第215話 赤の魔王戦
フレッドが使った『赤の星爆』・・・それは戦場の時を止めるがの如く衝撃を戦場に与え、実際戦場の争いは少しの間停止する事となりました。
その間敵味方関係なく、皆はこう考えていたでしょう・・・
『相手は塵すらも残っていないんじゃないか・・・?』
と。
しかしそう考えるのは受けた相手・・・即ち私を知らない有象無象だけでしょう。私を知る者ならば・・・
「っは!やっぱやるなぁ!おい!」
「おほめに預かり光栄ですわ魔王様」
この様に、『やっぱり防いだか』と驚きもせず笑うのです。
まぁ・・・
「マ・・・マシェリーさん・・・なんで・・・?」
「後方に居たんじゃないのか・・・?」
知っていても『何故出てきたのか?』は解らず、困惑している者達も居る様でしたがね。
「ふふ・・・それは勿論・・・」
ですが私は慈悲深く優しいと評判のある女、答えて・・・
「ひ・み・つ・ですわ。眠りの雲」
上げません。どころか、彼女達に魔法をかけ眠らせてしまいます。
(ここからは聞かれて不味い事が話されるかも知れませんし、戦うのは色々限界でしょうからね)
色々理由があってイリス達を退場させる事にしたのですが、そんな事を知らないフレッドは意表を突かれた様で、『あん?』と言いながら首を傾げていました。
しかし私はそれを無視してそのまま着々と準備を進める事にします。
「マルシア、フィールドを。サマンサは電音を使って指揮官へとメッセージを飛ばしてくださる?シーラとノワールはイリス達をまとめ、レイラ達へ」
「「「はい」」」
「あ?何やってんだ?」
「まぁまぁ・・・直ぐに終わらせて説明しますわフレッド。それ位は待ってくれますわよね?」
「ん?まぁいいけどよ?」
当然の事ながら途中フレッドが質問をしてきますが、私はそれを留めます。
そして宣言通り直ぐに準備を終わらせたので話をする事にしたのですが、よっぽど気になったのかフレッドの方から質問してきました。
「で?何で出て来たんだ?スパイ業務の一環か?」
「いえ?違いますわよ?」
「あん?じゃあ何でだ?」
「うふふ・・・答えを知りたければ・・・私を倒してから聞いてごらんなさい!」
「は・・・はぁっ???」
しかし私はフレッドの質問にまともに答えず獲物を構えます。
「オーッホッホッホ!説明をするとは言いましたけれど、素直に説明するとは言っていませんからね!」
「な・・・なんじゃそりゃ!?」
「オーッホッホッホ!」
いや、本当に『なんじゃそりゃ!?』なんでしょうが、素直にイリス達を眠らせ退場させたことを話すのも面倒ですし、元から裏切るつもりだった事を言っても『なんじゃそりゃ!?』となるので、あえて長々と説明する事もないと思ったのです。
まぁでもフレッドは単純明快な男なので、こう言っておけば・・・
「はぁ・・・まぁいいわ。要するにあれだ、マシェリーは俺と戦いたいって事だろ?いいぜ?戦ってやろうじゃねぇか」
「流石フレッド!話が解りますわね!」
こういう風に理解を示してくれるのです。流石A☆NI☆KIですね!
