第157話 ライバルへの罰ゲーム設定と出発準備
思いがけず言われた言葉に私はフリーズしていたのですが、それを見てイリスは『続きを話せ』と解釈した様で、続きを話し始めました。
「少し前に品評会のお手伝いをして、その結果を持って勝負するといいましたよね?あ、だから勝負とは違いますね・・・えぇ~っと、言い直します!品評会の勝負結果で負けた方が、送る会で出し物をする事にしませんか!?」
フリーズした所にそんな事を言われたものだから意味が解りませんでした。・・・いえ、フリーズしていなかったとしても解らなさそうです。
なので動く様になった頭を使ってイリスの言葉の意味を考えつつ、もうちょっと補足説明をしてくれる様に言ってみます。
「えぇ~っと・・・どういうことですの?」
「えっと・・・だからですね・・・・・・」
そこからイリスが説明し、私が更に聞くという事が繰り返され、漸く彼女の言いたいことが解りました。
「つまり、あの時勝負をして負けた方がいう事を聞くと言ったけれど、それだとお互いに無理な事を言うかもしれないので一旦無し、というかランクを落として、『負けた方が送る会で有志として出し物をする罰ゲームにしよう』と、そういう事ですのね?」
「そうです!」
イリスが変な事を言い出しましたわ~なんて思っていましたが、蓋を開けて見ると案外中身はまともでした。
恐らくですが、頭が冷えた後に『ついついヒートアップして変な約束しちゃった~』と思ったか、若しくはグウェル殿下かイリアスに『負ける気はないけど、負けた時に何を言われるか解らないから条件を訂正した方が良い。それに勝ったとしても相手の立場もあるからあまりへんな事も言えない』といった感じの助言をもらったのでしょう。
「まぁ・・・いいでしょう」
それに対し私は、少し考えた後に了承をしました。というのも、元々はテッショウに言われた言葉にイラッとしたのがきっかけで勝負するなんてことになってしまったので、正直イリスと約束した『負けた方がいう事を聞く』の内容についてはそこまで思う所がないのです。
なので落とし所として今回のイリスの提案は丁度良く感じ、私はこの提案に乗っかる事にしたのです。
「本当ですか!?」
「ええ。ですが・・・」
「ですが?」
しかしです、このまま素直に『はい』と言って向こうに唯従うのも、それはなんだか私達の関係的に『それはない』と感じたので、罰ゲームは私が設定させてもらうとしましょう。
「そうですわね・・・一発芸。出し物は一発芸に固定する事にしましょうか」
「い・・・一発芸ですか?」
「ええ」
酷過ぎず楽過ぎずとの事で、私は一発芸を出し物にと提案をします。これならば出し物としてもまぁまぁですし、内容が受けても受けなくてもそこそこ恥ずかしいので罰ゲームにはなるでしょう。
「・・・解りました。それでいきましょう」
イリスは少し考えた後『その位なら大丈夫かな?』と判断したらしく、了承の意を示します。
そしてそれで話がまとまったと思ったのでしょう、シフロート先生へと伝えて来ると言って教室の出口へと向かいました。
私達も予定があるのでこれ以上絡む事はせずそれを見送ろうと思ったのですが、最後にイリスがこちらを振り向き声を掛けてきました。
「マシェリーさん」
「なんですの?」
「こういう提案はしましたけど、勝負に負ける気はありませんからね!覚悟しておいてくださいよ!」
「・・・」
彼女からかけられた言葉に私は少しだけ嬉しくなりました。なんせこの様な言葉を掛けて来るという事は、彼女の方から私を意識すべき相手と認識していると言う事だからです。
(これまでは私の方から一方的に絡んでいる事が殆どだったのに、彼女の方からこの様にライバル的扱いをしてくれるなんて・・・いいじゃありませんの!)
「ふふ・・・ふふふ・・・それはこちらの台詞ですわよイリスさん!精々観衆に受けるような一発芸を磨いておくとよろしいですわ!オーッホッホッホッホ!」
イリスは私がそう言うと一瞬怯んだようになりましたが、直ぐに持ち直したのか、私へと不敵な笑いを『フッ』とだけ浮かべ教室から去って行きました。
「イイじゃありませんのイリス!それでこそ私の知っている・・・!オーッホッホッホ!」
その様に私は、私が知っている彼女を見た気がして嬉しくなり、高笑いを浮かべた上機嫌のまま教室を出ました。
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あれから私は2,3日上機嫌のまま過ごし、放課後の素材採取が物凄く捗るフィーバータイムとなっていました。
ですがそのフィーバータイムが落ち着き通常思考へと戻ると、フィヨルド火山へ行くための準備をしていない事に気付き焦る事となってしまい、それからの時間は週末のダンジョンアタックに向けての準備が進められる事となりました。
「ひぃひぃ・・・こんな短期間で作れだなんて・・・鬼過ぎます・・・」
因みに準備をする中で一番きついのは、『ダンジョンアタックまでに耐性薬を作ってくださいね?』と言われたシーラでしょう。・・・まぁ私が言ったんですけれどね?
「うぅ・・・錬金薬の方みたいに・・・予め準備しておいてくれたら良かったのに・・・」
フィヨルド火山へと行く事に際し『薬師が作るお薬』と『錬金術師が作る錬金薬』の2つが必要と言いましたが、錬金薬の方は以前偶々見かけた時に買ってあったりしました。
それならシーラの言う通り、お薬の方も探して買っておけば良かったじゃないかと言われるかも知れませんが、こんなに急に必要となると思っていなかったんですよね。しかもいざとなれば『シーラに作ってもらえばイイや』とも思っていたので余計に。
「ごめんなさいねシーラ。でも頑張ってくださいまし!週末にフィヨルド火山へいけるかどうかはシーラに掛かっていますわ!」
「うぅ・・・期待が重すぎです・・・」
「シーラならいけますわ!だってシーラは薬学に掛けては天才じゃありませんの!未来の薬王に不可能は有りませんわ!よっ!未来の美人過ぎる薬王様っ!」
「え・・・?あ・・・えへへ・・・」
と、この様にシーラをヨイショして作業の応援をしてみたり、物資や装備担当のサマンサへも同じ様にヨイショしたりと進めていると、何とか週末までに準備を終える事が出来、そして・・・
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「さぁ、それでは出発いたしましょうか」
来る週末の土曜日、その早朝・・・私達はいよいよフィヨルド火山へと向け出発しました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【フィヨルド火山対策のお薬ですが、普通の物は飲んで体内へと熱耐性を付け、錬金薬の方は体や装備に振りかけて外から熱耐性を付ける感じになりますわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】