第183話 送る会
罰ゲームの事が話された日から数日後の3月22日土曜日、この日は学園を卒業する先輩方を送り出す催し・・・そのまんまのネーミングですが、『卒業生を送る会』が開かれる日です。
この催しは土・日と2日続けられ、今日は在校生による思い出語りや出し物と軽いモノですが、明日などは結構なお金がかけられたパーティーが開かれたりして、どちらかと言うと明日が本命の日となっております。
(・・・まぁ私にとっては今日が本命になるんですけれど)
思わずため息を吐きそうになってしまいますが、仕方ありません。約束は約束なのできっちりと履行する事にしましょう。
それにやるべき事の諸々は解決済みですので、最後のこれさえ終わらせるとミッションコンプリートとなり、胸のつっかえが無くなり気分爽やかにこの後を過ごせます。
2年生に上がってからはまた色々とやる事がありますし、春休みはゆっくり過ごしたいんですよね・・・。
っと、そう言えば諸々がどう解決したかを軽く話していきましょう。
と言ってもです、問題があったのはボルグ工房の事くらいなのでそちらを話すとしましょう。
カリンが色々やってくれた件、その処罰を如何したのかと言いますと・・・注意と約束事を交わしただけで他は特に何もありません。
最初は犯人を見つけたなら地獄を見せてやろうと思っていたのですけれど、パメラが『私も最初からハッキリとテッショウに言っておけば良かったし悪かったところがあるわ。だからカリンを許してあげて』と言って来た事により、この様な処罰になりました。
(起こった事はどうあれ幼馴染・・・と言う事ですわね)
甘いかもしれませんが一番被害を被ったパメラがそう言うのです、私達も従うべきでしょう。ですがその分きっちりと約束事を交わしたので、それを破ったりしたら・・・。
あ、因みに約束事と言うのはそこまで難しい事ではなく、『パメラとカリン&テッショウは今までの関係のままでいる』『テッショウはパメラに変なちょっかいを出さずカリンを愛せ』『ロギヌス工房が危なくなったらボルグ工房が助力する』と、軽いモノになっています。・・・テッショウ以外は。
(ま、これで見たくもないツンデレも無くなるでしょうし良い事ですわね、ええ)
テッショウにとっては片思いだった相手を諦めることになりますが元から脈はなかった訳ですし、いい機会になったのではないでしょうか?
とまぁ、ボルグ工房関連はこんな所なのですが・・・一応ロギヌス工房の事もプチ事件というか、とある出来事が有ったので話しておきましょう。
実は前々より『属性剣が出来たら、それを後に誰でも使える様に改良してレイラにプレゼントしよう』という計画があったのですが、数日前に品評会のアレコレやボルグ工房のアレコレを話していた際それを思い出し、私達は取りあえず『ふぁいあーそーど』をレイラに送ろうかと思ったのです。
しかしそうなった時、『ふぁいあーそーど』の現物を始めてみた双子、そして現物を知っていたパメラから反対を受けました。・・・彼女ら曰く、『それはない』と。
あんまりにも強く反対するモノですから、私達は『それなら・・・』と傑作である『ふぁいあーそーど』を送る事は諦めました。ですがその代わりに作りかけだった『属性剣』を改良して渡すと言う案が出た時、そちらへと付ける予定で取り寄せた希少な宝石『ブラッドルビー』だけはつけてもらえることになりました。
(センスを先取りし過ぎるのもいけませんのね・・・周りが付いて行けなさすぎですわ!)
何時かはパメラや双子もデコ剣の凄さを理解してくれるのでしょうが、今はまだその時ではなかったようです。・・・と、これがロギヌス工房で起きた出来事、『デコ剣が理解されなくてプチショック事件』です。
・・・どうでもよかったですか?・・・そうですか。
それならば話を元に戻すとしましょう。
話は戻りまして、現在は送る会の最序盤である学園長のありがたいお言葉タイムです。
「・・・はい、では皆さん、改めておめでとうございます」
何時もなら長くなる所ですが今日はそうでも無く、割と早めに話が終わりました。
そしてそれが終わると、1~5年生による卒業生へと送る言葉となります。これは各学年の代表1名が前に出てそれぞれ喋る事となっているので、私が前へ・・・とはならず、1年生はグウェル殿下が前に出ます。
そしてこの送る言葉が終わると、今度は卒業生に関係する先生方が言葉を送り、最後学年主任の先生が卒業生の首席を表彰と続き、それが終わると・・・いよいよあの時間が来ます。
「続きまして、有志による出し物となります。有志の方は控室へと移動をお願いいたします。それ以外の方は、ここで一旦休憩とさせていただきます。30分後に再開いたしますので、それまでにお戻りください」
「・・・行きますわよノワール。マルシア、サマンサ、シーラ・・・私達の雄姿を目に焼き付けておいてくださいましね?」
「「「はい!頑張ってください!」」」
アナウンスが聞こえて来たので、出し物へと参加する事になっている私、それにノワールは控室へと移動を始めます。
その途中、ノワールが私の緊張を解す為か話しかけてきました。
「お嬢様、もし私が失敗してしまいましたら申し訳ありません。その時はフォローをよろしくお願い致します」
「ええ。ですがそれは私もですわよ?万が一はフォローを頼みましたわ」
「畏まりました。任せておいてください」
罰ゲームは誰か一人でも出ればいいということになりましたが、それは私とノワールが責任を取って出ることになりました。
一応皆も責任を取って『自分が!』となっていたのですが、それは却下しました。やはりここはボスが出るべきでしょうからね。因みにノワールは『私はお嬢様とセットですので』と猛烈に自分をプッシュして来たので一緒に出る事となりました。
