表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
240/255

第239話 青の魔王 ≪イリス視点≫

 ≪イリス視点≫


「青の・・・魔王ですか?」


「そうだイリス。俺はセウォターカンドに所属している・・・いや、セウォターカンドを動かしている青の魔王タイラス・ブルー・セウォターカンドだ。残り短い間かも知れないが覚えておくといい」


 私は突如現れた既知の人物のあまりにもな紹介に頭が混乱していました。

 タイラスさんは確かに隣国の王族という事もあり、出会った当初から不思議な雰囲気を漂わしている人でした。ですがまさか魔王だったなんて想像の埒外です。混乱しても不思議ではないというモノです。


 しかし・・・


(冷たそうに見えて優しい所もあったあのタイラスさんが魔王・・・っ!?)


 私達が現在置かれている状況はゆっくりと心を沈める余裕もない様で・・・


「さて、改めて自己紹介もした所で何だが時間も押している。早々に片付けさせてもらうぞ。ミウ、サウ」


「「はい」」


 タイラスさんとその脇で待機していた2名の人達が動き始めました。


「皆様とは顔見知りですが・・・」


「タイラス様がお望みですので排除させていただきます」


「ミ・・・ミウさん。サウさんも・・・っ!」


 タイラスさんの影の様にピタリとくっ付いていたこの2人でしたが、この人たちも私達の知り合いでした。

 ミウ・ド・ナガレとサウ・ド・ナガレ、彼女らはタイラスさん付きの使用人としてファースタットへも来ていた双子の姉妹。向こうに留学している時も度々お世話になっており、一時期は姉の様に慕っていたもいた人達です。


 そんな人達は普段のお淑やかそうな雰囲気とは一変し、私達に殺意をまき散らせながら切りかかってきました。


「っく!防げペイル!サミュエル!」


 私の頭は混乱し未だ良く回っていませんでしたがグウェル殿下はその経験からか胆が据わっていた様で、近づいて来たミウさんとサウさんへ対応する為に指示を出します。


「「はっ!・・・っぐ!」」


 するとペイルさんとサミュエルさんは普段から指示を出されたら否応なく動ける様にしていた為か、即座に動き攻撃を受け止めていました。

 グウェル殿下はそれをチラリと確認した後追加の指示を出します。


「アウギュスト、ザガン、イリアスはペイルとサミュエルに合流しミウとサウの相手を!」


「「「はい!」」」


「僕とイリスは・・・タイラス殿を相手にする」


 しかしなんとその指示は私とグウェル殿下の2人でタイラスさんを相手にするというモノでした。正直な所未だ頭が良く回っていませんし、タイラスさんから感じる圧迫感というか雰囲気に押されて動ける気がしないのですが、そんな私がタイラスさんを相手にする事が出来るのでしょうか。


「イリス・・・大丈夫だ、僕達ならやれる。積み重ねてきた時間を信じろ。そして・・・僕を信じろ!」


 そんな考えがよっぽど顔に出ていたのでしょう、グウェル殿下は私の背に手を当て励ましてくれました。

 それにより私は心に活力が生まれた気がして・・・


「は・・・はい・・・。そうですね・・・小悪魔みたいなあの人の扱きに堪えたんです。私はイケます!やれます!やってやります!」


 思わず咆えてしまっていました。

 グウェル殿下はそんな私を見て大丈夫だと思ったのか頷き、武器を構え作戦を囁いてきます。


「頼れみたいな事を言って早々で悪いがイリスは前衛を頼む。僕は少し距離を空けて魔法主体で行く」


「解りました!任せてください!」


 私はそれに鼻息荒く胸をドンと叩きながら応えます。

 それを見てグウェルは『焚き付け過ぎたか?』みたいな顔をしていましたが・・・『否』と答えたい所です。何故なら、声を掛けてもらわなければ今もまだ頭の中でアレコレと考えて動けないでいたでしょうから。


「ああ、頼む。なるべく早く終わらせて向こうを手伝ってやらねばならないしな」


「はい!」


 ミウさんとサウさんは中々強いみたいで、人数が勝っているリア達のチームとも互角に渡り合っていました。

 なのでなるべく早く向こうに加勢すべく、軽く方針を決めたところで早速タイラスさんへと攻撃を仕掛ける事にします。


「緑の葉刃!」


 先ずはグウェル殿下が魔法を使用。しかしそれは軽々と躱されてしまいます。


「魔法で相殺するまでもないな」


 が、それは牽制の為に放ったモノなので当然でしょう。本命は・・・グウェル殿下の魔法と同時に駆けだした私の攻撃です。


「でしょうね!五月雨切り!」


「・・・ふん」


 しかしそれもタイラスさんが持っていた剣で弾かれてしまいます。ですがそれも予想済み。というか、タイラスさんが魔王と知らない時点でも強い事は知っていたので、これ位ではどうともならない事は解っている事です。


「閃光一文字切り!」


「温い技だ・・・む?」


「ならアッと驚かせて見せましょうか!」


 なので私はウェポンスキルを使ったと思わせて攻撃を受けさせ、そのフェイントに掛かった一瞬の隙にこっそり取り出していたアイテムをポイッと投げます。


「ふん・・・っち!?毒か!?」


 タイラスさんは私の投げたボール型のアイテムを剣で弾こうとしましたが、それは剣に触れた瞬間爆発し内容物を周囲に巻き散らかします。その内容物をタイラスさんは毒と捉え魔法で洗い流し始めましたが・・・それは毒ではありません。


