30秒キッカリが経った時、合図を出すと・・・
「終局の火!」
「闇纏う死神」
「・・・ふっ!」
私はマルシアとノワールの魔法と共にマクシムへと突っ込んでいきます。
(耐魔壁君起動!)
その際流石に何も対策をせずに突っ込むと2人の魔法で私の方がプチッとやられてしまうので、私はグロウとグラァが開発した耐魔法シールドを展開する魔道具を起動させます。
しかし現段階の2人が持つ最高威力の魔法をそう長く耐えてくれるわけもないので、私は『せめて自分の行動が終わるまではもって!』と願いながら、炸裂し始めた魔法の中へと身を投じます。
(っく・・・何も見えませんわね。でも大体の位置さえ解っていれば、スキルを横なぎに使う事で・・・)
物凄い音や熱、寒気までする魔法の中へと飛び込むと、何とか魔道具はもっている様でした。
ですが魔法がもたらす事象が凄すぎて視界は0。なので私は記憶に従い、飛び込む前にマクシムが居た位置へとウェポンスキルで攻撃を仕掛けます。
「これでぇぇぇええ!『次元断』!」
使った後の反動は凄まじいけれど高威力、そんなウェポンスキルを推定マクシムがいる場所へと叩き込むと、何かを断つ感触がしました。出来る事ならば命を取るまではしたくはなかったけれど、手加減して戦う事も出来ないので仕方がない事でしょう。
「・・・っ」
しかしそんな事を考える前に今は一刻も早くこの場所を離脱しなければなりません。私はウェポンスキルの反動が来ている中、無理矢理魔法の炸裂範囲外へと後退します。
そして安全な位置に出た所で、改めて今消し炭になっているであろうマクシムへと顔を向けました。
「ごめんなさいねマクシム。お墓は建てて上げますからね・・・」
少しアレな人間ではありましたが、仲良くしていた事もあり少ししんみりしてしまいます。
(私が生き残りたいというエゴの犠牲者・・・でもその死は無駄にはしませんわ)
ウェポンスキルの反動で未だ体が満足に動かないので、私はその間心の中で黙祷を捧げます。
そうしている内に反動も収まりかけ、同時に炸裂していた魔法も収まりかけたのですが・・・
「お嬢様ぁぁぁっ!防御をぉぉっ!!」
突如ノワールの叫び声が響きました。
「・・・え?」
それはあまりに突然で、更に反動も収まりかけてはいましたが未だ収まりきっていない事も合いまり、私は反応が遅れてしまいます。
ですが私の眼は、しっかりとそれを捕らえていました。
・・・バチバチと帯電し私へと迫りくる、大きな回転する刃を。
・
・
・
「・・・ま!・・・り・・・い・・・・様!」
「ぅ・・・くっ・・・」
「・・・お姉様!」
「シ・・・ラ?・・・ごほっ!ごほっ!」
とても凶悪な代物の次に私が眼にしたのは、慌てた様子のシーラでした。
そのあまりの様子に何があったのかと尋ねようとしますが、私の口からは血混じりの咳しか出てこず、更に体もあまり動かす事が出来ません。
「・・・思ったよりは大丈夫そうです・・・」
ですがそれを見たシーラは慌てながらも何故かホッとした様子になり、私に回復薬の瓶を差し出してきます。
「・・・お姉様・・・これを飲めますか・・・?」
「ぇ・・・ぇ。いた・・・きま・・・」
「・・・ゆっくりと飲んでください・・・」
私はそれをシーラの介護の元、ゆっくりと飲みこんでいきます。
そしてそれと同時にシーラが回復の魔法を使ってくれた事もあり、回復薬を飲み終わる頃にはどうにか普通に喋り、また体も動かせれるまでになりました。
「っく・・・一体何がありましたのシーラ?」
「・・・やっぱり記憶にないですか・・・えっとですね・・・」
そこまで回復したのなら現状を確認しなくてはとシーラへと尋ねると、彼女は起こった事を話そうとしてくれたのですが・・・
「はぁっ!」
「こちらも忘れてもらっては困りますマクシム様!『首狩り』!」
「アアアァァァッ!」
少し離れたところで繰り広げられている光景を見て、私は大体の所を察しました。
「マクシムを仕留め切れていなかったんですのね。それで私は間抜けにも反撃を食らった、と」
「・・・はい・・・その様です・・・」
私はてっきり仕留めたと思っていたのですがどうやらそうではなかったみたいで、あの何かを断ちきった様な感触は・・・
「あれは腕を切っただけでしたのね」
戦っているマクシムの様子を確認してみると、どうやら彼の片腕を切り落としただけの様でした。
「・・・というか、え?よくあの状態であれだけ動けるものですわね?」
私が抜けたのでマルシアとノワールが2人そろって近接戦闘を仕掛けている様でしたが、それに相対するマクシムは片手を失ったのにもかかわらず、とても激しく動いていました。それはもう激しく、私が気を失う前には見なかった程の動きです。・・・追いつめられたので本性を見せた、という所なのでしょうか?
