第170話 精神修行の様な作業
前世で私はわりとテレビを見る方だったのですが、その際こういうテレビCMがありました。
それは確か化粧品のCMで、何とかロンサンがウンヌンカンヌンとか説明しながら薬効を抽出するのをじっと見ている様なCMだった気がします。当時はそれを見ながら『あれって実際延々と見続けるのだろうか?』なんて思っていたりしていた物でした。
・・・?いきなり何の話なんだって?ああ、それはですね・・・今同じような事をしているからですよ。
「「「・・・ジー・・・」」」
グロウが言い放った『人海戦術で研究を行う!』、その研究の内容は、確かに人海戦術を用いて行えば時短出来るようなモノでした。具体的に言うならば、グロウ、グラァが指定した素材へ錬金薬を使い、その反応を見るという物です。
しかしこれ、直ぐに反応が出るわけではなく、短い物なら10分程、長い物なら2~3時間とかなりブレ幅が広く、尚且つ反応を見逃してはいけないのでずっと物を見ていなければならないという、そんな人を選びそうな作業でした。私達の中で言うならシーラ、ノワール辺りは比較的苦にならなさそう・・・そんな感じです。
「ぐぬぬ・・・」
「ふぅ・・・」
「あ゛ぁ゛~・・・」
しかし私、マルシア、サマンサはどちらかと言えばその様な作業は苦手なタイプなので、貧乏ゆすり・・・はしていないですが、手を組みながら指をトントンとしたり、手のひらに顎を乗せて歯を噛みしめたりなんてことをしていました。
「・・・あ、反応がありましたわね。えっと・・・これは駄目なパターンかしら?取りあえずメモをしておいて・・・ふぅ・・・次へいきましょうか・・・」
しかもこれ、1個2個したら終わりとかそんなモノではなく、かなりの数をこなさなくてはならず、土曜日の夕方から初めて現在日曜日の夕方近くなのにまだまだ終わる気配がありません。
(ですが安心してくださいまし。なんと明日は月曜日ですけれど祝日でお休み!ということは明日も一日中できますのよっ!)
もう一日遊べるドン!やったぁ~!
・・・とはいいませんよ?
ですが嬉しい嬉しくない関わらずやらなければ作業が進まないのでやらざるを得ません。それにここで私達が投げ出すと確実に時間が足りなくなってしまうでしょうしね。
(2週間後には本番が・・・間に合うのかしら?)
ヘファイナーの品評会があるのは3月15・16日だと聞いているので、残りは2週間を切っています。その中で試作を作り、更に本番用の品物を作りと・・・間に合うと願うしかありませんね。
(兎に角、今はこなす事に集中する事にしましょう)
余計な事を考えていると反応を見逃すかも知れないので余計な思考を頭の隅へと追いやり、私は反応を監視する作業へと集中し始めました。
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その様な作業を1週間程続けていたわけですが、その間学園での授業時間、そして放課後の歌の練習の時間はまさに私達にとって天国と呼べるような時間になっていました。
そのお陰か勉強は集中して行う事が出来て非常に捗り、歌の練習も・・・
「~~~~。~~、~~~~~~!」
(いい!今日はノリに乗ってますわよ私!)
