第142話 その後と地下に居る者達
誘拐組織へ強襲を掛けてから3日経ち、私達はすっかり暇に・・・なってはいませんでした。
その理由は『アークレッド家の規模が大きかった』、これにつきます。
以前ナームアムル公爵家のジェレミアンをやっつけた時もそうですが、大きな貴族家の者を処罰しようとなるとそれなりに時間がかかるモノなのです。
更に今回はジェレミアンの時とは違い、個人でなくアークレッド家という『貴族家』自体が対象となるので、より精査等に時間がかかってしまうのです。
因みに3日経った現在は、精査の為のアークレッド家所有となっている事業を色々見て回っている所です。これには勿論表に出せる事業だけでなく、裏のバレてはいけない事業も入ってくるので・・・捜査が難航している今日この頃です。
「マシェリーお嬢様、資料の通りこの先に怪しげな建物があったそうです」
「ご苦労。何があるのか解りませんので、慎重にいきますわよ。先ずはそのまま偵察を続けて様子を伺いましょうか」
「はっ!」
ですがこの様にオーウェルス家所属の兵を使いぼちぼちとは進んで行っているので、1週間以内には片がつくでしょう。既にアークレッド家の現当主ガルタスも身柄は抑えてありますしね。
しかしです・・・
「ゴルタスは何処に逃げたのでしょう・・・」
未だにゴルタスは捕まらず、絶賛捜索中となっています。全国的に指名手配を掛けているし、彼の妹であるゲルダ、そんなお荷物になりそうな方も一緒に逃げている様なのでその内捕まるとは思うのですが・・・。
「あの元騎士達のような隠れた戦力の手でも借りて逃げているのかしら?」
あの様な手練れの力があれば、上手く潜伏出来る可能性は高くなります。
「それに・・・」
それにあの元騎士達ですが・・・どうもガルタス達と同様に妙なカルト集団に属していた様なのです。なのでもしかすると、同じような手練れの力を借りてカルト集団の元へと逃げたのかもしれません。
「あの実験体や実験体になっていた子供も、元はといえばカルト集団の実験が主に使われていたといいますし、そんなにズブズブだったのならありえますわよね」
ゲームでカルト教団の事はさらっとしか出てこなかったので、裏設定で色々あったのかもしれません。
と、そういえばあの子供は処置が間に合い今は経過観察中です。色々薬が投与されていたり、一部魔道具が埋め込まれていたりで処置は大変だったみたいです。元気になってくれると良いのですが・・・。
「マシェリーお嬢様、建物の中に数名ですが人がいる模様です。如何なさいますか?」
「あら・・・そうですのね。それじゃあ先ずは建物を包囲、そして後に勧告かしら」
色々考えていたところに報告が上がって来たので、私は兵へと指示をだし仕事に専念する事にしました。
さてさて・・・なるべく早く全て片がつけばいいのですが・・・
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≪???≫
そこはとある街にあるさびれた教会の地下。そんな場所だからか、その部屋は何処か重い空気が漂っていた。
そんな部屋にはシンプルなイスとテーブルといった家具、それに火がともった石像が置いてあった。
そして人も2人居り、彼らは片方は存外軽く、片方はドヨンと沈んだ感じで何事かを喋っていた。
「いやぁ・・・まいったまいった。まさかオーウェルス家がアークレッド家を潰すとは考えても居なかった。ははは」
「お兄様・・・笑いごとではないでしょう?アークレッド家が無くなってしまうのですよ?」
「まぁそうだね。それに父上や母上には悪い事をした」
「はい・・・恐らくお父様とお母様は死刑になるでしょうから・・・」
「ああ。私達の家がやっていた事もバレタだろうし、そうなるだろうね」
2人の名前はゴルタスとその妹ゲルダ。現在指名手配がされているアークレッド家の2人である。
2人はその後あーだこーだと何やら言い合っていたのだが、部屋の扉がノックされたことにより話を中断した。
「私だ。入るぞ」
「「はい」」
扉をノックした人物はフード付きのローブを着ていたので人相が解らなかったが、ゴルタスとゲルダはその人物が誰か解った様だった。
2人はその人物が部屋の中へと入るとイスから立ち上がり、その人物の前に行って片膝を着くと胸元からペンダントを取りだし両手で包み・・・
「「偉大なる炎に栄光を」」
と、挨拶をした。するとその人物も同じ様に胸元からペンダントを取り出し両手で包み挨拶を返す。
「偉大なる炎に栄光を」
挨拶が終わるとゴルタスとゲルダは立ち上がり、3人はテーブルへと移って椅子に座った。
3人が着席をすると先ずフードの人物が口を開く。
「大変なことになったな」
「はい。申し訳ありません」
フードの人物がそう言うとゴルタスは謝る。だがフードの人物は首を横に振り、その後労わる様に優しく話しかけた。
「謝る必要などないし、謝る必要があるとすればこちらだ。申し訳なかった信徒ゴルタス、信徒ゲルダ。私達がお前達の家に色々頼んでいたばかりに・・・」
「いいえ、よいのです司祭様」
「そうです司祭様。お父様やお母様、親族の事は残念ですが、司祭様にそう言っていただけたのなら全員が本望でしょう」
「・・・ありがとう。後で我らが神へとアークレッド家の献身は伝えておこう」
「「はい、ありがとうございます」」
ローブを被った司祭はゴルタス・ゲルダへと胸元のペンダントを掲げ、同じようにゴルタスとゲルダも掲げ返した。
それが終わると、司祭は何やらキョロキョロと部屋を見渡した後に口を開いた。
「敬虔なる信徒達にこの様な場所に居てもらうのも悪いな。ついてきたまえ、本殿へと案内しよう」
「「・・・!?」」
そう言われた2人は驚いたように顔を見合わせ、その後深々と司祭へと頭を下げ礼を言った。
そんな畏まった2人が顔を上げると司祭は笑いかけ、『では行こうか』と声を掛け立ち上がり、2人を伴って部屋を出て行った。
人が居なくなった部屋には重く陰気な空気が漂い、部屋に置いてあった像に灯った火がゆらゆらと揺れていた。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【家が断絶となると色々することがあり面倒ですの。これでも事前に動いていたのでましですのよ?そうでないと、そうですわね・・・周りの貴族家から色々チャチャが入ったり王家からも何か言われたりといった感じになり、一向に話が進んでくれないと思いますわ。根回しって重要ね!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




