第166話 相性が悪い人物。そして再開発
青色の髪と目を持つ男性、この方の何が問題なのかというと・・・この方もゲームに登場する人物なのですが、悪役令嬢と相性が最悪だったんですよね・・・。
「え・・・ええ、お久しぶりですわねフレッド。えっと・・・そちらの方は?」
「ん?こいつか?・・・なぁこの嬢ちゃん達は知り合いなんだ、自己紹介してやってくれよ」
「・・・タイラスだ」
「・・・とまぁ不愛想なやつだが、よろしくしてやってくれ」
「え・・・えぇ、よろしくお願いしますわねタイラス様?」
「・・・ああ」
この様にこの方はとても不愛想なので、本来の性格が高飛車傲慢お嬢様である悪役令嬢とは反りが絶望的に合わず、いつも陰険な感じになっていたんですよね。
(そのせいで、ルートによっては何回も半殺しにさせられている事を知っているので、正直苦手・・・というか恐怖なんですのよね)
ですがこちらが突っかからなければあちらから来ることはない筈なので、基本的にかかわろうとしなければ安全な筈・・・
(という事で三十六計逃げるに如かず・・・華麗にフェードアウトを決めますわ!都合が良い事に、ウザ絡みして来たテッショウがフレッドを見て目をキラキラさせている事ですしね!)
イリス達と行動を共にする原因だったテッショウ、彼の意識がパメラからフレッドに移っている今がチャンスとばかりに、私はイリスやフレッドに断りを入れ、この場を離脱する事にしました。
「はい。また学園で」
「おう、じゃあな!」
そしてそれはすんなりと叶う事となり、私達は彼ら彼女らから離れ、のんびりと出来そうな喫茶店へと入る事にしました。
「・・・ふぅ」
「「「?」」」
「あぁ、いえ。温泉で体が火照って熱くありません?冷たい物でもいただきましょう?」
一難去って一息ついていると皆に不思議な顔をされたので、私は取りあえず皆へとメニュー表を配り食べ物を注文しようと言います。
「そやね。お、限定味のアイスなんてあるやん。ウチこれにしよ」
「私はパフェですかね」
「・・・ふふ・・・私もパフェにしようかな・・・」
「あたしはそうだね・・・」
皆温泉に入り実際体が火照っていたのもあったのでしょう、皆キャイキャイ言いながらアイスやパフェなどの冷たく甘い物に目を輝かせていました。
「では私は・・・限定味のアイスとケーキでも・・・」
「お・・・美味しそうろっ・・・」
「グラァもダブルで頼むらっ!」
私も同じく体が火照っていたので、皆と一緒にスイーツを選びます。そうしてキャイキャイ言いながら喋ったり食べたりしていると、先程の人物の事等すっかり忘れてしまいました。・・・本当はこの人物の事について考えた方が良かったんでしょうけどね。
ともあれ・・・そうやって喫茶店で甘い物を堪能し、暗くなってきた頃に夕食を食べてから私達は帰りました。
最後に見た時は皆それぞれリラックスした笑顔をしていたので、今日の日帰り旅行は大成功と言ってもいいでしょう。
「さて・・・これで明日からいい方向へと転がるといいのですが・・・」
私は布団にくるまりながらそんな事を思いつつ、夢の中へと旅立ちました。
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明けて翌日、私は昨日寝る前に呟いた『いい方向』へと流れを転がす為、朝HRが始まる前にとある人物へと会いに行く事にしました。
「失礼いたしますわね」
訪れた場所は上位には届かずともソコソコ優秀な者が集まる1年3組の教室です。
ガラリとその扉を開きつつ声を掛けると、ソコソコ優秀なだけあり既に教室に入って授業の準備などをしていた大多数の生徒達、彼ら彼女らの視線が私達へと注いできました。
『え?あれって・・・』『あの特徴的な色はそうよね・・・』『一体何をしに・・・』『ふ・・・ふつくし・・・』『目を合わすなっ・・・』
その大多数の視線は『例のあの人が来たぞ!』的なモノでしたが、中には『ノ~ッホッホッホ、ライバルであるあてぃくしに会いに来たのですね~』という好意的?なモノも・・・って貴女ここの教室に居たんですね。
しかしです、今日はパチモンさんに会いに来たのではなく・・・
「・・・居ましたわね。お早い登校でなによりです、御機嫌よう?」
「う・・・うっす!おはようございます!」
私が会いに来たのはモブB・・・ではなく、ジョン・ラ・ビー。ビー男爵の子息です。
「ちょ~っとお話がございますの。来てくださる?」
「う・・・うっす!」
この場で大声で話す事でもないので私は彼を教室から連れ出そうとするのですが、その際教室の皆からは見慣れた?『おいおい、あいつ死んだワ』という視線が飛んできていました。
確かに彼は絡みやすそうなモブ顔男子ですが、今日はそんなことしませんよ?ええ。なんせ今日彼にする話は、ビジネスの話なのですから。
私は人があまりいない校舎の影へと移動すると、早速そのビジネスの話を切り出す事にします。
「ここでいいでしょう。単刀直入に言いますと、お話というのはミスリルの話ですわ」
「ミスリルっすか?」
