第217話 赤の魔王戦3
マシェリーより:短めとなっておりますの。申し訳ありませんわ。
剣戟と魔法が飛び交う様な戦場で、私の頭の片隅には『あ、これってラブコメみたいな展開ですわねー。オホホホホー』なんて呑気な言葉が浮かんでいました。
「んんぅっ!?」
「んんっ!?」
ですがこの状態、そしてなった経緯を知ったなら、それは誰もが思う事でしょう。だって吹き飛ばされて絡み合った末にキスですよ?『なんじゃそりゃ!?』って感じですよ。
「んんっ!」
「んん・・・」
というか、ですよ?
「ぷはっ!さっさとお退きなさいな!何時まで唇を押し付けていますの!?」
「はふぅ・・・あ、す・・・すいません・・・」
「流石に今はこんな事をしとる場合カァーッ!でしょう!?ご褒美タイムは後にしてくださいまし!」
何時までもこんな状態では居られないと、私はキスしてくるイリスを押しのけ立ち上がります。正直嬉しいハプニングではありますが、流石に今はそれどころではないのです。
「お?マジで耐久力すげぇな」
「オホホホホ・・・そうでしょう?」
なんせ今は対魔王戦中、余裕をブッコいてニャンニャンしている暇はないのです。
「は・・・はふぅ・・・」
まぁ、我らが主人公はそんな暇があるようですが・・・
「ちょっとイリス!さっさと武器を構えてくださいまし!」
「あっ!す、すいません!」
ですが何時までもそんな調子だと困るので、私は彼女へ怒鳴り戦線復帰させます。・・・させますが状況は最悪で、イリス1人戦闘へ加えたところでどうにもならないかもしれません。
(シーラは未だマルシアとサマンサの復帰を手伝っている最中。ノワールと殿下も吹き飛ばされた先でフラフラしている様子だから少しの間は行動不能。残った私とイリスは普通に動けそうだけれど、今までの様子だとどう考えてもフレッドの防御を抜けない・・・積みじゃありませんの?これ?)
皆の様子を見て戦力分析をしますが、やはりどう考えてもどうにもならなさそうな状況に私は絶望してしまいます。
そうなると私の頭には『即ゲームオーバーで死亡にはならないのだから、潔く諦めてリカバリーを掛けて行け』という考えが浮かんできてしまいますが・・・
「マシェリーさん、次はどうするの?」
「え?」
イリスは全然諦めていなかった様で、私へと次の指示を求めてきました。
何時もならここで自信満々に『では・・・』と言う所ですが、流石に今はそうする事が出来ず、私は唇を噛みしめただ黙る事しか出来ませんでした。
「・・・解りました。じゃあ私が時間を稼ぎます。その間にどうにかしてください」
「え?」
「頼みましたよ!・・・はぁぁぁぁっ!」
するとイリスはそんな私の様子をチラリと確認した後そう言い、1人でフレッドへと飛びかかっていきました。私は何が起こったのかをよく理解する事が出来ず、それを唯々見送ります。
「お?何だ、嬢ちゃんが1人でやろうってか?いいぜ?こいよ!ハッハー!」
「いやぁぁぁああっ!!」
「お?おぉ?イキがいいなぁおい!」
「はぁっ!やぁっ!せいっ!」
イリスとフレッドが戦い出しても尚その光景を理解する事が出来ず、私は混乱しながらそれを見続けます。が、私はマシェリー・フォン・オーウェルス、異質な魂が入り精神は少々なよいですが体や頭のスペックはハイスペックですので、直ぐに頭が回り始め思考が正常になります。
(あ、イリス。そう、彼女は腐っても主人公、主人公足り得る精神性を持っていると言う事ですわね)
しかし先程も言った様に精神はなよいので、思考はドンドン後ろ向きな方へと走り出してしまいます。
(けれど身体的にはまだまだ発展途中、完成された魔王に敵う訳がありませんわ。ですからここはイリスの方を説得してフレッドとの戦闘を止めてもらい、リカバリーを・・・っ!?)
ですがその後ろ向きな思考は、フレッドとの戦闘中にもかかわらず送って来たイリスの視線に停止させられます。
「・・・」
イリスの視線は希望に満ちた真っ直ぐなモノで、それは私の次の指示、行動を期待してのモノでしょうが、私は万策尽きて何も思いつかないし、どう戦ってもフレッドに勝てるビジョンが浮かばないので戦う事は出来ません。
なのに・・・
(何でそんなどうにかなるって目を?)
「・・・」
それでも彼女は私へと唯ひたすらに真っ直ぐな目を向けて来るのです。
「オホホ・・・仕方のない子ですわね・・・」
そんな目に私は力を貰った様な気がして、気が付くとニヤリと笑ってしまっていました。
そしてそれを自覚すると、何故だかどうにかなるような気がしてきて・・・
「オーッホッホッホ!いいでしょう!最後の最後まで諦めず、足掻いて差し上げましょう!オーッホッホッホッホッホ!」
私は何時もの自信満々な調子で高笑いを決めてしまっていました。
「ふぅはぁ・・・ど・・・どうですか?何か思い付きましたか?」
「あらイリス、随分疲れているじゃありませんの?」
それを聞いたからでしょうか、フレッドと激しい近接戦闘をしていたイリスが私の傍へと引いてきて声を掛けてきました。
私はそれに軽く返しますが、残念ながら何も思いついていません。
ですので私は剣と盾を構え、フレッドへと突っ込みながら叫びます。
「殴って勝つ!コレですわ!」
と。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「流石主人公!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと イリスの主人公力があがりますわ。
マシェリーの一口メモ
【キスは唇と唇が触れ合うだけのモノでしたわ!まぁ、イリスは最後の方、唇を舐めて来ていたので舌を入れて来る気が合ったようですが・・・。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




