第156話 素材調達の振り分け
「納期のある素材4つの内、3つは手に入らなかったんですのね?」
「やな」
サマンサが報告してくれた結果、納期のある素材の内1つだけは買えた様ですが、残り3つはそもそもの流通量も少ない物らしく買えなかった模様です。というより、1つ買えただけでもラッキーだったのかもしれません。
「後、他にも必要量に足りない物がちらほらと・・・ね・・・」
「そっちは納期が緩いっちゅう話やけど、どうも聞いた話入荷が不安定になりそういうんで、そっちも採りに行った方がええかも?」
「ふむふむ・・・」
他の納期を指定されなかった物の結果も微妙に芳しくなかったため、再度サマンサから足りなかった物の品名と量を聞き出し、それらをどうするかの話し合いをする事にして、それ等の品物の採取場所や難易度を考慮し話し合いをします。
そしてその結果、こちらも指名依頼を掛けてもらい採りに行く事にしたのですが・・・
「ここから先はレイラも交えて話を進めたい所ですわね・・・」
「確かにそうね」
正直な話、この採取の話については兼業冒険者で時間の限られている私達より、専業冒険者で時間の自由が聞くレイラの方が頼りになります。
ですので、ここからの依頼を振り分ける話についてはレイラが居てくれた方が助かるのですが・・・
「お?今日はマシェリー達も交えて話かい?」
何て言っていたら神懸ったタイミングでレイラがロギヌス工房へと現れました。
「レイラ・・・貴女救いの女神ですの?」
「は?いや、そんな訳・・・って何で抱き着くんだい!?」
そんなレイラが神々しく見えてしまい、私はついついレイラへと抱き着いてしまいました。・・・レイラはやはり女神なのかもしれませんね。抱き着いた感触がしっかりしているのですが柔らかさもあるという、神懸った感触でした。
と、いつまでも抱き着いている訳にもいかないので適度な所で離れ、私は先程までの話をレイラへと話します。
「成程ね。そんな美味しい話を回してくれるってんなら受けない訳にはいかないね」
指名依頼は大分融通が利くので、『納期』と『依頼料』を優良設定にすると言った所、笑顔で請け負う事を約束してくれました。
「ありがとうレイラ。で、ここからが本題ですの。これらの素材の依頼をどう振り分けるかなんですけれど・・・」
なのでレイラが来るまでの続き、依頼の振り分けについての話を始めます。
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翌日、昼食を食堂で食べた後、私達はお茶を飲みながら振り分けられた依頼について話をしていました。
「レイラが納期付きの残り3つの内2つ受けてくれたから助かりましたわね」
「やな。他にも足りへんもんの大部分は任せてくれ言うし、レイラ様様や」
結局レイラは依頼の大部分を受け持ってくれると言い、時間の限られている私達はその言葉に甘える事にさせてもらいました。
しかしそんなことになってしまい、今では『素材採取は私達にお任せ!』なんてあんな大口を叩いたのが大失敗だと恥ずかしくなっていました。
「で・・・でもまぁ・・・一番難易度が高そうな『火鼠の皮』を採りに行く事にしましたし、ちょっとは面目が保てているはず・・・ですわよね・・・?」
「ん?」
「なっ・・・何でもありませんわよっ!オーッホッホッホ!」
ついつい心の声を呟いてしまったのでわらって誤魔化します。
「ふふ・・・確かに難易度高いかも知れませんね・・・『火鼠の皮』・・・」
が、微妙に誤魔化しきれず、話を広げられてしまいました。ですがここで不自然に切ると火傷しそうなので、あえて話しに乗る事にします。
「え・・・ええ。なんてったって『火鼠の皮』を落とすモンスター『ファイアーラット』が出現する場所が『フィヨルド火山』ダンジョンですものね」
「はい・・・聞くからに暑そうです・・・暑いの苦手なんですよね・・・」
「貴女達はあそこがどういう場所か知っていませんの?」
「はいぃ・・・知りません・・・」
「ウチも知りませんわ」
「私も知りませんね」
「あらあら・・・」
どうも全員『フィヨルド火山』ダンジョンの事は知らないようでしたが、私が知っているだろうから大丈夫だろうと、そんな考えでいたそうです。
誤魔化すために広げた話ですが、丁度イイので軽く説明をしておく事にしましょう。
「では大まかに教えて差し上げますわ。あそこはざっくり言うならば・・・対策なしで入ると文字通り『大火傷』を負う場所ですわね」
「「「?」」」
「火山と付くだけあって、フィールド全体がとても高温になっていますの。鉄鎧を着ていったら、鎧の上で目玉焼きが焼けますわ」
「「「!?」」」
ダンジョンはポータルで区切られているので、一歩でも外にいるならば何もないのですが、ポータルの中へ入ろうものなら地獄の様な熱気漂う灼熱のフィールドが待ち受けています。