「お嬢様、そちらの様です」
「ええ」
控室の扉をノワールが開けてくれたので中へ入ると、中には私達と同じ様に出し物をする人や会の進行スタッフの方達がいました。
私達は先ずスタッフに声を掛け、念の為に順番の確認を行います。
「1年のま・・・ま・・・はい、マシェリー・フォン・オーウェルス様は、8番です。出番前になったらお呼びしますので、あちらに座ってお待ちください」
順番は8番。出来ればラッキー7だと嬉しかったのですが・・・まぁいいでしょう。
私はスタッフに言われた出番を待つための椅子へと座ります。
「ノワール、最終打ち合わせをいたしましょう」
「はい」
椅子へと座ると、とちっても嫌ですので出し物の最終確認を始めます。
そうして確認をしていると、隣の椅子へと誰かが座ってきました。私がチラリと見るとそれはイリス、そしてグウェル殿下でした。
「あら、そちらはイリスと殿下が出るんですのね?」
今回は卒業生を送る目出度い席ですので無駄に煽る事は止めて置き、極々普通の対応をしておきます。
「はい。そっちはマシェリーさんとノワールさんですか」
「ええ」
すると向こうも空気を読んでいるのか、はたまた私が普通に接して来たからなのかは解りませんが普通な感じで話しかけてきたので、こちらもそのまま普通に話します。
そうして話していると、イリス達の出番は私達の1つ前のラッキー7で、出し物は手品をするという事が解りました。
「結構自信があるので・・・見ていてくれると嬉しいですね」
「まぁ出番が貴女達の次ですから、舞台袖で見れる筈ですから見ておきますわ。・・・タネも見えそうですけれど」
「あはは、確かに!」
和やかな感じで会話が進み、一通り会話が終わるとイリスがグウェル殿下との打ち合わせをすると言うので、私も再びノワールとの打ち合わせに戻ります。
そうやって打ち合わせをしているとスタッフが会の再開を知らせ、1番の方が控室から出て行きました。・・・いよいよの様です。
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「次、7番の方!舞台袖で待機お願いします!」
「あ、はい!」
「解った」
出し物はつらつらと進み、もうイリス達の出番が来ました。
「それではマシェリーさん、ノワールさん、行ってきますね」
「ええ」
「行ってらっしゃいませ」
「・・・よく見ていてくださいね?」
「・・・え?ええ」
イリス達は挨拶を済ませると控室を出て行きます。彼女らが出て行ったという事は直ぐに私達の出番なので、私達も立ち上がり体をほぐし始めます。
「ふっ・・・ふっ・・・」
「次、7番の方!舞台袖で待機お願いします!」
いい感じで体がほぐれたところで丁度呼ばれたので、私はノワールを伴い控室を出て舞台袖へと移動します。
「あら・・・予想以上の特等席ですのね、ここ」
「はい」
舞台袖に着くと丁度イリス達が出し物を始めるところだったのですが、思っていた以上に舞台袖の感じはよく、椅子なんかも置いてあったので舞台上を見るにはもってこいの場所となっていました。
なので私は椅子へと座り、ジッとイリス達の出し物を見る事にしました。
「こんにちは!私は1年生のイリスと言います!卒業生の皆さん!本日はおめでとうございます!」
イリスと殿下は挨拶から入り、控室で聞いていた通り手品を始めました。
始め聞いた時は『素人ですから、なんかチャッチィ感じのを1つ2つでしょう』なんて思っていたのですがそうではなく、意外にも本格的なモノとなっていました。
更には・・・
「それでは観客の方にも手伝ってもらおうと思います!そうですね・・・そこの方とそこの方。後はえっと・・・そこの方!」
何とマジックショーでよく見るような観客参加型のモノなんかもやり始めました。・・・って言うかああいうのって仕込みだったりするはずですが、これも仕込みなのでしょうか?
「こうすると~・・・はいっ!見事消えましたっ!」
そんな事を考えている内にも手品は進み、見事成功!・・・なのですが、舞台袖から見ると微妙にタネが見えていて、折角の消失マジックな筈なのに消えた人達が見えていました。
「あら・・・って、やっぱり仕込みの方達だったんですのね」
「その様ですね。確実に知っていなければしない様な動きをしています」
「ええ。・・・しかも着替えまでしているし」
いい場所から見れるのは良いのですが、これでは楽しさが半減でドキドキも半分です。『こんな事ならば、無理を言って出番をずらしてもらえば良かったかしら?』なんて思っていたのですが・・・直ぐに私はドキドキどころか、心臓が破裂しそうな思いをすることになってしまいました。
「3つ数えたら凄い事が起こります!1・・・2・・・3・・・はいっ!」
それは見事消失マジックをやり遂げ、消えた筈の人達が現れた後の事でした。
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・
『『『・・・パチパチパチパチ・・・』』』
「ありがとうございます!ありがとうございまーす!」
「ありがとう諸君。と、すまないがこの場を借りて発表したい事があるので是非聞いてほしい」
『『『・・・?・・・ザワザワ・・・』』』
「実はぼ・・・私、グウェル・フォン・ファースタットとここに居る・・・×○◇×△△×○◇×△◇×△◇×△△」
「・・・え?」
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【手品の仕込み云々はあくまで作者の妄想ですわ。実際は仕込み何てないのかもしれませんことよ!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】