このジョン・ラ・ビーという男子生徒をお忘れの方も居るかと思いますが、彼は『学園の裏支配者』ジェレミアンを倒した時にジェレミアンのターゲットにされていた人物です。
ミスリルの話が出たのは、ジェレミアンに襲撃された彼と彼の父親を助けた時に丁度ミスリルを掘り出してきていた事から、お礼としてそのミスリル関連の事業にオーウェルス家が関わる事になったからです。
そしてそのミスリル関連なのですが、夏から色々動いた末、先月に『漸く動き出せそうです』との報告があったと私は小耳に挿んでいたので、それをジョンへと問いただします。
「うっす。親父が新年の挨拶の時に報告したって聞いたっすけど、確かに先月位から領地で鉱石の製錬が始まってるっす」
ジョンは嫡男故か現場にも出ていた様で、色々詳しい事を話してくれました。それによると目的である『ミスリルのインゴット』も出来ているとの事だったので、早速ビジネスに移ります。
「ジョン」
「はい?」
「そのミスリルのインゴットですけれど・・・寄越しなさい」
「っふぁ!?」
間違えましたね。ビジネスではなく、カツアゲでしたね(てへぺろ
「いえ、全部寄越せと言っている訳ではなく、少しこちらへと流してほしいんですのよ」
「ど・・・どれくらいっすか?」
「15キロもあれば十分ですわ」
「ホッ・・・うっす!それ位なら余裕っす!言えば親父もそれ位なら土下座して差し出してくるっすよ!」
一応貴重金属であるミスリルですが、ビー家は私やオーウェルス家に借りがあるのでそれ位ノープロブレムだそうで、『直ぐに欲しい』と言うと、昼にでも家に連絡してくれるとの事でした。
「つっても多分今日中は厳しいので明日になるっす。それでもいいっすか?」
「ええ、十分です」
「うっす。何処に用意します?流石に学園に持って来るのはアレだと思うんすけど」
「ええ。指定するのでそちらに届けてもらえればよろしいですわ」
私は届け先をロギヌス工房へ指定し、そこの住所を教えておきます。
『ゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・』
と、丁度話が終わった辺りで予鈴が鳴ったので、話を切り上げ私達は戻る事にしました。ですが話は全て終わっていたので後は待つばかりです。
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その日の放課後私達はロギヌス工房を訪れ、今日の事を話します。
「本当に伝手があったのね・・・」
「ミスリルひゃっほーいろっ!」
「これで勝つるらっ!」
温泉に入っている時『恐らく入手できる』とは言ってあったのですが、実際明日届けられると聞いて職人達は喜んでいました。
というのも、今私達が開発している『属性剣』に起こっている謎の現象、これがミスリルによって解消するのではないかという期待があったからです。
「ミスリルは優れた金属で魔法を通しやすいから、最高級の魔道具にはこれが使われているろっ!でも中々流通していなかったから扱いたくても扱えなかったろっ!」
「錬金の材料としても最高らっ!これで色々作れるらっ!」
魔道具師と錬金術師が狂喜乱舞している様に、ミスリルは魔法系の素材とするには最高の触媒らしいのです。
ですから一応魔法系に属するであろう『属性剣』、これも上手くいくだろうとの期待値が高くなっているという訳です。
「明日入荷出来たら早速作ってみるわね。扱った事が無いモノだから多分明日中には無理だけど・・・明後日・・・明後日には仕上げてみるわ!」
「ろっ!そうと決まれば今から寝だめしとくろっ!」
「明日は徹夜らっ!」
「そうね!」
職人たちは張り切り、今日はもう寝るとまで言い出してしまいますが・・・流石にまだ早いだろうという事で押し留め、英気を養うために美味しい物を食べさす事にしました。
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そうやって、図らずとも職人達の連続リフレッシュ日となった翌日、工房には物理的、精神的な熱気が溢れ・・・
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ミスリルを使った『属性剣』の試作品が出来上がると言っていた水曜日・・・私達がロギヌス工房を訪れると・・・
「「「・・・」」」
そこには項垂れている職人たちの姿がありました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「真面目回が戻ってきましたね(しょんぼり」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 再び温泉回が舞い戻りますわ。
マシェリーの一口メモ
【作品によって扱いが変わったりする『ミスリル』ですが、当作品では金くらいの貴重さとでも思っていただければよろしいかと。まぁ後に『金?あんなものと比べるな』となるかもしれませんが!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




