第198話 煽り令嬢、はじめました。
レベル等の能力値が存在するゲームには、大体『経験値稼ぎに美味い場所』というのが設定されています。
そしてそれは乙女ゲーですがRPG要素もたっぷりと入ったロマンスも例外では無く、この『鳴哭の谷』と言うのはロマンスにおけるレベル上げに適した場所でした。
(現実になるとこういう風になるんですのね・・・成程成程)
ゲームですと唯単に『経験値が多く入って美味かった』という場所でしたが、現実になるとどうも『存在する魔力が濃い』といった感じになっている様でした。
しかし私が眼を着けていたのはそこではなく、あくまで存在するモンスターです。なのでこの濃い魔力は『修行するのに役立てば儲けもの』程度の認識にしておきましょおう。
(魔力を使って凄いトレーニングが出来るとかだったら私達もやってみたい所ですけれどね。・・・さてと)
濃い魔力が気になってしまうところですが取りあえず意識しない事にして、私はイリス達へと向き直り未だワイワイとしている彼女らに喝を飛ばします。
「ほらほら!何時までもピーチクパーチクひよこみたいに騒いでいないでキャンプを張りなさいな!このままですと野宿か狭い馬車の中ですし詰めになって眠ることになりますわよ!」
少し魔力を込めて威圧しながら言ったからでしょう、彼女らは少しビクッとした後慌てて動き始め、持ってきたテント等を馬車から降ろし始めました。
「やれやれですわね。と、こっちも始めましょうか。ノワール」
「はい」
それを確認すると、私達も用意し始めます。
慣れた感じでテキパキとテントを建て、ついでに全員が使える様な簡易竈も組み立ててしまいます。
そうしているとイリス達もテントを張り終わったみたいなので、一度すこし離れた場所に全員を集め座らせると話を始めます。
「さて、色々聞きたい事等もあるでしょうから説明しましょう。まず着いた場所が当初の計画と違った点ですが・・・」
私は彼女らに適当に理由をでっちあげて説明していきます。といってもその理由は本当の事も多く、だからこそ彼女らは私の説明に納得してしまいました。・・・そうなればこちらのモノです。
「という事で、今日から1週間程はここで合宿となりますわ。少々ハードになるかも知れませんけど、以前言った様な生死云々は忘れてくださって結構です。流石にそこまで追い込むとシフロート先生に怒られてしまいますもの(まぁアナタ達が口に出さなければ解らないでしょうからやりますけれどね)」
口には出しませんがえげつない事を考えつつ、私は早速修行を開始する事にしました。
それで先ずする事なのですが・・・グループ分けとなります。
「効率良く合宿を進めるためグループ分けをしますわね?グウェル殿下とイリスは実力が他の方と比べて高いので、お2人は私とノワールが面倒を見ますわ。そしてその他の方はマルシア達と組んでくださいませ」
正直な所、先にある魔王戦ではイリス達のグループ中トップの2人でも厳しい戦いです。なので2人を爆速で超強化しなくてはいけないのですが、それ以外のメンバーに合わせているとイリス達のレベルアップが間に合わないのです。
その為私はイリスとグウェル殿下だけ引き抜き、彼女らだけは特別ハードに育てようという計画を建てていました。
「という訳で、早速別れましょうか。マルシア、サマンサ、シーラ、そっちは任せましたわよ?」
「「「はい」」」
グループ分けが終わったのなら、後はそれぞれのグループでそれぞれ進めて行く事にします。
私はイリスとグウェル殿下を引き連れ、少し離れた場所で再度話を始めます。
「イリスと殿下は他の方達よりまだましな実力でしたけれど、それでも物足りないのですこ~しだけハードな事をしますわね」
「あ・・・ああ」
「えっと・・・お手柔らかにお願いするねマシェリーさん」
「ええ、すこぉ~しだけハードなだけで問題はありませんわよお2人さん」
私はニヤニヤしながらそう言い、谷の奥に行くために準備をさせます。
私もこれから行われる『私的すこぉ~しだけハード』な事をするために万全の装備を整え、イリス達と待ち合わせた場所で落ち合うと早速鳴哭の谷の奥へと進んで行きました。
