第173話 ヘファイナーの品評会2≪イリス視点≫
お詫び:ノホホさんの所の工房名を修正 2022/11/13
≪イリス視点≫
偶々受けた依頼から発展した今回の勝負でしたが、なにやら雲行きが怪しくなってきました。というのも、勝負を受けた相手・・・ロギヌス工房がお昼を過ぎても会場に姿を現さなかったからです。
「・・・もう一回見て来るわ」
『来ない筈がない・・・』と・・・、ロギヌス工房の主とは幼馴染で、『彼女の事は良く知っている』とも言っていたテッショウさんは見落としているだけだと言ってこの事態を信じず、再び展示されている作品を確かめに行きました。
「あ、私も行くねテッショウ」
更にカリンさんも同じ様に考えたのか、テッショウさんの後に続きます。
「私も見に行きます!」
「僕達も行こう」
ですがそれは私も同じで、『例え提出する作品が出来ていなくとも、逃げたかの様に姿を現さない筈がない』、そう『あの人』を信じている私はこの事態を信じていませんでした。
なので私達はテッショウさんとカリンさんに続き、再び一から展示されている作品を確認していきました。
ですが・・・
「やっぱりないですね・・・」
「ああ、ねぇな・・・。っかしいな・・・例え作品が出来なかったとしても、それを知らせるために会場には姿を見せる筈なんだがな・・・」
「ウチの・・・って、いや、私のじゃないですけど!私の知ってるマシェリーさんも同じく姿だけは見せて、『オーッホッホッホ!物は出来たのですが、素晴らしい出来過ぎて国王陛下へと献上してしまいましたわ!ですから無効試合ですわね!』ぐらいは言って来ると思うんですが・・・」
「いや、それどんな言い訳だよ」
いくら探しても『ロギヌス工房』と紹介されている作品はなく、私達は途方に暮れてしまいました。このままだと勝負自体は勝ちになるので良い事は良いんですが、そうなると何となくスッキリしないので現れてほしいのですが。
『『『・・・ザワザワ・・・』』』
と、心の中で葛藤していたその時でした。
『『『おぉ~・・・これは・・・』』』
新たな作品が並べられたのか騒めきが起こり、更によっぽど人々の目を引く作品だったのか、その作品の前には人だかりが出来ていました。
「はっ!?テッショウさん!これ!来たんじゃありませんか!?」
「おう!かもしれねぇな!行こうぜカリン!」
「あ・・・うん」
私達は『ついに来た!』とみてその人だかりへと突き進んでいきます。ですが予想以上に人が多く、中々作品を目にする事が出来ません。
「人が・・・」
「嬢ちゃん坊ちゃんらは逸れない様にしとけよ。逸れたら俺らんとこの物の前集合だからな!」
ジリジリと進む人波に身を任せて何とかそのまま粘っていると、漸くもう少しと言う所まで来ました。
すると作品に対して評価をする声や、製作者達の会話が少し聞こえてきました。
「すげ・・・じゃ・・か?」「あ・・・べぇな」「どう作・・・・」「・・・ッホッホ!企業秘・・・」「これは上位・・・・」「だろうな・・・・」
人が多く集まっているだけあり凄い作品なのか、聞こえてくる会話には賛辞するものが多く、聞いている感じ明らかに否定する意見はありませんでした。
更に製作者側であろう声もかすかに聞こえていたのですが、その声には結構特徴的な笑い声が含まれていました。
(やっぱり来ていましたね!・・・まさか、主役は遅れて登場する!とか言うあれなんでしょうか?)
あの人は意外と馬鹿・・・いえ、お茶目な所もあるので、もしかしたら狙ってやっていたのかもしれません。・・・ですが現れてはくれたので私はホッとしました。
(流石に不戦勝はスッキリしませんからね!ふっふっふ・・・勝負ですマシェリー!さぁさぁさぁ!貴女が協力した処は、どんな作品を作り上げたんですか!?)
私はドキドキと、何故かワクワクとしながら待ちます。
(あ・・・見えそう!)