「・・・あ・・・多分なんですけど・・・」
「?」
しかしそれはどうやら違ったようで、シーラが見た所マクシムは気を失っているのではないかと言う事でした。更にシーラの推測ではありますが、『体に魔道具でも埋め込んであり、それが自動的に体を動かしているのではないか?』と見ている様です。
「ふむ・・・確かに有りえるかもしれませんわね」
その推測を聞いてマクシムの様子を確認してみると、『そうかもしれない』と思う節が所々見られました。それは『無理矢理体を動かしている様なぎこちない動き』だったり、『魔法をそこまで使わず、持っている武器を叩きつける様にして攻撃している』だったり、少し不自然な動きが見られたからでした。
更にシーラが補足してくれた『何時の間にか黄の波動の効果が消えていた』、『まるでスイッチを入れたかの様に遠距離戦闘と近距離戦闘で戦法が切り替わる』というような情報も合いまり、その疑惑は高まります。
「けれど・・・だからこそ厄介ですわね」
魔道具の力で自動的に攻撃しているとは解りましたが、マクシムの考えが絡まない自動的な動きの分、その動きには容赦や慢心といったモノがありません。幸いにもぎこちない動きなのでマルシアもノワールもピンチになってはいないようですが、攻め切る事も出来ていないのでそこは問題かもしれません。
「けれど私が戦線復帰すればバランスが崩せるかも・・・」
シーラは念の為サマンサに付けて置かねばなりませんが、私は動けるようになったので戦線復帰すべきでしょう。
なのでヨロヨロと立ち上がり、激しい戦闘を繰り広げているマルシア達の元へと向かおうとしましたが、私は何か違和感を感じ自分の姿を確認してみました。
すると・・・
「よ・・・鎧が・・・あ、そう言えば兜も」
なんと、私の鎧は鎧の体を成していない程に損傷していました。恐らく私が気を失う事になった攻撃を受けた時に壊れたのでしょう。しかも鎧の下に来ていた服までも少し破れているので、結構ギリギリだった感が漂っていました。
「・・・はい・・・下手したら多分真っ二つになってました・・・」
「ひぇぇぇ・・・」
本当にギリギリだった事を煽って来るシーラの言葉にぞっとしつつ、私は鎧を換装しようと・・・
『・・・チーーン・・・』
「あ・・・リングが・・・」
換装魔法を使おうとしたのですが、首から下げていたペアリングが床へ落ちてしまいました。チェーンに通して身に着けていたのですが、そのチェーンもダメージを受けていたのでしょう。
(落とすといけませんからアイテムボックスへ・・・いえ、着けておきましょうか)
そのペアリングを私は身に着けて保管する事にします。少し乙女な考えですが、そうすればイリスと一緒に戦っている様な気がして力が沸いて来る気がしたからです。
(いやまぁ今の私は乙女で間違いから、愛のパワーで勝つとか言っても問題ないんですけれどね?ええ。という訳でイリス、力を貸してくださいましね?)
こうしてペアリングを付ける事にしたのですが・・・
「・・・お・・・お姉様!?」
「・・・え?」
その結果、予想外の事が起こる事となりました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「マクシムがバーサーカーに!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと マクシムがウホウホ言いますわ。
マシェリーの一口メモ
【魔法名はノリで決めているので、変な訳とかでも気にしないでくれると助かりますわ(メタァ】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




