第213話 赤の魔王戦≪イリス視点≫
≪イリス視点≫
マシェリーさんが予めしていた采配が良かったのか、開戦の準備は瞬く間に終わり、私達は2時間もすると町を出ていました。
「接敵予想は大体この辺りになります殿下」
「うむ」
数千規模の部隊が行軍する中、私達は部隊の中央辺りで全体指揮に任命された『サッハ』という騎士の人と共に進みます。
これに『殿下が戦闘の指揮を執るのでは?』と思う方も居るでしょうが、殿下は今回相手方の魔王に対する戦力としての役割があるので、非戦闘時の采配はすれども戦闘時にはその役目を他に譲る事になっているのです。
「隊に問題は無さそうかサッハ?」
「・・・後方からクレームがある以外は」
「・・・そうか」
因みに、指揮権をくれと言っていたマシェリーさんがそれを聞いて『全体の指揮を殿下がとると言うから譲ったのに、戦闘の指揮はとりませんの!?じゃあ私が・・・』と言って来たのですが、殿下がマシェリーさんに任せるのは何か良くない気がすると言い、彼女は補給部隊に回される事となりました。そして恐らくそれが不満だったのでしょう、度々いちゃもんを付けて来ていました。
その様に度々来るクレームを無視しながら行軍し、半日経った頃・・・
「全体止まれ!予定通りここに陣を張る!」
サッハさんからその様な号令が飛びました。
これは向こうも行軍をしてくることを見越し、地形的に優れたこの場所で陣を張り相手を待つという作戦なのだそうです。
「皆、準備をしよう」
「殿下、それに皆さま、お手伝いいたしましょうか?」
「いや、大丈夫だ。なぁ皆?」
私達も殿下に声を掛けられたので野営の準備を始めたのですが、その際周りの人に気を使われたのか声を掛けられます。
しかし私達も野営には慣れているのでそれを断り、サクサクと準備を進めます。
「・・・殿下」
「む?どうした?・・・はぁ・・・いい、好きにさせてやってくれ・・・」
そうして野営の準備をしていた時、サッハさんがスススと近づいて来て殿下に何やら報告をしていました。サッハさんが離れた後聞くと、どうもマシェリーさんが『こんな泥臭い者達と一緒に何か寝られませんわ!私達は少し離れてテントを張ります!』と言っていたそうです。
(今回は暴れていますね・・・またプンプン期なのかな?)
これを聞いて私はそんな風に考えました。あ、プンプン期と言うのは、マシェリーさんが偶におかしくなった時の事を私はこう言っているんです。
『周期もバラバラだからあの日とも違うんだろうけど・・・』なんて思いつつテントを張り終わると、簡単に食事をとり直ぐに床へと着きます。
「お休み~イス」
「うん。お休みリア」
サークルのキャンプだとここで雑談でも少しする所ですが、今回はそういう雰囲気でもないので雑談もせずに目を閉じ眠る事にします。
が、時間も早い、更に明日は対人戦も待っていると来ると、そうそう寝れる訳も・・・
(対人かぁ・・・一応サークルの活動とかでも盗賊退治はしたことあるけど・・・うぅ~ん・・・あぁ・・・そうd・・・これが終わったら・・・あの人にも・・・zzz)
無い事も無い様で、何時の間にか私は夢の中へと落ちていました。
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『プォ~~~~~~』
翌日、リアや殿下から『神経が図太いな』等と言われつつ朝の用意をしていると、陣内に警笛が響きました。
「これって・・・殿下!」
「ああ!出るぞ!」
「あわ・・・あわわわ・・・ちょっと待って下さいよイス!殿下!ペイルさん達もぉ~」
警笛にもいろんな種類があると事前に教わっていましたが、聞こえて来たのは最も覚えておかなくてはならないと言われた『敵が近い!』という音だったので、私達は急いで武器を引っ掴み、陣の前方へと移動します。
すると前方に移動するにつれ、『ドッドッ』という地響きのような音が微かに聞こえ始めました。
(・・・ふぅ~・・・)
そうなってくると図太いと言われた私の心臓も鼓動を大きくし始めたので、深呼吸をして軽く息を整えながら動きます。
『プォ~プゥ~プォ~プゥ~』
そうして心の内を整えながらも持ち場へと着くと、再び警笛が響きました。確かこれは『口上開始!』だった筈です。
「我々は王国軍、および周辺領軍である!貴殿らは・・・・」
口上と言うのは、戦争前の大義名分やら何やらを言い合う事なのだそうです。正直これには、『え?悠長にそんなことするんですか?』と思ったのですが、何やら戦争にも作法があるそうです。・・・不思議ですね?
