第175話 ヘファイナーの品評会4
「今からご参加でしょうか?もう残りのお時間は2時間もありませんが・・・」
「だから急いでいるんですのよっ!いいからさっさと受付方法をおしえなさいなっ!」
「はっ・・・はいっ!で・・・では、『1号室』という看板がかかった部屋へと入って頂き、この紙に必要事項をご記入ください。直ぐにスタッフが伺い確認いたします」
何とか会場入り『は』果たした私達でしたが、未だ受付があるとの事で直ぐには作品を展示する事は出来ませんでした。更に会場は18時ごろには閉められるとの事なので、迅速に行動しなければなりません。
「行きますわよ貴女達!」
「「「はい」」」
私は連れて来た一向に声を掛け、足早に指定された『1号室』とやらに向かいますが、勝手が解らない為少し探す事になってしまいます。
(むむっ・・・3人娘を置いて来てレイラを連れて来るべきだったかもしれませんわね・・・)
3人の職人は言うまでもなく来れていませんが、レイラも職人達を看病する為に今回は品評会の会場に来ていません。なので会場にはサマンサ、マルシア、シーラ、ノワール、そして私と、何時ものチームマシェリーのみが訪れていましたが、もう少し考えるべきだったのかもしれません。
(ま、今更すぎますわよね・・・っと)
キョロキョロと少し探した末、何とか『1号室』と看板がかかった部屋を見つけたので中へと入ります。
すると部屋の中には大きな机と椅子が何脚か置かれていたので、私は椅子に座り先程渡された紙を机へと置きます。
「この紙に必要事項をとの事でしたわね・・・えっと・・・」
「作者や銘、アピールポイント何かを書くんか」
「作者やアピールポイントはいいのですが、銘は無いですよね?」
「ふふ・・・適当に付けちゃうしかないでしょう・・・」
マルシアの言う通り銘なんてものは無いので、それは適当に付けるとして必要事項を書いていきます。
「作者は・・・パメラ・ロギヌスっと。所属は・・・ロギヌス工房。銘は・・・ん~・・・なんか案などありまして?時間が無いのでちゃちゃっと思いついたのを書こうと思うのですけれど?」
「まんま『ファイアーソード』とかでええんちゃいます?」
「もしくは『爆炎丸』とか?」
「・・・あ・・・なら見た目的に『ふぁいあーそーど』を推します・・・ふふ・・・かわいい・・・」
「ああ、ええかもな」
「ですね」
何やら皆『ふぁいあーそーど』を推してくるので、私は時間もないしそれでいいかと紙に『ふぁいあーそーど』と記入します。
「書きましたわ。次にアピールポイントですわね。これは勿論・・・・」
アピールポイントと言えばこれだろうと思い、私は『魔法ではないが、火の属性が宿った剣』と書き、『刀身から火が噴き出る』事等も付け加えておきます。
そうしてアピールポイントを書いていると、シーラが『・・・えっと・・・あの・・・』と声を掛けてきたので何かと聞いてみます。
「どうしましたの?」
「・・・どうせならその・・・見た目の事もアピールしておいたらいいかと・・・折角可愛くしたので・・・」
「・・・そうですわね。それじゃあ・・・」
私はアピールポイントに『ポップでキュート、且つエレガント&ゴージャス』とも付け加えておきます。
・・・『ポップでキュート、且つエレガント&ゴージャス』、どうしたらそうなるのかと尋ねたくなりますよね?いいでしょう、お教えしましょう。
そもそもの話です、まず『属性剣』は作りかけだったのにどうしたのか?という疑問になると思うのですが・・・結局あの作りかけは諦めました。放置しました。
ならば私達が持っているのは何?となるのですが・・・これ、実は数日前に出来ていた、あの試作品なんですよね。
「後、柄と鍔部分に付いている宝石の事も描いておきましょうか。『柄と鍔の宝石は、滅多に手に入らないブラッドルビーで・・・・』」
あの試作品って『属性剣』としては完成しているので、あまりにも適当な造り・・・刃がきちんとついていない、持ち手が適当過ぎる等、そこらさえ直してしまえば問題は無かったのです。
なので私達はどうするかと会議をした末、『そうだ、あの試作品を仕上げて出してしまおう』となった訳です。あ、因みにですが直す作業は私のスーパー使用人ノワールが仕上げてくれました。さすノワです。
「お姉様、鞘の事も書いときません?」
「え?あ、そうですわね。『鞘は剣の属性に合わせた火属性モンスターの素材を使いデコレーション。剣が納まっている時には映える事請け合い無し』っと・・・」
そういえば『ポップでキュート、且つエレガント&ゴージャス』について触れていないじゃないかとお思いでしょうが・・・良く私の喋っている事を思い出してください。
・・・そうです、柄や鍔には宝石、鞘には素材でデコレーションされているのです。つまり私達が今持っているこの剣は、『ポップでキュート、且つエレガント&ゴージャスなデコ(レーション)剣』なのですよ!
