第216話 赤の魔王戦2
「じゃあな、マシェリー」
フレッドはそう言い私へと手のひらを向けてきますが、私は未だ満足に動けず、動けるシーラやノワールも遠くに居る状況。これは正に万事休すと言わざるを得ません。
「・・・っ!」
命まではとらないと言っているので一握りの安心感はありますが、それでもここで『敵の魔王』に負ける事は色々致命的です。
なので何とかしようとモガキますが・・・
(駄目・・・未だ体が・・・)
やはりどうしようもなく、そのままフレッドの攻撃を受けるしかないようです。こうなると気合で耐えて死んだふり、後に再び回復して再戦するしかありません。
「赤の「いやぁぁぁっ!」うおっ!?」
「!?・・・っア!」
そう思っていたのですが・・・突如飛び込んで来た人物のお陰でフレッドの攻撃は中断される事となりました。
そして中断されたと思った一瞬後に何とか体が動く様になったので、私は急いでフレッドから距離を取ります。
「大丈夫マシェリーさん!?」
するとその横へとフレッドへ飛びかかっていた人物も下がって来て声を掛けて来たのですが・・・私はパチパチと目をしばたかせ首を捻ってしまいました。
何故なら、そこに居たのは動けたシーラやノワールではなく・・・
「何故起きていますの?イリス」
私が魔法を掛け眠らせた筈のイリスだったからです。更に・・・
「僕も居るぞマシェリー!緑の寄生木っ!」
「っちぃ!」
牽制の為にフレッドへと魔法を使いながらグウェル殿下も現れました。
私は吃驚しながら『何故?』と呟いてしまいますが、それは彼女達も同じだった様で・・・
「何故?はこっちの台詞ですよマシェリーさん。何故私達を眠らせたんですか!?」
「そうだぞ。何故眠りの魔法を・・・あそこは一緒に戦う場面だろう?」
彼女達は私に『何故眠らせた?』と質問をしてきました。
そうやって互いに『何故?何故?』と益体もなく何故を投げ合っていたのですが、走って来たノワールが声を掛けたことによりそれは中断されます。
「お嬢様!前を!」
「え?イリス!殿下っ!」
私がノワールの声に従い前を見ると、フレッドが魔法を発動させるかどうかといった様子だったので、私は咄嗟に魔力を練り上げ体を覆い、イリスとグウェル殿下の前へと動きます。
「「・・・っ!」」
「・・・っく。色々ギリギリでしたわね」
その行動は何とか間に合ったようで、フレッドの魔法を防ぐことが出来ました。
しかし言葉通り色々ギリギリで、間に合ったのもギリギリなら魔法を受けた個所もギリギリでした。具体的に言うならば、魔法を受けた両腕の鎧部分がバキバキになり、鎧としての機能を果たさないレベルになっていました。
(パメラ達の自信作だったのに、この短時間で駄目になったんですのね)
私は予想以上だった損耗具合にハァとため息を吐いてしまいますが、今はそんな場合じゃないと考え、潔く・・・予備の鎧へと換装しました。
「持っててよかったですわ。予備の鎧」
それを見てイリスと殿下が何か言いたそうな顔をしていましたが・・・
「今はそんな場合じゃないでしょう?」
と言って黙らせておきます。
そして更に『何故眠らせた?』という質問についても後にするように言い、何処かへといった戦斧の代わりに剣と盾を装備します。
「ま、私も何故起きた等の一切は聞かない事にしますわ。それでもこれだけは聞いておきますわね?・・・戦闘が出来る程に動く事は可能ですの?」
