第150話 世紀の大発明?
「グロウ様とグラァ様を見て閃いたのですが・・・武器作りに魔道具作りと錬金術のノウハウを加えてみてはどうでしょう?」
「え?」
ノワールが提案して来た内容を聞いて、私は目を丸くします。
「本日お嬢様がパメラ様へとお話になったアイディアですが、あれは鍛冶だけでなく魔道具や錬金術の分野にも掛かっているのではないかと思いまして。魔法剣はともかく、属性剣はお二方の知恵を借りればもしかして実現できるかもしれません」
ノワールの補足説明を聞きその内容が頭に染み込み始めると、元から私の頭にあったであろう記憶が『カチリ』と嵌り私の頭に閃きが宿りました。
(た・・・確かに!言われてみて思い出しましたけど、幾つかの作品にはそんなお話もありましたわっ!!)
鍛冶と言われたので鍛冶だけで事を治めないといけないと考えていたので盲点でしたが、私の前世の記憶フォルダーを漁ると色々な記憶が出てきます。
「言われてみれば鍛冶だけ使って武器を作らねばならないとは言っていませんでしたものね!こうしてはいられませんわっ!!」
普段ならば『急がずともパメラやグロウ、グラァは逃げませんもの。慌てず優雅に行動を成すのです』なんて言い取りあえずこのティータイムを終わらせてから行動したのでしょうが、この時の私は『私の属性剣が誕生しますのね!やっぱり私の考えた武器がさいきょうですのよ!!』という考えに加え『世紀の大発見!!』というワードに頭が侵食され、考えるよりも先に体が行動を始めてしまいました。
「いきますわよグロウ!グラァ!」
「ろっ?ろおおおおおおっ!?」
「らっ?らああああああっ!?」
私はグロウとグラァの腕をガシッと掴み店を出て、一目散にロギヌス工房を目指しました。
私は無意識に魔法を使っていたのでしょう、まるで風の如き素早さでロギヌス工房への道を進みます。
そして・・・グロウとグラァはそんな私のとばっちりをもろに受けていました。
「ろおおおおおおっ!!ス・・・ストップろおおおおおおっ!!っていうか何で体が浮いてるんろおおおおおおっ!?おかしいろおおおおおおっ!」
「そんなの魔法しかないらああああああっ!!」
なんせ魔法を使ってフルスロットルです。手を掴まれ体が浮いている2人はとても怖かったでしょう。
ですがそんな状態は早々に解除されます。
「パメラーーー!」
何故ならロギヌス工房に着いたからです。
「パメラパメラパメラー!?」
私はロギヌス工房へとずかずかと入り込み、店舗部分に居ないと解ると奥へと勝手に進んで行きます。
そして熱気吹き出す炉の前で作業に集中していたパメラを見つけると両手のグロウとグラァをパッと放し、空いた手でガシッとパメラの肩を掴みます。
「パメラっ!」
「・・・」
私がパメラの肩を掴むと流石に気付いたのか、彼女はこちらを見てきます。しかし彼女の目は鋭く、友好的な目つきではありませんでした。
ですが頭が『大発見!』の文字に埋め尽くされている私はそれに気付かず、自分がここに来た理由を話そうとしたのですが・・・
「パメラっ!聞いてくださいまし!とても良い・・・」
「ちょっと今作業中だから黙ってくれる?っていうか作業中に近寄ると危ないから離れて?」
「・・・あ・・・はい・・・」
唸る様な低い声でパメラに返答され、言葉を遮られてしまいました。
私は漸くそこで頭パッパラパータイムが終了し、スッとパメラから離れ自分の今の状況を鑑みました。
「わ・・・私ったらつい暴走を・・・あっ!グロウ!グラァ!ご・・・ごめんなさいな・・・私ってばつい・・・」
「ご・・・ごめんで済んだら騎士団はいらないろ・・・」
「取りあえず今は休ませてら・・・」
「はい・・・あ、パメラ、店舗の応接スペースを少し借りますわね・・・?」
「ええ」
今の状況を考えた時『先ずは連れて来た2人だ』と2人を見るとグロッキーになっていたので、パメラに声を掛け2人を丁寧に店舗の方へと運びます。
そして2人を応接スペースのソファーへと運び終わったくらいで喫茶店に残してきたノワール達がロギヌス工房へと現れたので、私はノワール達にいきなり出て行ったことを謝罪しました。
その後グロッキー状態のグロウとグラァを介抱していると、奥の鍛冶場からパメラが出てきました。
「マシェリー!作業中にいきなりあんなことしちゃ駄目じゃない!下手したら大怪我しちゃうんだからねっ!?」
