第210話 戦いへ≪イリス視点≫
≪イリス視点≫
暑く茹る様な気温が落ち着き過ごしやすい時期に変わって来た王都では、最近噂になっている事がありました。
それは『近く内乱が起こる』と言う様な噂です。
これは噂と言うだけあり、人によっては『飢饉が起こりつつある』や『ダンジョンから魔物が出て来て町が襲われた』、『火山の噴火が起きる』等、意見は様々でした。が、何かしらあるという事は本当なのか、皆何かが起こった、若しくは近々起こるだろうという事を噂していました。
「本当に何かあるのかな?」
「かもしれないですよ?イスも前みたいな感じに変わったし、世間でも変わった事があるのかも?」
「もうリア!」
「あはは!」
そんな中、私はリアと変わらぬ日常を過ごしていました。・・・まぁ、私の服装や振る舞い等は少し変わりましたが、これくらいは誤差の様なモノでしょう。
「でも殿下達遅いですねイス。すぐ来るって言ってましたよね?」
「うん。用事があるとは言ってたけど、それが終わったらすぐ行くって言ってたね」
そして変わらぬ日常と言っていたように、放課後には次のサークル活動の予定を立てる為サークルの部室でグループのリーダーであるグウェル殿下、そしてそのお付きの皆を待っていました。
私は彼らが来たら何時も通り、『次は何処へ行こうか』『何時行こうか』『用意するモノは』と、これまたいつも通りの会話が待っていると、そう思っていました。
・・・いたのですが
「居たかイリス、イリアス」
「あ、グウェル殿下」
「今日は遅かったですねー」
「ああ、少し緊急の事態でな」
グウェル殿下の口からはでたのは何時も通りのそういう言葉ではなく、人生を揺るがす様な言葉でした。
「緊急って?そんなに不味い事が起こったの?」
「ああ。君達には話しても・・・いや、話した方がいいだろう。実はな・・・内乱が起きた。しかも起こしたのは『赤の魔王』がいるブラッド領だ」
「「えぇっ!?」」
「これに対し、同じ魔王でもある僕が対処に当たることになったんだが・・・君達にも手を貸してほしい」
「「えぇぇぇえええっ!?!?」」
前半の『内乱が起きた』と言うだけでも驚いたのですが、なんとグウェル殿下の口からは戦争に力を貸してくれという言葉が出て来たのです。
確かに今までもサークル活動で戦いは経験した事がありますが、それはあくまで『対モンスター』という森での狩りの延長みたいなものなので、『対人戦闘をしてくれ』というのは、これまで平平凡凡な平民生活を送って来た私には、正しく人生を一変させる様な頼み事でした。
「えっと・・・あの・・・ん~・・・」
ですので私は直ぐに返事をする事が出来ずにいたのですが・・・
「・・・イス、手伝おうよ!」
「え?」
そんな私の心は、リアの言葉により変化する事となりました。
「グウェル殿下の頼みだし、何より赤の魔王様が内乱を起こすなんて不思議じゃないですか?きっと何かあるんですよ!」
「あ~・・・うん。確かにそうかも・・・」
「赤の魔王様は知らない仲でもないし、何かあるなら止めなくちゃ!そして何があったか聞いて治めるんですよ!」
リアの言葉に私は納得します。確かにいう事は最もなのです。
しかし少しだけ気になる事もあり、私はそれを口にします。
「でも、もう内乱は起こっちゃってるのに、今更収めても王様とかは納得しないんじゃ・・・?」
「そこは大丈夫ですよ!ね?殿下?」
「あ・・・ああ。まぁ相手は魔王だからな。少し酷い事を言うが、国的には魔王という戦力が自国にいるというのはとてつもない恩恵だ。だから市勢に損害がかなり出ようとも、相手が矛を収め元の鞘に収まってくれるならば国は許すだろうな。まぁ何かしらのペナルティは科すだろうが」
「成程・・・」
「だからね?イス、手伝おうよ!」
「ん~・・・うん。まぁ私達で力になるなら・・・」
「ありがたい。イリス、イリアス。ありがとう」
ですがその気になる事もグウェル殿下の言葉により解決し、更にリアがかなり乗り気みたいなので、私は結局この戦いに加わる事となりました。
「よし、それなら場所を王城の対策室へ移そう。ああ、サミュエル、教諭へと伝言を頼む。暫くサークル活動は停止だと」
「はい」
「では行こう!」
そして、そうと決まれば善は急げと言わんばかりに、私達は一同揃い王城へと向かう事となりました。
王城へと着くと、グウェル殿下が言っていた通りに今回の内乱の対策室本部へと移動し、そこで話しに加わる事となりました。・・・といっても、基本私達はグウェル殿下のおまけなので話を聞いているだけでしたが。