今は悠長に話している時間も無いので両者共に質問は無しにする事にしましたが、動けるかどうかだけは聞いておかなくてはならないので尋ねます。
「いけます」
「ああ。というより、動けなくても動かなくてはならない、そういう状況だろう?」
「そうかもしれませんわね。ま、動けると言うのならいいですわ」
私の問いにイケると答えた2人を見ると、私と同じく回復役でも飲んだのか最後に見た時よりはピンピンしていました。
なのでその言葉を信じ、2人に・・・いえ、ノワールといつの間にか居たシーラを合わせて4人へと素早く指示を出します。
「イリスは私と前へ、殿下はノワールと共に遠距離から攻撃を。シーラは私達に守りの魔法をかけた後、マルシアとサマンサの回復を」
フレッド戦に対し当初はイリスと殿下の両名共に実力不足だと考えていましたが、今の状況だとそんな事は考えている場合ではありません。
なので私は2人も戦闘に組み込む様戦略を伝えました。
「ですがイリス、基本的には私がフレッドの相手をするので貴女は隙を狙って攻撃する様にしなさい」
といってもイリスをフレッドの矢面に立たせると耐えれ無さそうなので、そうやって追加の指示は出しておきます。
そしてそれが終わると、私はこちらを見てニヤッと笑っていたフレッドへと突っ込んでいきます。
「元気になったのか?ガハハハ!」
「ええ!お陰様でっ!ねっ!」
「おっ?おぉっ!?剣と盾の使い方もウメェじゃねぇか!」
「オホホホホ!おほめに預かり光栄ですわねぇぇぇっ!」
剣と盾のスタイルへと変えただけあり攻撃力は落ちましたが、その代わりに小回りが利くので先程よりフレッドの意識を引き付ける事に成功します。
そして意識を引き付けられていると言う事はそれだけ隙があると言う事で・・・
「隙ありですっ!やぁぁっ!」
「っとぉっ!」
丁度イイタイミングを見計らい、イリスが攻撃を挿んでいきます。
「あのまま寝てりゃぁよかったのに起きてきたのか!」
「マシェリーさんが戦ってたのにっ!そういうっ!訳にもっ!いかないでしょ!」
「っは!そうか「お喋りとは余裕ですわねぇフレッドぉぉ!」っうぉっ!」
「こちらも忘れるてくれるな赤の魔王様!緑の葉刃!」
「闇の光線」
「クソッ!赤の波動!」
更に殿下とノワールの遠距離攻撃も飛んでくるので、フレッドは少し前私達5人と戦っていた時の様に防戦一方になり始め・・・
「流水切り!ウォーターバッシュ!」
「流水切りっ!」
「緑の螺旋樹!」
「闇の重力破!」
「ちぃ!くそがぁっ!!・・・ぐぉ!?」
この様に、再び押している様な感じになりました。
が、また有効打を当てれずにこのまま時間が過ぎると先程の二の舞になってしまうでしょう。
なので何とか打開策を撃たなければならないのですが・・・どうしたモノでしょう。
(いつぞやの騎士みたいに強力な魔法を・・・。いや、でもフレッド相手だと・・・)
打開策としてノワールや殿下に強力な魔法を撃ってもらおうかとも考えましたが、油断しないフレッド相手だと決まるかも解りませんし、下手をすると前衛の私達を放って後衛組に攻撃をしに行くかもしれないのでNGです。
しかしフレッドを沈め様と思うと物理では厳しいのも事実なので、使わざるを得ないと考えた私はノワールへと合図を送ります。
(ノワール!)
