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第178話 ヘファイナーの品評会7

『作者が『任せた!』との事なので、私の方から紹介させてもらいます』


 私達や会場の皆が注目する中、そんな視線には何ら緊張していないとでもいう様に、イリスは堂々とした態度と声を会場へと届けます。

 私はそんな姿、そして魔道具で増幅された心地よい声に、ゲーム時代の彼女を見た気がしてすっかり唯の1ゲームファンと化してしまいました。


『ボルグ工房の作品はこちらとなります』


(はぁぅっ!あれはCGの中でもよく見た事のあるポーズ!あぁんっ!生で見れるなんて最高ですわっ!)


 他人に見られたら『ちょ!?いきなりどうしたの!?』と言われそうな姿をしている私を更に追いつめる様に、イリスは主人公足る風格を見せつけながら続けます。


『こちらの剣、銘は『ツラヌキ』、作者はボルグ工房所属A級鍛冶師テッショウ・ツーデリェです。ボルグ工房の工房長からもその腕を認められているテッショウさんが作っただけあり造りも確かですが、一番大きな特徴はその素材にあります。どうぞご覧ください』


『ありがとうございますボルグ工房さん。それでは審査員の方々、審査をお始め下さい』


 イリスが口上を述べ、それにMCが返すと、審査員達が座っていたイスから立ち上がり台に載せられたボルグ工房の作品へと移動し審査を始めます。


「・・・・。・・・・?」


「・・・・。・・・・」


 審査員達は暫くの間自分達の手と目を使い、更にイリスやテッショウに質問を繰り返し作品を確認していました。


「ちょい他のとこより長めやな」


「ええ、そうね。恐らく素材が特殊云々と言っていたし、それを確かめているんだと思うわ。・・・流石ね、テッショウ」


 サマンサが言う通り少し長めの確認作業ですが、よっぽど特殊な素材でも使っているのかもしれません。その証拠にか、審査員達は試し切り用に置かれた木人を何度も何度も剣を使い突いていました。


(気になりますわね・・・あ!そうですわ!こんな時の為の鑑定ではありませんの!)


 その様子があまりにも気になったのですが、ふと私は最近思い出した鑑定を使う事にしました。知らない人もいる控室ですが、はた目からは可愛いポーズを取っているようにしか見えないので大丈夫でしょう。


(鑑定と・・・「ふぇっ!?」


「「「?」」」


 私は鑑定を発動させその剣の情報を見ましたが、驚きのあまり声を漏らしてしまいました。因みにですが、その思わず声を漏らしてしまうほどの情報とは・・・



 品質:良+

 総合等級:A+

 所感:素材、製法共に優れており、その使われた素材『ホーンライノ』の角により、スキル『刺突強化』が付与されている。



 これです。

 お分かりいただけたでしょうか?このヤバい情報の数々!

 なんとイリス達が作った武器とは・・・魔物の素材を使った武器でした。


(魔物の素材何てクエストの収集対象にしかならないと思っていませんでしたのに、まさか武器を作ってしまうなんて・・・)


 ロマンスでは本来、魔物の素材の使い道は『クエストの納品に使う』、若しくは『錬金術屋や薬屋に渡してアイテムを交換してもらう』しかなく、それで武器を作るだなんて事は出来ない筈でした。


(なくはないけれど、でもそれってダンジョンで取るしか方法が方法がない筈・・・それなのに・・・)


 一応ですが、『○○の力が込められた武器。○○(スキル)取得』という武器も確かにありはしました。

 ですがそれが手に入るのはダンジョン限定で、普通に武器屋で手に入れるのは無理な筈なのですが・・・


『10点、10点、9点、8点、9点、10点、9点、10点、8点、10点。合計93点!おぉっ!最高得点、且つ歴代稀に見る高得点です!では早速、評価コメントを頂いていきましょう!』


 そんな風に私が考え込んでいると審査は進んでおり、現行1位の得点が出ており、評価コメントでも『その発想は無かった』や『よくあの硬い角を剣に出来たモノだ』等の高評価を貰っていました。

 唯同時に『良いモノだが、魔物の素材を武器とするのはどうなんだ』的な意見も出ており、点数が10点でないのはそのあたりの評価があった模様でした。


「ですが現在1位の93点ですか・・・これは中々強敵ですわね・・・」


 正直『勝負だ!』とはなっていましたが、私達が『属性剣Verウルトラデコレーション』という破格な代物を出す以上、こちらの勝ちは揺るがないと思っていたのですが、ここに来て思わぬ伏兵となりました。

 しかしです、私達の作品もイリス達の作品に絶対負けていない代物ですし、更にイリス達の作品、これはスキル『刺突強化』が付与されていたにもかかわらず、評価は唯の『凄い鋭さだ』と言った様な評価でした。ということはです、こちらにも十分勝機はある筈なのです。


「しかし勝機はあるというものの、厳しいであろう事も事実・・・ん~・・・」


 負けはしないにしても勝ちもしないかもしれない。もっと言うと先に向こうが『前代未聞』というカードを切った事でこちらの方が不利かも知れません。

 なのでどうしたモノかと悩んでしまいます。


「・・・っ!そうですわっ!」


「どうされましたお嬢様?先程していたであろうイヤらしい妄想を実行に移すおつもりですか?」


 どうやら私がイリスに向けていた表情をノワールは見ていた様ですが、今はそれに応えている場合ではないので後回しです。・・・というか一応言っておきますが、イヤらしい妄想などはしていません!純粋な眼差しです!1ファンの純な眼差しです!