「けどお姉様は相変わらずイカス事考えますわ。まさか剣や鞘にこんな感じで装飾するなんて」
「ふふ・・・かわいいです・・・」
「儀礼剣と言われても納得な華やかさですよね」
「まぁそれ程でもありませんわ。ええ。昔流行っていたのを真似ただけですもの」
「え?何時流行っとったんです?」
「・・・さぁ~て出来ましたわね。スタッフの方はまだかしら?」
「・・・失礼いたします。お待たせいたしました、申込用紙と作品を確認させていただきますね」
つい前世の事をぽろっと漏らしてしまったので誤魔化す様に言っていると、本当にスタッフの方が部屋に入って来たので私達はスタッフの方へと対応する事にします。
現れたスタッフの方は時間が無い事も解っているのか、サラサラっと確認をすませてくれます。
「ふむふむ・・・はい。記入漏れなどもないし、作品も・・・多分問題ないですね?」
「この後はどうしますの?今日はどうしても工房の者が来れないので、私達どうしていいのか解りませんの」
「はい、この後は私共が設定したスペースへと作品を展示させていただきます。ロギヌス工房様方はそのままお帰りになられても結構ですし、展示スペースで作品をご覧になられても結構です。要するに自由にしていただければ結構です。また・・・・」
スタッフの方は審査方法や結果がどう解るのかも解説してくれ、それで大体の事が解りました。
しかし自由にしていいという事は、展示スペースで作品をアピールしても良かったりするのでしょうか?私は気になり聞いてみると・・・
「はい、大丈夫ですよ。というか、一定数の方はその様になされていると思います」
との事だったので、私達は自分達の展示スペースへと向かう事にしました。その際スタッフの方は丁寧にも案内してくれるとの事だったので、私達は付いて行く事にしました。
「誠にありがとう存しますわスタッフ様」
「いえいえ。初参加ですと人波でたどり着けない事もありますし、今回だと余計にですしね」
「今回だと余計に・・・ですの?」
「はい、実は・・・・・」
スタッフの方に案内される際お礼を言うと不思議な返答をされたので聞いてみると、どうやら今回の品評会に凄い物を出した工房があったらしく、その工房の作品を見るために人がごった返しているのだとか・・・
「しかもその工房の1つは比較的遅くに来られたのでロギヌス工房様の近くとなっており、より一層辿り着く事が困難になっているかと思われます」
「成程・・・」
そんな説明を聞いている内に、スタッフ用の通路を通してもらっていた私達は展示スペースへと辿り着きました。
そこは確かにスタッフの方が言う通り人が多く溜まっており、人の波で熱気が漂っているのかほんのり温かくも感じられる程でした。
「これでも最初に比べたら落ち着いた方なのですが・・・っと、こんな感じで展示させて頂きました。宜しかったですか?」
「ええ。微調整等はこちらでしても良いのでしょう?」
「はい」
「なら問題ありませんわ。有り難く存じましたわスタッフ様」
「あっ!いえいえそんな!それでは私はこれでっ!」
展示スペースに私達の『ふぁいあーそーど』を飾ってくれたので丁寧にお礼を言うとスタッフの方は帰っていきました。
そうとなれば・・・ここからは私達の出番となります。
「さて・・・皆、アピールをしますわよ!」
「・・・?あぁ~、そういうことな」
「「?」」
私の言葉にサマンサはなんとなく気づいた様ですが、マルシアとシーラがよく解っていなさそうだったので説明をします。
「要は『記憶君』の発売会みたいな実演販売・・・とは少し違うのですが、あんな感じで作品をアピールしますの。お手本を見せるとこんな感じですわ」
実際やってみた方が解るかと思い、軽く説明をした後私は呼び込みを始めます。
「さぁさ皆様!私達の作品も見てくださいませ!あの凄い作品にも負けずとも劣らない!そんな作品ですわよ~!」
『凄い作品』とやらを展示している工房のお陰で人自体はいるので、私は適当に叫んでみます。
「ん?」「お?」「こんなとこにも作品があったのか?どれどれ?」「ほぉ?」「何だこのいい声は!?」「お?ふむふむ?」「確かにロドリック工房にも・・・」
その際の文句として、見てもいない人だかりの先の工房の作品を引用させてもらったのが効いたのか、チラホラと人が此方を見てきました。
そして私の呼び込みで大体を理解したのか、マルシア達もそれぞれ呼び込みを始めます。
するとどうでしょう・・・
「何だあのゴージャスな剣は・・・ん?火が出る剣?」「おぉ!すごいじゃねぇか!」「性能も凄いけど、見た目も凄いのね・・・」「しかもアピールしている子達もかわいい子だな」「1人美人の姉ちゃんが・・・あの姉ちゃんが作者か?」「・・・か・・・かわいい子達なんだな・・・ふふゅう・・・」「剣キラキラし過ぎだろ・・・ってブラッドルビー?マジ!?」「鞘の素材もぱねぇ・・・」
作品のキラキラとデコされたゴージャスさ、それにマルシア達の美少女さに釣られてこちらを見る人が徐々に徐々に増えていき、ついにはこちらにも人だかりが出来てきました。
「オーッホッホッホ!さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!今後王国史に残る歴史的作品ですわよ!さぁさぁご覧あそばせ~!オーッホッホッホ!」
しかしまだ足りないとばかりに私は呼び込みを行い、人の注目をガッツリ集めます。
すると私達の方へと人が流れたのが気に入らないのか、近くから『ノ~ッホッホッホ!あてぃくしの剣はほらぁ!こんな風に・・・・・!』と凄い作品を出しているであろう工房の方の声が聞こえてきました。
そんな風に何処かで聞いた様な声と争うようにして人を集め続け、かなり遅くの時間に来たにも関わらず私達はかなりの人に作品を見てもらう事に成功しました。
そうしている内に何時の間にか閉場の時間となり、私達のヘファイナーの品評会1日目は終わりを迎えました。やれることはやったので後は結果を待つばかりなのですが・・・どうなる事でしょう。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「デコ剣。これは流行る。」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 刃から柄まで全てビーズでデコった剣をプレゼントしますわ。
マシェリーの一口メモ
【私達が持ち込んだデコ剣は鞘に納めた状態だと、デコりまくってなんじゃこりゃ!と言ってしまう様なガラケー、あんな感じですわよ!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】