いえ、馬鹿にしているのではありませんよ?フレッドは確かに単純明快でカラッとした性格ですが、決して馬鹿ではありませんからね。現に・・・
「フィールドが小せえしあの嬢ちゃん達が邪魔だな・・・赤の波動っと。親父ぃっ!暴れるからちょいと軍を下げてくれっ!」
何となく事情を読み取り、目隠し用に魔法で作った炎の壁に干渉して戦闘場所を広げて、更に自軍を下げてくれました。しかもイリス達にも気を使ってくれたのでしょう、何やら防護用の魔法を展開してくれていました。
「あら、ありがとうフレッド。一応レイラ達には防御用に色々渡してましたけど、貴方の力だと破られてしまうかも知れませんでしたからね。助かりますわ」
「っは!それに気ぃ取られて力が出せませんって言われてもあれだからな!」
私はフレッドに礼を言い、イリス達から離れる方向へと歩き始めます。
するとフレッドも空気を読みついて来てくれたので、戦闘に巻き込まない程度まで離れた所で私達は立ち止まりました。
そうなるといよいよ・・・
「さて・・・戦闘を始めるつもりなんですけれど・・・」
「おう」
「5対1でも構いませんわよね?」
「ああ。構わねぇぜ?」
「流石魔王様ですわね。器が大きいですこと」
「がはは!まぁな!・・・ふぅ、んじゃ・・・」
「・・・ええ!行きますわよ貴女達!」
「「「はい!」」」
「かかってこいやぁっ!!」
世界の分岐点とも言える、魔王との戦闘が・・・始まりました。
・
・
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といっても、最初は静かなモノでした。
『・・・キン!ガンガン!・・・カーン!キンキンキンキン!』
戦場には爆音も閃光も巻き起こる事無く、唯々金属が鳴り響く音しか聞こえなかったのです。
「・・・とぉっ!うぉっ!やべえなおいっ!?」
「5人分の攻撃をいなしてるあなたがっ!言う事っ!かしらねっ!」
それは初戦が魔法無し、更にウェポンスキルも使わない物理戦闘で始まったからです。
「はぁぁぁっ!」
私は戦斧を振り回して最前衛で攻撃・・・
「「やぁぁぁっ!」」
それに続く形で、マルシアが剣で、サマンサが槍で攻撃し・・・
「・・・やっ!・・・そこです~・・・!」
「ふっ!はっ!」
後ろからはシーラとノワールが弓で援護と、激しくフレッドを責め立てていました。
「ほっ!よっと!うらぁっ!」
しかしフレッドは両手に付けた手甲でそれらをいなす、または防御し、私達の怒涛の攻めを全て捌いていきます。更に私達の攻撃に隙があろうものならそこを狙い攻撃もして来るので、私達も全く気を抜く事が出来ませんでした。
しかも・・・
「ハッハァーッ!段々慣れて来たぜぇ!?おいっ!」
フレッドは時間が経つにつれ私達の攻撃を見切り出したのか、少し余裕が出てきた様でした。
こうなると、続けてもこっちの状況が悪くなるばかりなので、私は唯の物理攻撃を止めて次の攻撃に移ります。
「っく・・・ウェポンスキルもいきますわよ!」
「「「はい!」」」
「おうおう!どんどん使ってこい!ま、こっちも使わせてもらうがな!」
慣れて来たのなら慣れさせないまでとばかりに、私達はウェポンスキルを混ぜ込みながら攻撃を繰りだし・・・
「流水撃!」
「流水切り!」
「雨垂れ穿ち!」
「・・・水の鎖!」
「闇の煙幕!」
ついでに魔法もぶち込んでやります。
「うぉ!?クソッ!魔法も使ってくんのかよ!」
「オーッホッホッホッホ!ちゃんと『ウェポンスキルも』使うといったでしょう?」
「紛らわしい・・・っつぅか、ワザとだろっ!赤の波動!」
それに面食らい、水魔法の拘束と闇魔法で目つぶしを食らったフレッドでしたが・・・流石と言うべきか、直ぐに立て直しそれらを解除してしまいます。
ですが折角見つけた隙なので、ここぞとばかりに私達は追撃を仕掛けます。
「流水撃!からの振り上げ!もう一発流水撃っ!」
「流水切り!水面切り!」
「くらいや!麻痺針!からの・・・・・」
フレッドに効果があるであろう水系のウェポンスキルから行動阻害系魔法、遠距離攻撃などでパターンを一定にしない様、怒涛の連撃を繰り出します。
すると1人に対し5人で仕掛けているだけはあって、フレッドは防戦一方になってしまいました。そうなると私達のフィーバータイムです。
「オーッホッホッホ!降参してもよろしくってよっ!寧ろ降参しなさい!」
私は攻撃を続けながら一応フレッドへ降伏勧告を行います。
しかしそれは本当に一応で、しないとは解って言っていました。
「っは・・・」
その証拠に・・・
「何言ってんだ?漸く面白くなってきたところだろ?なあ!?」
フレッドは防戦一方になっていたにもかかわらず、笑っていました。
「ハーッハァッ!赤の波動!並列機動!」
そしてその笑みが楽しそうなモノから獰猛そうなモノへと変わったかと思うと・・・なんと魔法を重ねがけしました。
私はそれを認識しこんな事を考えてしまいます。『魔法の重ねがけ?そんなの意味ないですわよね?』と。
しかしそれは間違いだった様で・・・
「よっと。捕まえたぜ?」
「「「はぁ!?」」」
5人から攻撃を受け、それを何とか捌いていたはずのフレッドだったのですが、彼はなんとマルシアとサマンサの武器を素手で、私の武器を足で受け止めていました。更にシーラとノワールの遠距離攻撃に関しては、そのまま生身で受け止めていたのです。
しかもフレッドはそんな事をしていたのにも関わらず・・・無傷でした。
(い・・・いくらなんでもそんな!?これがさっきの重ねがけの効果なんですの!?)