そしてついに人の壁は途切れ、私の前には作品が、制作者達がその姿を現しました。
その姿は・・・
「ノ~ッホッホッホ!どうでございます~皆様ぁ~?あてぃくしの魔法剣はすご~いでしょ~ぉ?ノ~ッホッホッホ!」
「・・・あれ?」
何故か思っていた人と物ではありませんでした。
・・・って言うかあの人、何処かで見たことがあります。
「あ、イス、あの人ってあれじゃないですか、マシェリー様のパチモンみたいな人。えぇっと・・・確かマニー伯爵家のご令嬢、アーデリンド・ド・マニーさん。学園外だからか豪華で派手な衣装を着ていて解りづらいですけど、多分そうですよ」
「あぁ~・・・」
リアに言われて名前を思い出しましたが、確かにそうだった筈です。
「ノ~ッホッホッホ!あ、このドレスですのぉ~?これはかの有名なデザイナーであるコーピル・ウォーシュギーの作品ですわぁ~」
誰も聞いていないのに何やら自慢し始めている彼女の衣装はリアが言った通りに豪華かつ派手なドレスで、その衣装で一緒にダンジョンに行ったのならばさぞ優秀な囮役になりそうな、カラフル&フリフリヒラヒラな物でした。
・・・とまぁ衣装ではなく作品の方を見てみましょう。マシェリーさん達ではないにしろ、気になるのは確かですから。
「・・・ふむふむ・・・え?凄くないですかあれ?」
「おう、俺達に負けず劣らず凄いな」
思わずテッショウさんも『凄い』というその作品は、素直に簡易説明文を読むのならば『魔法が使える剣』でした。確かにこれならば人だかりが出来ても不思議ではない凄い作品です。
「けど本当に使えるんでしょうか・・・?」
「あそこは・・・ルミナリー工房か。有り得なくは無いかも知れねぇ」
テッショウさん曰く、ルミナリー工房は新進気鋭の工房らしく、活動し始めたのは最近らしいのですが老舗の力ある工房にも劣っていないのだとか。
「・・・私が事務仕事をしている時に偶々聞いた話では、何処か力が強い所にパイプがあるとか言う噂がありましたね」
更にカリンさんから追加情報が語られましたが、要はやり手の工房なので『魔法が使える剣』というのは十分真実味があるという事なのでしょう。
「思わぬ伏兵ですねテッショウさん」
「ああ。けどよ、俺の作品も負けてねぇ。十分勝ちは狙えるぜ!」
「です・・・ね!そうでないと私達も頑張った甲斐がありませんし!ね、グウェル殿下!・・・グウェル殿下?」
「・・・。む?あ、ああ」
グウェル殿下は何かを考えていた様で難しい顔をしていました。しかし直ぐに何時もの顔に戻ったのでさほど重要な事ではなかったのでしょう。
というよりもです、重要なのは・・・
「けどやっぱりロギヌス工房はまだ来ていないみたいですね・・・」
「だな」
そう、重要なのはロギヌス工房・・・マシェリーがまだ来ていない事です。本当に何をしているんでしょう?
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その後もそわそわしながら待っていた私達ですが、14時になり、15時になり、16時になっても彼女達は現れませんでした。
テッショウさんなんかはそれに痺れを切らし、『ロギヌス工房に行って来るわ!』と言って会場を飛び出しかけていました。・・・結局カリンさんに『行き違いになる』と止められて待つ事になっていましたが。
「何で来ないんでしょうね・・・」
「ギリギリまで製作を粘っている・・・とかかもしれないね。パメラは諦めない性格だから」
「成程、流石幼馴染ですねカリンさん。良く知って・・・ってそれにしても粘り過ぎじゃないですか?このままじゃ諦める諦めない以前に不戦敗ですよ?」
「・・・確かにそうだね」
更に昼を過ぎると新しく来る人も段々と少なくなり、マニーさんの後は3組来ただけだったので、見るモノもなくなった私達は休憩スペースで座って雑談をするのみとなっていました。
「はぁ~・・・しかし、マニーさんの所は相変わらず凄い人ですね」
「だね。まぁ私達の所もかなりいるけど・・・」
「ですねぇ・・・って、あれ?」
この休憩所スペースからはマニーさんの作品がある辺りが見えるので偶に目を向けていたのですが、なにやら様子がおかしい事に気付きます。
確かにマニーさんの作品の辺りには人が多いのですが、出て来た12時辺りと比べ3,4時間過ぎた現在は少なめになっていました。しかしです、16時現在、再び人だかりが出来ていました。
「なんでしょう?マニーさんが何かパフォーマンスでも始めたんでしょうか?」
『いやいやそんな馬鹿な』とは思うかもしれませんが、なんだかマシェリーよりも頭がおかしそ・・・いえ、陽気な人に見えたので、もしかしたら有り得るかもしれません。
なので少し様子を見てこようと思い、私は休憩スペースから展示スペースへと移動しました。
すると何故再び人だかりが出来ていたのかが解ってしまいました。それはやはりマニーさんがパフォーマンスをしていたから・・・ではなく・・・
「この先に詰まっている人がここまで来てるの?」
どうやらこの近くに人が集まっており、その場所へと近寄れない人がここまで溢れているからでした。
(しかし何故この近くに人が集まっているのでしょう?)
私はそれが気になり、その人の流れに乗って皆が集まっている場所の近くにまで移動します。
すると・・・
「オーッホッホッホ!さぁさぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!今後王国史に残る歴史的作品ですわよ!さぁさぁご覧あそばせ~!オーッホッホッホ!」
私が良く知っている、あの人の声が聞こえてきました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【騙されましたわね!今回もイリス視点でした!でも次こそは主役である私の出番ですわよ!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】