第240話 その頃のマシェリーさん
「あ~・・・」
季節は私達が別荘に行っていた時より進み夏になり、最近ますます暑くなって来ていた今日この頃、私は・・・
「ココハダレ・・・ワタクシハドコ・・・」
頭をやられた人の様になっていました。
「またおかしなっとるやんお姉様・・・」
「私の頭はマトモですわサマニャン」
いえ、実際暑さで若干やられていますが若干です。若干!
と、うだうだやっていたのですがサマンサはどうやら伝える事があった様でそれを伝えてきます。
「・・・さよか。まぁそれはええ。それよりお姉様、奴が動いたで」
「そう・・・ならシャキッとはしないとね」
それを聞いた私はポンクマみたいな表情から顔をいつも通りに戻し、ニャッポヨみたいに溶けていた体もシャキッとさせます。
そしてサマンサが報告して来た事柄について動く為、サッと魔法を発動させ移動します。
「サマンサ、ホシには一応ノワール達が付いてるんですの?」
「そうやで。例の場所違う場所行く場合だけサイン残しとく言うとりましたわ」
「そう」
私はその移動中、念の為にサマンサへと確認をとります。
すると今日までやって来た尾行と同じ塩梅の様だったので、私は何時もの様にホシが通った道を通り追いかけます。
「・・・今の所いつも通り、と・・・」
時に大通り、時に細い路地、時に『何故そんな所を通るの?』と言いたくなるような道を通り、最終的に辿り着いたのはヒッソリとした場所に建つ少し陰気な雰囲気を漂わせた1軒の建物です。そこの近くに先行していたノワール達が隠れていたので、私とサマンサは彼女らに合流します。
「ノワール、ホシは・・・マクシムは入って行った?」
その際私は追っていた人物の事を聞きましたが・・・そう、私達が追っていたのは黄の魔王マクシム、そろそろ事を起こし始める筈の彼の者でした。
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ここで少しゲームでマクシムという魔王がどの様に災害を引き起こしたのかを語るとしましょう。
彼は知っての通り魔道具師、それも魔道具師の中でもトップの実力を持つ人物です。そんな彼はある日こう思ったそうです。
『この攻撃用魔道具、実際にはどの位使えるんだろう?』
始めは勿論外・・・ダンジョン等へ行き、モンスターに対して実際に試していました。
が、その中で彼は対人用の魔道具の確認に納得がいきませんでした。何故なら、それは対人用なのに、使ったのはモンスター相手にだったからです。
でも普通は『まぁ仕方ないよな』となり、『モンスターにこれだったら、人には十分効くかな』とか考えてそこで終わるものです。
・・・そう、普通なら。
『ん~、気になる。気になるぅぅ!・・・使おうかな?うん、使おう』
ところがどっこい彼は普通ではなく、こんな考えを抱く狂人でした。
そんな狂人は『使うなら一気に使わないと敵対者に邪魔される』という事も考え、試したい魔道具を作り溜めし、それがある程度溜まった時・・・
魔王として災害を引き起こしたのです。
とまぁ、彼が魔王としてどの様に災害を引き起こしたのかは以上となります。もう少しだけ付け加えるなら、彼は人口ダンジョンを作り出す魔道具も作り出し、それを使い王都の一角をダンジョン化、王都にかなりの被害をもたらすという事もします。
現在見張っている建物の中ではその人口ダンジョンを作り出す魔道具の開発・改良をしている筈なので、恐らくあの建物を中心に王都の一角がダンジョンになるのでしょう。
(後に増えた仲間ユニットを預けて置いたら勝手にレベルアップする場所になるんですのよね。使いましたわ~あれ)
因みにその人口ダンジョンは後に『練兵所』と呼ばれる施設となり、プレイヤー視点では物凄く重要なモノとなります。更に彼の狂気を諫めマクシムを攻略していくとカスタムも出来るので、『楽にゲームを攻略するならマクシムはアリアリのアリ』と言われていました。
(懐かしいモノ・・・うん、懐かしいモノですわね)
「で、お姉様。見張り始めてからもう1か月は経つけどどないするん?」
昔の事?を懐かしんでいると質問をされたので、私は意識を切り替え質問に答えます。
「そうですわね・・・タイミングを見るにそろそろだから・・・」
何故か同時に動き出してしまった青の魔王、彼が所属するセウォターカンド王国との戦争が始まっていたので黄の魔王が事を起こすのは恐らくもう幾ばくも時間が残っていない筈です。
