第194話 火竜討伐戦
見るモノに圧倒感を感じさせるような重厚さ。
その見た目にそぐわぬ防御力と重さ。
それが私の全身に纏われている鎧と武器です。
(自分で本来と違った姿にしているなんて、これこそ間違いなのかしらね・・・?)
ゲームですと簡潔に描かれてはいましたが私の装備は決してこんな物ではなく、高めな身長のナイスバディーを美しく見せるようなドレスアーマーだったり、そんな最高のスタイルを見せつけるようなぴっちりした軍服と、華やかな感じの物でした。
しかし私の今の姿は何処からどう見ても『THE 渋いベテラン冒険者』、色々暴走していたからといってこれはやはり間違いだったのかとも思う所存です。
まぁでもやってしまったモノは仕方ありませんし、これはこれで気に入っているし魔物狩りにはもってこいの装備です。なので私はあまり気にしない事にして狩りの事へと思考をシフトチェンジさせます。
「そう言えば貴女達、火竜の事を私と一緒に勉強しましたけれど、ちゃんと覚えていますわよね?」
「それは勿論です」
「強敵やからなぁ。流石に覚えとらんと死にますもん」
「・・・でも生で見たことないので不安です・・・」
「大丈夫大丈夫。ちょっと大きい鳥ってだけですわ。焼き鳥と思えば恐怖より食い気が刺激されますわよ、きっと」
私がマルシア達へと念の為火竜の事は覚えているのかと聞くと、問題なく覚えているとの事でしたが少し恐怖を覚えている様だったので、私は軽い感じで火竜の事を話し彼女らの恐怖を和らげようとします。・・・効果は微妙でしたが。
と、ここで大きな鳥こと火竜さんの事を説明しましょう。
火竜は『偽竜』、トカゲみたいな姿をしていないと言いましたが、奴の姿は簡単にいうならデカい鳥です。
そう言われると『フェニックス?』と言われる方も居るでしょうが、それとはまた違います。どう違うのかというと・・・火竜は飛ばないのです。
そうですね・・・想像しやすく言うならばあれが一番近いでしょう・・・『ダチョウ』です。
(多分元ネタは『ヒクイドリ』なんでしょうけどね)
知らない方も居るかもしれないのでダチョウといいましたが、恐らく元ネタとしてはヒクイドリというダチョウに似た鳥なんだと思います。
その証拠といっていいかは解りませんが、火竜はトサカがあり喉の辺りが真っ赤、攻撃のモーションが足での蹴りとなっていました。火を吹いて来たり羽が一部火になっていたりとモンスター風にアレンジはされてきていますが、大体の特徴がそれなので間違いはないでしょう。
そんな火竜さんだからこそ、戦う時の作戦は結構シンプルなものとなっています。
それは私が盾役として正面を受け持ち、その間にマルシアとサマンサがボーラ(投げ縄の様なモノ)を投げて足を拘束、その後に私を除く皆で遠距離攻撃というものです。
(今の私の強さに、このコツコツと仕入れて作ったアダマンタイトの装備なら耐えられる筈・・・)
私が耐えられるかという不安は少しありますが、そこは自分を信じるしかありません。
そうやって心の中で『私ならイケル。私最強』等と呟きつつ歩いていると、いよいよルウェノ火山ダンジョンの本番、火山フィールドへと足を踏み入れていました。
「・・・っと、いよいよですわね。皆、気を引き締めて行きますわよ?先ずは装備に薬を使っていきましょうか。あ、マルシア、シーラ、魔法もお願いしますわ」
なのでフィールド対策を施していき、それが終わるといざ探索のスタートとなりました。
「えっ~と確か・・・こっちですわ」
火竜は割とダンジョンの奥の方に居た記憶があるので、私はそれを思い出しつつダンジョン奥へと皆を案内します。その途中『ファイアーラット』や溶岩の中を泳ぐ『マグマフィッシュ』、燃える角を持った牛『ファイアーホーン』なんかが出てきましたが、今の私達には敵ではないのでサクッと倒しつつ先へと進みます。
「ファイアーホーンからお肉が出たのはラッキーでしたわね。確かあれ、とても美味しい筈ですのよ?」
「外に出たら料理して食事に出しましょうか?」
「ええ、よろしく」
「畏まりました」
「「「わーい」」」
「っと・・・、そろそろ火竜が出て来るポイントに入りますわ。皆なるべく静かに」
雑談等を交えて進んでいると、いよいよ火竜が出て来るポイント近くまで到達しました。私は皆へと警戒を促し、慎重に歩を進めます。
(スペック的にはイケるとは思いますけれどドラゴンは強敵、用心するに越した事はありませんものね)
そうやって用心しながら進んでいると、遠くの方から『ドスドスドス』と質量のありそうな足音が聞こえてきます。
聞いた感じ4足歩行ではなく2足歩行している様な音に聞こえるので、私は『来た!』と思いつつ戦うのに適していそうな場所を探し、皆をそちらへと誘導します。
そして準備万端にして待ち構えていると・・・
「・・・?・・・!ケェェェェエエッ!!」
「やはり火竜!」
現れたのは予想通り火竜でした。
「ケェェェッ!!ケェェェェッッ!!」
「「「っ!!」」」
生で見る火竜の迫力は凄まじく、マルシア達は火竜の嘶きに身を竦ませてしまいます。
しかし私は事前に火竜がそういう行動をとって来る事を知っていたのと、鎧や武器の重さを調整する為に全身に魔法をかけていたお陰で直ぐに動く事が出来ました。
「オ~ッホッホッホ!カラッと油で揚げて食べて差し上げますわ!こちらへお出でなさい焼き鳥さん!」
私は火竜の注意を自分へと引き付けるため意味は通じないでしょうが大きな声を出し、更にバトルアックスの石突きを地面にガンガンと打ちつけ音を響かせます。
