第158話 『フィヨルド火山』ダンジョン
学園を出発し『フィヨルド火山』ダンジョンへと向かった私達ですが、その1時間後にはダンジョン入口へと辿り着いていました。
「あっちゅう間やな」
「直ぐ近くにポータルがある街がありますもの。あの街はここの影響で温泉がでていますのよ?」
というのも理由は上記の通りで、近くにある『ツクサ』は温泉を主な収入源としている街で、『ダンジョンよりも温泉!』と、冒険者ですら温泉を目当てに来る人が居る場所でした。
まぁそれもこれも『このダンジョンが面倒な場所』、その理由につきます。
「っと、それより中へ入る準備をしますわよ。ノワール、お薬を出してくださる?」
「はい」
「しかしダンジョンへ入る前から薬使わなあかんとか、面倒なダンジョンやなぁ」
何故なら侵入する前からお薬等を使って対策しておかないと厳しいという、とても厄介なダンジョンであるからです。一応対策無しでも入れはしますが、入口近くを探索しているだけで熱にやられるでしょうし、本格的に探索しようと奥へと行くと火山の熱気でアウトになるので、どっちにしろ対策をしなければ探索はできないでしょう。
「ま、その分奥まで行くと珍しいモノがありますけれどね」
「そうなん?」
「ええ。と言っても本当に特定の人物以外には無用の長物ですから、私達には必要ありませんけれどね。今日も奥には行きませんし」
実はこのダンジョン、ゲームでも経験値、採れるアイテム共に微妙という、あまり旨みがある場所ではありません。
ならばなぜこんな場所があるのか・・・それは魔王関連のキーアイテムを設置する為に作られた、それに尽きるでしょう。
(それぞれの魔王に幾つかあるキーアイテム、それを設置する為に製作者が作ったダンジョン・・・正直イリス以外には意味のないアイテムですし、そのイリスもその魔王と絡まなければ意味のないアイテムですから、正直存在する意味のないダンジョンになりますわねここ。あ、でも温泉が湧くのですから存在する意味はあるのかしら?)
このダンジョンの存在意義について考えてしまいますが、神様でもあるまいしそんな事を考えたところでどうにもなりませんね。
という事でそんな事は忘れ、本来の目的に戻る事にしましょう。
「さぁ、それぞれお薬を飲んで錬金薬を全身に被ったのなら出発しますわよ?準備はいいかしら?」
喋ったり、益体の無い事を考えている間にも準備は進めていたので、他のメンバーにも準備は良いかと聞くと『大丈夫』と返事が帰って来たので、私達はいよいよダンジョンへと侵入する事にしました。
フォーメーションを整え、先ずは前衛である私とサマンサがダンジョンポータルへと入り、続けて残りのメンバーも入ります。
「・・・問題なしやな」
「・・・ええ。では取りあえず奥の方へ進みましょうか。多分洞窟に入るまでには目標は出現するはずですわ」
「了解」
問題はなさそうなので私達はそのまま奥へと進む事に決め、目標を探しながら歩を進めました。
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ここで一応説明しておきますと、この『フィヨルド火山』ダンジョンは3つのエリアで構成されています。
入口から順に『麓エリア』『洞窟エリア』『火山内部エリア』となっており、私達の目標であるファイアーラットは一番初めの『麓エリア』に生息しています。
なので運が良ければ直ぐに目的を達成出来でき、2,3時間も経たないうちに帰る事が出来るのですが・・・
「また外れやな」
「運が悪いですわね・・・」
今日は運が悪いらしく、目標以外の魔物ばかりに当たってしまいました。
「グォ・・・?グガァァァ!!」
しかも今回は『麓エリア』で一番厄介なモンスターである『火熊』に当たってしまい、更に向こうも気づいてしまいました。
「仕方ありませんわね。シーラ!頼みますわよ!」
「・・・はーい・・・任せてくださーい・・・」
「サマンサ!行きますわよ!」
「了解や!」
のんびりしていると向こうから先制攻撃を食らってしまうので、そうはさせまいとこちらから攻め込むことにして、私とサマンサが突っ込みます。