「・・・ノワール、後で懇々と説明して差し上げますわね。と、それは置いておき・・・パメラっ!商品のプレゼンですけれど、それっ!変わって頂けません事っ!?」


「え?ええ、いいけれど?」


「感謝いたしますわっ!」


 本来パメラが会場にプレゼンする予定だったのですが、私はそれを変わってもらう事にしました。

 これはパメラのプレゼンに不満があるとかではなく、私のキャラ力を使いプレゼンする事によりアピールしようという作戦です。なんせ私って・・・目立ちますからね!


(このレベルになるとよっぽど良し悪しが離れていないとそうそう変わらない筈。という事は、いかに作品をアピールできるかにかかっている筈ですわっ!)


 私が考えている事は完全憶測で持論になりますが、そこまで間違ってもない筈。なので私はそれを信じ、実行する事にしました。


『ボルグ工房の皆さん、ありがとうございました。これで審査は終了ですので控室へとお戻りください。それでは、続きましてロギヌス工房です。ロギヌス工房の人は作品を持って会場へと出てください』


 プレゼン役を変わってくれという話が纏まったところで、いよいよ私達の出番となりました。

 私達は立ち上がり、控室内で作品を管理しているスタッフから自分達の作品を受け取りにいきます。


「こちらです。念のためご確認ください」


 確認して問題ない事を伝えるといよいよ会場へと入ります。

 その際会場でイリス達とすれ違ったのですが、彼女はぼそっとこんな事を言ってきました。


「私達はやり切りました。次は貴女達の番ですね。頑張ってください」


「・・・ええ」


 流石主人公といった所でしょうか、『正統派熱血漫画のライバル』的な雰囲気を醸し出しながら敵に塩を送ってきました。

 私はそれに少し感動しつつ、この雰囲気を壊さぬ様短く返答を返し、会場の中央へと向かいます。


「・・・たんで・・・の?」「いや・・・・く」「ちょ・・・!・・・・・!ノ~ッホッホ・・・」「え?・・・・?」「・・・・・・・」


 その途中背後で何やらイリス達が話している声が聞こえましたが、私達は振り返る事をせずそのまま進みます。


『それではロギヌス工房の代表の方!作品をお願いします!』


 そして会場中央へと辿り着くとMCが拡声の魔道具を渡しながらそう言ってきたので、私は拡声の魔道具を受け取りタメを作ります。


『・・・』


「「「・・・ザワザワ・・・ザワ・・・・・・」」」


 これは転生の際に身に着けていた無駄な技能『カリスマオーラ放出』を使う際の前準備なのですが上手くいっている様で、会場の注目は私へと集まり、段々皆が私へと引き込まれていきました。

 これでつかみは完璧だろうと思い、口を開こうとしたのですが・・・


『・・・え?・・・はいはい・・・あ、はい。申し訳ありません!ここで急遽特別審査員枠として数名の方をお招きいたします』


(んもぅっ!なんですの!いい所で!)


 良い所でMCの邪魔が入り、私の口上はストップさせられてしまいました。

 そんな事をされたので勿論私はイラッとしてしまい、MCをキッと睨み付けます。そしてそのまま文句でも言ってやろうかと思ったのですが、直ぐに『何かあったんだろう、仕方ないか』と思い直し、黙ってそのままMCの話を聞く事にしました。


『え~・・・っと・・・こちらの特別審査員枠ですが、審査員としては点数をつける事はございません。なので評価は元から居た10名のままで行いますのでご安心ください。ただ、評価コメントのみ頂く事となるそうです』


 MCの人も今初めて知ったのか、渡されたカンペを見ながら喋っていました。

 そのMCの言葉に会場の皆が『急遽決まって審査員席に座る、しかももうこんな終わりがけに。一体何なんだろう?』と思っていると、その特別審査員と呼ばれる方達が入ってきました。

 そしてその特別審査員達を見て、私はなんとなく覚ってしまいます。


(来ないって言ってた貴族の方達が来たんですのね・・・)


 貴族の審査員は用事で来ないとなっていた筈ですが、何の気まぐれなのでしょうか・・・?というかですよ、その中にとても見覚えがある様な人が居るのですが、私の見間違えでしょうか?


『・・・・様。そしてクォース・フォン・オーウェルス様です』


 どうやら見間違えの様ではないらしく、MCの方が特別審査員の紹介を読み上げた際に思いっきり父親の名前を呼んでいました。一体何故こんな所にいるのでしょうか?


