第169話 頭より体を動かす
土属性の反応が出たのは何とミスリルから・・・つまりはミスリルを手配してくれたジョン・ラ・ビー、ひいてはビー家が事件の真犯人!
(・・・ということではありませんわね。ええ)
確かにミスリルから土属性の反応は出ましたが、他属性の反応が出ていたのはミスリルを扱い出す前からです。
まぁそれ等もビー家から仕入れていたというのなら解らなくもないですが、鉄を仕入れていたのは鍛冶屋業界の仕入屋から仕入れていたみたいですからビー家は関係ないでしょう。
(でもそれなら何故?一体どのようにして属性が混ざったんですの?鉄は途中で産地でも変えたのかしら・・・?)
鉄やミスリルに一体どのようにして属性が混ざったのか等、疑問が私の頭の中でグルグルと回りますが一向に答えは出てきません。なんせ判断材料が少なすぎるので、推測しようにも推測の立てようがないのです。
(推測するならば在庫の鉄、それに仕入屋に行って保管してある物まで全て確認をしなくてはならないですけれどそんな暇は有りませんし・・・それにそんな事をするくらいならさっさと対策を立てて物を完成させなければいけませんわよね。時間がありませんもの)
今優先すべきは『何故』を探すより『どう対策するか』を考えるべきです。なので私は頭を捻っている皆へとそれを伝える為、一旦店舗の応接スペースへと場所を移す事にします。
「皆様、一旦応接スペースへ戻りましょうか。ノワール、お茶を用意してくださる?頭がスッとするような感じのをお願い」
「畏まりました」
「「「・・・コクリ」」」
一旦心を落ち着かせる為ノワールにお茶を出してもらい、それを皆でゆっくりと頂きます。
そうすると幾分か心も落ち着いたのか皆の表情も若干柔らかくなっていたので、私はこれからどうするかを話し合うため口を開きます。
「さて・・・予想外にも金属にも属性が付いておりましたけれど・・・」
「ええ、どうしたモノかしら。原因を探るべきよね?」
「任せるらっ!じっちゃんの名に懸けて探してみるらっ!」
「ろっ!グロウ達のじいちゃんって実はあのケスーコなのろっ!」
ケスーコ誰!?・・・とそれは今は良いですね。しかしやはりといっていいのか原因探しをすべきだという意見が出てきましたが、私はそれを止め、違う方針を提案します。
「少し待って下さる?」
「「「?」」」
「えっと・・・今は原因を探すより、それを踏まえてどう製作するかを考えた方が良くありませんこと?なんせもうヘファイナーの品評会まで時間がありませんのよ?」
「・・・確かにそうかもしれないわね?」
「一理あるろっ」
「でしょう?」
パメラ達はあっさりと考えを切り替えられるタイプの様で、私の提案に乗っかってきました。なので私は同時に考え付いていた案も話してみる事にしました。
「それでなんですけれど、ミスリルの属性をうまく活用して製作するなんて事は出来ませんの?」
「・・・出来ない事は無いかも知れないらっ。けど土属性となると同じ土属性、若しくは相性のいい水属性らけど・・・」
「だけど?」
「もう水の属性の素材はないらっ。だからまたとってこなきゃいけないらっ」
「・・・ふむ」
私の案は採用されそうな雰囲気でしたが、素材の問題があったようでした。
因みに水属性の素材を取って来たのはレイラなのですが、確か彼女に雑談交じりに聞いた話では場所がわりと遠目、更に準備も少し必要と言ってきた気がするので、今から取りに行くとなると時間がかかってしまうかもしれません。となるとです、違う方法を考えなければならないのですが・・・
「ん~・・・因みにですけどグラァ、ミスリルから出たのって土属性の反応だけですの?火属性が出たりなどは?」
「らっ?・・・もしかしたらあるかもしれないらっ?全部は調べてないらっ」
「ふむ・・・。万が一という事もありますし、調べてみませんこと?」
「その方が良いかもらっ」
考えた結果、もしかしたらという考えが浮かんだので提案してみたのですが、どうも可能性はありそうな事の様でした。
なので一先ず調査という事で私達はミスリルの調査をする事にし、更に並行してサマンサが属性素材が出回っているかを見て来てくれるそうなので、もしかしたら調査の結果に関わらず土属性のミスリルも使える様になるかも知れません。
「さて・・・違う属性も出てくれたらいいのですが・・・」
私は希望を呟きつつグラァ、そしてお手伝いとしてノワールとシーラを引き連れ、ミスリルが保管してある倉庫へと向かいました。
