第236話 神木聖域ダンジョン 3
「おお、よくぞオーガを退治してのけたな船太郎、船次郎、船三郎、船四朗、船五郎。しかしもう儂達の所へと帰って来ず、その宝を持って都会で暮らすが良い」
「・・・はぁ?」
「ああ、そうとなれば餞別を渡さねばな。婆さん、神木団子を10個とあれを持って来ておくれ」
「はいはいお爺さん。これですね?」
「そうじゃそうじゃ。ほれ船太郎。餞別を受け取り旅立つが良い」
「・・・はぁ?」
・・・いきなり何の茶番だ?と申したいのでしょう?それは100も承知です。なので簡単に経緯を説明するとしましょう。
それでは少し前、乗っていた船を切り裂きながら何かが私達へと迫って来ていた所から話しますが・・・あの迫って来ていた何かの正体は、斧でした。正確には『私達が乗って来た船を拾って来て、それを解体しようと振り下ろしたお婆さんの斧』です。
・・・色々突っ込みたい所があるでしょう。『船を拾って来た?どうやって?』とか『お婆さん斧で船解体って?』とか色々。
しかしそれらはスルーさせてもらいます。なんせ『ダンジョンのイベントだから』としか答えようがないので。
兎に角、話を進めていきます。
お婆さんの凶刃から何を逃れた私達は、何故か『船から子供が生まれたわい』と言われ、強制的に名前を付けられました。そう、冒頭で言われた船太郎~船五郎です。
因みにここまででなんとなく既視感を覚える人が居ると思いますが、それは正解だと言えるでしょう。
・・・続けます。
ポンコツNPC『お爺さん&お婆さん』に捕まった私達は、1時間程その2人とおままごとをする事になりました。その後、何故か唐突に『オーガ島へと行き、オーガを倒してくるのじゃ』と神木団子3つを渡され放り出される事になります。
私はこの時点でなんとなく気づいたのですが、そのまま何も言わず進み、道中でやはり出てきた魔犬、魔猿、魔雉を神木団子でお共にし、オーガ島へと乗り込みました。
そしてオーガ島へと着くと普通にオーガと戦いこれに勝利。置いてあった宝を回収し、お爺さん&お婆さんの元へと帰った訳です。
そして帰ってオーガを倒した事を報告すると冒頭の様に言われ、見事イベントクリアーになったわけですが・・・ほんと、とんだ茶番劇でしたね。モモタロウのパクりは。
「やれやれ。ようやく終わりましたわね。それにしても船太郎って名前ダサ過ぎですわ・・・2人目から先に至っては超適当ですし・・・」
「そうですね。それになんだか早回しで人生1回分の経験を送らされたみたいで、疲れました」
「疲れたけど意外と面白かったやん?なんや劇団員になったみたいで、さ」
「・・・私は面白さより興味のが勝ちますね・・・不思議すぎます神木団子・・・」
「それよりお嬢様、この魔物達はどうしたら・・・」
そんな茶番劇の感想を話しながら私達は扉へと向かいます。
そして扉の外へと出ると再び上へ上へと進んで行ったのですが・・・
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「きょ・・・今日はこのくらいにしておいてあげますわ!」
あれから約3時間、ダンジョンに入ってからだと7時間程経った所で帰る事にしました。
「それにしてもこのダンジョンは不思議ですね」
「そやな。普通のダンジョンならモンスターがバンバン出て来て罠とかはそんなやのに、ここは逆みたいな感じやな」
「・・・罠、というよりは・・・イベントという感じですけどね・・・ふふ・・・」
進んだダンジョンの先にあった扉達ですが、前の2つの扉と同じく中に入ると何かしらのイベントが発生し、私達はそれを全てクリアーしていっていました。イベントの内容は色々あったので内容は割愛しますが、大体はどれもパクり・・・いえ、何かしらの話のオマージュだったので、難しくはなかったのが救いかも知れません。
が、毎回毎回ポンコツNPC達に付き合わねばならなかったので疲れは物凄く溜まった感じです。
という事で、さっさと帰って休む事にします。
「さぁ・・・さっさと帰りましょう。それに続きを探索したいから、休みの延長を各所に伝えなくては・・・」
精神的に疲れた体を引きずり私達は入って来た扉へと逆戻り、ダンジョンからの帰還を果たし別荘へと帰ります。
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「さて、それでは今日も元気に進んでみましょうか!」
「「「はい!」」」
翌日、夜のイチャイチャージをして精神力を回復させた私達は再び神木聖域ダンジョンへと足を踏み入れていました。
勿論一度入った扉には用がないため、昨日の続きからスタートです。私達は昨日帰る前に付けておいたマーキング地点までひょいひょいっと回廊を駆けあがり、マーキング地点まで辿り着くとそこから探索をスタートさせていきます。
「さてさて・・・先には何が待っているのかしらね・・・」
先は長そうですが何時かは最後の扉へと辿り着くはず。私はそれを楽しみにし、待ち受けている筈のモノを心待ちにしながら、新たな扉を開きました。
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「探索、やめましょうか・・・」
数日も経つと考えている事は全くの逆となりましたがね!