『急遽中断となってしまいましたが、ご紹介も終わったので再開させていただきます。ロギヌス工房様、申し訳ありませんでした!再度よろしくお願いします!』


『ええ。・・・おほん、どうも皆様・・・御機嫌よう。私達はロギヌス工房ですの。本日は先のボルグ工房にも負けぬ作品をご紹介いたしますわね』


 一応カリスマオーラ的なモノは少し残っていたのか、良い感じに皆が私を見ている気がしました。・・・というか、1名目が飛び出んばかりに私を見ている気がしましたが、まぁそれは置いておきましょう。


『私達の作品はこちらとなりますの』


 私はそのまま続け、取りあえず作品を設置された台の上へと置きます。


『私達の作品、銘は『ふぁいあーそーど』と言いまして、作者はこちらに居ますパメラ・ロギヌス様、そしてここには居ませんが、グロウ・パケキ、グラァ・パケキの3名となりますの』


 私は『ふぁいあーそーど』の説明をつらつらとしていきます。ですがその途中途中で抑揚を変えたり声質を若干変えたりと話術を駆使し、説明に引き込ませるように仕向けます。

 その効果は抜群の様で、私の説明が終わった時には拍手が巻き起こっていました。


『皆様、拍手はまだお早くてよ?さ、審査員の皆様、どうぞお近くでご覧になって頂けますでしょうか?』


 しかし未だ戦いは前哨戦、本番はここからです。

 私は審査員の方々を呼び寄せ、じっくりと作品を見てもらいます。


「ただいま説明させてもらった通り、この剣は『属性剣』、つまり魔法ではありませんけれど、火の力を宿しておりますの」


「ま・・・マシェリー?何でこんな所にいるんだい?というか、何故マシェリーが説明をし「お父様、いえオーウェルス公爵様、今は説明中でしてよ?個人的な話は後でお願いいたしますわね?」・・・・解ったよ」


 途中で父親が話しかけてきますがシャットアウトし、説明を続けます。その様子に審査員の方々がギョッとしていましたが、それにも反応せずに続けます。

 途中で実際に木人を使い性能を試してみたりすると、審査員の方々も私と父親の事よりも『属性剣』の方が気になったのかそちらへと意識をシフトさせていました。ここら辺は流石元、又は現役職人達ですね。


 そんな具合で確認が終わり、審査員達は元の審査員席へと戻って行きます。


 ・・・つまり、いよいよ点数が発表されるという事です。


『さぁ、審査員による審査も終わりましたので、早速点数発表となります。ボルグ工房と同じく審査に時間を取っていたので、期待が高まる所ですが・・・さぁどうでしょうか!?』


 MCが進行を進めると、先程の作品プレゼンまではどうという事は無かったのに私の心臓がそれに伴い鼓動を早くしていきました。


(うぅ・・・きゅ・・・急にドキドキしてきましたわ・・・どうなのかしら?どうなのかしら?審査している感じ、感触は良いと思ったのだけれど・・・あぁでも、ちょっと造りが粗いみたいな事を呟いていた気が・・・。いえいえ、でも装飾は凄いと・・・)


 心臓だけでなく頭もフル回転し、私はプチパニック状態になってしまいます。


(あぁ・・・やっぱりあそこはもう少し手を入れるべきだったのかも・・・いえいえでも・・・っ!?)


 しかしそんな時、そっと私の手に触れて来た者がいました。


(・・・パメラ?)


 私の手に触れてきたパメラは最初、壊れ物でも扱うようにそっと優しく私の手に触れ、次第に大丈夫だと示す様にキュッと力強く握って来てくれました。

 そのパメラの手の温もりと長い時間製作を続けてきた事により硬くなった手の力強さを感じ、私の心臓と頭は落ち着きを取り戻していきました。


(ありがとうパメラ。もう大丈夫)


 自分自身も胸中穏やかでない筈なのにパメラは私を励ましてくれました。そんな彼女にこれ以上心配を掛けられないと私は奮起し、逆に彼女を励ます様こちらから手を強く握り返します。


「ふふっ。じゃあ聞きましょうマシェリー、私達の作品の評価を」


「ええパメラ。私達の努力の結晶の成果を聞きましょう」


 私の気持ちが伝わったのか、彼女が微笑みながら私にそんな事を言ってきたので、私も微笑み返しながら力強く返答します。


『審査員の点数が出そろいました!それでは発表いたしますっ!』


 そんな私達を待っていたかのように、ナイスタイミングでMCが審査員の出した点を読み上げ始めたので、私達はMCへと顔を向けます。


『9点、10点、9点、9点、10点、8点、9点、10点、10点・・・



 読み上げられた点数は、ボルグ工房同様高得点が続き・・・



 ・・・点!合計・・・!』



 会場には・・・大歓声が溢れました。



 マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「ど・・・どうなんだっ!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?

 ☆やイイネをぽちっと押すと 拍手が巻き起こりますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【ロマンスゲーム時代の最強装備は『虹龍の剣』ですわ。7つもスキルが付いた化け物剣ですのよ!】


 マシェリーより宣伝

【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。

最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

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[一言] 作者さん、最近の更新はお疲れ様です! マシェリーさん、色々驕った発言は負けフラグっぽいですから心配した。でもパメラさんの激励はイイかもw
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