第209話 戦いの序章
待ちわびていたけれど来なければいいと思っていた報告がついに来た様で、私はジェーンにどの様な動きがあったのかを尋ねます。
「何処の誰かは解らないけれど、その謎の人物が赤の魔王に接触したの。それから赤の魔王周辺が兵や物資を集める動きをしている・・・って感じかしら。赤の魔王に接触した人物については未だ調査中よ」
「・・・他の魔王達についてはどうですの?」
「他の魔王については、特に動きはみられてないわ」
「そう・・・」
ジェーンから報告を聞くと、それは確かに戦いの兆しと見て良いモノでした。が、どうもそれは本来の流れとはまた少し違う様にも見えます。
(本来ならば愚か者が魔王の権威を削ぐためにちょっかいを出し、それに切れたフレッドが・・・って感じですけれど、どうも接触して来たのはその愚か者関係の者ではない様ですわね)
ジェーンの話からするに、謎の人物は彼女らの情報網でも調べるのが難しい者というので、愚か者こと現国王関係の者ではないのでしょう。なんせ彼らは情報統制とかもゆるゆるなので、簡単に調べがつきますから。
ですので、これはもう直接言って聞くしかないかもしれません。
「元から蝙蝠をするつもりでしたしね・・・ジェーン、報告は確かに受け取りましたわ」
「はい。情報収集はこのまま続行しますか?」
「ええ、私がもういいと言うまでは続けて」
「解りました」
「では帰りますわ。行きますわよ貴女達」
善は急げとばかりに、私は今からフレッドの元へと向かう事にします。というか、急いで動かないと話が進み、フレッドが居る町周辺のゲートが閉じられる可能性があるので即動かねばならないのです。
幸いにも時刻は未だ昼頃と活動するには全然支障がない時間だったので、私達は情報屋から出るなりゲートを使いフレッドが居る町『カナス』へと移動しました。
「以前に言った筈ですけれど、私達は両陣営につきます。と言っても基本はフレッドの逆に着くので、彼にするのは物資の支援や支障のない情報の漏洩くらいとなりますわ。情報のアレコレは後々私が何処まで漏洩させるか決めるとして、今日は物資関連をちらつかせて取り入りますわよ」
「ってことはウチの出番やな?」
「ええ。交渉は任せますわね」
カナスへと着くとフレッドの住む屋敷へと向かうのですが、それまでにマルシア達へ情報共有をしやるべき事等を決めていきます。
そうしている内に馬車がフレッドの住む屋敷へと到着したので、屋敷の門番へと彼へと面会を申し出ました。
「少しお待ちください。確認してまいります」
名前を告げるとフレッドの知り合いだという事に気付いた様で、即『お帰り願おう!』とは言われませんでしたが、即『どうぞ』と招かれる事もありませんでした。これはジェーンの情報通り、戦いの兆しがあるからなのでしょう。
そうして暫く待たされたのですが、『お待たせしました。ご案内します』と無事に中に通される事となり、私達はフレッドが待つ屋敷へと案内されます。
「お連れいたしました」
「おう、入ってくれや」
「御機嫌ようフレッド。突然の訪問なのに、迎えて頂きありがたく存じますわ」
「こっちこそ待たせて済まねえな!ちょいと親父らと話してたもんでよ!っと、つも通りの感じで良いぜマシェリー。だから、ま、気楽に座んな。おーい、何か飲み物たのむわー!」
フレッドが居る屋敷はブラッド家の敷地にあるので、どうやら直前まで近くの屋敷にいるブラッド家の当主らと会議でもしていた様です。
これはやはり情報に間違いはないとみて、私は少々の雑談をした後、直球で戦いの準備をしているのかと尋ねてみました。
「ん?情報はえぇなおい!?」
「という事は・・・?」
「まぁ・・・正解だわな。あ、でもなるべくなら未だ黙っといてくれや。な?」
回りくどい事が嫌いなフレッドにはそれが良かったのか、彼は直ぐにそれを認め、大して怒りもせずに私達にお願いをしてきました。