なのでこちらもそろそろ動き筈。そう考えると・・・
「今でしょ!!ですわ」
「「「え?」」」
私が某講師風に言うと、まさか今から行動開始と言われると思っていなかったのか皆はポカンとした顔をしていました。
ですが私も決してネタの為に言ったのではありません。
「正直言ってマクシムが何時事を起こしてもおかしくありませんからね。だから今から襲撃を掛けますわよ」
長ければ後数週間は大丈夫かも知れませんが、短ければ1時間後・・・いえ、数分後にでも事を起こすかも知れないのです。やるならば偵察も終わった今その時です。
それに何時でも動けるように準備はしてあるのです。だからいつぞや作った換装魔法を使えば・・・
「ほら、準備完了。貴女達にもハイハイハイっと」
「お嬢様、私にも・・・」
「自分で出来るでしょうに・・・ハイ。これでいいかしら?」
「はい。ありがとうございます」
後は覚悟さえ決まれば準備完了となります。
「さて・・・黄の魔王。そもそも強力な魔法が使えるのに厄介な魔道具まで使って来る狂人。易い相手ではないけれど・・・やりますわよ!」
「「「・・・はいっ!」」」
「そしてこれが終わればまた休暇に出掛けましょう!お休みファイォー!ですわよ!」
「「「お休みファイォー!」」」
しかしそれも私の音頭で即完了。という事で・・・
「突入っ!」
私達は魔王が待つ建物へと向かいました。
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『・・・ギィ~・・・』
「・・・ごめんあそばせ~(ボソッ」
と言ってもです。建物へとドーンとダイレクトイン、後にそこに居たマクシムと即戦闘となる訳ではありません。何故ならマクシムがいるのは建物の中にある・・・
「うん。上手い具合にダンジョン内に居る様ですわね」
そう、人口ダンジョン内に彼はいるからです。
「まだ改良をしていないのか、町の一角を浸食するような機能は無いみたいですわね。という事は、未だもう少し時間はあったのかしらね?」
私はゲーム時代の彼の説明で『町の一角が人口ダンジョンになった』と言いましたが、現段階の人口ダンジョンは入口があるだけの人に迷惑を掛けない親切設計となっています。正直何故ここに外部を浸食し取り込む機能を付けたのか理解に苦しむ所ですが・・・『人を取り込んで、その人達に対人用魔道具を使う』若しくは『大事にしてそのダンジョンを攻めさせ、攻め込んできた人達に対人用魔道具を使う』とかそんなところでしょうね。やはり考えがクレイジー過ぎます。
「そんな事が起こってからでは遅い。だからギリギリだったと思うべきですわね。・・・と、何か気になる事はありまして?」
私が人口ダンジョンの入口を確認し考え事をしている間に、他の皆には建物内の様子を調べてもらっていました。
だからその結果を聞いたのですが、建物内にあったのは少しの魔道具やそれを作る道具。それもガラクタの様なモノばかりだったので、本命は自分で持ち歩いているかダンジョン内にでも保管してあるのでしょう。
「ふむ・・・ならダンジョンへ侵入してマクシムを〆るとしますか」
逆を言えばマクシムを締め上げれば終わりとなるのでそれはそれでいいかと思い、ダンジョンへと侵入する事にします。
ですがこの人口ダンジョン内、予め調べる事が出来なかったのでどうなっているのかさっぱり解りません。
(ゲーム時代の人口ダンジョンはここから改良されたバージョンですしね・・・)
「ん~・・・入って即戦闘も有りえますから、ここで予め強化の魔法を使っておきましょうか」
なので、最大限警戒する意味を込め、予めモリモリにバフを盛り・・・
「・・・いいですわね。後は即時展開出来る様に魔道具を用意してと」
更に魔道具を即使える様にセットします。
そしてそれが終われば・・・いよいよ人口ダンジョンへと侵入開始です。
「さてさて・・・鬼が出るか蛇が出るか・・・ですわね」
そうして入った先、人口ダンジョン内で待ち受けていたのは・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【最初の方で言っていた『ホシ』というのは警察用語で『犯人』という意味ですわよ!決してお星さまみたいにキラキラしている人とかではありませんわ。】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