フレッドは魔王というだけはあり、常人よりは耐久力はある方でしょう。
しかしいくら何でも刃物や魔法がもろにぶつかって傷一つないのはおかしすぎます。つまりこれが魔法の重ねがけによる効果なのでしょう。
「いくぜ?」
「・・・っ!」
・・・と、色々考えてしまっていましたがそんな場合ではありませんでした。なんせ攻撃を受け止められたと言う事は怒涛の連撃が止まってしまったと言う事。つまり隙ができたということです。
「おらよっと!」
フレッドはその隙を使い、マルシアとサマンサには両手で掴んだ武器をそのまま振り回す行動を、私へは蹴りをお見舞いしてきました。
「「「っきゃぁぁっ!」」」
結果マルシアとサマンサは武器を手放してしまいそのまま吹き飛ぶ事になり、私も蹴られた衝撃で吹き飛んでしまいます。
「おぅ・・・らっ!」
「「・・・っ!」」
更に遠くにいたシーラとノワールに対しては、手元に残っていたマルシアの剣とサマンサの槍を投げつけます。
しかしそれはかなり雑な投げ方だったらしく、2人は避ける事が出来ていました。・・・まぁかなりの剛速球だったので、相当の脅威は感じたでしょうが。
「ふぅぅ・・・」
そこまで終えたフレッドは漸く一息つけたと感じたのか、大きく息を吐いていました。
それはかなり隙だらけの様に見え、再び攻めるのには絶好のチャンスタイムなのですが・・・
「「・・・」」
「・・・っぐ」
マルシアとサマンサは吹き飛ばされて気絶しているのか倒れたまま、私は気絶はしなかったものの同じく吹き飛ばされて倒れていました。
シーラとノワールについてはダメージはないものの、投げられた武器を避ける時に弓を破損してしまったらしく、代わりの武器を用意していて直ぐに攻撃に移る事が出来ませんでした。
「っし、ん?2人脱落か?」
そうしている内に呼吸が整ったのか、フレッドが周りを見渡しそう呟きました。
そして私達に追撃を掛けようとし歩き出したのですが・・・
(ま・・・まずい・・・こっちに・・・)
フレッドは未だのろのろと立ち上がっている私に狙いを定めたのか、こちらへと向かっていました。
(ぐぅ・・・早く・・・早く回復してくださいまし・・・)
吹き飛ばされて直ぐに回復薬を飲み、更に魔法で治療も始めてはいましたが攻撃が美味い具合に入りすぎていたのか、未だ十全に動けるほどには回復していませんでした。
なので何とか時間を稼ごうとするのですが・・・
「あ・・・」
「ま、昔からの知り合い、その好だ。命まではとらねぇ。だから寝てな」
気付いた時にはフレッドは目の前で・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「ななな・・・なんじゃそりゃぁー」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 1なんじゃそりゃポイントをあげますわ。
マシェリーの一口メモ
【初見のウェポンスキルが一杯出てきましたけれど・・・暫くの間はこんな感じですわよっ!因みに効果は字面から何となく判断してくださいまし^^】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