「もっ・・・申し訳ございませんわパメラ!」
パメラは開口一番先程の事を怒って来たので私は謝罪します。10分程鍛冶場でのルールや危険性を懇々と説明され怒った後パメラは納得したのか、いつもの優しい姉御状態へと戻りました。
「で、いきなり何の用だったの?あんなに急いでいたから何か急用だった?あ、そしたらちょっと悪いことしちゃった?」
「いえ、急用と言うほどではありませんの。唯世紀の大発見というか、まぁ未だ可能性だけなんですけれど・・・」
「んん?」
優しい姉御モードのパメラが私があんなに慌てていた理由を聞いてきたので訳を話しだすと、彼女は唯々それを黙って聞きます。
そして全て話し終えると、少し難しい顔をしました。
「どうしましたの?」
「鍛冶の技術に魔道具作りと錬金術のノウハウを加える何てことできるのかな?って思ってね?」
パメラはどうやら鍛冶の技術に他の技術を組み込む事が本当に可能なのかと考えている様でした。私の考えだと『出来る』の一択だったのですが、本職の人からすると無理に思えるのでしょうか?
「出来ると思うのだけれど・・・グロウにグラァは・・・って、まだ喋れなさそうかしら?」
「も・・・もうちょっと待つろ・・・」
「まだ体がふわふわするのら・・・」
「本当にごめんなさいな2人共・・・。待ちますのでゆっくり休んでくださいな・・・」
「ろぉ・・・」
「らぁ・・・」
「あ~・・・その間私は残りの仕事をやって来てもいいかしら?仕事が残っている状態だと頭もスッキリしなくて考えが捗りそうにないのよ」
「ええ勿論。一度帰ったのに再度何の連絡もなく訪れたのはこちらですもの」
「悪いわね。それじゃ・・・」
双子の状態が回復するまでは未だ時間がかかりそうだったので、未だ仕事が残っていたパメラを鍛冶場へと送り出します。
パメラを送り出した後は双子の回復を待つばかりでしたので、ノワールへと飲み物やお菓子、軽食何かを買って来てくれと頼みます。
「・・・畏まりました。が、絶対先程の様な突発的な行動はとらぬようにしてください。何かあれば全員で行動してください」
ノワールに少し小言を言われましたが『解った』と言って送り出し、双子の介抱を続けます。
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「ふぅ・・・お待たせ。終わったわ」
「お疲れ様でしたわパメラ。飲み物やお菓子、軽食等を揃えましたので、よろしかったら如何かしら?」
「ありがとう。貰うわね」
パメラが奥の鍛冶場から戻って来る頃にはノワールも買い出しから戻り、双子もグロッキー状態から回復していたので飲食をしながら話をする事にしました。
私達はお菓子を摘み、火の前でガッツリ汗を流してきたパメラは軽食を摘まんだ所で、再度先程の話を再開させます。
「グロウ、グラァ、パメラが来るまでに話した事は覚えていますわよね?」
双子には話がスムーズに済むよう予めパメラに話したのと同程度の事を話してあったので、話の前振りとしてそう尋ねます。
「ろっ」
「勿論らっ」
「で、結論としては出来そうだったりしますの?武器に魔道具の技術や錬金術を応用することは?」
あっさりと尋ねてみたモノの、私は内心ドキドキしていました。なんせここで明確に『どう考えても無理ろっ』とか『そんなことしたら武器は爆発するだけらっ』とか言われてしまえばその時点で『私のアイディア武器』、ひいては『世紀の大発明』への道が潰えるからです。
「それは・・・」
さて・・・発明王も認める凄腕の魔道具師と錬金術師の回答は如何に・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「暴走特急お嬢様」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
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マシェリーの一口メモ
【双子を浮かせるときに無意識で使った魔法は高位の闇魔法ですわ。無意識にそんな物が使えるなんて、私ってば凄すぎじゃありませんの?】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




