第182話 報告と謎と罰ゲーム
『それではマシェリー、私はもう行くよ。また来週末には会えるけど、それまで元気で過ごしなさい』
『・・・はい。お父様こそお元気で・・・』
父親と私は喫茶店で暫くお喋りをした後に挨拶を交わし別れました。
父親は再び王城へと向かったみたいですが、私は学園外でするべき用事が色々有るのでそれをこなしに・・・とは思いましたが、それらはマルシア達にも任せていた事もあり、私はそのまま学園の寮へと戻る事にしました。
「・・・」
その帰り道の途中、私はずっと無言で居ました。
それは大好きな父親とのお別れが来たから・・・という訳ではなく、喫茶店のお茶やお菓子が美味しすぎて未だ夢見心地だから・・・でもありませんでした。
ならば一体何故無言なのか、唯喋る事がないだけと言うのもなくはないですが、今回はある理由がありました。
それは・・・
「あ、お帰りなさいお姉様」
「お?おー、お姉様帰って来たんやね、お帰り~。お邪魔しとるで~」
「ふふ・・・おかえりなさ~い・・・」
「・・・ただいま。・・・そしていらっしゃい」
「なんやテンション低いな?なにかありましたん?」
「・・・ええ。先程までお父様と会っていたのだけれど、その時ある事を知ってしまって・・・」
「へぇ?それは一体なんやったん?」
「・・・ふふ・・・気になりますね~・・・」
「実は・・・私達の作ったデコ剣『ふぁいあーそーど』ですけれど・・・忖度されてあの点数だってんですって・・・」
「「「!?」」」
そうなんです・・・私が無言だった理由、それは父親がふとした拍子に『実は君達の作品の点数って、忖度されてアレだった』と衝撃的な事実を言ってきたからでした。・・・まぁもう少し表現の仕方はマイルドでしたが。
兎に角、そんな事を言われたものだから私はナエポヨ状態になってしまっており、結果無言状態且つ超ローテンションになっている訳です。
「物と機能自体は評価されていたそうですけれど、あの装飾が実はマイナス点だったんですって。けれど私が明らかにお父様の関係者の様に見えたし、大会の盛り上がり的にもあれだったからと、あの点数になったんですって。もしそれらが無かったら、あと5点は余裕で低かったとか・・・あはは・・・」
「そ・・・そんな・・・」
「まじかぁ~・・・」
「えぇ~・・・可愛いのになんでですかぁ・・・」
そして私からそれらを聞いてしまったマルシア達もドンドンとテンションが下がっていき、ついにはどよーんとした空気が立ち込めてしまいました。
ですがそんな空気を察したのでしょう・・・
「お嬢様、お茶とお菓子を用意いたしますのでお座りになってお待ちください」
「え?」
ノワールがお茶とお菓子で場を和ませようとしてくれました。
しかもです、用意してくれたのは先程までいた高級店のお菓子で、お持ち帰り限定商品なんだとか。
マルシア達はそれを知って何とかテンションを持ち直す事が出来、更に食べている最中には『美味しい~』と笑顔にまでなっていました。
「・・・」
ですが私はつい先程までお菓子を食べていたのでそこまでテンションが上がりませんでした。
「ふむ・・・そうですか。では・・・」
しかしパーフェクトな使用人ノワールはそれも察し、新たな手を使ってきます。
それはなんと・・・あの伝説?の必殺技でした。
「お嬢様・・・」
ノワールは私にスッと近づいて来たかと思うと耳元に口を寄せ、囁いてきます。
「大丈夫でございますか?おっぱいでも揉みますか?」
こんな伝説的なワードを。
しかし今の私はテンションが激下がりしナエポヨ~状態です。そんな事では・・・
「揉みますわ!」
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「・・・ふぅ。元気いっぱい胸いっぱいでしたわ」
「それはようございました。そして、大変結構なお手前で・・・」
私は元気を取り戻しました。ええ、それはもうモリモリです。
そんなモリモリ状態の私は頭もモリモリ回る様になったので、お茶を飲んで寛ぐマルシア達に話を聞く事にしました。
「で、マルシア、頼んだ事はどうでしたの?」
「あ、終わりましたか?では報告しますね。先ずはロギヌス工房ですが・・・」
そうして話を聞いたのですが、大よそ予想通りの運びとなっていました。
先ずロギヌス工房ですが、こちらはパメラが居たのでスムーズに話しは進み、後日更に詳細を話そうとの事でした。そしてボルグ工房の方ですが・・・
「肌がツヤツヤして元気一杯のカリンさんと、ちょっとげっそりしているテッショウさんが話してくれたのですが・・・」
無事?に事がなされていた様で、ご機嫌状態のカリンが全てを語ってくれたようです。しかし大体は既存の事だったらしく、大きな収穫は無い・・・と思われたのですが、一番聞きたかった事で重大な新情報が解ったそうでした。
それは何と・・・『どうやって金属に属性を付け足したか』です。
カリンによると、『偶々出会った男に妙なスプレーを貰い、それを使って属性を付け足した』そうです。
私はそれを聞き非常に驚きました。なにせ今までにない技術を私達より先に完成させ、それをスプレーと言う形で実用出来ていたのですから。更にはそれを軽く人に譲ると言うのですから、その偶々出会った男と言うのはかなりぶっ飛んだ人間の様です。
しかしです、カリンが出会ったというその男の情報をよくよく聞いていると、私の中にはある1人の人物が浮かび上がってきました。
