第223話 ゲームは一難去るとまた一難がある
『今回の勇士達に惜しみない賛辞を!』
『『『・・・パチパチパチパチ・・・』』』
「え?」
気が付くと、何故かイリスやグウェル殿下と共に講堂の壇に設置されたテーブルにつき、皆に賛辞を送られていました。
(え?ええ?一体何が?)
何が起こったのか解らないと思いますが、私も(ry。・・・何て感じで混乱していると、私の横に座っていたノワールがこっそりと現状を説明してくれました。
「お嬢様の御帰りに合わせ、学園が今回の祝賀会を開いたそうです。・・・以前に学園から届いた手紙がそれ関連だったかと記憶しております」
「あぁ・・・確かそうでしたわね。立て込んでいたのですっかり忘れていましたわ。・・・あれ?でも確か・・・」
説明を受けて思い出したのですが、確かに少し前学園から『内乱を治めた殿下他皆々様へ』とかいう手紙を受け取っていた事を思い出しました。だから私達が学園へと着くなり講堂へと連れられ、こういう事になったのでしょう。
が、こんな事をするとは書いていなかった気がしたので首を傾げてしまいます。
「あの・・・」
「?」
そうすると私達の話を聞いていたのでしょう、逆隣りに座っていたイリスが小さな声で教えてくれました。
「えっとですね・・・内乱が終わって直ぐに私達が学園長の所へ呼ばれまして、それで褒められていたんですけど・・・そこからマシェリーさん達の話になってですね」
「ふむふむ?」
「それで、確かマシェリーさんが戦場で『手柄は頂いた!』とか言っていたので、この様な感じで祝賀会を開いたらどうかと私達が提案したんです」
「・・・ふむ?」
「そうしたら学園長と一緒に居た偉そうな人が『それはいい!』とか言い出して、結果この様になりました」
「・・・成程」
イリスの説明を受け、私の冴えた頭脳は全てを理解してしまいました。どうやら良かれと思ってイリス達が提案した事が上手い様に使われた様です。
(まぁその良かれと思った事も余計ではあったのですが・・・。それにしてもここでもプロパガンダを入れてきますか)
この祝賀会は一見、唯々内乱の鎮圧に多大なる貢献を果たした私達を称える為に開かれているように見えますが、実の所は参加している貴族の学園生達を使い彼ら彼女らの親へと『ファースタット王国はこれほど強い勇者がいる(魔王ですが)』『ファースタット王国は安泰だ』という事をアピールしている・・・つまりプロパガンダを仕掛けているのです。
(ま、許して差し上げましょう。どうせその内剥がれるメッキですもの。今の内に存分と張りまくっておくといいですわ。オホホホホ)
しかし私は寛大な心でこれを許す事にし、逆にこの場を活用する事にしました。即ち・・・悪役令嬢アピールをするのです。
『それでは今回の最大功労者であるグウェル殿下から一言だけ頂き、その後晩餐会へと移りたいと思います。それでは殿下、よろしくお願いします』
とか思っていたら絶好のチャンスが来たので、これを活用させてもらう事にしましょう。
「ノワール」
「お任せを」
「あっ!ちょっと!」
私はノワールへと命じ、司会が持ってきた拡声の魔道具を魔法を使い横取りしてもらいます。
そしてそれを受け取ると・・・
『オーッホッホッホ!最大の功労者となればこの私!マシェリー・フォン・オーウェルスの事でしょう!?間違えられては困りますわぁ~!オーッホッホッホ!では、私からありがたぁ~い言葉を皆様へと送って差し上げますわねぇ?』
全開で悪役令嬢ムーブをかましてやりました。
・
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「ふぅ・・・クールに去ってやりましたわ。あれなら大丈夫でしょう」
祝賀会が開かれて小一時間程経ち、それ以上あそこにいるのが面倒になった私は華麗にエスケープを決め込んでいました。
「お姉様、イリスからあっつい視線もろとったけど出て来てよかったん?」
「ええ。いいんですの。寧ろ、去るべきでしてよ」
「そうなん?」
「そうなんですのよ」
実の所面倒というだけでなく、イリスから熱視線を貰っている事もありましたが・・・やはり『チュー事件』のあれなんでしょうか?