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「・・・」
「・・・」
「ふぅ~、ほんのちょっとだけ体が温まった感じですわねぇお2人さん?さ、ほんの少しだけ休んだら次は私と模擬戦をしましょうか」
「ご・・・ごめんマシェリーさん。今日はもう限界かも・・・」
「ああ・・・今日はもう体が動かない・・・」
そして私的には『すこぉ~しだけハード』な事・・・まぁモンスター狩りが終わったのですが、その時点でイリスとグウェル殿下はグロッキーになっていました。
ですが私はニッコリと笑いこう言います。
「あら?何を言っていますの?あれくらいのモンスターと4時間ぶっ通しで戦った位は準備運動の様なものでしょう?」
「いや・・・準備運動の域を超えていると思うんだけど・・・」
「ああ・・・ガッツリと本番だろうあれは・・・」
確かに彼女らにとっては先程の狩りは本番レベルでしょう。しかし私の考えではまだまだ足りなく、もっとガッツリ修行をせねばなりません。
なので私は彼女らを煽るためにニヤニヤしながらこう言ってやります。
「えぇ~?こんなに小さくてか弱い私がピンピンしていますのに、お2人はへばってらっしゃるの~?えぇ~?」
「ごめんね・・・?私達は可憐な君より弱くてね・・・体力の限界なんだ」
「そっ・・・そうですのねぇ~?仕方ありませんわねぇ~?なら今日はもう終わりとして差し上げますわねぇ?それじゃあ解散ですわ!オーッホッホッホ!」
思わぬカウンターを食らってしまいましたが、更に煽る様な感じの言葉を告げ解散としました。・・・と、妙に煽る様な事を言っている私ですが、これは彼女らのやる気を出させるほかにも1つ理由があったりします。
それはズバリ・・・少し彼女らと距離を取りたかったからです。
(好感度が高すぎて嫌味が効かないのかしら?不味いですわねぇ)
少し前に気付いた事ですが、私はどうもイリスやグウェル殿下との距離の取り方を間違えている様な気がするのです。
具体的に言いますと、本来ならば主人公と私は『反りの合わない陰険なライバル関係』、その様な立ち位置でなくてはならないのに、何故か今は『互いに少しだけ百合の波動漂うライバル関係』といった感じになっています。
そしてグウェル殿下に至っては『嫌悪レベルで嫌っている婚約者』でなく、『偶にぶっ飛んでいるが、まぁアリな婚約者』となっています。
(後々の為に原作レベルでなくともいいですが、もうちょっとだけ距離を置きたい所なんですのよね。まぁ既に色々変わっている事があるので不確定要素なんですけれど)
先の展開を知っているというのは、転生者あるあるの超大きいアドバンテージです。なのでゴールにたどり着くまでは、その本来の展開はなるべく壊したくない所なのですが・・・
(ま、地道に煽ったり、このブートキャンプで負荷を掛けたりすればその辛さが憎しみへと変わり、ひいては私への感情も変わって来るでしょう。だからぼちぼちとつづけましょうか)
軌道修正には少しだけ遅いかもしれませんが、やる価値が無いとは言えません。なので私はこのブートキャンプ中、ちょっと忘れていた『悪役令嬢的ムーブ』を存分に取っていこうと思っていました。
それは先の様な煽りだったり、明らか様に食事の内容に差をつけて見たりと、地味にウザい悪役ムーブです。
(ふふふ・・・この後は私達は高級食材を使った料理、イリス達には賞味期限ぎりぎりっぽい素材を使った謎料理でも出させましょうか。・・・存分に悔しがるとよろしいですわ!オーッホッホッホ!)
私はラノベに出てきそうなセッコイ悪役がとりそうな行動を頭の中で思い浮かべつつ、ニヤケながら自分のテントへと向かいました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【詳しく書きませんでしたけど、ここのモンスターは硬い、遅い、力強いとゴリゴリの物理型モンスター、それにレイス系の物理無効モンスターがいますわよ。イリス達の実力ですと『かなりギリギリの強さを持っている』といったモンスターですわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】