第159話 素材をお届け
「あ、これもっと持って来てほしいらっ」
グラァが発したこの言葉ですが、それは勿論の事ながら嫌がらせや適当に言ったのではなく・・・
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「お邪魔しますわね~」
ロギヌス工房へと辿り着いた私達は勝手知ったるなんとやら、『本日の営業は終了しました』と書かれた看板が釣られた扉を躊躇なく開いて店内へと入ります。
「お、こんばんはマシェリー。素材でも持ってきたのかい?」
「あらレイラ、こんばんは」
すると店内の応接スペースにはレイラが居り、声を掛けられました。
私はレイラの質問に『その通り』と答え、次いでそうだとは思ったのですが、『3人の職人は奥の鍛冶場に居ますの?』と質問をします。
「勿論さ。あ、でもさっきご飯にしようって声を掛けたから、そろそろ・・・」
「ふぅ・・・あ、来てたのねマシェリー」
「・・・って言ってたら来たね」
職人達はレイラが答えている途中で姿を現し、私達に挨拶をしながら応接スペースのソファーへと腰かけました。
見ると応接スペースの机の上には何処かから買って来たのか、幾つかの料理が置いてあり、先程レイラが言っていましたが、今から食事にするようでした。
「『火鼠の皮』を持ってきたのですけれど、カウンターにでも置いておけばよろしいかしら?」
「あ、まだ食べ始めてないし受け取っておくわね?というか、マシェリー達は夕食をもう食べたの?未だなら一緒に食べない?」
「そうですわね、一緒に食事・・・と言いたい所ですけれど、今日は生憎と泊まりの申請はしていませんの。ですから遠慮させていただきますわ」
私は『フィヨルド火山』ダンジョンへのアクセス的に日帰りで十分イケると見ていたので、学園の方に泊りがけで出て来ると申請をしていませんでした。
正直なところ『そんなのかんけぇねぇ!』とブッチしてもなんとでもなるのですが、あまりやりすぎるとそれはそれでまた面倒なことになってしまうので、なるべくならすべきではありません。
なので今回はあまり遅くならない様に、『火鼠の皮』だけおいてさっさと帰り、また明日にでも顔を出す気でいました。
「そうなのね。解ったわ」
「申し訳ありませんわねパメラ。また今度誘ってくださる?」
「ええ」
「ありがとう。あ、これが『火鼠の皮』ですわ。それと・・・」
パメラが素材を受け取りに近寄って来たので、私はノワールに『火鼠の皮』を出してもらい、それを渡します。
そしてそれを渡した後、『これらも使えません?』と言いながら、他にもゲット出来たドロップアイテム等を渡しました。
「ん~・・・グロウ、グラァ」
「ろっ?」
「らっ?」
『火鼠の皮』と『その他の素材』を受け取ったパメラでしたが、本職が鍛冶であるパメラには『その他の素材』の事は判断がつかない様で、その道の担当である双子を呼びました。
「ふむふむ・・・」
「ん~・・・」
呼ばれた双子は渋い顔をしつつ『その他の素材』を確かめていましたが、結果はその渋い顔の通りの様で、『使えはするけど、今回の件に関しては微妙』出そうとの事でした。具体的に言うならば、『火鼠の皮』を使って作る属性素材への変換効率が、恐らく『火鼠の皮』の半分以下だそうです。
「そうですのね・・・少し残念ですわ・・・」
もしかしたら『火鼠の皮』より良い物があるかも知れないと思っていただけに少し残念がっていると・・・
「多分そうろっ?」
「この感じだとそうっぽいらっ」
『火鼠の皮』の現物を見ながら何かしていた双子が此方へと顔を向けたかと思うと、私へとニッコリ笑いかけ、こう言ってきました。
「あ、これもっと持って来てほしいらっ」
「もっとですの?」
「ろっ!有れば有るほどいいろっ!」
「えっ!?」
確かに微妙な数ではあったので『もしかしたら明日も取りに行かねば・・・』なんて思ってはいましたが、その様に言われるとは思ってもいませんでした。なので流石にその理由が知りたくなり、私は尋ねてしまいました。
「有れば有るほどいいだなんて・・・どうしてですの?」
「それはろっ・・・・・・」
双子曰く、今まで他の納期のあった素材で水、雷、木の属性素材を作ったらしいのですが、それらは変換効率が思ったよりも微妙だったらしく、今回とって来た『火鼠の皮』が一番良さそうだからとの事でした。
「まぁ詳しくは未だやってないから解らないろっ。けど今パッと調べた感じ、他のよりは良さそうろっ」
「だから一番変換効率がマシそうな『火鼠の皮』をもっと取って来てほしいらっ。それに確か、今日行って今日取って来たらっ?他の奴より直ぐに手に入ってるらっ」
他にも『やっぱ派手な属性と言ったら火ろっ?』とかいう品評会受けの理由とかもあったりはしましたが、『素材の変換効率がイイ+他の素材より直ぐ取ってこれる=時短=試行回数が増える』という理由から、『火鼠の皮』を出来るだけ取って来てほしいのだそうです。
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と、私達がロギヌス工房へと帰った時点からの話になりましたが、グラァが発したあの言葉にはこういう理由がありました。
「お嬢様、先程から遠い目をしてブツブツと何かを呟いていましたが、それほどまでに明日からの素材採取がお嫌なのでございますか?」
「いえ、決してそんな事はありませんわよ?」
(唯、素材マラソンにならなければいいなぁとか思いながら回想していただけですもの)
因みに現在は就寝前、つまりあの回想が終わり、学園の寮に帰って就寝準備が終わった後になります。
「それならばお嬢様、明日も本日と同じでダンジョンへと行くことになるのです。お早めにご就寝を・・・」
「確かに・・・それではもう寝る事にしますわ。おやすみなさいノワール」
「おやすみなさいませお嬢様」
『火鼠の皮』は有れば有るほどいいとの事で、私達は明日も指名依頼を出してもらい、それを受けて素材採取をしに行くことになっていました。
今日の感じですと採取量的には微妙だったので、明日はどうかなと不安になりつつも、寝なければ明日に響くとの事で眠る事にしたのですが・・・
どうもこの予感は的中し、更に『ならなければいいな』なんて思っていた素材マラソンが現実のものとなりそうでした。
更にこの素材マラソン・・・実は私達だけでなく・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「素材!素材!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと グロウとグラァがニッコリしてくれますわ。
マシェリーの一口メモ
【『属性剣』を作る素材を作る為の属性素材、それを作る為の素材が『火鼠の皮』等の素材になりますわ。そして各素材には素材にするための変換効率なるものが存在し・・・と言う感じで、製作の道は中々ややこしいんですの。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】