第231話 イカレタ男
マシェリーよりお知らせ:後書きの宣伝を新作の方へと変更しましたわ。
双子が『ちょっと話がある』と切り出した内容は、人によっては確かにちょっとした内容に聞こえたでしょう。
しかしそのちょっとした内容は、私にとっては少しもちょっとしたモノではありませんでした。
「本当ですのグロウ、グラァ?マクシムがやたら破壊的な魔道具の設計をし出したり、それを見てニヤニヤしたりしていたというのは?」
・・・いえ、誰が聞いても危ないと思うかもしれませんね。
ですが一等危ないと考え、本気で対策を講じ始めるのは私ぐらいかもしれません。何故なら私は彼が魔道具師の頂点にいる人物だと知っていますし、それらを使って大災害を引き起こす黄の魔王だという事を知っているからです。
「けれどおかしいですわね・・・セウォターカンド王国の話が出てきたのにマクシムも様子が変だなんて」
マクシムとのバトルフラグが出てきたというのは確かに大事ですが、私は一旦『待てよ?』と思い、考え込んでしまいます。
(私がジェーンから聞いたのは、細部は違えど確実に青の王サイラスと戦うフラグ。それなのにマクシムにも同時にフラグが建つだなんて有りえないでしょ・・・いえ、まってくださいましよ?本当に有りえないのかしら?)
ゲームというモノは基本クリアする事が前提に作られているモノ。なのでどう考えても勝てない、進めないという作りにはなっていません。
ですが一方、現実というのは基本クリア・・・成功するという前提では作られていません。時には諦め、時には何も成し遂げられず終わる、そんな事も珍しくないのです。
つまり・・・ゲームでは流れを進行させる為常に1体1体出ていたボスも、現実では理不尽にも全員一度に出て来てもなんらおかしくはないと、そういう事です。
(そう、時に人生はクソゲーとも揶揄される難易度がおかしいモノですからね。おほほほほ)
「・・・って!笑い事じゃありませんわよ!?」
「「「!?」」」
『なんだそれは!?』と私が理不尽に大して憤ると、それに対し何も知らない皆が吃驚していましたが・・・今の私にはそれを気にする冷静さがありませんでした。
「いやいやいや、ありえないでしょう?ゲームと違って最後に出て来る状態にまで強化された魔王と2人同時に戦え?1人でもギリギリだったのに、無理でしょう!?しかも単純なフレッドとは違い片方は魔道具、片方はデバフのスペシャリスト!本人スペックもフレッド並にある筈なのに無理過ぎますわよ!!」
だってあまりに無茶苦茶で理不尽が過ぎるのです。冷静になれという方が無理でしょう。
その後も私は皆がアワアワとするなか1人で喚き続けました。
「本当にもう!もぉぉぉ!・・・ふぅふぅ」
そして1時間も喚いていると時間の経過と共に心は落ち着き、また喚いていた事により少しだけストレスが吐き出されたので大人しくなりました。
「お嬢様。どうぞ」
その瞬間を見計らいノワールがサッとお茶を出してくれたので、私はそれを一気に飲み干します。
「温い!でも美味しい!もう一杯ですわ!」
「どうぞ」
「・・・んぐんぐ・・・ふぅ~」
何時もと違うスッとする爽やかなお茶で更に心も落ち着いたので、私は落ち着いて考えてみます。
(逆に・・・逆に考えてみるのです!2人だけで良かったじゃありませんの。それにマクシムは兎も角、タイラスの方は最悪放って置いてもファースタット王国が属国になり私が処刑されるくらい・・・って駄目じゃありませんの!あ、いやでも・・・)
狂人マクシムの場合は負けるといくつかの国とそこに生きる人々は全滅してしまうのですが、タイラスの場合は戦争に負けたファースタット王国が属国になるだけで済んでいました。
ゲームだとその際私はタイラスの勘気に触れる&それまでの所業で処されるのですが・・・よくよく考えると今の私はそこまで悪行を重ねていない(多分)ですし、タイラスには近づかなければ勘気に触れる事はありません。
それに、もしも近づく事があっても丁寧に対応すれば大丈夫でしょう。
そんな感じで色々考えている内、私の心境は『どうにかなりそう』という方へ傾いてきました。というより、如何にかならなくても如何にかしなくてはならないでしょう。
・・・人生にはリセットボタンがないのだから。
「前世も然り・・・ね」
「「「???」」」
「何でもありませんわ。それより・・・ごめんなさいね貴女達。ほったらかしにしていて。でもお陰で方向性が決まりましたわ」
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その後、青の魔王対策改め、青と黄2人の魔王対策を話し合った私達は、取りあえずマクシムの様子を見に行く事にしました。