「っ!?固まっただと!?」


 ボール型のアイテム、その中身の正解は『水に触れると固まる薬剤』です。これは装備と共に『何処かでお試しなさい』とあの人から渡されたアイテムの1つなのですが、咄嗟に使ったのは正解の様でした。


「隙ありっ!閃光一文字切りっ!!」


「くっ!」


「こちらも忘れてくれるな!緑の寄生木!」


「ぐわっ!」


 まさかそんな変てこなモノを使うとは思っていなかったのでしょう。まんまと隙を晒してくれたので、私は今度こそウェポンスキルを発動させ攻撃します。

 そしてそれをチャンスと見たグウェル殿下も魔法を当て、タイラスさんにダメージを与えます。

 ですが・・・


「っく・・・青の波動!」


「あっ!拘束が!」


「っ!イリス!気をつけろっ!僕の魔法も解除された!」


 それは反則的な魔王の魔法によりなかった事の様にされてしまいました。


(拘束とグウェル殿下の持続ダメージを与える魔法が解除された?ということは『青の波動』は状態異常を解除する魔法?)


 私はそれを成した『青の波動』という魔法について考えますが、概ね間違いではないでしょう。


 何故なら・・・


 ・

 ・

 ・


「今度は本当に毒ですよっ!えいっ!」


「無駄だ」


(少しも食らってる様子がない!?やっぱりなの!?)


 後の攻防時に使った催涙効果があるアイテムや一時的に酩酊させる効果があるアイテム等、数種類の状態異常系アイテムが即解除されてしまったからです。更に・・・


(傷も治ってる!?)


 私とグウェル殿下が必死に攻めた末に与えた傷までもがいつの間にか治っている事から、治癒効果もありそうです。


「青の鳥。青の鹿」


 しかも合間合間には攻撃魔法も挿んでくるので、青の魔王が使う魔法は攻撃と治癒に優れているというとても厄介なモノの様でした。


「ああもう!防御は防御で躱したりイナしたりするから硬いし、反則ですよタイラスさん!」


「・・・反則というなら魔王であるグウェルと、魔王に着いて来れる戦闘能力を持ったお前の2人がかりで襲って来る方が反則だと思うがな。・・・っち、青の蝶!」


 ですが厄介だと思っているのは向こうも同じだった様で、最初よりかは焦った様子を見せながら戦っていました。

 この調子ならばもしかしたらと思わなくもないのですが、同時になんとなく嫌な感じもしていました。


(あ~もうアイテムが・・・。それに段々攻撃が当たらなくなってきている気がします)


 それはあの人に貰ったアイテムが無くなって来たのと、先程から私達の傷が増えてきた事にありました。当初は攻撃をあまり受けなかったし、それでいて攻撃を当てれていたのですが、今となってはそれが逆になってきています。


(・・・戦闘経験の差という奴なんでしょうか?)


 考えられるのは『対応された』という事でしょう。なんせ相手は推定歴戦の魔王、私達もサークル活動等で戦闘はしているとはいえ経験は浅いですし、何よりいつも行っているのは対モンスター戦・・・対人戦の経験があまりないのです。

 ですから戦えば戦うほど私達のボロが出て来て追い込まれていくのは必然なのかもしれません・・・。


(くぅ・・・リア達の方が持ちこたえれそうなら、逆に手伝ってもら・・・あ)


 それを何とかすべく、ここはリア達に助けてもらおうかと考え彼女達の方をチラリと見たのですが・・・


「あぅ・・・」


「っく・・・申し訳ありませんグウェル殿下・・・」


「無力化完了ねサウ」


「ええミウ。タイラス様の方へ加勢しましょう」


 私の視線の先にはミウさんとサウさんに負け、倒れ伏した仲間達の姿が映りました。しかも微かにタイラスさんへと加勢するとも聞こえたので、逆に追い込まれる事態になりそうです。


「って、悠長に考えている場合じゃ!殿下!不味いですよ!!」


「解っている!解っているが!!」


 私達はそれに気付き焦ってしまいますが、私もグウェル殿下も妙案が浮かぶわけでもないし、これ以上切り札を持っている訳でもありませんでした。いえ、切り札はあるにはあるかも知れませんが、それは『私と触れ合っているとパワーアップする?』という謎の能力、今の状態ではあまり使えたモノではないのです。


(不味い不味い不味い!もうすぐミウさんとサウさんがこっちに合流しちゃう!それまでになんとか・・・あぁ~もう!なんとかならないよぉ!!)


 なので私はひたすらにどうするか考えますが、全く考えは浮かばず・・・遂にミウさんとサウさんが私達の戦いへと合流・・・



「おっと待ちな!」



 マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「援軍!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?

 ☆やイイネをぽちっと押すと 援軍の背後に『デデン!』とオノマトペが出ますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【青の色魔法の攻撃は『水で動物の形を作り出し攻撃する』という感じですわね。因みに回復系は普通に回復となりますわ。】


 マシェリーより宣伝

【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