第140話 誘拐組織との戦い8
『攻撃された!』瞬時にそう判断した私は、衝撃でぐらつく視界の中何とか声を上げます。
「追撃に備え防御!そして防御体勢のまま外へっ!」
声を上げた後直ぐに私も敵が攻撃して来たと思われる方向に魔法を展開し、自分達の被害をザッと確認する為周りを見渡します。
すると気は失っていないようでしたが、マルシアとシーラが片膝を地面に着き頭をフラフラさせていました。
「ノワール!防御は良いからマルシア達を!」
「ぐっ・・・はいっ!」
見た目以上に力が強いノワールへマルシアとシーラ、それにマルシアに背負われたままの子供を運ぶように指示し、私達は防御体勢のままドラーガの居た部屋へと移動、後にそのまま少し開けた裏庭へと逃げ込み、塀を背にして襲撃者へと備えます。
「おいおい、困ると言っただろう?だから・・・それ以上は逃がさないよ?」
私達が警戒している所へと襲撃者がのんびりした歩調で歩いて来たのですが・・・襲撃者の顔を見て吃驚して叫んでしまいました。
「なぜ貴方がここに居ますの!?ゴルタス・ド・アークレッド!」
何と襲撃者の正体は少し前に会ったばかりのゴルタスだったのです。
「ん?何故私の事を?」
ゴルタスは叫んだ私を訝し気に見て来たのですが、私達は未だマスクを被ったままだったので正体が解らなかったのでしょう。
まぁ教えるつもりもないので、正体は明かさず適当に話をでっちあげておきましょう。
「それはこの組織の事を調べたからですわ!」
「なるほどね・・・じゃあ余計に逃がすわけにはいかないな」
『元から逃がすつもりではなかったでしょうに!』と内心毒づきながら、直感に従い防御魔法を唱えます。
「・・・っ!『水の障壁鎧』!」
「『雷の障壁』!」
サマンサも何か感じたのか、私が声を掛ける前に防御魔法を唱えます。
そしてそれは正解だった様で、私達が魔法を唱えたと同時に向こうも魔法を唱え攻撃をしてきました。
「『火の槍』っと・・・勘がいいな」
「・・・お褒め頂き光栄ですわ」
魔法を防ぎ軽口を叩きますが、内心少し不味いなと焦ってしまいます。
それというのも・・・
「「ゴルタス様。後は我々にお任せを」」
「ん?あぁ、それじゃあ任せようか」
この場に現れたのはゴルタスだけではなかったからです。
「「覚悟せよネズミ共」」
ゴルタスの代わりに前へ出て来たのはローブを被った2人でしたが、ローブの端から覗く装備でその2人がアークレッド家に属する騎士だという事が解ってしまいます。騎士を相手にするとなると面倒なので、極力相手はしたくないところなのですが・・・
「『スラッシュ』」
「『雷の矢』
「・・・っ!『パリィ』!」
「『雷の矢』っ!」
そんな事を向こうが許してくれるはずもなく、騎士との戦いに応戦する事になってしまいました。
「今度はこちらからいきますわよ!『スラッシュ』!」
「ウチのもくらいやっ!『雷の波』っ!」
「『雷の障壁鎧』
どうにも騎士と戦う事は避けられなさそうなので、『騎士を素早く倒して、その後本命のゴルタスをボコボコに』と考え攻撃を仕掛けますが、サマンサの唱えた範囲攻撃は雷属性の障壁鎧で無効化され、私の放ったスキルも剣で受け止められてしまいました。
「『闇の大腕』」
「「甘い」」
更に私達と微妙にタイミングをずらしノワールも攻撃を仕掛けるのですが、それもスッと避けられてしまいます。
「ははは、彼らは第1騎士団にいた元騎士でね。そんな甘い攻撃だと掠りもしないよ?」
私達の攻防を見て後ろで見ていたゴルタスがそんな事を言って笑っていましたが、強いと噂される第一騎士団に居た元騎士とは強い筈です。
しかし元騎士ですか・・・
「アナタ方・・・現役の騎士ではありませんのね」
「アークレッド家に雇われていた方が給料がいいのでな」
「それに騎士はなんだかんだと面倒だからな」
何気なしに問いかけてみたのですが、こんな事に加担しているだけあってド腐れた精神の持ち主達の様でした。
しかし私にはそんな事どうでもよく、寧ろこの状況を突破する為の材料に使わせてもらう事にしましょう。
私はノワールとサマンサへこっそりとハンドサインを送ると、高らかに笑い声を上げました。
「オーッホッホッホッホ!」
「「「?」」」
そんな私にゴルタス含め敵方が全員ポカーンとした表情になりましたが、私は気にせずに続けます。
「あらごめんあそばせ?てっきり私、辛い訓練に耐えきれず逃げ出した根性無しだと思っていましたの」
「「は?」」
「だってそうじゃありませんの?第一騎士団に入団できたエリートが『金』だとか『面倒くさい』だとかいう理由で騎士を止めるなんてはずないじゃありませんの」
