第161話 芸術は爆発?
それは学園でのアーデリンド襲来から数日たった日の放課後の事でした。
私達がこの頃のルーティンとも言いましょうか、素材採取をした後に、素材やらお薬やらを持ってロギヌス工房へ顔を出すと、店舗の応接スペースにだらりと座っていたパメラが私達が入って来たのに気づき声を掛けてきました。
「いらっしゃい・・・」
「こんにちはパメラ。それにしても、貴女がこっちにいるなんて珍しいですわね?」
最近はロギヌス工房へ来てもパメラは99%で奥の鍛冶場にいるので、私は珍しいと思いそう返したのですが、彼女はそれを気にせず、『それよりも・・・』と言ってこんな事を言ってきました。
「試作・・・出来たわ・・・」
「えっ?」
「だから・・・試作が完成したの・・・で、それを伝えるためにここで待ってたのよ・・・」
何とパメラが店舗に居たのは、私達に進展があった事を知らせるための様でした。しかもパメラの話を更に聞くと、完成したのはつい先程だったとの事です。
「だからそんなに疲れてますのね。ノワール、パメラに何か飲み物と軽食でも出して差し上げて」
「はい」
「あ、いや、嬉しいんだけど待って。それよりも、先に試作を見てほしいわ」
通りでくたびれていると思ったので、飲食だけでも取らせようと思ったのですがパメラ本人から断られてしまいます。
しかし試作品を見るならば他のメンバーにも見せたい所なので、他のメンバーを集める間に、それらを奥にいるであろう双子と一緒に食べておくよう言い、私達は他のメンバーを迎えに行きました。
暫くして別行動をしていたマルシア達3人娘を連れロギヌス工房へと戻って来ると、丁度レイラ達も訪れていたので挨拶を交わし、『パメラからもう聞いた?』と尋ねてみます。
「ああ、試作が完成したんだろ?」
「ええ」
「つっても前みたいに短剣でそれに火が付いたとか、普通の剣だけど色が赤いだけとか、そんなオチじゃないだろうね?」
「・・・違うわよ。ってまぁいいわ、見てもらった方が早いだろうし、早速見てもらうじゃない。来て・・・ってグロウとグラァは寝てるわね」
話は聞いていたみたいで早速見に行こうなったのですが、双子は疲れていたからか、ご飯と軽く食べた後スヤスヤと寝てしまっていました。
如何しようかとなったのですが、レイラと一緒に素材採取に行っていたメンバーが様子を見ておいてくれると言うので任せる事にしました。しかし流石にそのまま『任せた!』も悪いので、せめてと思いノワールに言って彼女らにもお茶と軽食、それにケーキを出してもらいます。
そんな感じで憂いも無くなったので、私達はパメラの後に続き鍛冶場へと向かいました。
「・・・これが試作品第1号よ」
鍛冶場へと付くと、作業台の上に乗っていた一振りの素朴な剣をパメラは私達に見せてきました。
私はそれを受け取り、じっくりと見てみます。
「ふむ・・・?見た感じは唯のロングソードですわね?だけどそうですわね・・・物はいい出来かしら?」
私は少し皆に離れてもらい、軽く振ったりしてその試作品の出来を確かめてみます。その試作品がもし普通のロングソードとすれば、飾り気などは無いですがそこそこの一品だという事が伺われる、そんな出来栄えの物でした。
「マルシア」
「はい」
私は一通り見たので次の人へと渡し、マルシアも見たので次へと順々に手に取り見ていきます。
そして全員が実際に手に取って確認すると、最後は私の元へとまた戻ってきました。
「で、パメラ、一見普通の剣にしか見えないこれは、どこがどう『属性剣』ですの?」
「説明するわね」
パメラへとこの試作品の説明を求めると、彼女はこの剣がどの様なモノなのかを話してくれたのですが、若干長い話になったのでまとめさせてもらうと・・・
「つまり、魔力を込めると『属性剣』として機能すると、そういう訳ですのね?」
「ええ。試しにやってみた所、薄く炎を纏ったわ」
との事でした。
「ってことはあたしらの様な人間には使えないのか・・・」
「今はね。まぁ追々と改良して魔法を使えない人にも使える様にはするわ」
その説明を聞きレイラが少し残念がっていましたが、それもこの後改良予定が入っている事をパメラが説明していました。
私はそれらの説明を聞き、『属性剣』としても試してみるべきだと思い『試してもいいか?』と尋ねてみます。
すると『勿論。こっちへ来て』とパメラ言い、少し広くなったスペースへと案内してくれました。
「では・・・」
そちらへと移動し、少しだけ皆へと離れる様に言った後、私は声を掛けた後魔力をジワリと剣に移します。
すると・・・
『・・・チロチロ・・・ボゥ・・・』
剣からジワリと染み出す様に炎が現れ、そのまま剣に纏わりつく様に留まったではありませんか。
