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第172話 ヘファイナーの品評会≪イリス視点≫

 ≪イリス視点≫


「おはよ~イス~」


「あ、おはようリア」


 ある朝、挨拶をしながら部屋へと入って来た親友のイリアス・・・リアへと、私は挨拶を返します。


「もう少しだけ待ってくれるリア?」


「はいはーい。ごゆっくりぃ~」


 挨拶を返した後は引き続き、今までしていた準備の続きを進めます。


 ・・・何の準備?ですか?

 それは本日の3月15日、『ヘファイナーの品評会』という、鍛冶師の大会?があるのですが、それに出掛ける為の準備です。

 何故そんな大会に出掛けるのか・・・それは説明すると少し長くなってしまうので、成り行きとだけ言っておきましょう。

 っと、そんな事よりもです、グウェル殿下達を待たすと悪いので早く準備をしてしまいましょう。


 ・・・なんて考えていたのですが、そんな事は知らないとばかりにリアが話しかけてきます。


「あ、そういえばイス、少しは聞きましたけど、テストの結果ってどうだでした?私用事があって、順位が貼り出されているの見に行けてなかったんですよね」


『急いでいるから後で!』なんて返しても良かったのですが、実はまだ集合時間には結構余裕があったりするし、私も話したかった事なので話に乗る事にしました。


「あの話にも響いてくるはずだから気合入れて勉強しただけあってバッチリだったよ」


「具体的に言うと?」


「ふっふっふ・・・1位タイ!」


 今週の頭に学年末考査があったのですが、それで私はかなりの好成績を収める事が出来たのともう一つの理由から、ちょっと自慢気にそれを発表しました。


「えっ!すごいじゃないですか!?って1位タイって事は、グウェル殿下やマシェリー様が同位ですか?」


「ふっふっふ・・・グウェル殿下はそうだけど、マシェリーさんには勝ちました!」


 そう、私が自慢げにしているもう一つの理由は、あのマシェリーに勝てた事なのです!あのマシェリーにですよ!?

 何をそんなに興奮する事があるのかと言われてしまえば、私はその言ってきた人に懇々と説明して上げたいですね、あの人の凄さを!


(そう!あの人の凄さと・・・それと憎らしさを!あの人は何で私にああですかね・・・本当にもう・・・)


「イス?何フリーズしてるんですか?」


「えっ!?あ、いや、ちょっと・・・あの・・・くしゃみが出そうで・・・」


 頭の中で誇らしくも憎い様なあの人の顔を思い浮かべ色々考えていると、体の動きが止まってしまっていたみたいでリアに突っ込まれてしまいますが・・・私はそれを口に出す事はせず誤魔化し、準備の続きをし始めると共に学年末考査の結果について話を戻します。


「そういえば、リアの順位も見てきましたよ?」


「おぉ~、ありがとうございますイス!どうでした?」


 私もリアが結果を見に行けてないと気づいていました。だからついでに見て来ておいたのですが、その結果を教えてあげます。

 するとリアはその低くない結果を聞いてガッツポーズをしていました。


「今までのテストの結果で最高です!これもイスがガッツリ教えてくれた結果ですよ!ありがとう!」


「どういたしまして。あれ?でも前にマシェリーさんにも教えてもらったことあるじゃ?」


「あ~・・・ありますけど、あのグループの人ってなんだかんだ皆天才気味で・・・」


 その様に雑談をしていると準備も程なく終わったので、私達は待ち合わせとなる学園の門付近へと移動したのですが、集合時間にはまだ早い時間な筈なのに、グウェル殿下達は既に待っていました。