「せやせや!第一騎士団言うたら誰もが憧れるエリートやのに、そんな理由で辞める奴なんておらへんやろ。おるとしたら、パパやママにレールを敷かれてコネで騎士になった根性無しのエリート(笑)しかおらんわ」
サマンサがさり気なく装備を整えながら騎士達を挑発する様に囃したててくれたので、私も追加で煽りを入れます。
「それとも不正か何かを犯してクビになったのを『こっちから止めてやった』とか言い張ったりするんですの~?それってどんだけぇ~?あ、チキンエリート(鳥)でしたっけ?」
「「・・・」」
「あ、そうそう、私が笑っていたのはもう1つ理由がありましてよ?それはねゴルタス、アナタでしてよ?」
「私か?」
「ええ。こんなチキンエリート(串焼き)を雇っているくらいで『俺の家SUGEEEE!』とか言っても自慢になりませんわよ?自慢するのなら先ずその筋肉でも自慢なさいな。あ、その筋肉ってこういう場面でも使わない見た目だけのモノでしたわね。失敬失敬」
少々意味不明な煽りになってしまいましたが、私の態度と口調から舐めているという事は十分伝わったのでしょう・・・敵方は3人共イラッとした様で、静かに『殺す』と呟いていました。
「はぁ・・・そろそろ本当の事をお伝えするのにも疲れてしまいましたわ。なのでボォーっと突っ立っていないで掛かってきたらどうですの?」
「せやせや、騎士団仕込みの剣術(笑)みせてぇや。あ、後ろで腕組んで見とる後方腕組み見た目だけ筋肉も、その筋肉がほんものやってとこ見せてや?」
私が掛かって来いと、そしてサマンサがダメ元だと思うのですが『魔法無しで物理でこいや』と煽るとイライラしていて冷静な判断が出来なかったのか・・・
「ふ・・・ふふ・・・まぁ私は魔法の方が得意ではあるのだが・・・特別にお前達は私の剣で切り裂いてやろう。あぁペラダとガルゾーレ、誰が一番手足を落とせるか勝負でもしないか?」
「勿論いいですとも・・・」
「首もカウントしてよろしいですか・・・?」
見事に剣のみで戦ってやるよ宣言を頂けました。
正直な話、あの元騎士達のレベルで魔法とスキルの両方で攻められるときつかったので助かりました。
しかしです、喜んでばかりもいられません。
「「「死ねっ!!」」」
「行きますわよサマンサ!」
「了解やっ!ってうわっち・・・ちょ!エリート(笑)様本気だしすぎちゃうか!?」
「チェェィリャァ!」
何故なら敵方の3人が3人共、剣術だけでも十分に強かったからです。
「『パリィ』!」
「うひっ!ごっつ手が痺れるわぁ!盾用意したけど!やっぱウチには向かんでこれっ!」
「サマンサ!盾は受け止めるのではなく受け流しなさい!」
「りょっ!うわっち!」
私達は3人からの攻撃を必死で受け流し、受け止め、避けます。
幸いにも相手方は元からのイライラと、中々攻撃が当たらないイライラで攻めが単調になっていたので何とか凌ぐことが出来ていました。
ですがそう長くは持ちそうにありません。なので『早く早く!』と思っていた、その時でした。
「チェィリャ!クロスエッジ!」
「『パリィ』!・・・あっ!?」
「馬鹿めっ!引っかかったな!」
元騎士のフェイントにまんまと引っかかってしまい、スキルの無駄打ちにより隙が出来てしまいました。
「あっ!お姉様っ!」
「よそ見をしている場合か?」
「・・・っ!」
そしてそれを見ていたサマンサも動揺して隙が出来てしまい、もう1人の元騎士の前で無防備になってしまいます。
「「先ずは1本目!」」
「くっ・・・!」
「あかんっ・・・!」
元騎士達は直ぐに殺す気はなかったようですが、それでもやがては首も切られる筈。ですがここで諦めては全てが終わってしまうので、何とか切られた後直ぐ動けるように心の覚悟をし迫りくる白刃を見つめていると・・・
「『水の祝福』!」
「『炎の防壁』!」
「「なにっ!?」」
2種類の強力な防御魔法が私達にかかり、敵の剣は私達へ届く事無くピタリと止まり・・・
そして・・・
「お待たせいたしましたお嬢様方!身構えてくださいっ!天より地へ!光輝く場所から暗き闇の底に落ちよっ!『崩壊誘う闇』!」
闇が戦場を押し潰しました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「敵・・・強いやん・・・」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
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マシェリーの一口メモ
【『崩壊誘う闇』はかなり強力な魔法なので、詠唱・溜めが必要になりますの。なので実戦では前衛必須となりますわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】