表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
200/255

第199話 主人公達を鍛える

 煽り令嬢・・・もとい、ネチネチと嫌味を言う悪役令嬢ムーブを開始して4日が経ちましたが・・・


「はぁ~・・・イリスは兎も角、殿下・・・貴方は・・・いえ、何でもありませんわ・・・はぁ~・・・」


 それは絶賛継続中でした。

 しかもです、これが1日2日くらいならばグウェル殿下も冒険者サークルのメンバーですので何ともないのでしょうが、4日もカチカチの地面で寝て、ヌルイお湯で身を清めるという彼にとっては過酷な生活をしているので・・・


「・・・」


 ストレスが溜まりに溜まり、普段ならば『そうか』とか『すまない、だが・・・』とか何かしら言うはずの彼は、私の煽りに無言で応える様になっていました。

 しかしそれは私の狙い通りの結果でもあるので容赦はせず、再度クソでかため息を吐いておきます。


「はぁ~~~~・・・。で、イリス、そうイリス!貴女ですわよ!貴女!いい加減モンスターのパターンも覚えたでしょうに、何であんなに手古摺るんですの!?」


 そしてクソでかため息ついでにイリスへもネチネチ攻撃を開始するのですが・・・


「ごめんね、解ってはいるんだけど、どうしても体が付いて行かなくて」


「それは貴方の図体がデカくなってばかりで鍛錬をサボっているから動けないんでしょう!?もう本当に!コレだから平民は!」


「本当にごめんね?これからは勉学で頭だけでなく、運動して体も鍛えるよ。だからこの後も鍛錬の付き合い、お願いします」


「ふんっ・・・まぁちょっとは根性があるみたいですわね。いいでしょう!後でみっちりと付き合ってあげますわよ!」


 平民魂とでもいうのでしょうか、彼女は心身共に打たれ強いらしく割と平気そうでした。・・・まぁ体の方は疲労が凄く、フラフラはしているのですが。


 と、この様な感じで2人へと厳しく当たり続けて心身共に負荷を与えているのですが、結果は何とも言えない感じでした。

 心の方はグウェル殿下はヤサグレ始めたモノのイリスの方はピンピンしていますし、体の方は2人共成長具合が微妙な感じなのです。主人公と魔王ですので、もう少し劇的に成長してもいいと思うのですが・・・


(けれど未だ4日目、いくら主役の2人だからといって、現実でそこまで直ぐに結果が出ると思うのも酷な話ですか)


 しかし『ゲームではないのですから、それは酷な話だ』と前言を撤回し、『ぼちぼち頑張るしかないですわね』と考え、次の獲物を探しに行く事にします。


「馬糞らしく地面はお似合いですけれど、さっさと次へ行きますわよ?・・・あら失礼、お下品でしたわね。オホホホホ」


「・・・」


「マシェリーさん、流石に殿下にそれは失礼だよ」


「私は貴女に言っていますのよド平民さん。殿下にはそんなこと言いませんわよ。考えていてもね。さ、無駄口を叩く暇があるのなら起きて歩きなさいな。殿下もお願いしますわね?」


 そうやって2人に声を掛けて再び歩き出し、次の獲物を探していると、10分程で次の獲物を発見する事が出来ました。


「あら、良い獲物がいましたわ~」


 しかもその獲物は『ロックタートル』というモンスターで、『弱土竜』とも呼ばれる事もあるモンスターで、今の相手としてはとてもいい感じの敵です。なんせ敵は硬い、遅い、力強いの3拍子が揃った物理型モンスター、練習相手にはもってこいです。