「折角好感度を落としたと言うのに・・・はぁ・・・まぁいいですわ。話を・・・始めましょうか?」
「「「???」」」
とまぁ諸々の事は置いて置き、私は重大なる次のイベントについて話をする事にしました。
「次なる重大案件について、ですわ」
「学園祭ですか?残念ながら終わってしまいましたよ?」
「・・・うふふ・・・それとも新年のパーティーとかの事です?・・・それならパーッと盛大にするようになってますよ・・・?・・・ね・・・サマンサ・・・?」
「そやで!戦争で金をぎょうさん使ったけど、ぎょうさん入っても来とるからね!イケイケに出来ますわ!」
「あらぁ~いいですわねぇ~。そして学園祭は残念でしたわぁ~。・・・って、違いますわよ?次なる魔王との戦いについて、ですわ」
「「「・・・え?」」」
何だがノリツッコミになってしまいましたが、話を続けることにします。
「フレッドと戦ったばかりでなんですが、グウェル殿下を抜いた4名の魔王、彼らとも順次戦っていく事になりますの」
「「「えぇっ!?」」」
「大体1年スパンで1人ずつ、って感じですわね。で、次の魔王との戦いが・・・そうですわね・・・4~6か月後くらいかしら、その位にある筈ですの」
私が続けた重大な話、それは次なる魔王戦の事でした。以前に言ったと思いますが、1人の攻略対象以外の魔王とは戦う事になるので、残りの4名とは戦う運命にあるのです。
「とは言っても次の相手はまだ誰か読めないんですのよねぇ・・・。多分黄か紫辺りだと思うのですけれど・・・」
とは言っても残りの戦う順番は1名以外はランダムとなっています。その1名とは青・・・タイラスです。
というのも、彼はセウォターカンド国の人間で、ゲームですと戦う理由が『ファースタットとセウォターカンドの関係が悪化』というモノだったので、未だ兆候が出ていない現在だと可能性はかなり薄いと言う事が上げられました。
となれば残りは3名、黄、紫、橙ですが、橙は大体の場合何故か選出される可能性が最後に回る事が多かったので、確率的な問題で黄か紫だとなる訳です。なのでその2人なのですが・・・
「出来るなら黄・・・マクシムの方がいいんですけれどね」
「それは何故ですか?」
「ウチも疑問やわ。紫いうたらあのチャライ兄ちゃんやろ?あっちのが余裕そうちゃう?」
「・・・チャラい人に余裕で負けるのはサマンサじゃないです・・・?・・・ぷぷ・・・」
「黙りやシーラ」
「ほらほら、喧嘩してはいけませんわよ。えっとですね・・・」
呟いた言葉にサマンサとシーラが漫才をし始めたので、私はそれを止めて理由を説明し始めます。
といっても理由は単純で・・・
「理由としては・・・紫の方が強い。いえ、面倒だからですわ」
「「「?」」」
「彼の得意とするのはバフ・デバフ。バフの方は問題ないとしても、精神や体を弱化させて来るデバフは厄介極まりないモノで、戦うとなると彼は厄介で強い相手なんですの。勿論対応策はありますが、ダンジョン巡りをしなければならないので時間が掛かるんですの」
「「「成程」」」
そう、理由は面倒・・・というか、デバフを使う彼が単純に強いからです。装備で耐性を盛ればそこまでなんですが、装備が揃ってない状態で戦うと鬼強なんですよね、彼。
その点黄は楽勝・・・でもないんですが、そこまで面倒な事はしてこなかったので、戦うとなれば黄が先の方が好ましくありました。
「ですので情報収集をしつつ、対黄・紫を念頭に置いて装備開発・収集をしなければなりませんの。それをこれから話し合いますわよ?」
ですがどちらと先に戦う事になるのかは解らないので、両方の対策を進めていくしかありません。
私達はその後、頭を悩ませながら話し合いを続け・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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☆やイイネをぽちっと押すと イリスからハートが飛びますわ。
マシェリーの一口メモ
【悪役令嬢ムーブ:好感度-10~20ポイント。キス:好感度プライスレス。チョロインにも困ったモノですわね!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