「ケェ?ケ・・・ケェェェエエエッ!!」
すると火竜は見事に私へと視線をロックオン、突っ込んできました。
「ケェェッ!ケェェェッ!クェェェッッ!」
「ぐっ・・・はっ!やぁっ!」
火竜の攻撃はそのゾウ程の大きさもある巨体から繰り出されるだけあり、とても強力なモノでした。しかし私は予め魔法を使いブーストしていた事もあり、その攻撃を裁く事が出来ていました。
「ノワール!3人に喝を入れてあげて!」
「はい!お任せください!」
そしていつまでも攻撃を裁き続けるわけにもいかないので、ノワールに言って3人の気を現実へと引き戻させます。
「動けるようになったら事前の作戦通りに!お嬢様がお待ちでございますよ!」
「「「はい!」」」
ノワールの喝が効いたのか、直ぐに3人は動けるようになり、ノワールの指示の元事前に立てていた作戦を実行していきます。
「ボーラいきます!」
「同じくいくで!」
先ずは足止め兼火竜の最大の武器でもある足を封じるためのボーラがマルシアとサマンサから放たれます。
するとボーラは上手く火竜の足へと絡みつき、その動きを鈍らせるのですが・・・
「ケェェッ!?ケェェェッ!!」
火竜はそれに腹を立てたのでしょう、ボーラを投げた2人へとターゲットを移そうとします。
「よそ見は許しませんわよ!こっちを向きなさい!『振り下ろし!』」
ですが私がそれをやすやすと許すわけもありません。
私は動きが鈍くなり気が逸れた火竜の脳天目掛け飛び上がり、バトルアックスのウェポンスキルを発動させます。
「硬っ!!」
「グェッ!ケェェエエッ!」
すると頭のトサカにぶち当たってしまい脳天唐竹割りとはならなかったのですが、火竜のターゲットを戻すことに成功しました。
私はそのまま火竜の気を引き続けるため動きを守りから攻撃へと変更し、火竜へと攻撃を繰り出し続けます。
「『伐採撃!』『回転切り!』『振り上げ!』『振り下ろし!』『伐採撃!』・・・・・」
「ゲェェェェッッッ!グェッ!グェェェッッッ!」
ウェポンスキルでコンボ攻撃を仕掛けたのですが大分効いたのでしょう、火竜は先程までと違った感じで鳴き声を上げます。
「・・・水の千槍・・・!」
「雷の刺突槍!」
更にそれを見て『今だ!』と感じたのでしょう、皆が魔法や弓矢等で追撃を仕掛けます。
(よし・・・このままなら・・・)
「グェェェッッ・・・!ケ・・・ケ・・・ケェェェエ!」
「なっ!?」
『体力はまだまだあるでしょうが、この調子でいったのなら遠くない内に倒せる』そう思っていたのですが、どうやらそれは甘かった様で、火竜は大きく叫んだかと思うと体から炎を吹き出し始めました。
その勢いは凄まじく、一度皆の近くへと下がらねばならないほどでした。
「お姉様!大丈夫ですか!?」
「ええ。魔法やお薬の防護のお陰で何ともありませんわ」
「そりゃよかったわぁ・・・けどお姉様、あれは一体なんですの?」
「それは私にも・・・って・・・そういうことですのね」
皆の近くへと下がって様子を見ていると火竜から噴き出た炎は徐々に治まりをみせてきます。そして炎が治まると火竜が姿をみせたのですが・・・なんと、足に絡んでいた鉄製のボーラが溶けてしまっていました。
どうやら火竜はこのままだと駄目だと判断したらしく、一番問題だったボーラを外すためその様な行動に出た様でした。
しかしです・・・
「フゥゥ・・・フゥゥ・・・」
あの行動は大分体力を消耗するモノだったらしく、姿を見せた火竜は息を荒くしていました。
ですがあのままだったら確実に死んでいたであろう事から、あの行動はあながち間違いではないのだと私は考えます。・・・まぁ私としては、その行動は少しばかり遅かったのではないか?とも思いましたが。
「どうやら最後の悪あがきみたいね。皆!やりますわよ!」
「「「了解!」」」
私は相手の様子からここは攻め時だと感じ、再び攻勢へと出る事にしました。
そうなると火竜からボーラが外れていた事もあり、私達は先程よりかは怒涛の攻めを仕掛ける事は出来ませんでした。ですが敵はよっぽど体力を消耗していたのでしょう、直ぐに動きが鈍くなり再び私達にチャンスが訪れました。
「・・・っ!シーラ!ダメージを与えるより火を妨害するような魔法を!他はそれを確認次第攻撃を!」
「・・・解りました・・・!・・・水の鎖・・・そして水の牢獄・・・」
このチャンスをモノにするため、先程の事態を踏まえシーラには妨害系の魔法を使ってもらい、それらが敵にかかると・・・
「今っ!『トルネードアックス』!」
「ウチの魔法はアレやから・・・矢でもくらっときや!」
「同じく!『シャープシュート』!」
「闇の光線!」
私達は一斉に攻撃を仕掛けます。
「グェッ!グェェェッ!グゲェェェッ!!」
私達の攻撃は疲れ切り拘束もかかった火竜にするりと入っていき、やがて火竜はピクリとも動かなくなり消えてしまいました。
つまり・・・討伐完了です。
「「「・・・っ!・・・っ!」」」
私達は無言でガッツポーズを取り、その後ハイタッチを交わし勝利を喜びました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【ヒクイドリは実際に居る鳥でしてよ?気になった方はググってみてくださいまし。・・・予想以上に危険な生物でしてよ?】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】