ネタとして『あつすぎて○○の上で目玉焼きが焼ける』というのがあると思うのですが、『フィヨルド火山』ダンジョンは本当にそうなる位に暑いのです。
「で、対策と言いましたけれど、それは主にお薬になりますわね」
「え・・・お薬・・・です・・・?」
「ええ。といってもシーラが作る様なお薬の他に、錬金薬も必要ですけれどね」
この世界では熱気や冷気等が漂う特殊フィールドの対策として、シーラが作る様なお薬とグラァが作る様な錬金薬を併用する、若しくはどこぞのダンジョンから出る装備や作った対策用魔道具を使うと、大まかに分けて2通り有ります。
後者の方は今から用意するとなるとかなりの時間がかかるでしょうからパスとなるので、必然的に前者のお薬を使う方法になる訳です。
「で、お薬を使うのは良いんですけれど、それが意外とコスパが悪いと言うか・・・簡単に言うならば、お金が掛かりますの」
「「「へぇ~」」」
「ですからお薬を使ったところで懐が痛んでも痛くない私達が『フィヨルド火山』へと向かう事にしましたの。まぁ別にレイラ達へお薬を支給してもよろしかったんですけれど、万が一レイラが『いや、それは悪い』なんて言ってしまったらと思い、私達が引き受ける事にしたんですの」
「「「成程」」」
「とまぁ、簡単に説明するとこんな感じですわね。あ、シーラには後でどのようなお薬を作るか説明しますわね?」
「ふふ・・・解りました・・・任せてください・・・」
と、ここまで説明した所でお昼休憩が終わりに近づいていたので、私達は昼からの授業に向けて食堂を後にする事にしました。
昼からの授業は何らアクシデント等もなく平穏に過ぎ、『放課後は私達が担当になった微妙に足りない素材、それをちまちまと集めましょうか』なんて平和に話していたのですが、帰りのHRに差し掛かった所、アクシデントというか・・・ひと悶着起きてしまいました。
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それは帰りのHRでシフロート先生がこの様な話題を出した事から始まりました。
「え~・・・現在2月に入り、来月には6年生の卒業式があります。そこで、卒業を送る会が毎年開かれるわけですが、各クラス毎に出し物をする事になっております。と言っても、大体が歌と卒業するにあたっての言葉を送る位なのですがね」
(・・・そんなイベントありましたっけ?・・・あ~・・・卒業する時にだけちょろっとそんな描写があった気がしますわね)
私にはうっすらとしたモノしかありませんでしたが、確かにその様な催しがあったという記憶があり、シフロート先生の話をそのまま聞いていると、大体の定番の歌を教えられ、その中で1曲選ぶことになりました。
皆としても早く帰りたく、更に選択肢を与えられていたのですんなりと歌は決まり、卒業に当たっての言葉は・・・
「グウェル殿下、お願いできますかな?」
「ああ。承った」
私のクラスにはうってつけの人物が居りましたので、自動的にその方が担当する事に決まりました。
と、ここまではすんなりと、そして何事もなく話が進んでいたのですが、次の言葉がひと悶着起きるきっかけとなってしまいました。
「それでは無事決まりましたので、これから放課後に週2,3回の練習をしようと思いますのでそのつもりでいてください。ああ、それと、送る会では有志による出し物も許可されておりますので、なにか6年生の為にやってあげたいと思われた方は申し出てきてください。まぁ、1年生の君達は6年生と余り面識もないので、1年生が何かやるという事は稀ですが」
この言葉、普通ならば『ふぅ~ん』で流すところですし、私も実際『ふぅ~ん。週2,3回練習がありますのね。まぁその位なら大丈夫でしょう』と流しながら、素材採取の事を考えていました。
しかしです、最近『どうした主人公!?』という面が色々見られる私のライバルはそうではなかったらしく、HRが終わり教室から出ようと言う時・・・
「マシェリーさん!ちょっと待って下さい!勝負しませんか!?」
「・・・え?」
何時もなら私が言いそうな台詞を、彼女の方から言ってきました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「イリスさん?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
☆やイイネをぽちっと押すと レイラの神懸ったポーズが見れますわ。
マシェリーの一口メモ
【ゲームでは火山などの特殊フィールドゲームを無対策で行きますと、秒間でダメージを食らう仕様となっておりますわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】