「これ、終わりなんてないでしょう!そうなんでしょう!?」
というのも、行けども行けども回廊と扉の終わりは見えてこず、延々と・・・本当に延々と続いているからです。延々と続き過ぎて、今では入口から入って未探索の場所へと来るまでに走って5時間程かかってしまうので、正直これ以上は探索不可と判断してしまうほどです。
「はぁ・・・明日一日で最後にしましょうか。これ以上は他にやる事もあるから厳しいですわ」
「「「はい」」」
「それじゃあ帰りましょうか」
なので私はこのダンジョンの探索期限を明日1日までと設定し、今日は帰る事にしました。
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翌日、今日で探索を打ち切ると決めた日、この日はあえて下ってみてはどうかと私は考えていました。
(今までは上りっぱなしでしたけど、上って駄目なら下ってみろ、ですわよね?)
もう少し早く試してみても良かったのですが、意地になっていた事もあり、何となく下る事はしていなかったのです。
ということで、私はそれを朝食時に皆へと伝えてみます。
「イイと思います」
「この際やしな。ま、下も延々と続いてそうやけど」
「・・・最後ですし・・・良いと思います・・・」
結果、同意を得られ、今日はダンジョンを下っていく事になりました。というわけで、ダンジョンへと入る準備をさっさと済ませる事にします。
「ノワール、太郎、次郎、三郎の準備はよろしくて?」
「はい。3匹とも装備を着させました」
その際私は犬、猿、雉の準備も出来たかノワールへと確認をとります。・・・と、そう言えば言ってなかったかもしれないので言っておきますが、モモタロウオマージュの扉にて仲間にしたモンスターは普通についてきたのでペットにする事にしました。モンスターだけあり普通に戦えるので、取りあえずはそのままダンジョンへと連れて行ったりしています。
「太郎、次郎、三郎。今日もお嬢様のお役に立つのですよ?」
「ワン!」
「キー!」
「ケェー!」
そんな3匹の事をノワールは意外と気に入っているらしく、彼女はよく3匹に話しかけていました。それこそ普段はあまり喋らないのに、です。
「ふふ、良い子ですね。良く出来ていたらまたご褒美の団子を上げますからね?」
「ワン!?ワンワン!」
「キー!!キッキキー!」
「ヤッタゼー!」
(ギャ・・・ギャップ萌えとは・・・ノワール恐ろしい子・・・って、雉がなにか・・・)
そんなノワールの姿に私はちょっとキュンとなり、なんだかヤル気が沸いて来た気がしていました。
ですがいつまでもキャワワノワールを見ている訳にもいかないので、私は出発する事を告げ外へと出ます。
そして皆と合流しあの大木の元へと向かったのですが、そこで太郎が何か言いたげにノワールへと鳴いていました。
「どうしたのですか太郎?」
「ワンワン、ワン」
「アレダセッテヨー」
「アレ?アレとはこれですか三郎」
「ソウ、ソレダー」
どうやら太郎はノワールへとこのダンジョンで集めたキーアイテムを出す様に言っていた様です。・・・というか雉が完全に喋っているのですが?
私はそれに突っ込みたくて溜まりませんでしたが、ノワールが話しかけてきたので取りあえず雉の事はスルーして話を進めます。
「お嬢様、太郎がこれを持っていろと」
「なんでしょうね?あら?いっぱいあったのに合体している?」
「その様です」
謎のキーアイテムは複数個ゲットしていた筈なのですが、どうやらアイテムボックスから取り出しまとめて持った時に合体した様でした。今までスルーしていましたが、正直これ、もの凄く大事なモノだったのかもしれません。
「しかし使い方は解りませんわね?鑑定しても出てこないし」
「はい。魔力を流しても反応はありませんでした。ですが取りあえずこのダンジョンから産まれたモンスターの太郎が言うのです、持っていると何かがあるのかもしれません」
「ですわね。取りあえず懐の収納スペースにでも入れておきますわ」
ですが使い方は不明の為、取りあえず持っておくだけに留めておきます。
そして謎の太郎の訴えも終わった所で、ダンジョンへと入ったのですが・・・
『・・・こっち・・・こっち・・・』
「・・・え?」
『・・・この扉・・・開いて・・・』
何時か聞こえてきた謎の声が、私へと語りかけてきました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「雉さん・・・?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 犬と猿も喋りますわ。
マシェリーの一口メモ
【魔犬、魔猿、魔雉の強さは、おおよそオーガくらいはありましてよ。】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