その間に、後衛のシーラとノワールは魔法の準備、マルシアは周囲の警戒とバックアップに回ってもらいます。
「せっ!」
「はぁっ!」
「グォォォオオ!」
「おっと!?敵さん色々凄いな」
「このダンジョン自体がそこそこのレベルですしね!まだ1つ目のエリアと言えど油断は禁物ですわよ!」
私とサマンサは敵の攻撃を掻い潜り、チクチクと攻撃を加えていきます。しかし敵の毛皮は分厚いのか、敵は私達の攻撃に煩わしさは感じるものの怯んだ様子などはなく、それどころか、鋭い爪が生えたその力強そうな腕をブンブンと振り回してきます。
ですがここまでは全て想定通り、私達の攻撃の本命は・・・
『闇の煙幕』
「グォッ!?」
ノワールの目くらまし攻撃からの・・・
『・・・水の槍』
シーラによる水魔法です。
「グガァァァッ!?」
弱点属性だからでしょう、火熊はシーラの魔法が突き刺さると大きく叫び、そのまま大の字にひっくり返ってしまいました。
しかし生命力が強いからか未だ戦える状態らしく、フラフラしながらも立ち上がろうとしていました。
「・・・シッ!」
「・・・ハァッ!」
ですがその様な状態を見過ごすはずもなく、比較的攻撃が通りそうな目や鼻へ向けて私とサマンサは攻撃を仕掛け、更にシーラも追い打ちで魔法を使い攻撃します。
流石にそうなると火熊も耐えかねたのか、再び大の字に倒れるとそのまま動かなくなりました。
「ふぅ~・・・中々手ごたえがありましたわね」
「やな・・・お、皮落としたっぽいで?これじゃあかんのかな?」
「駄目なんじゃありませんの?」
中々の強敵であった火熊は消滅し、ドロップアイテムである皮を落としたのですが、あくまで言われたのは『火鼠の皮』なので、そちらを持ち帰るべきでしょう。
「さぁ、目標であるファイアーラットを探しますわよ」
未だ探索を初めてそれほど時間も経っていませんし、疲れもそこまでないので、私はメンバーへと声を掛け引き続き本来の目標であるファイアーラット探しを再開させました。
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その後、夕方位までウロウロして何とかファイアーラットを5匹ほど倒し、『火鼠の皮』も5つ手に入れたのですが、それまでに私達は50匹ほどの目標外のモンスターを倒す羽目になってしまいました。
「これが物欲センサーとかいうやつなのかしら・・・?」
「まぁ欲しいと思うもん程手に入らんのはあるあるやからな・・・」
「ふふ・・・それにしても酷いですけどね・・・」
「ですわね・・・あぁ・・・それにしても時間がかかりすぎてしまいましたわね」
予定では昼くらいに10個ほど『火鼠の皮』を手に入れ、意気揚々とロギヌス工房へと届けに行くつもりでしたが、蓋を開けて見るとご覧の通り・・・既に時刻は夕方になっていました。
『火鼠の皮』の数も微妙ですし、これは明日にでも再び『フィヨルド火山』ダンジョンへと訪れる必要があるかもしれません。
「・・・とりあえず、一旦ロギヌス工房へ戻りましょうか」
「「「はい」」」
ですが取りあえず入手した分だけでも届けようと、私達はロギヌス工房へとアイテムを届けに行ったのですが・・・
「あ、これもっと持って来てほしいらっ」
私達を待っていたのは、素材マラソンの始まりを告げる無慈悲な言葉でした。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「主人公さん!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いです事よ?
☆やイイネをぽちっと押すと 押した分だけ望みの素材が入手できますわ。
マシェリーの一口メモ
【魔王関連のキーアイテムは1つだけではなく、モノによっては手に入れた後、イベントでスキルが覚えられたりしますわ。ですからキーアイテムとは言いつつも、必須アイテムではありませんの。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】