「あ・・・」


「あれ・・・」


 私達は遅れたのかと思い、小走りで彼らへと近づき謝ります。

 ですが、どうやら彼ら自身早いと思いつつも集合したそうで、何やら『レディを待たせるのは云々・・・』だとか。

 そう言われるとこちらが謝り続けても駄目かなと思い、謝るのではなく褒めておく事にします。


 と、いつまでもその様な事をしていると遅刻してしまうため、私達は話をそこそこで切り上げ移動する事にします。


 ・

 ・

 ・


「この辺の筈だが・・・」


「うぅ~ん・・・テッショウさんやカリンさんと一緒に会場まで行くべきだったかも・・・」


「そうだな」


「・・・殿下、どうやらあちらの様です」


「そうか、行ってみよう」


 私達はヘファイナーの品評会が開かれる場所へと向かっていたのですが、その場所は普段あまり訪れない場所にあり、私達は若干迷っていました。

 ですが地図を見たり、人に尋ねたりして、何とか会場にまで辿り着く事が出来ました。

 出来たのですが・・・


「この大勢の中からテッショウさん達を・・・」


「うわぁ・・・まるで人がゴミのようですね・・・」


 会場には沢山の人、人、人で、この中から目当ての人を見つけるのはとても大変の様に思えました。

 ですが一応居場所自体は聞いていたので、私達は人にそれを尋ねて探す事にします。


「あの~・・・すいません」


「はいはい?」


「もし、お尋ねしたいのですが」


「なんでぇ騎士さん?」


 私達が探すのは出品物受付所という場所なのですが、それというのもこの品評会、一般審査と本審査の2つの審査があるらしく、本日行われる一般審査では出品者は一度出品物受付所に向かい、そこで最初色々登録なんかをするのだそうです。この作業、正直私達がいなくても全く関係ないでしょうが、ずっと関わって来たし勝負の事もあるので、出来るなら最初から見届けたいんですよね。


 そんな事を考えながら聞き込みを続けていると、私達はなんとか出品物受付所に辿り着く事が出来ました。

 そこは役所の受付みたいになっている場所で、先程の会場よりかは人が少なくなっていたのですが、それでも人が多く、やはりテッショウさん達を見つけるのは難しいんじゃないかという雰囲気になってしまいました。


「あわわ・・・やっぱり現地集合じゃなくて、一旦ボルグ工房集合にしておいた方が良かったかもしれないですね・・・」


「ああ、もうちょっと人は少ない物だと思っていた」


「はい・・・」


『はーっはっはっはっは!』


「「「あ」」」


 私達が嘆いていると、何処からかこの頃よく聞いていた大きく明るい笑い声が聞こえました。

 そして私達その声が聞こえて来た方を見ると・・・居ました!テッショウさんと・・・カリンさんです。


「テッショウさーん!カリンさーん!」


「ん?お、イリスの嬢ちゃんに殿下達!」


「お・・・おはようございます」


 私達は見つけた2人へと近づき挨拶を交わします。

 そして話を聞くと、出品物の登録等は未だ行っていないらしく、これから行うのだそうです。


「知り合いと色々話してたら話が弾んでよ!ま!丁度よかったな!」


「イリスちゃん達も来たことだし、そろそろ登録しようか」


「そうだな!さぁ!いくぜっ!」


 私達は登録を行うと言ったテッショウさん達に続き窓口へ、すると紙を渡され『7号室へ』と言われました。


「「「?」」」


「あー、初めてだし勝手はしらねぇわな。まぁついてきな」


 確かに勝手を知る筈もないので、私達は言われるがままにテッショウさん達に付いて行きます。

 すると窓口で言われた『7号室』と看板がかかった部屋に到着し、中へと入りました。


「んでだ、ここでさっき渡された紙に必要事項を記入していく訳よ。頼んだカリン」


「うん」


「この紙はあれよ、作者やら銘やら簡単なアピールポイント何か書くわけだ」


「カリンさんに渡したのは、『工房の責任者が・・・』とかなんですか?」


「いや?ただ俺の字が下手だからだ。前に『読めません!』って言われた事があってよ!はーっはっはっはっは!」


「笑いごとじゃないと思うよテッショウ?」


「・・・まぁいいじゃねぇか。んでだ、その内スタッフが来るから・・・」


 テッショウさんから話を聞いていると扉が開き、人が入ってきました。恐らくテッショウさんが言いかけたスタッフの人でしょう。


「おはようございます。スタッフのノカ・コーエンです」


「おはようさん!ボルグ工房のテッショウだ!」


 部屋に入って来たスタッフの人は挨拶をした後、カリンさんが書いていた紙を確認したり、テッショウさんが持っていた出品物を確認したりとしていました。

 それから察するに、テッショウさんが言いかけたのは『その内スタッフが来るからそいつにこの紙と品物を見せて確認してもらう。それが問題なければ出品完了だ』というような感じの事でしょう。