『プォッププゥ~プォッププゥ~』
そんな不思議な作法を見守っているとどうやら終わった様で、再び警笛が響きます。
これを聞き、私は緊張を解す様にフゥと一息だけ吐きます。
それは何故かって?それは勿論・・・
先程の警笛が『戦闘開始!』の合図だからです!
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「第3盾隊限界です!」「次を投入しろ!遠距離隊は!?」「矢は残り半分!魔法は第4まで終了!」
戦闘が始まり暫く経ち、戦場には血、矢、魔法、怒号と、様々な物が飛び交っていました。
そんな中、私達は未だ初期位置から大して動かず戦況を見続けていました。
それというのも、私達が振り分けられた役割は歩兵隊といい、遠距離攻撃が終わった後に登場する部隊だからです。後・・・
「第4盾隊壊滅!」「直ぐに第5盾隊を入れろ!」「それが第5盾隊も第4盾隊壊滅の余波を食らい、壊滅寸前です!」「なにぃ!?何が起こったんだ!?大規模魔法か!?」「いえ!魔王!魔王です!」「で・・・出たかっ!」
後はそう・・・相手側の魔王が出た際、カウンターとしてこちらも出る為でもありました。
「・・・いよいよか。こちらも魔王が出る!他を少し下げろ!行くぞ皆!」
「「「はい!」」」
なので私達は赤の魔王が出たと言う知らせを聞き、殿下に続いて飛び出します。
そして最前線へと上がると・・・
「ん?おぉ!来たか緑の!」
直ぐに赤の魔王と相まみえる事となりました。
「ええ・・・お久しぶりです赤の魔王様」
「久しぶりか?ちっと前にも会ったじゃねぇか」
「言葉の綾という奴です」
「ガハハハハ!そうかそうか!しっかしまだペーペーだと思ってたオメェが来んのか。戦力不足も極まれりだなぁおい」
「ええ。大変お恥ずかしいながら・・・・」
しかし直ぐに戦闘は始まらず、悠長に2人の魔王は話をし始めました。
その会話のテンションも今から戦うという間柄のモノでなく、まるで遊びに来た叔父とその甥みたいな感じです。
私は『もしかしたらこのまま話し合いで何とかなったり?』と思ってしまいましたが、やはりそうもいかない様で・・・
「じゃあ、そろそろやっか!」
「・・・はい」
ひとしきり話して満足したのでしょう、赤の魔王が話を打ち切り戦闘開始を宣言しました。
そしてそこからは・・・怒涛の展開となりました。
「緑の硬樹!」
「赤の牡丹」
お喋りしていた間にも双方準備していたとみられる魔法から始まり・・・
「緑の波動!」
「赤の波動」
『波動』という色によって違う効果が出る魔法での近接戦・・・
「緑の食肉花!」
「赤の菊」
そしてまた魔法合戦と、激しくぶつかり合いが続きます。
「やぁ!」
「魔力弾!」
「雷の槍!」
「土の壁!」
勿論私達も見ているだけでなく攻撃に加わりますが、それは殿下の魔法と同じくするりと受け流されたり、軽く防御されたりしてしまいます。
ですが即壊滅した盾隊と違いある程度は戦えていたので、このまま粘り続け隙を見つければ何とかイケると思っていたのですが・・・
「緑の茨!」
「流水切り!」
「流れ矢!」
「赤の波動っと・・・うし、そろそろギア上げてくぜ?」
「「「え?」」」
それは私達の勘違いで、現実は赤の魔王が放った強力な魔法一発で・・・
「赤の星爆」
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【プンプン期・・・後でイリスはしめておきますわね?】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




