第154話 輝く短剣
パメラ達が見せて来た短剣は、『キラーン』といった音が聞こえるほどに輝く綺麗な短剣でした。
「ふむ・・・?」
私はそれを受け取りしげしげと眺めます。
ですがその短剣は綺麗に輝く以外特に変わった様子のない、ごくごく普通の短剣の様に見えました。
「ん~?・・・サマンサ、パス」
『私が解らないだけかしら?』、そんな事を思いサマンサへ渡してみるも反応は私と似た様なモノで、そのサマンサも『ん~・・・マルシア、パスや』といって次の人へと回してしまいます。
そして『パス』『パス』『パス』と巡り巡って短剣は私の元へと戻って来たので、私はパメラへと白旗を上げます。
「ごめんなさいパメラ。この短剣は私達には唯の何の変哲もない短剣にしか見えませんわ」
私がそう言うと、パメラは『ん?ああ』と何か気づいた様子になり、鍛冶場の扉や窓を閉め始め、付いていた明かりも消し始めました。
『急に何故そんな事を?』と最初は思ったのですが、直ぐにその理由が解りました。
『キラーン』
なんとこの短剣・・・『キラーン』は擬音でもなんでもなく、本当に光っているため『キラーン』と輝いていた様なのです。
「まるでサイリウムですわね・・・」
その短剣は、まるでコンサート会場で振るあの光る棒の様で、私はついつい短剣をフリフリしてしまいます。
その様子が見えたからか、パメラは再び鍛冶場の明かりをつけたり、扉や窓を開け始めました。
「解った?つまりそういう事よ!」
「はあ・・・?」
『解った?』と言われても私にはさっぱり解りません。なのでそう返事をするとパメラは『解らないのっ!?』といった顔をした後私から短剣を奪い取り、鍛冶場の隅に置いてあった丸太へとその短剣を振るい始めました。
「ほら!こういう事よ!ねっ!?」
「はあ・・・?」
「だーかーらーっ!魔道具化しているけど普通に短剣として使えているでしょ!?」
「「「あぁっ!!」」」
ここに来て私達は漸く理解が出来ました。
パメラが振るう短剣は魔道具化させた武器の一番のネックであった耐久面、それが解消できているのです。
「「「おぉ~・・・!」」」
それが解った私達は今更ながらパメラ達へパチパチと拍手を送ります。
それを受けパメラとグラァはドヤ顔を決め始めましたが、唯一魔道具師であるグロウだけはそうではなく、『けど・・・』と言って口を開きます。
「正直簡単な構造で光る様に出来ただけなんろっ。だからまだまだ課題は山積みだと思うんろっ」
グロウがそう言うとドヤ顔を決めていたパメラもハイテンションだったのが一気に戻ったのか、スンと真顔になりました。
「たしかにそうね、うん。しかも耐久面でクリアーしたとか言ったけど、正直こんな果物ナイフみたいな短剣でクリアーしたって喜ぶのも違うわよね」
グラァもそれに釣られたのかドヤ顔から何時もの顔へと戻ります。
「らっ。そうらっ・・・でもこれ以上のサイズにしようと思うと材料・・・いや、試作の為の材料費だけでも破産らっ・・・」
各々が言った言葉に現実を思い出したのか、先程までの浮かれムードから一転、お通夜みたいなムードが漂い始め、職人達は大きなため息をつき始めました。
「あ・・・あ~・・・取りあえず・・・何時もの様に美味しいモノを持ってきたので食べませんこと?食事はまだでしょう?」
流石にこのムードはよろしくないと思い、『元気を出すには美味しいモノを食べればいい!』なんて単純な思考の元パメラ達へと食事をする事を提案します。
ですがズーンと沈んだ彼女らは声を掛けても動こうとしません。なので私達が背を押して強制的に店舗の応接スペースへと移動させ食事をとらせます。
するといくらか効果があった様で、食べている内に彼女らは少し元気を取り戻し、何時もの状態位へと持ち直しました。
「ほら、コレも食べましょう?魔道具化武器製造達成のお祝いですわ」
「うん・・・うん。ありがとマシェリー」
「嬉しいろっ」
「らっ!美味しそうなケーキらっ!」
そして何時もはもう少し経ったあとにおやつとして出す予定だったケーキを取り出し、『祝!魔道具化武器製造達成!』と称してお祝いをする事にします。