「あれなら盾役も必要ありませんわよね?鈍間ですから、避ければいいだけですもの。・・・流石に避けれますわよね?」


 なので私は2人に自分達だけで戦うように言い、自分は後方腕組み師匠面をして2人の戦いを観戦する事にしました。・・・まぁ、やばそうなら即出て行って助けはしますが。

 しかしこの4日の仕打ちで私が助けに入るとは考えなかったのでしょう、2人は念入りに打ち合わせをし始めました。

 そしてそれが終わると、2人はロックタートルの前へと躍り出ます。


「やぁぁぁあああっ!!」


樹の鎖(ツリーチェーン)!」


 役割的にはイリスが前衛、グウェル殿下が後衛と決めた様で、先ずはオーソドックスにイリスが挑発し、その後にグウェル殿下が拘束攻撃を仕掛ける事を決めた様です。


「ふむふむ・・・まぁデカブツ相手ならばイイ手ですわね。・・・魔法の耐久力がもつなら、ですけれど」


「グォォオオオ!」


「殿下!」


「・・・やはり持たなかったか!イリス!作戦通り今度は3重だ!少し時間を稼いでくれ!」


 後方腕組み師匠面で解説を入れていると、ロックタートルは殿下の魔法の拘束を振り切りました。どうやら魔力の使い方が弱かったらしいのですが、それも想定していたのか、次は速度重視ではなく確実性を取るために少し長めの詠唱を始め、その後再び同じ拘束魔法を使いました。


「グォッ!グォォォゥゥ!?」


 そしてそんな確実に拘束する為に少し時間をかけた3重の拘束魔法は見事にかかり、ロックタートルの動きを著しく制限しました。

 となると、ここからは絶賛フィーバータイム。イリスと殿下によるフルボッコタイムの始まりですが・・・


「『スラッシュ』!『十字切り』!」


樹の鋭鎗(ツリーシャープランス)樹の破城槌ツリーブレイクハンマー!」


「・・・ふぅ~・・・やれやれですわねぇ・・・」


 2人の攻撃はロックタートルの防御力を突破出来ず、ちまちまと敵の表皮を削る事しか出来ていませんでした。

 私は再びクソでかため息を吐きましたが、ここで手を出すと意味がないのでそのまま見続けます。

 そして2,3分そのままの攻防が続いたのですが、流石に2人も駄目だと気づいたのでしょう、次の手に出ました。


「殿下っ!」


「ああ!樹の罠(ツリートラップ)!」


「グォッ!?」


 グウェル殿下は罠を仕掛ける魔法を使って落とし穴を作り、そこにロックタートルをすっぽりと嵌めてしまいました。どうやら次の手は先程までとガラっとやり方を変え、搦め手で倒す事にしたようです。


「あらあら、イイじゃありませんの」


『攻撃が通らないのなら通る方法を使うまで』、この精神嫌いじゃありません。

 なので拍手を送りたい所ですが、そろそろ殿下の拘束魔法が切れる頃ですし、ロックタートルのスペックを知っている私はフフッと笑います。


「ですけれど、甘い。行きつけのお店のクレープ位甘いですわね」


 私がそう言ったと同時位でしょうか、ロックタートルの拘束が解けたかと思うと、奴は・・・


「グ・・・グォォォッ!!」


 飛び上がりました。


「へ?」


「なっ!?」


 流石にそれは想定していなかったのでしょう。2人は驚き呆気に取られていました。

 しかし奴が着地をしたと同時に我を取り戻し、再び動き始めます。


「殿下!作戦の6番を!」


「解った!」


 そしてあれだけ入念に作戦会議をしていたからか、素早く作戦を提示し実行して見せました。


「グォォォッ!!」


「いやぁぁああっ!!」


「はぁぁっ!!」



 そんな感じで戦い続け・・・



「グォォッ!」


「まだまだぁ!」


「ふっ・・・その通りだ!行くぞイリス!」



 30分ほどが過ぎ・・・



「はぁはぁ・・・」


「ぜぇぜぇ・・・」



 2人は善戦し、そして・・・


「グォォッ!」


 ロックタートルはまだまだ健在でした。


「ふぁぁぁ・・・あ、イケませんわね。はしたないはしたない」


 そんな3者の様子を見て、私は盛大に欠伸をしてします。そして余りにも暇なので、戦いの感想を口にします。


「いい加減倒せないのかしら・・・暇で暇で眠くなってきましたわ。ねぇノワール、眠気覚ましにお茶でも飲んで良いかしら?」


「いえ、流石に戦闘中ですので御止めになった方がよろしいかと」


「そう。はぁ・・・私ならば華麗に首を落とすか、甲羅を粉砕しますのに。これだから似非冒険者は・・・。それに殿下は()()になったでしょう?それなのにあんな具合とは・・・ノワール、どう思いまして?」