「「「おぉ~・・・」」」
その光景に私達は語彙力を失い、唯々口を開けて声を垂れ流していました。しかし、そんな間抜けな表情をいつまでも見せられないと表情を引き締め、私は得意げな表情になっていたパメラへと声を掛けます。
「・・・おほん。パメラ、コレを少し振っても大丈夫?」
「大丈夫。・・・だけど、一応ちょっと待ってくれる?・・・はい、皆これ持って?」
試し切りならぬ試し振りをしてもいいかと問うと、念の為だと言ってパメラは全員にそこら辺に置いてあった盾を持たせました。
それで準備は完了となったので、私は炎を纏った剣をブンブンと振ってみます。
「・・・ふっ!・・・はっ!」
試作品1号は普通の剣と同じ様に振る事が出来、『強度が弱く空中分解!』なんてことになる事もなく、更に纏った炎は剣にピタリとくっ付き、『炎が零れてそこら辺が大火事!』となる事は無い様で、物としては『完成なのでは?』とでも言いたくなるような出来でした。
「試し切り・・・は屋内でやるのは危険ですから後日ですわね。しかし・・・凄い!やりましたわねパメラ!」
試し振りを終えた私はパメラへと称賛の声を送りました。なんせあれだけ『前人未踏!超絶怒涛のアイテム!それが・・・それこそが・・・サンシャィ~ン(ry』と言われ・・・って何か違いますね。
兎も角、今までになかったアイテムを作り出したパメラを私達は褒め囃しました。
「いやぁ・・・どうなる事かと思ったけど、どうにかこうにか完成出来そうだわ。それもこれも皆の協力あっての事よ!皆有難う!」
「いえいえそんな・・・」
「いえいえ・・・」
パメラはそれを受け有難うと、そしてそれを受けてまた私達もと・・・ありがとうスパイラルが完成してしまい、暫くの間ありがとうの言葉が鍛冶場に溢れていました。
そうやって有難う合戦を続けていると騒がしかったのか、グロウとグラァが鍛冶場へと顔を見せました。
「すっかり寝てたろっ・・・」
「らっ・・・らっ?もうお披露目終わっちゃったらっ?」
「あら、おはよう2人共。お披露目なら今さっき終わりましたわよ?」
双子はお披露目がもう終わったと聞くと少し残念そうにしましたが、ふと『なら魔力負荷の様子も見た?』と聞いてきました。
「あぁ・・・そういえば忘れていたわ」
どうやらパメラ、疲れの所為か試作品の欠点・・・というか、まだ検証し終えてない部分を忘れていた様です。
パメラは先程の有難うから一転、ごめんなさいと謝り、次いでちょっと試してみてくれないかとお願いをしてきました。
「負荷っていうと魔力を流す時間?それとも強さ?」
「ん~・・・先ずは強さ?かしら」
「解りました。やってみますわね」
私はそれを快諾し、先程の様に防御を固めてもらってから試作品へと魔力を送り始めました。
「昔ノワールから魔力の操作方法を学んでおいて正解でしたわね・・・っとと・・・」
この試作品なのですが、魔力の入りが何と言いましょうか・・・最初は普通にスッと入るのですが、そこから追加する様に入れると途端に入りづらくなり、『暴れる』ような感じになりました。
その為若干集中せねばいけなくなり、私は口を閉じて魔力の操作に意識を傾けました。
(・・・よしよし。どの位の負荷を掛ければいいかは解りませんけど、ちょっとずつ強めて・・・っ!?)
試作品に魔力の負荷をかけていると、突如嫌な予感がし、私は咄嗟に試作品へと魔法を使って退避しました。
そしてそれは間一髪だったのか・・・私が退避した後、試作品は『ボンッ』と音を立てて破裂してしまいました。
皆それを見て一様にポカーンとし、次いでパニック状態に。
大丈夫か!?大丈夫か!?と私を気遣ったり、破裂した試作品を見て嘆いたりと場はカオス状態に・・・
仕方がないので一旦お開きにして、また明日放課後に来るので話し合おうという事になったのですが・・・
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「な・・・なんで・・・」
弱り目に祟り目。まさにこの言葉がふさわしいと言わんばかりの状況に、私達は陥ってしまいました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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☆やイイネをぽちっと押すと 爆発に芸術点がつきますわ。
マシェリーの一口メモ
【『属性剣』はまんまその属性、火なら火、水なら水を纏う様な形の物になりますわ。なら木は木刀じゃん?という突っ込みにはノーコメントです。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】