第189話 工房とギルドへ
ひよっこ魔王『緑』vsベテラン魔王『赤』。
100人に聞いたのなら100人共が『赤の勝利』を疑わないでしょう。しかしこういう言葉もあります。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
これは前世の偉い人の言葉で『敵と味方の実情を熟知していれば、百回戦っても負けることはない』という意味です。
つまり『両方の実情を知る事が出来る私が裏で手を引けば、何とかなるのでは?』、かなりの暴論ですがこういう事なのです。
「となれば『行動は迅速に』ですわね」
秋頃に戦いがあるとは言いましたが『予定は未定』、しかも対フレッド戦に備えるなら大分大仰な準備が必要なので早速動く事にします。なので私は先程言った『グウェル殿下とフレッドって勝負になる?』について議論していた3人娘の話を切り上げさせ、学園外へと出かける準備をさせます。
「お姉様、何処へいくのですか?あ、そういえば先程言っていた事ですが、確かにどう考えてもグウェル殿下が勝つ未来が見えませんでした」
「しかもあれやしな?赤の魔王言うたら就任してから2,3年は戦いまくっとったんやろ?そりゃ経験値が違いすぎますわな」
「・・・ですです・・・それに比べてグウェル殿下はお遊び位にしか・・・」
学園外へと行く申請をし、門の外へと出た辺りでマルシア達が先程の議論についてと行先の話をしてきました。
議論については、やはり彼女達も私と同じ様な答えに辿り着いた様でしたが、そこからこれからの行先を連想する事は出来ない様でしたが、私は素直に答えを明かします。
「貴女達の答えは最もですわ。ですからそれを覆すための一工夫、即ち装備作成をしに行くんですのよ?」
私がそう言うと3人は『成程』という顔をして行先を覚ったみたいで、『どうせなら昼食を買って差し入れしては?』と提案をしてきました。
そう言われてみれば今は丁度昼時、その提案は良いかもしれません。
「そうしましょうか。あ、貴女達何か食べたいものはありまして?何かあるのならそれにしましょう?」
私はその提案に乗る事にし、彼女らが食べたいものを余分に買うと工房街へと足を運び、『ロギヌス工房』と看板が掛けられている工房へと入ります。
「お邪魔しますわね」
私達が入った入口は店舗部分の扉だったので、入ると店員が出迎えてくれます。
「いらっしゃいませー!」
彼女の名前はパメラ・・・ではなく、確かリコ。1年半位前に入った店員です。
私達は店主であるパメラに用があった為、彼女にパメラを呼んでくれる様頼みます。
「解りました!少々お待ちを!・・・パメラさーん!マシェリー様?達がお越しです~」
雇われ店員の彼女が入った辺りで私はロギヌス工房から足が遠のいていましたが、どうやら私の事は覚えていた様です。
『目立つ外見も役に立ちますね』と思い勝手に応接スペースに座って待っていると、奥からリコが店主であるパメラを伴って出てきました。
「久しぶりじゃないのマシェリー。少し見ない内にお・・・お・・・うん、相変わらず可愛いわね」
「ええ、久しぶりですわねパメラ。昼食が未だでしたら一緒にいかがかしら?」
何やら私の事を『大きくなってと言おうとしたけどあんまり変わっていなかった』と思っている様ですが・・・許しましょう。なんせ事実なのですから・・・。
とまぁネガティブな事は考えない様にし、私はパメラ、ついでにリコと一緒に昼食をとる事にしました。
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「で、久しぶりに顔を見せた訳だけど・・・何かあったの?」
食事が終わり、食後のティータイムの雑談の中、パメラが今日の本題とも言えそうな話題を出します。
私はそれに対し、近況をボカシながら話し、続いて仕事を頼みたい事を話します。
「体調が悪かった・・・ね?まぁうん、そういう事にしときましょうか?で、仕事の依頼ね?」
「ええ」
そう言えば冒険者の知り合いであるレイラもこの工房の常連なので、私の冒険者ギルドでの事は多少なりとも聞いている事を忘れていました。が、今はそれは本題ではないし私としても封印案件の過去なのでスルーです。
「火属性に耐性がある防具、木属性を高める武器、水または氷属性が付いた武器。これらを複数用意してほしいんですの」
「属性っていうと、あの技術よね?」
「ええ。単独では厳しいでしょうから、受けてくれると言うのならグロウ達を派遣しますわ」
雑談交じりから始まりましたが仕事の話に変わり、パメラの顔も職人のそれに変わったので、こちらも我がパーティーの金庫番サマンサを交えて会話を続けます。
そうして暫くすり合わせをした後、無事パメラは仕事を受けてくれる事となったのですが、問題があると言われてしまいます。
「だけど1つ問題があるわ」
「問題ですの?」
「素材がね・・・前みたいに取って来てもらわないと駄目かもしれないわ。あの時以来どの工房も属性ブームが来てるから、結構品薄なのよね」