非常に捗っていました。
「はい、そこまで!・・・いやぁ、いい!いいですな!特にイリスさん!最高ですぞ!」
「シフロート先生!私はどうですの!?」
「マシェリーさんは・・・悪くはないですぞ?」
まぁ捗っているからと言って私の歌が上手いかどうかは別のようでしたね、ええ。
「お姉様はなぁ・・・音楽関係は普通なんよね・・・」
「悪くはないんですけどね・・・」
「・・・ふふ・・・確かに・・・」
実は私、前世では所謂音痴という奴みたいで、よく知り合いからは『ジャイ○ン?』とか言われていたんですよね。
そしてそれが何でも大体パーフェクトに出来る超人スペックの悪役令嬢と1つになった事で進化?したみたいで、今や私は綺麗なジャイ○ン、もとい『THE普通の歌声』なんですよね。・・・元のマシェリーさんだとオペラ歌手もイケる美声だったはずなのに・・・うごご・・・。
「いやぁイリスさん!貴女ならオペラ歌手もいけますぞ!」
「え・・・いや、そんな・・・えへへ・・・」
そう、本来ならこういう風にイリスの歌上手情報が出て来た時に『ま!私と同レベルだと認めてあげましょう!』とか言えてたはずなんです。実際確か言っていた筈ですし!・・・あれも見栄とかじゃなければですが。
「ぐぎぎ・・・音痴が憎い・・・」
そんな私の愚痴が聞こえたのか、イリスがチラリとこちらを見てニヤリと笑い、少し自慢げに胸を張り始めました。
「ま、そんな事もあるかも知れませんね!これならどこでも通用しますよね殿下!」
「ああ、他国でも十分通用するだろう」
「ふっふぅ~ん。らしいですよマシェリーさん?」
「き・・・きぃぃー!」
何とイリスがマウントを取ってきました!私は悔しくなりついハンカチを出し噛みしめてしまいます。
・・・とまぁこんな事もありましたが、それでもあの忍耐を鍛える作業よりかは天国でした。
しかしこんな天国と地獄も何時かは終わりが来るもの・・・
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それは忍耐修行が始まって1週間ほど経った3月9日日曜日のお昼頃です・・・
「ふぅ・・・これは・・・っと。次は・・・あら?」
「あ、もう終わりっぽいで?」
「え?本当ですの?」
「さっきウチも終わったから次いこかと思たら『終了らっ』言われたわ」
「そう・・・ですのね・・・ふぅ~・・・」
漸く全て見るモノが終わった様で、後は職人達による製作作業があるのみだという事でした。
私が終わって少ししたら皆の受け持っていた分も終了したので、一度皆で揃って別室にいる職人達の元へと向かいます。
「グロウ、グラァ、全部終わりましたわ!」
「ろっ?お疲れろっ!」
「ありがとらっ!らっ?丁度お昼らっ!ご飯食べながら話すらっ!」
「ええ、解りましたわ。パメラ、昼食にしましょう?」
「え?あぁ、昼食ね?解ったわ」
終わったと報告をすると、食事を食べながら放そうという事なので、私達は一度応接スペースへと移動し、そこで料理を広げます。
そしてそれらを摘みながら、再度私達の作業が終わった事を伝えます。
「了解ろっ。なら後はグロウ達の仕事ろっ」
「今まで貰った結果と今日のを合わせて精査して、試作品をつくっていくらっ」
「そうね。今日からまた頑張りましょうか」
「解りましたわ。私達は明日からテスト期間に入りますけれど、変わらずこちらにまいりますわね」
「ろっ。試作品が出来たらマシェリーに試してもらいたいから、そうしてくれると助かるろっ」
いつ出来るかはパメラ達にも解らないようですが、私の有り余る魔力を使い耐久テストをしてほしいらしいので、これからも毎日ロギヌス工房へと通う事が決定しました。
そしてそれらの話し合いと食事が終わると早速パメラ達は籠って作業をするとの事で、奥へと行ってしまい、残された私達は現在特にする事が無いので、勉強でもするかと最後の追い込みを開始します。
そうやって勉強をしていると・・・ロギヌス工房の扉が開き来客を知らせてきました。
「邪魔するよ~ってマシェリー達何やってんだい?作業は?」
「あらレイラ、こんにちは。作業は・・・終わりましたわ!」
「おぉ・・・やっと終わったのかい・・・」
やって来たのはレイラで、彼女は私から聞いた言葉にホッとした様な響きをにじませた返答をしてきました。
まぁ気持ちは解ります。実は今日こそ偶々いませんでしたが、レイラもあの作業をこの1週間大体手伝っていて、死んだ魚の様な眼をしていましたからね。
「ひたすら鉱石を掘るとかならまだいいんだけど、動かずジッとしているのはあたしは苦手だから助かったよ・・・」
「私もですわ・・・っと、それでパメラ達ですが、早速製作に取り掛かると言って鍛冶場へ向かいましたわ。ですから私達にできる事は今の所ありませんの」
作業が終わった事は伝えましたが、その後の事を伝えていなかったのでそれを伝えると、レイラは『それならまた後で様子を見に来る』と言って出て行きました。恰好が武器防具を装備した状態だったので、一旦宿に戻って置いて来るのでしょう。
その後、パメラ達の夕食だけ用意した私達は戻って来たレイラにそれを任せ、その日は早めにロギヌス工房を後にしました。
何せ明日からは学期末考査・・・1年の締めくくりとなるテストが待っているのです。
私達は学園の寮へと付くとさっさと解散し・・・そして翌日のテストへと向け最後の準備を始めました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【CMは作者のうろ覚え知識ですのよ?なので間違っていたらごめんあそばせ!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】