「それって・・・マクシムじゃありませんこと?」
「はい。私もそう思います」
容姿や言動からするに、カリンが出会った男と言うのは黄の魔王マクシムの可能性が非常に高く、更にそんな神アイテムを開発すると言うのですからますますその疑惑が高くなっていきます。
しかしマクシムがそんなアイテムを開発していたなんて原作にはなかったはずなのですが・・・
(何らかの要因で廃棄したのかしら?んー・・・)
私が知っているマクシムの性格を思い出していると色々な可能性が浮かび上がってきましたが、詳しくは直接彼に聞かないと解らないでしょう。なので彼が関与していたという事実のみ覚えておく事にします。
「まぁ解りました。で、報告は以上ですのね?」
「はい」
「では私の方も、お父様から聞いたことを詳しく話しますわね?」
マルシア達からの報告を聞いたので、今度は私の方から聞いて来た事を話す事にします。
そうして双方からの情報を元に、今後イリス達に話す内容やロギヌス工房に話す事、ボルグ工房へのペナルティをどうするか等を話し合います。
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明けて翌日、私達は放課後イリス達をサークルの部室へと呼び出します。
それは昨日私達が話し合い、それで決めた内容をイリス達へと話す為なのですが・・・
「イリス」
「はい?」
「約束は『優勝しなかった方が罰ゲーム』でしたわよね?つまり双方優勝しなかったから勝負は不成立!つまりノーカウント!」
「え?」
「ノーカウント!ノーカン!ノーカン!ほら!マルシア達も!」
「「「ノーカン!ノーカン!」」」
一応最後の悪あがきとして無効試合だったと訴えておきます。
(駄目だとは思いますが、通ったのならラッキーですからね!)
私達の昨日の話では、『結局優勝以外の事には八百長は関係なく、寧ろ私達は忖度された点数をつけられていたので負けを認める』となったのですが、もしも無効試合だという事が通ったのならそれはそれでラッキーなのでやってみようという事になったのですが、案の上イリス達にはポカンとされてしまいました。
「あ、え?いや、それは・・・」
「ふむ・・・イリス」
「何ですか殿下?・・・ふむふむ、あ、なるほど」
そうして『あれ?もしかしてイケる?』なんて思っていると、何やらグウェル殿下がイリスに耳打ちします。まさか私達の味方をしてくれるのでしょうか?
「マシェリーさん、先ずは昨日待ってくれと言って調べて来たと言う品評会の詳細を教えてくれますか?」
「ええ。ですがそれ次第では・・・」
「可能性はある、とだけ」
どうやらその『まさか』の援護射撃だった様なので、取りあえず詳しい所をイリス達へと話します。するとそれを聞いた後、再びイリスとグウェル殿下は何やら相談し始めました。
「ふんふん・・・そうですね。ではマシェリーさん、結果を言います。無効試合を一部だけ認めます!」
「・・・っ!本当ですの!?」
「はい」
相談の結果、認めてくれるとの決断をしてくれたようで、私は喜びます。・・・ですが一部だけとはどういう事でしょう?
(・・・あ、そう言えば有名なあの作品でも、認めてからの地獄の逆転が)
私の中にふと、悪役令嬢モノではないですが、ある逆転劇の話が頭をよぎりました。それによると、助かったと思ってからの地獄が待っている筈ですが・・・
「結果無効試合ですが、罰ゲームは両方が受ける事にしましょう」
「えっ!?」
「ですが安心してください。両方受けるという事でかなり軽くします。具体的には1人やってくれたらそれでいいです。あ、勿論全員やりたかったらヤッテもいいですけどね?」
ところがどっこい、これは現実でした。地獄は待っておらず、軽ーい罰だけが待っていました。
「あ、全員はちょっと・・・ですけど、ありがとうございます!受け入れますわ!」
「はい!ではそれでお願いしますね!」
折角軽い罰ゲームになったのでここでゴネるのは悪手です。ですから私はイリス達の気が変わらない内にそれを受け入れます。
そしてこの後ロギヌス工房へ行く用事もあったので、素早く退散する事にしました。
「ではイリス、それに殿下と皆々様、私達は用事があるのでこれにて失礼いたしますわね~。・・・御機嫌よう!」
「「「御機嫌よう!」」」
私達は三下悪役の様なセリフを吐きこの場を去る事にしました。・・・決して狙って言った訳ではないのですがね。
兎も角、私達はこの後ロギヌス工房へと向かい、パメラ達にも父親から聞いた話やカリン達から聞いた話を伝えました。
この時の私は罰ゲームから逃れられ、更に一連の事も色々と片付きすっかり気が抜けていました。
ですから数日後、やっぱりこの罰ゲームは地獄だったと思うことになるとは・・・この時の私は微塵も考えていませんでした。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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☆やイイネをぽちっと押すと 柔らかい感触がしますわ。
マシェリーの一口メモ
【デコ剣は早すぎた様ですわね!きっと2年後くらいに流行るのでしょう。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