「あぁ・・・そういうことですのね」
「お姉様はあんま気にしてへんけど、それのおかげでかなり資金たまっとるで?」
パメラやサマンサの話では、2年前のヘファイナーの品評会以降武器に属性を付加させるのが流行っているらしく、私達が開発した『属性剣』もその特許料が凄いことになっているのだとか。
「ふむふむ・・・ならレベルが低い素材は依頼をかけるか市場で買ってもいいかもしれませんわね」
「せやな。時短のためにええかもしれへん」
昔みたいにある程度は自分達で取ってくる必要がありそうですが、レベルが低く採取してきやすい物や市場に流通している者ならばお金の力を使ってもいいと考え、その方向で動く事にしました。
と決まればです・・・
「なら市場、そして冒険者ギルドに行きましょうか。あ、でもその前に、グロウ達に話を聞いてきた方が良さそうですわね」
装備を作る工房との話も終わったので、次へ行く事にしました。
少しマナーが悪いですがグイッとお茶を飲み干すと私達は立ち上がり、ロギヌス工房を後にする事にします。
「また直ぐに来ますわね」
「ええ。またねマシェリー」
パメラ、そしてリコに挨拶をし、私達は先ず双子の錬金術師と魔道具師に会いに行きます。
色々な事を把握しているノワール曰く彼女らは自宅兼工房に居ると言うので、そこへと向かいます。
「グロウ、グラァ、居ます?」
「・・・ろっ?あ、マシェリーろっ。こんにちはろっ!」
「・・・らっ?こんにちはらっ!」
「・・・ナカーマ」
「ろっ?」
「らっ?」
自宅兼工房を訪れると双子に出迎えられたのですが、私は2人を同士だと感じ握手をしておきました。・・・と、ちびっこ同盟の事は今は置いておき、私は彼女達の元を訪れた理由を説明します。
「ろっ。解ったろっ!」
「らっ!ついて行って必要なモノ言うらっ!」
説明をすると直ぐに理解してくれ、更にこの後素材を見繕うのも手伝ってくれると言ってくれました。
なので早速私達は彼女達を伴い、市場の方へと移動する事にします。
「ちょい見て来るでお姉様達はそこでお茶でも飲んどってや」
「ろっ。行って来るろっ」
「らっ。最高級の素材でいいらっね?」
「ええ。出来うる限り最高の物がほしいので」
そして市場へと着くと、我がパーティーの金庫番サマンサと双子に買い物を任せ、私達は待つ事にします。
因みに素材ですが、対フレッド戦に使う装備を作る物ですので、最上級の素材でも何ら不足ではありません。ですから私はお金に糸目をつけず、一番良さそうなモノを用意する様に頼みます。
そうして待つ事1時間程、サマンサ達がやり切った顔をして帰ってきました。
「市場によう流れそうなモンは確保完了や!」
「ろっ。後は冒険者に依頼を掛けて確保ろっ」
流通しそうな素材の確保が完了したと言うので、残りは自分達で調達、若しくは冒険者ギルドに依頼となるので、私達はそのままちょっとお茶を飲みつつ、残りの素材の何を依頼し、何を自分達で取って来るかを相談します。
そしてそれが終わると冒険者ギルドへと訪れた訳ですが・・・
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「いらっしゃいませ!冒険者ギルドへようこ・・・ぉぉおおそぉぉ・・・」
「御機嫌よう(ニッコリ」
「お・・・おい、あれって・・・」「ああ・・・『暴君』だ」「何か今日は穏やかだぞ『暴君』」「ばっ・・・逆にあれがやばいんだって」「『暴君』様・・・はぁはぁ・・・踏まれたい・・・」「姉御・・・レイラの姉御はいないの!?」「今日は・・・いないわ・・・」
冒険者ギルドへと入ると中に居た職員達と冒険者達が騒めき始めますが、まぁそれも解らなくは有りません。
何故なら・・・私が暴走していた時、色々やらかしていたからです。
「ちょっとお話があるので、会議室よろしかったかしら?(にっこり」
ですから印象を和らげるため笑顔で対応し、尚且つこの様な人前で話したままだと緊張するかなと思い会議室へと職員を誘ったのですが・・・
「ヒッェッ!!・・・お・・・お許しをぉぉ・・・」
「お・・・お待ちください!私が!私がお話を伺うのでその子は!」
「しぇ・・しぇんぱい・・・!」
「イイのよ・・・さっ・・・アナタは通常業務を行いなさい」
「ひゃ・・・ひゃいぃぃ・・・」
(・・・解せませんわ)
何故か泣かれてしまい、奥から何かを決意した様な目をしたベテラン職員が出てきました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「何をしたんだ暴君マシェリー・・・」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 暴君マシェリーが降臨しますわ。
マシェリーの一口メモ
【作者曰く、話が進まねぇ・・・難しいらぁぁぁ!とのことですわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