『・・・コクリ』
私の意を汲み取ったノワールは横に居た殿下にコソリと呟くと、強力な魔法の準備を始めました。なので私はそれをフレッドに覚られない様、攻め手を強くします。
「流れ太刀!からの滝割り!イリス!」
「はい!いやぁぁぁっ!」
「おっ!?おぉっ!?」
後衛に意識がいかないほどに攻め立てねばならないので、イリスにも声を掛けてリスク覚悟で攻撃を仕掛けさせます。
そんな私達の波状攻撃が少しは効いたのか、フレッドはたたらを踏みながら横へと体をよろめかせます。
「うぉっ!!・・・なんてな?狙いはノワールの嬢ちゃんの魔法だろ?」
「しまっ!」
「っく!緑の波動!」
ですがそれはフレッドの演技の様で、彼は緩やかに体を泳がせていた状態から急加速し、ノワールと殿下の方へと突っ込んでいきました。
殿下はそれに気付き急いで防御の為に魔法を使いましたが・・・フレッドの攻撃には耐えれなかったのか、魔法の為に集中していたノワール共々吹き飛ばされてしまいました。
「お?寸前で魔法を使ったか。なら追い打ちだな。赤の火花」
フレッドはそれでやれてないと把握した様で、追い打ちの為に魔法を使います。流石に今の状態でアレを食らってしまうとノワールと殿下は唯で済まないでしょう。
ですから私はそれを防ぐため、咄嗟に被っていた兜を外し、発動しそうになっていた魔法へとブン投げます。
「うぉっ!?」
「ストライクッ!ですわっ!」
野球にも才能があるのか、私が放り投げた兜はフレッドの手のひらの先にあった赤の火花にぶち当たり、見事フレッドの至近距離で炸裂させる事に成功しました。というか、咄嗟にやってみたモノのあんな方法で防げるんですね、魔法。
私は新たな新事実に感動しましたが、ぽやっと喜びに浸っている暇じゃないと思い出しフレッドの方へと駆けていきます。
するとフレッドはこちらにも魔法を飛ばしてきましたが・・・
「オーッホッホッホ!私の盾は火耐性バッチリですのよ~!」
このために投げなかった盾で防御しながら突っ込んでいきます。・・・いえ嘘です、偶々投げなかっただけです。
と、調子に乗ったのがいけなかったのでしょう。
「そうかよ!んじゃあ耐久テストしてやるぜ!赤の牡丹!」
「無駄ですわ~!魔法や錬金薬でもコーティングしてあるので、魔法には強いんですのよ~!」
「赤の牡丹!赤の牡丹!赤の牡丹!」
「えっ!?っちょ!水の障壁鎧!水の祝福!」
「いや、連打ならこっちか?赤の火花!・・・赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!赤の火花!」
フレッドは魔法を連打してきました。
「きゃぁぁぁっ!」
流石にそんな事をされてしまうと、フレッド用に用意した火耐性装備でも・・・いえ、十分に持っている様でした。
(物理じゃないから持つんですのねっ!でもっ!)
「私の体がっ!衝撃にっ!持ちませんわっ!」
しかし魔法の余波とでも言いましょうか、発生するその衝撃には私の体が持たず、私は盾と共に吹き飛ばされてしまいます。
「いやぁぁぁっ!」
「危ないマシェリーさんっ!」
少し離れた位置にいたからそれが良く見えたのでしょう、イリスが吹き飛ばされた私を助けるべく動きました。
しかし普段の状態なら兎も角、今の私はフルアーマーマシェリーです。
「ごふっ!!!」
「ちょっと!イリスのお馬鹿っ!」
イリスは私を受け止めきれず、私と共にゴロゴロと転がっていきます。
(痛ぁ・・・でも思ったよりは・・・)
「んんぅ・・・」
ですが受け止めてくれただけはあって衝撃はある程度弱まったのか、手足は問題なく動いたので直ぐに戦闘へと復帰できそうでした。
更にイリスも受け止める時に魔力で体を保護していたのか、私の鎧にゴロンゴロンと押しつぶされていたのに無事そうな声を出していました。
(っく・・・しかし何かが口を塞いで・・・ってイリスですのね!早くおどきになってくださいまし!柔らかくて不快ではないですけれど、邪魔ですわっ!)
「んー!んんんー!」
「んんぅ・・・んぅ?」
と、ここでいきなりですが皆さん、お約束というモノは知っているでしょうか?特にロマンスの様な恋愛もののお約束です。
こてこてなモノだと『朝ぶつかった人が転校生だった』や『何処かへ行くたびに出会い、意識する』なんてありますが、その中でこういうモノがあります。
『転んだ拍子にキスしてしまう』
そう、正に今の私達の状態ですね。
「んんんっ!?」
「んぅぅぅ!?」
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「ん???」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと その分チュッチュシーンが・・・
マシェリーの一口メモ
【私もアイテムボックスの魔法は覚えているので、そこに鎧や武器が仕舞ってありますのよ。え?今はそんな事より最後のあれを説明しろ、ですって?オホホホホ】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