ですが、それでよかったのかもしれません。
何せ対策室に居るのは立派な役職についた貴族の人ばかりなので、未だ学園生である私達が口を出すのは憚られたからです。
「あ~・・・いえ。我が騎士団は王都の守備があるので・・・」
「クロスブレー卿が居る第1騎士団が居るではないか!卿を派遣したまえよ!」
「クロスブレー卿は騎士団全体、そして王族守護の指揮をとらねばならぬ!だから無理なのだ!と、卿も申しておった!」
「ええい!では周辺の領から兵を・・・」
「いやそれは・・・・」
まぁどの人も『自分達は無理だ』とばかり言って話が一向に進まなかったので、口を挿みたくはなりましたが。
そんな中業を煮やしたのでしょう、グウェル殿下の一喝が場に響きました。
「もういい!それに騎士団の代理!」
「はっ・・・はい!」
「半分は出せ!周辺の4領からは戦力の4分の1だ!いいな!?」
このグウェル殿下の言葉により、瞬く間に戦力が決まり、次いで物資をどうするか、戦略は等々が決まっていきます。
ですがそれはスムーズに決まっていった訳ではなく、やれ『無理だ』、やれ『いやそれは・・・』等の消極的な意見により遅々とした進みでした。
なので・・・
・
・
・
「1週間かぁ・・・」
全てが決まり出兵開始となったのは、知らせを知ってから1週間後となっていました。
「ああ。お陰で大分相手側が動いてしまった。まぁゲートのみは僕が王族の権限を使って強制的に閉じたから、何とか1夜で『王城にて決戦!』とはならなかったので良かったがな。・・・はぁ」
「貴族様が集まると、あんな感じなんですね」
「言ってくれるなイリス。僕も駄目だとは解っているんだ」
こののんびりとした戦争準備の事を何気なくぼやいてしまうと、グウェル殿下が頭を抱えてため息を吐いてしまいました。やはりあれは酷い物だったんですね。
さりとて私はそれに何も言う事が出来なかったので、何か違う話題は無いかと探していると・・・
「あ・・・あはは・・・。あ、町が見えてきましたよ!あそこを拠点とするんですよね!?」
王都から出発した私達が目指していた町が見えてきたので、それを口に出しました。
すると話題反らしは上手く決まったのか、グウェル殿下はその事を話し始めます。
「ああ。あの町の先はもう墜ちているらしいからな。何としてもここで止めなければ」
「周辺領の人達ともあそこで合流でしたよね?」
「ああ。先に到着して、予め色々やってくれている筈だ。住民の避難然り、要塞化然りな」
グウェル殿下はそう話しながら、『本当に進んでいるのだろうか?』と不安な顔をしていましたが、町へ近づくにつれ安心した顔へと変わっていきました。
というのも、段々見えてきた町の外壁等が、見るからに堅牢なモノだったからです。
「凄いですね。傭兵を雇ったんでしたっけ?」
「ああ。余りにも貴族達が兵を出し渋るから代わりに金を出させ、それで雇ったんだが・・・正解だったな」
更に到着して町の中へ入ると、住民の避難は完了していたのか一般人の姿は見えず、代わりに兵、若しくは戦争の特需を狙って訪れている商人の姿しか見えませんでした。しかも兵はかなり統制がとれているのか、お決まりである諍い等も起こしていないようです。
「心配していたが、これならば・・・。よし、本部へと向かおう」
私達は先に到着していた者の中によっぽど有能な将が居るのだと思い、少し安心した顔で本部となっている建物へと向かいました。
するとそこには・・・
「あら!遅い御着きですのね殿下!それにお付きの皆様も!あまりにも遅いから、私が色々して置いて差し上げましたわよ!オーッホッホッホッホ!」
何故か良く知った人物が、椅子にふんぞり返っていました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「コレだから腐れ貴族は・・・」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
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マシェリーの一口メモ
【殿下が近くにいるとは言えイリスは一般人。なので戦争の事はギリギリまで知らなかったんですのよ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




