第144話 レイラの頼み事
『頼みごとをしていいかい?』、そう言われた私は特に何も考えることなく『どうぞ?』と言い、レイラに頼みごとの内容を話す様に促します。
「マシェリーはヘファイナーの品評会って知っているかい?」
「ええ。存在だけならば」
レイラが前置きとして話したヘファイナーの品評会、これはファースタット国で年に1,2回不定期に開催される武具・防具の品評会の事です。名前の由来は昔ヘファイナーという鍛冶の神様的職人がうんぬんかんぬん・・・。
因みにこのヘファイナーの品評会ですが、ゲームでは『あのヘファイナーの品評会で優勝した男・・・それが俺だ』みたいな感じでテキストに出て来た位で、私がマシェリーになってからも品評会自体には興味が無いので見に行ったことなどはありません。・・・まぁ装備の為に後で上位だった者が誰だったかはチェックしていましたが。
「ま、そうだよね。武器や防具のマニアくらいしか見に行かないだろうし、『誰々が優勝した、その人は何処何処に住んでいる○○だ』なんて情報は冒険者ギルドにでも行ったら解る事だしね」
「ええ。で、ヘファイナーの品評会がどうかしましたの?」
「んっとさ、実はあたしのこの剣・・・これを作った馴染みの鍛冶職人がヘファイナーの品評会に出るそうなんだけどさ・・・ちょっと知恵を貸してほしいんだよね」
レイラが差し出してきた剣を受け取り確認すると中々の一品だという事が伺えたのですが、あくまで私達は武器を使うだけ、作る方には全く持って知識等ありません。
「マルシア、サマンサ、鍛冶については?」
「鉱石の良し悪しなら多少は。ですがそれ以上の事は全くわかりませんね」
「ウチもモノがエエんかアカンのかくらいしか解らへんですね」
もしかしたらと武器を仕入れて来たりする2人に聞いてみるも、やはり鍛冶の事にはさっぱりな模様。つまり私達に知恵を貸してくれなんて言われたところで、『高級な材料を使えばいい!』位しか言えないのです。
「レイラ、この剣を見るに中々の腕をお持ちの職人だと思いますの。なので、鍛冶に対して素人の私達は何も言えませんわ」
ここで知ったかぶりをして何か言っても如何にもならないのでズバリとそう言ったのですが、レイラは『まぁまぁ』と両手で落ち着く様にジェスチャーした後口を開きます。
「いやね、あたしが言ったのはそうじゃないのさ」
「?」
「あーっとね・・・少し長くなっちゃうんだけど・・・・・・」
レイラはそう言って話し出したのですが、どうもヘファイナーの品評会は単純な鍛冶の腕でなく、出来上がった作品を評価するみたいなのです。
つまり超一流の鍛冶職人が作った超一流の鋼の剣より一流の鍛冶職人が作った一流の魔法剣の方が評価されると、この様になっているらしく、レイラが知恵を貸してほしいと言ったのはギミックというか方向性?そのアイディアを考えてほしいとの事でした。
「成程・・・確かにそれなら素人の私達でも考える事は出来ますわね」
「だろ?」
「でもレイラ、何故私達に?単純に数を撃てば当たる戦法をしているんですの?」
私は理解したと首を縦に振ったモノの、直ぐに横へと傾げて見せます。何故なら私達は先程言った様に何も知らない素人、いくらアイディアぐらいは考えられるからと言ってもいいものが出るわけがないと思うのですが?
