第163話 唐突に始まる〇〇回
数本の剣を前に項垂れている3人を見て『良くない事』が起こっているんだろうなとは解りつつも、一体どのような『良くない事』なのかが知りたかったので問いかけます。
すると・・・
「何故か『属性』がうまく乗らないんだよ・・・」
との答えが返ってきました。
何故そうなるのかは原因が解らないらしく、今作っている火属性以外の属性のモノを作っても駄目だったそうです。
「今まで普通に上手くいっていたのになんでろっ・・・」
「おかしいらっ・・・特に何も変えてないはずらっ・・・季節でも関係あるのらっ?」
双子も原因を探ってはいるもののまだ検討も付いていないらしく、頭を抱え込んでいました。
「ふむ・・・」
事情も分かった事ですし、それを確かめるために私は何本も置かれている試作品の一本を手に取り魔力を少し流してみます。
すると前回剣が溶けた時と同じような嫌な感じを受けたので、そこで即座に魔力をストップさせて、改めて剣を見てみます。
「ふむふむ・・・」
その私の一流職人の様な動きに皆は固唾をのんで見守り、まさか原因が解ったのかと期待するような眼差しで見てきました。
「「「・・・ごくり」」」
そしてそれはパメラ達職人達も同じ様で、何時もなら『どれ、どんな意見かな?』とあくまで参考程度に聞く体勢なのですが、今は地獄の中に仏を見たかの様な縋る目つきで私を見ていました。
「解りましたわ」
なので私は答えます。
「何もわからない事が解りましたわ!」
「「「・・・」」」
私の答えに場が『シーン・・・』となってしまいましたが、まぁ私に解る筈もありません。私に解るのは、『職人らの考えが煮詰まっている』という事だけです。
「専門の者以上に私が解る筈もありませんわよ。そしてその専門の方々も大分考えが煮詰まっているご様子・・・」
「・・・」
「ろっ・・・」
「らっ・・・」
「なので、ここは一度リフレッシュ等してみてはいかが?」
かなり唐突ですが、私は皆へとこの様な提案をしてみます。・・・というのもです、正直言うと日々素材採取をして過酷な肉体労働を繰り返している冒険者チームの私達もかなり疲労が溜まっているので、職人達の考えが煮詰まり行き詰っている今『一度頭と体を休めて心身ともにリフレッシュするのが良いのではないか?』と、そう考えた訳です。
因みに私達が疲れている証拠と言ってはなんですが、ウチの3人娘・・・彼女らはここ最近、勉強中偶にうつらうつらと船を漕ぐ時があるんですよね。
それに・・・
「レイラも応接スペースで渋い顔をしていましたわ。あれはこの様子の事だけでなく、疲れも溜まっていたからだと思いますの。なんせ彼女は日々素材採取の他にも、貴女達のお守りもガッツリやっていますからね」
私が言った言葉に思い当たる点が幾つもあるのでしょう、職人らは考えるようなそぶりを見せ頷いていました。
「まぁ確かに考えが煮詰まっているだろうし全員が疲れているんだろうけど・・・時間もないし、ゆっくりしている暇がないから仕方がないんじゃない?」
「チッチッチ、甘いですわパメラ・・・そこで逆にリフレッシュですのよ?」
私はパメラの言葉に人差し指を振りながら答えます。
「急がば回れ。果報は寝て待て。急いでいる時こそ焦らずゆったりと動く事が肝心ですのよ」
パメラ達が今までやっていた様に『根を詰めて作業する』、これも確かに大事でしょうが、根を詰め過ぎるとドンドンと破綻してくる部分が出て来るのも事実なのです。
「まぁ騙されたと思ってリフレッシュしてみましょう?」
「うぅん・・・でもねぇ・・・」
「検証しなきゃろっ・・・」
「原因追及らっ・・・」
職人達はその言葉に渋る様子を見せますが、私は根気よく説得してみます。
そしてそれがどうにか通じたのでしょう・・・最後には『それもそうだなぁ・・・リフレッシュして見ますか』と前向きな姿勢を引き出す事に成功しました。
「うんうん。きっとリフレッシュ後にはいい案が浮かぶはずですわ」
私は長く続いた説得が成功したのと共に、『私達もこれで心置きなくリフレッシュ出来る!』との思いで嬉しくなりました。