「ごめんくださいまし。調子を見に参りましたわ」
マクシムがいる工房へ着くとそこで働いている者達へと挨拶し、マクシムがいる工房の奥へと進んでいきます。
そしてマクシムがいる部屋の扉をそっと開き、彼の様子をこっそりと覗いてみると・・・
「はーっはっはっはぁ!やっぱり魔道具はパワー!パワーは芸術!芸術は爆発だぁーっ!!」
「・・・」
余りにもアレな様子だったので、私は扉をそっと閉じました。
そして後ろに居た皆へと言います。
「アウト。ですわ」
「「「アウト?」」」
先程の様子は恐らく誰が見てもアウト。ですから私はズバッと判定を出したのですが、皆はイマイチ解っていない様なのでもう少し解りやすく言ってあげます。
「完全にいかれちゃってて近いうちに暴れ出す事確実、ということですわね」
解りやすく言うとピンと来た様で、皆は一様に頷きました。更にこれから中に入って話さなければならないので、『普通に見えてもイカレテルから注意』と一応注意喚起しておきます。
「マクシム、入りますわよ」
それが終わると、今度はノックをして存在感をアピールしながら部屋の中へと入ります。
「ここをこうしてぇ・・・これをぉ・・・おや?会長じゃありませんか」
気付かないかもしれないのでノックの返事を待たずに入ったのですが、直ぐに気付きこちらへと挨拶をしてきました。・・・イカレテても魔王は魔王、そこら辺は敏感なのでしょう。
「こんにちはマクシム。様子を見に来ましたの」
と、そんな事を思っているとは微塵も感じさせない様、私は通常通りに話かけます。
「指定された魔道具の開発は順調ですよ。順調すぎるくらいなので、別に魔道具を設計し始めているくらいですからね。あはははは」
すると先程までとは一転、先程のイカレた具合とは真逆の普通な感じで対応をしてきて・・・それが物凄く不気味に見えてしまいました。
「そうですのね。おほほほほ」
しかしそれを気取られない様あくまで通常通りの対応を心がけます。なんせ今から頼む事に不信感を覚えられると・・・後々かなり不利になるからです。
「順調なら丁度良かった。追加で魔道具の作成を頼みたかったんですの」
「追加ですか。どのようなモノです?設計図等はありますか?」
「私が作った素人の様な設計図であればありますわ。これですの」
「ふむふむ・・・いやいや、これくらいなら普通に通用するレベルの設計図ですよ」
「あら、貴方に言われると自信が出てきますわね。それでどうですの?」
「ん~・・・これがこうだから問題ないだろうし。こっちは・・・ああ、こう繋がってるからいけるか」
私がマクシムへと頼んだのはなんてことはありません。普通に魔道具作りです。
・・・といっても作るのは結構殺傷力の高い、魔物との戦闘に使う攻撃系の魔道具でしたが。
「効果は・・・おぉ・・・成程成程。攻撃系魔道具・・・くくく・・・」
それに気付いたマクシムは再び狂気をちらつかせていましたが、私はそれに気付かないふりをしてさらに追加で何点か設計図を出しそちらの製造も頼んでおきます。
「任せてください会長!完璧に作り上げてみますよ!!何なら改良できる箇所に気付いたら改良しておきましょうか!?」
するとマクシムは途端にウキウキし出し、出した攻撃系魔道具の改良も行うと提案してきました。
それに関しては私としてはどちらでもよかったので了承しておき、後で詳細だけ報告する様に言っておきます。
それが済んだらそれ以上要は無いので、私はマクシムにほどほどにするようにだけ言ってから部屋を出て、そのまま工房からも出ます。
「・・・ふぅ~」
そして工房から少し離れると体から力を抜き、息を大きく吐きました。・・・しているつもりはなかったのですが、結構緊張していた様です。
「よし。あれなら大丈夫でしょう。あぁ~~!緊張が抜けたら甘いものが食べたくなりましたわ!貴女達!ケーキでも食べに行きましょう!」
ですが上手く餌は撒けた筈なので、私は足取り軽く移動を始めました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【青の魔王との戦いに負けると、私は斬首エンドですのよ!・・・勝っても進み具合では斬首エンドですけれどね!】
マシェリーより宣伝
【スローペースな新作が始まりましてよ!『センテイシャ』https://ncode.syosetu.com/n7217id/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