・
・
・
そしてその結果・・・
「超ラッキーでしたわね!」
「らっ。土だけじゃなくて、それだけはラッキーだったらっ」
なんとミスリルに混ざっていた属性は火・土・水・木の4種類もあり、とてもいい結果となりました。
しかしです、そうなるとまた『何故そんなに属性が混じっているのか?』、そんな謎が深まってきます。
「やはりジョン、ないし誰かが・・・っと、今は犯人捜しをしている場合ではありませんわね」
謎は一旦置いておき、先ずは製作を第一に考えるべきでしょう。
なので私達は倉庫から応接スペースへと移動して再度話し合いを再開し、その場でこれだけ属性があれば本命の火、又は他の属性の『属性剣』が作れるのではないかと尋ねてみます。
しかし何故か職人達の口からは、『そうだね!』と前向きな感じの声ではなく『そうだね・・・』と微妙な感じの声が聞こえてきました。
「・・・?何かありますの?」
そんな声を疑問に思い尋ねてみると、表情も微妙なままパメラが口を開きます。
「・・・えっと、私はそこまで詳しくないからグロウかグラァに任せるわね?」
「ならグロウが説明するろっ。これは魔道具の話になるけろっ素材を変えると作り方も変わるろっ。つまり、今までの作り方から変えなきゃいけないろっ。・・・ということろっ?」
「・・・ということは?」
「また1からの開発になるろぉぉっ!」
「えぇっ!?」
パメラからパスされたグロウの衝撃的な発言を聞き、私は驚いてしまいます。軽く『これなら属性をちょちょいと混ぜて余裕で完成ですわね』なんて考えていましたが、まさかまた1からの開発になるとは・・・。
とまだ若干余裕の考えでしたが、私は現在の日付などを思い出し計算をし始めた事で余裕がなくなってきてしまいます。
「ちょっと待って下さいまし?残りの日数は2週間程で、今までの開発の期間は2か月近くでしょう?・・・え?ええ!?」
余りの事に、あわあわとし始めてしまいましたが、グロウが続けた言葉にホッとしてしまいます。
「といってもまぁ・・・」
「・・・?」
「前作のノウハウがあるから前よりスムーズに進むけどろっ」
「・・・あ・・・そう・・・ですのね・・・ふぅ~、よかったですわ」
1からとは言いましたが、確かに一度作った経験があるのならば前回よりは大分スムーズに進むでしょう。
しかし私は再度思い出します、いくらスムーズに進むと言っても前作の開発期間は残り期間の4倍ほどです。・・・間に合うのでしょうか?
私は気になったのでそれを尋ねてみます。するとグロウはニッコリと笑い・・・
「普通にやっていたら間に合う訳ないろっ」
と言ってきました。
「ですわよねっ!?」
それを聞きまたもアワアワとし始めてしまいますが・・・普通にやっていたら?とその言葉に気付き少しだけ冷静になれたので尋ねてみます。
「『普通にやっていたら』ということは、普通じゃない方法がありますの?」
「ろっ。正直、開発の殆どは構想そして研究だったろっ。本当なら研究の部分を素人にやらせるのはあれだけろっ、今は時間がないろっ。つまり・・・」
「つまり?」
「マシェリー達にも手伝ってもらうろっ!必殺『人海戦術』を使うろっ!」
「な・・・なんですってぇぇぇええ!?」
私はグロウが言ったその方法に驚き・・・
「・・・って、それ以外に普通じゃありません?」
「ろっ?」
かけましたが、案外普通の方法じゃないかと突っ込みを入れてしまいました。
しかしです・・・この方法、確かに方法自体は普通だったのですが・・・
・
・
・
「・・・ぐぬぬ」
「・・・はぁ」
「・・・ツライ」
「ふふ・・・私は意外と慣れてます・・・」
それは正に苦行とでも呼べる内容でした。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「じっちゃんの名に懸けて!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 怪盗ジョンが暗躍をし始めますわ。
マシェリーの一口メモ
【モノ作りは繊細な作業ですので、素材が違えば方法も微妙に変わってくるんですのよ?それにここはファンタジー世界ですので、余計にですわね。素材に魔力云々なんてことがありますので。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】