第244話 黄の魔王戦(本番)2
「それでは会長、お別れですね。黄の歯車」
黄の魔王マクシムが展開する『黄の波動』により身動きが取れなくなっている私達に対し、マクシムが追加で放ってきた殺傷性の高そうな魔法が近づいてきます。
『・・・ガリガリガリガリ・・・』
ゲームではソコソコ威力の高かっただけの魔法でしたが、今目の前にあるのはとても大きく頑丈そうな帯電する歯車。恐らくあれに巻き込まれればひき肉になる事は間違いないでしょう。
それが・・・ゆっくりゆっくりと迫ってきます。
「・・・っっ!!」
その光景を思い浮かべてしまい恐怖の声を上げそうになってしまいますが、それもかなわず、口からは声にならない声と泡のみが出てきます。
(甘く・・・見過ぎていたんですの・・・?っく・・・だめ・・・体が動かない)
動ければ『黄の波動』への対策として作って来た魔道具が使えるのですが、『黄の波動』により流される電流の力が強く、思った通りに体が動きません。
なので私達はそのまま迫りくる大きな歯車に巻き込まれ、ブチブチと・・・
「・・・ん?いや待て待て。もったいないですよねこれ?」
ひき肉にされようかといった瞬間マクシムのそんな声が響き、私達を巻き込もうかと迫っていた歯車がフッっと消えてしまいました。
(たすか・・・った?)
「いやぁー、折角魔道具を試せるチャンスなのに、魔法でヤってしまってはもったいないですよね会長。という事で、会長達には俺の作った魔道具で死んでもらう事にしますね!ん~・・・どれがいいかなぁ?これかなぁ?それともこっちの方が良いかなぁ?」
しかしそれは私達を生かしておこうだとか助けようだとかいう魂胆ではなく、唯々実験する的にしたかっただけの様で、歯車に殺されずとも魔道具によって殺される事になりそうでした。
(でも・・・動けない事に変わりは・・・っぐ・・・こんのおぉぉぉ)
死が少し遠くなった事にはホッとしますが、状況は依然変わっていません。なので何とかする為に足掻こうとしますが、やはり体は動かずどうする事も出来そうにありません。
・・・しかし、この状況で何とか動けるものが1名だけ居ました。
「こ・・・んの・・・くそだらがぁぁぁ!」
それは・・・サマンサです。彼女は一応雷の属性が使える魔法使い、雷を無効化する事は出来ませんが、それなりに耐性があるのです。
(サマンサ!ナイスですわっ!)
一応私にも耐性はあるにはあるのですが、特化していないだけに弱め。なので動く事は出来ずにいましたが、サマンサはどうやら動く事に成功した様です。
「いけっ!避雷針君!封じてまえっ!」
そして動く様になれたのならこっちのモノ、対黄の波動用に作った魔道具を作動させます。
「ふぅ・・・ふぅ・・・サマンサ、よくやりましてよ!」
「動けるようになりました・・・」
「・・・うぅ・・・でもまだ少しピリピリしますぅ・・・」
「っく・・・お嬢様方、これをお飲みになってください」
「おや?黄の波動は確かに発動しているのですが・・・ふむ?」
実はテストなどをしていなかったのでブッツケ本番で使う事になってしまいましたが、どうやら対黄の波動用魔道具はうまく作動している様でした。
(しかし予想ではもって10分程度。『黄の波動』が予想以上の威力だった事を考えると、その半分くらいしか持たないかもしれませんわね。急ぎませんと・・・)
サマンサが放った避雷針君はその名の通り避雷針をモデルに作っています。原理的には避雷針君へ雷の魔法を誘導、地へと流し分散させるものですが、誘導し集めるだけに本体が壊れてしまうのです。
ですから予備は幾つかありますがそれを考えると、マクシムと戦えるのはタイムリミットがあると考えなければならないようです。
更に・・・
「あっかーん・・・すんませんお姉様・・・ウチ限界です・・・わ・・・」
「サマンサっ!」
耐性はあれども無理に動いたからでしょう、サマンサは倒れてしまいました。直ぐに駆け寄って様子を確認すると命に別状はなさそうでしたが、恐らく戦線復帰は無理でしょう。
「っく・・・シーラ、貴女は後ろに下がってサマンサの介護と避雷針君の更新を!戦闘参加は最低限でよろしいですわ!」
「・・・は・・・はいっ!」
そうなるとサマンサを戦場の後ろで守る要因が必要になって来るので、2人分の戦力が削られる事となります。全員死亡するよりかは断然ましですが、状況はかなり厳しいモノとなってしまいました。
ですが折角サマンサが作ってくれた起死回生のチャンス、諦める訳には行きません!