そこまですると彼女らの表情はドヤ顔とまではいきませんがニッコニコの笑顔に変化をしたので、無事元気を出させるという目的は達せられました。
そうなるとです、次は魔道具化武器の製造が成功したということを踏まえてのお話をせねばなりません。なんせ現在の日付は2月2日、品評会がある3月中旬までの時間はそこまで余裕があるという訳でもないからです。
「パメラ、進展があったのは良いんですけれど、正直どうですの?」
「ん?ん~・・・そうね・・・」
少し曖昧というか解りにくい聞き方でしたがパメラは解ってくれたようです。ですが何と答えていいかは考えがまとまっていなかったみたいで、少し考えた込んだ後口を開きました。
「専門的な事を言っても解らないと思うから、マシェリー達にも解りそうなことだけ言うわね?」
「ええ」
「このままの調子でいけるなら品評会に出す品物の完成はギリギリだけどイケそうね。だけどそれには試作をバンバン作る必要があって、その材料が足りないわね」
「ふむふむ・・・」
本当に分かりやすく簡潔に言ってくれましたが、要するに『開発費が足りない』と、そういう事だそうです。
ですがその様な事ならば全く問題はなく、寧ろ私にとっては得意分野?です。
「そういう事なら任せてくださって結構ですわよ?なんせ私のマネーパゥワーは53万ですもの」
マネーパゥワーが5ぽっちの貧乏人とは違うのですよ!という訳で、今こそ有り余る実家の力を使いマネー無双と行きましょう。
「さ・・・さすが貴族様は違うわね・・・。でもねマシェリー、お金はあっても市場自体が品薄状態かも知れないから、いくらマネーパワー?があっても難しいかもしれないわ」
「えっ!?」
とか思っていたのですが、全部が全部お金で解決できるものでもないそうです。
「あー・・・確かにそうかもしれへんわお姉様。品評会がある時期て冒険者の活動もちょい鈍なるし、魔道具関連の素材はちょい厳しいかもしれへん」
実家が商いをしているサマンサがその様な事があると思い出し、補足説明をしてくれたので間違いはなさそうです。
という事はつまり・・・
「私達の出番という事ですわね」
お金で解決はできないが、物自体は行けば採取可能。『となればここは冒険者である私達の出番でしょう!』そう思い声を上げたのですが、パメラは何故か『え?』という顔をしていました。
「何か問題ありまして?」
「あ、いやゴメン。そういえば冒険者だったわね貴女達」
「え?」
「最近はご飯を持って来てくれたり、お風呂で背中洗ってくれたり、そういう様な姿ばっかり見てたから、てっきり貴族だけどお世話をやいてくれる物珍しい子達だと思っちゃってたわ」
確かに最近は美人なパメラやプリティーな双子に『あーん』ってご飯を食べさせたり、『痒いところはありませんこと?』とか言いつつきわどい所をさりげなく洗ったりとか、そんな事ばかりして冒険になど出かけたりはしていませんでしたが、最初に『私達は冒険者』と言って自己紹介をしました。忘れてもらっては困ります。
「心外すぎますわよパメラ」
なので抗議の声を上げておくとします。
・・・と、今はそんな事は水に流すべきでしょう。
「まぁ聞かなかったことにして・・・改めて、私達の出番ですわよねパメラ?」
「ごめんごめん。ええ、そうね。今こそ貴女達冒険者の力を借りる時だわ」
いよいよ私達の出番がやってきたのですから。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「サイリウムセーバー!」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
☆やイイネをぽちっと押すと 私が輝く短剣で必殺のオタ芸を披露・・・なんてしませんわよ?
マシェリーの一口メモ
【魔道具の材料にはモンスターの体なんてものが使われたりもしていますわ。勿論それだけでなく、鉱石だったり錬金した薬だったりもありますけれどね。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】