「それに関しては何とも・・・」


「そう。まぁ確かに、何か思っていても言えませんわよね。オホホホホ」


 まぁ感想というか愚痴というか、2人をディスる様な内容でしたが。

 しかもです、先程の様な事は2人が戦っている間ずっと言っていたり、更には偶に2人に向かって直接野次ったりもしていました。


 で、流石に我慢の限界に来たのでしょう・・・


「あぁぁぁぁあああ!うぁぁぁあああああ!!!」


「殿下っ!?」


「あらぁ?」


 グウェル殿下がプッツンしてしまいました。


「うわぁぁあああ!クソ!クソ!僕は!僕が!うぉぉおおああああ!!」


 私の野次、それに蓄積された疲労とストレスが相まり、彼は今まで見たことがないくらいに切れていました。恐らくあれは、昔私が彼の誕生日にキモイ蟲の標本を送った時以上の切れっぷりでしょう。

 そしてそれが引き金になったのか・・・


「くぁぁあああっ!み・・・みど・・・」


 彼は・・・


「緑の寄生木(やどりぎ)ぃぃっっ!」


 魔王の魔法たる、『色を冠した魔法』を発動させました。


「グォォオオオ!?!?」


「おぉ~・・・やれば出来るじゃありませんの・・・」


 私はそれを見て感嘆の声を上げます。


「ふふ・・・これで漸く大手を振って魔王と名乗れますわねぇ・・・」


 実は魔王だけが使える『色を冠した魔法』なのですが、どうやら魔王に認定されたからといって無条件で使える様になるモノでないらしく、ある程度練習がいるのだそうです。

 そしてグウェル殿下は練習不足らしく、未だそれが使えなかったのですが、どうやら先の怒りがきっかけで使える様になったらしいのです。

 流石にそれを想定して戦わせていたわけではなかったのですが、思わぬ大収穫となりました。


「緑の食肉花っ!」


 その後もグウェル殿下は色魔法を発動させ、今までの苦戦は何だったのかというほどにあっさりとロックタートルを倒して見せました。

 しかし初めて色魔法を発動させた反動か、ロックタートルを倒した途端に倒れてしまったので、私達はそこでグウェル殿下を連れてキャンプへと引き返す事にしました。


 そしてキャンプへ戻り、彼をテントへと寝かせたところで意識を取り戻したので、先の事を伝えます。

 すると殿下は最初こそ『何?』と訝しがり、先の事を覚えていない様なそぶりを見せていましたが、私が1から丁寧にあった事を教えていると思い出して来たらしく、静かに喜んでいました。


「そう・・・か・・・僕は魔王の魔法を・・・ふふふ・・・」


「ええ。おめでとうございますわグウェル殿下」


 私も今ばかりは煽る事をせず、素直に称賛を送っておきます。



 思いがけぬ事でしたが、こうして主人公の相棒たる魔王は新たなる力を得る事が出来ました。


 しかし・・・この後私は喜ぶばかりでなく、頭を悩ませることになってしまいました。


 それは・・・



 マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「魔王覚醒イベント!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?

 ☆やイイネをぽちっと押すと 私も覚醒しますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【緑魔法は意外とえげつないんですのよ!】


 マシェリーより宣伝

【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。

最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] マシェリーさんは中々強く成ったね! それ以上の魔王とは本当に超チートかも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