「マルシア!ノワール!私がマクシムの近くに居ても構わないから、用意して来た魔道具をバンバン使っておしまいなさい!」
「え!?だ・・・大丈夫なんですかお姉様!?」
「大丈夫にしてみせます!だからお使いなさい!後、魔法もね!ああマルシア、貴女は危険だからノワールと一緒に魔法と魔道具で攻撃を!それではやりますわよ!」
私は矢継ぎ早に指示を出すと、『どれを使おうかな~?』と道具袋をごそごそしていたマクシムへと走り寄り、そのままの勢いで武器を叩きつけてやります。
「おぉ~っと!危ないじゃないですか会長!」
「煩いっ!そのままカチ割れてしまいなさい!2人共!今ですわっ!」
勿論それは躱されてしまいますが、あくまで今の攻撃は牽制、今回の本命はマルシアとノワールによる魔道具攻撃です。
「りょ・・・了解です!えいっ!」
「いきますお嬢様!上手く避けてくださいませ!」
「おや?そちらも魔道具ですか?けどどれも俺が作ったモノじゃないですか?性能は解り切っているので対処は余裕ですよ会長?」
その魔道具攻撃にマクシムは『自分が作った魔道具だから知り尽くしている』と余裕をかましていましたが・・・甘々の甘ちゃんです。
「というかそっちは遊びに使うモノで、そっちはひんやりとモノを冷やしてくれるモノじゃないですか。そんなものでは・・・」
確かに片方は竹とんぼに似た玩具、もう片方はボール状態の保冷材みたいなものですが・・・どちらもスタングレネードと同じく改造済み。竹とんぼの様なモノは鋭利な羽部分で目標を切り裂く凶悪仕様に、保冷材の様なモノは衝撃を受けると中の冷却液をぶちまけ辺り一面を凍らすえぐい仕様へと変更してあります。
「あぶなっ!?っとぉっ!?こっちは武器のシールドでは・・・っく!『黄の防護面』!」
甘々の甘ちゃんマクシムはこれに驚き咄嗟に防御をしますが、物理系と非物理系を混ぜた魔道具攻撃に驚き防御行動で手一杯になっていました。
「そのまま殻に籠っていなさい!『圧壊斧』!」
それを私はチャンスと見、再び飛びかかります。が、彼の防御は硬く攻撃が弾かれてしまいます。
ですがそれは解っていた事なので、何度も連続で攻撃を仕掛けます。
「『斬鬼重斧』!火の多重刃!『叩き割り』!『トルネードアックス』!」
「っく・・・ぐぐぅ・・・」
「姐さん!私達も!火の流星拳!」
「闇の大腕!」
「くぁぁぁっ!!」
しかし多少は傷を追いながらも、マクシムはそれを受けきってしまいます。更にマルシアとノワールが発動した魔法を避ける為、私が離れた一瞬のスキを突き・・・
「起動!フォートレスシールド!続いて起動!自動攻撃剣に自動追撃槍!」
マクシムは魔道具を起動させて見せました。多少無理して起動させたからか傷の程度が深くなってはいましたが、強力な魔道具を起動させたので割にはあっているのでしょう。
「っく・・・厄介なモノを発動させましたわね!マルシア、ノワール!あれらは私が対処します!貴女達は引き続きマクシムへと攻撃を!」
「はいっ!それっ!追跡ピョンピョン君!」
「畏まりました!行きなさい照射君!」
今マクシムが起動させた3種の魔道具はゲーム時代にも使っていたモノ、効果も割と厄介なモノだったのでそれらは私が対処、マクシムへの攻撃は後衛の2人に任せます。
ですがかける圧が少なくなったからか、マクシムは防御以外の攻撃が取れるようになり・・・
「続いて起動!自立型火炎放射器!自立型薬剤散布蝶!」
次々と魔道具を起動、攻撃の手を増やしてきました。
私はそれらを必死で潰していきますが、マクシムは『どれだけ作ったの!?』と言いたくなるくらいに次から次へと魔道具を起動させてきました。
「あはははは!会長!俺の作った魔道具はどうですか!?良くないですか!?」
「いいわけありませんわよっ!『ワイドプレッシャー!』」
その状況がマクシムには楽しかったのか笑いながら喋りかけてきますが、こちらはそんな暇はありません。彼が展開して来た魔道具を片付けていくのに手いっぱいです。
(くぅ・・・また状況がマクシム有利に・・・一体どうすれば・・・)
戦況は絶体絶命からは免れたモノの、時間制限もある状況です。
私は攻撃を続ける中如何しようかと案を練りますが、特に打開策は思いつかず・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【黄の魔法は機械や道具にまつわる感じですわ!因みに防護面とは、溶接に使うあれですわよ!】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