そしてそうと決まれば善は急げ。突然決まったリフレッシュ計画ですが、私は直ぐに計画に移します。
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・
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そしてあれから2時間後の事です。
私達は・・・
「ふひぃ~・・・極楽極楽・・・視界も極楽ですわぁ~・・・」
『フィヨルド火山』近くの町、『ツクサ』の温泉に浸かっていました。
「で、何で温泉なんだい?」
これには同じ様に温泉に浸かっていた絶景さん・・・いえ、レイラも疑問だったみたいなので、私は答えてあげ・・・る前に、私はレイラへともたれかかる様に彼女の膝の上に座りました。
「???」
「あ、いえ。ここは若干深いので半身浴には不向きでしょう?ですからレイラの膝の上をお借りしましたの」
「あ、うん?」
「ふぅ~・・・あ、もたれかかってしまいましたが、よろしかったかしら?」
「まぁいいけど?」
言質を取ったのでその柔らかなお山へと頭を預け、私は先程の疑問に答えます。
「答えは単純ですわ。いつか寄ろう寄ろうと思っていたけれど、結局寄れてなかったのでついでだから来た。それだけです」
「・・・成程ね。納得したよ」
彼女も私達と同じ様にこの町へは何度も来ては『あ、今日も時間ないや』と温泉に入らずに帰っていたみたいなので、私の答えにレイラも納得した様でした。
「それに若干温かくなってきたとは言え、未だ肌寒いでしょう?となれば温泉はピッタリですわ。これが夏ならば海でもよかったのですけれどね」
「海ね・・・あたしは仕事で行く位だから、イマイチ海でリフレッシュってのは解らないね」
「え!?むむ・・・それでしたら来年は私達と海へ・・・」
「何話してるろっ?」
「ウミヘビがどうしたらっ?」
レイラと喋っていると双子が近づいて来たので、彼女らも交えて雑談を始めます。そうしていると周りでのんびりしていた残りのメンバーも近寄って来たので、温泉内でするのは少々無作法かもしれませんが、ワイワイと雑談会が始まってしまいました。
(うんうん。大変宜しいですわ。あ~・・・温泉最高・・・)
心身共に蕩けるような心地よさと光景を前に、私はこれだけでも大変リフレッシュされた思いでした。
ですがまだ時間はお昼くらいで、計画ではここからご飯を食べてのんびりして、更にまた帰る前に温泉へ入ってという風になっていたので、ここでゴールしてはもったいないというもの。
ですので私は雑談会を良い所で切り上げさせ、『次は美味しい物でも・・・』と次に行こうと皆を促します。
「「「賛成っ!」」」
皆もお腹が減っていたのか食い気味で承諾してくれたので、私達は一旦温泉に浸かるのを切り上げ、今度は美味しいモノ巡りに旅立とうと温泉施設を後にしました。
「ここは何が美味しいのかしらね?」
「ウチのリサーチによると『ワショーク』とか言うのが美味いって聞きましたわ」
そうやって飲食店を探そうとした矢先の事でした。
「へぇ・・・それじゃあそれを・・・え?」
「あ」
因縁極まれりといった具合に・・・
「・・・なんでここに?」
「・・・いえ、それはこちらの台詞なんですけど・・・?」
何故か私は、温泉街でイリスとばったり出会ってしまいました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「温泉回!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
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マシェリーの一口メモ
【正解は温泉回ですことよ!まぁ最近は真面目な回ばかりでしたので、偶には・・・ね?】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】