 そしてそれは合っていたみたいで、確認が終わったスタッフの人は紙と出品物を回収した後部屋から出て行きました。

 するとテッショウさんは私が予想していた様な話の続きを話し、それが終わると更にその後の話を話し始めました。


「で、出品が完了したら後は自由だな。結果が良けりゃ、明日会場の掲示板に張り出されるから帰っても問題はねぇ」


「そうなんですか?」


「おう。まぁ大概は他の処の作品を見ていくがな。因みに一般審査だから、別に俺らが他の処の作品に評価入れてもいいんだぜ?」


「え!?」


 テッショウさんはこの後公開される一般審査で、私達に他人の作品に評価を入れてもいいと言いますが、そんな事をしては自分達の作品の評価が相対的に落ちることになってしまいます。

 なので『そんな事をすべきではないのでは?』と問いかけますが・・・


「いや、良い物には良いと評価をする。それが一人前の職人ってもんよ。逆に他人の作品にケチしかつけれねぇのは半人前か、それ以下だ。そんな奴はこの品評会にあんまいねぇのよ」


 テッショウさんはそんな風に言い、職人に対して熱い想いを語り始めました。

 そんな熱弁がグウェル殿下達には刺さったのか、うんうんと頷いたり、『流石テッショウさんだな!』なんて言って褒めたりしていました。

 私も『一流の職人って心持ちも一流なんだなぁ・・・』なんて思いつつ、ふと疑問に思ったのである事を聞いてみます。


「じゃあテッショウさんの・・・ライバル?、えぇ~っと・・・パメラさんでしたっけ?あの人の作品も良い物だったら良い評価をするべき・・・なんですよね?勝負は勝負だけどそれとは別みたいな?」


 私とマシェリーさん、テッショウさんとパメラさんで勝負をしている訳ですが、それも『一流職人魂で作品の評価は別に切り離して考えるのか?』と疑問に思い尋ねてしまいました。

 ですがまぁ聞くまでもなかったかもしれません。こんな熱い信念を持つテッショウさんが『敵に塩は送らねぇ!』なんていうはずが・・・


「まぁ~・・・あ~・・・そうだな。あいつも良い物作ってくるはずだから・・・うん。でも素直に良いと褒めるのも勝負的にはアレだからよ・・・まぁそこは腕は認めつつ負けは認めないっつぅかよ?ああ!でも評価はしに行くべきだぜ!?相手の腕は確認しなきゃいけねぇからよ!!」


『敵に塩は送るが、まあ積極的にではなくウンヌンカンヌン』と、テッショウさんは何故か微妙な言い回しをしてきます。・・・一体なんなんでしょう?


 と、何時も竹を切った様にスパッとモノを言うテッショウさんが煮え切らない感じで言葉を紡ぐも、結局は『見に行くべきだ』との事だったので、私達は部屋を出て作品展示スペースへと向かいます。

 そこには受付を終えたのか、チラホラと作品が並び、更に今もドンドンと並べられていました。


「えぇ~っと・・・確かロギヌス工房・・・でしたっけ?」


「おう!パメラはこういう時早めに来るタイプだからな!最初の方から見ていこうぜ!」


「はい」


 私達はテッショウさんが言った通りに、最初の方の作品から見ていく事にしました。


 そうして早く受付が済んだ順・・・最初に並べられた作品から順々に見ていき・・・


「お、ここんとこのやつ前よりすげぇな」「装飾も良いし、作りも良さそうです・・・」「カッコいいな」「よく解らないけどよく切れそうな剣ですね?」「俺、ここの作品好みかもしれません」「俺もです」


 テッショウさんの出した剣もあり・・・


「はーっはっはっは!やっぱ俺の作った剣いいじゃねぇか!」「人だかり凄いですね!」「まぁあまり見ない作り方だろうしな」「ふふ・・・流石私立案です」「イリアス殿凄い!」「イリアス殿天才美少女!」


 現在並べられている最後の作品まで見ていったのですが・・・


「ねぇな?」「ないですね?」「ないな」「ないですねぇー」


 何故かロギヌス工房の作品はまだありませんでした。

 しかしまだ品評会は始まったばかり、昼までには作品が出て来るでしょう。



 ・・・と思っていたのですが。



 ロギヌス工房の作品は、お昼の12時になっても並ぶことはありませんでした。



 マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。

 「面白い」「続きが読みたい」「3分間だけ・・・」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?

 ☆やイイネをぽちっと押すと 雷が出ますわ。


 マシェリーの一口メモ

 【次回は私視点に戻る・・・はずですわ。】


 マシェリーより宣伝

【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。

最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/

よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】

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