「いや?あんた達・・・いや、マシェリーだからこそ聞いたのさ」
「え?」
「だって、マシェリーは『記憶君』なんて爆発的ヒット作を生み出したじゃないか。そんな非凡なアイディアが考えられる人に考えてみてくれって言うのは当然じゃないかい?」
「あ・・・あぁ~・・・」
レイラから言われた言葉に私は納得せざるを得ませんでした。確かに『記憶君』なんて魔道具が考えられるなら『分野は違えどアイディアの1つや2つ・・・』ですね。
ですが・・・ですがですよ?私が『記憶君』なんてものを作れたのは、『ゲームでこういう事が出来たからそれを誰でも出来る様にしよう』なんて考えたからで、半ばチートを使った様なものなのです。そんな私に新しいアイディアを考えてみてくれと言われても、難しいと言うかなんというか・・・。
「まぁ~・・・その~・・・前向きに善処はいたしますけれど・・・」
「そうかい!ありがとね!助かるよ!」
「え・・・ええ・・・」
複雑な感情を抱きつつ曖昧に返事を返したところ、レイラはニッコリと笑いお礼を言ってきました。
(これは・・・このまま駄目な政治家の様にのらりくらりと躱すしか・・・)
なんて考えていたのですが、レイラは冒険者なので『決まったなら動け』という行動派、少しだけ残っていたコーヒーをグイッと飲み干すと・・・
「マシェリー達ももう飲み終わってるよね?じゃあいこうか。あぁ、代金はあたしが払って来るから先に店を出ていて」
そう言ってレジの方へスタスタと歩いていってしまいました。
「はぁ・・・仕方ありませんわね。どれだけ役に立つか解りませんが、とにかくやってみましょうか」
考えるだけならいいですし、そもそも向こうもそこまで期待していないでしょう。ならやるだけやってみようかと全員に行こうと声を掛けます。
店の外へ出ると会計を終わらせたレイラが出て来たので、『で?』と話を振ります。
「アイディアを考えるのは良いんですけれど、そのままあの店で考えるのでは駄目ですの?」
「ん?どうせなら鍛冶職人本人と一緒に話した方がよくないかい?正直あたしも『こんなのどう?』とか言われてもさっぱりだしさ」
「確かにそうですわね」
「だろ?」
話を持ってきたもののレイラも鍛冶に関してはさっぱりらしく、鍛冶職人と一緒に話そうとの事。なので私達はその鍛冶職人がいる場所へと向かう事になりました。
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元から店舗が多くある商業区画に居たので、それほど長くかからずにその鍛冶職人とやらのいる店へと着きます。
「『ロギヌス工房』・・・ここですの?」
「ああそうさ。おーい、パメラ―」
レイラは『ロギヌス工房』と看板がかかった店へと入って行きました。パメラという方がその鍛冶職人なのでしょうか?
私達もレイラに続き店の中へと足を踏み入れます。
「店舗一体型の工房ですのね」
「やね。パッと見た感じ、どれもそこそこの品に見えますわ」
「ですがどれも鉄を使った普通の武器の様ですね」
中へ入るとお店みたく武器・防具が並んでいたので、私達は軽く並べられた商品を見てみます。
するとレイラが見せてくれた剣でも解っていたのですが、パメラという人物はまぁまぁの腕を持ってはいるみたいです。
「あ、お姉様、レイラは奥に行ったみたいやけど・・・ウチラも行く?」
と、私達が商品を見ている間にレイラはサッサと奥に行ってしまったみたいです。私達も続いて奥に行ってもいいのですが・・・
「いえ、ここで待っていましょう。知り合いでもない私達がズラズラとついて行くのもなんですし。あ、あそこにテーブルとイスがありますわ。あそこで待ちましょう」
商談スペースみたいな場所があったので、そこで待つ事にしました。
しかしそこへ腰かけようと移動すると、丁度レイラが1人の女性を連れて戻ってきたので座らずにそのまま待っていると、レイラが笑いながら話しかけてきました。
「あはは、ごめんねマシェリー。座っちゃってよ」
「いや、なんであんたが言うのよ」
2人は気安い仲なのかそんな風に喋り、商談スペースへと辿り着くとレイラに連れられてきた女性は座る前に自己紹介をしてきました。
「わざわざ来てくれてありがとう。私はパメラ・ロギヌス、このロギヌス工房の主人で、A級ライセンスを持ってる鍛冶師よ」
パメラはそう言い丁寧にお辞儀をします。
私はそんな彼女の事を素早く下から上へ、上から下へとチェックします。
(歳はレイラと同じくらいなのに一流扱いのA級ライセンス。更に容姿も整えるとこれまたA級美女・・・よし、全力で協力しましょう)
パメラは今は鍛冶作業中なので汚れていますが、綺麗な赤髪赤目のグラマラス美女です。そんなパメラの姿を見た私は、正直レイラの話はそこまで乗り気ではなかったのですがやる気がムクムクと沸いてきました。
(取りあえず第一印象でバッチリ決めますわ!)
確か前世で読んだ何かの本に『ほにゃららは第一印象が大事。これは他のどの様な事にも言える』とか書いてあったのを思い出し、私は丁寧かつそこまでお嬢様を出さずされど上品&フレンドリーに挨拶をし、続いてつらつらと仲間の紹介もしていきます。
その結果、反応は良好。相手は見事私の術中に嵌り、まるで前から知り合いだったかの様な、そんな空気が流れ始めます。
このままいけばいい感じの仲になれる筈!私はそう信じ、本題に入ろうとしているパメラを話を聞き、ナイスアイディアでナイスな関係になろうと思っていたその時・・・
「邪魔するぜっ」
「お邪魔します・・・」
「邪魔をする」
「え・・・?」
「・・・あ」
何故かよく見知った顔・・・イリスがロギヌス工房へと現れました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「新たなるマシェリーの犠牲枠?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
☆やイイネをぽちっと押すと パメラが一晩で私のモノになりますわ。
マシェリーの一口メモ
【『第一印象が大事。これは他のどの様な事にも言える』、これは意外と真理ですわよ!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】