もしかしたら少し険悪な感じになるかも知れないと身構えても居たので、私は体の力を抜くと同時、そのお願いを受理します。
「勿論ですわ。何故ならね、私達が今日尋ねたのは貴方達に助力する為ですもの」
「お?助力だ?」
「ええ」
そして同時に、私達が訪ねてきた理由を話します。
するとそれは聞いたフレッドは、直ぐにブラッド家の物資を担当している者を呼びよせ『難しい話はこっちにたのむわ!』と話を丸投げする体勢に入りました。
しかしそれは私も一緒だったので、サマンサにブラッド家の物資担当者と話をするよう頼みます。
「ドン位までするんです?」
「望まれるがままに用意して構いませんわ」
「了解や」
そうしてフレッドと私の両者共に担当へと話を丸投げしたので、私達は別の話をする事にします。
といっても、特にこれ以上は未だ話す事もないので、雑談をするだけですが。
「オホホホホ。パンはその様に食べるモノじゃありませんのよフレッド」
「っへ、まどろっこしくてよ」
「豪快すぎますわよ。あぁ、豪快と言えば・・・」
「ん?」
ですが本当に雑談するだけではありません。しっかりと情報収集もしていきます。
その中で一番気になるのは、勿論の事『何故戦いをすると言う決断に至ったか』です。
「戦いを吹っかけるとは豪快すぎません事?なにかありましたの?」
なのでド直球で聞いてみたのですが、果たして答えは・・・
「・・・」
「フレッド?」
「なにか・・・なにか・・・あったか?ある、いやあった」
「え?」
「世界が・・・圧政が・・・炎が・・・血・・・闘争・・・」
ドキドキして待っていると、フレッドの目が少し遠くを見るようなものに変わり、その口からは別の意味でドキドキするような答えが出てきました。
「ちょ・・・ちょっとフレッド!どうしましたの!?ねぇ!?」
急に電波を受信するのはいいのですが・・・いや、良くないですが、このままにしておくと確実に何か不味いことになりそうだったので、私は身を乗り出しフレッドの頬をペシペシと叩いて呼びかけます。
するとそれが良かったのでしょう、少しボンヤリしていたフレッドの目がしっかりとしてきます。
「ん?どうしたんだ?茶のおかわりか?」
「・・・ええ。美味しくて飲みすぎてしまいましたの。お願いできるかしら?」
そして言動も何時もの感じに戻ったので、取りあえず一安心します。
この間幸いと言っていいのか、私達以外にはフレッドに注目している者は居なかった様なのでこれ以上話を蒸し返さなければ問題は無いでしょう。
なので私はそこ以降は当たり障りのない話題ばかりを話す事にしました。
(先ほどのは一体?精神魔法による洗脳?でも魔王のフレッドに対してそんな事が?)
しかし頭の中では先程の事が気になり、ずっとその事ばかり考えていました。
以降も私は悶々としたままフレッドやマルシア、シーラと雑談を続けます。
それはサマンサとブラッド家の者の交渉が終わるまで続き、お暇する頃には私の頭はオーバーヒート気味になっていました。
「あんがとな。また何か話しあるかもしれねぇから、そん時は・・・まぁ、どうにかしてしらせるわ」
「エエ、ソレデハゴキゲンヨウフレッド」
「お・・・おぅ。・・・大丈夫か?」
「モンダイアリマセンワ」
なので帰り際に心配されてしまいましたが、何でもないと誤魔化すとさっさとお暇させてもらいました。
こうして少し謎を残したまま戦いの序章は幕を開け、気が付くとあっという間に時間は過ぎ・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【離れた場所を繋ぐ便利なゲートですが、争いの時にそのままにしておくと敵に攻め込まれ放題になってしまいます。なのでそういう時は昨日を一時停止し、移動が出来ない様にしますのよ】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




