第139話 誘拐組織との戦い7
さぁ、後は地下室の様子を見て・・・なんて考えながら再度建物へと入ろうとした時、急に嫌な気配を感じ振り返ると・・・
「・・・」
ドラーガが斧を振り上げている最中でした。
「らぁっ!」
「っく!」
私はドラーガが斧を振り下ろす前になんとか盾を構え、スキルの『パリィ』で防御をします。
凄い衝撃が盾に走りましたがギリギリ間に合ったようで、私達の横へと衝撃波が流れ地面に深い傷跡が刻まれました。
「まだ動けましたのね・・・」
「奥の手をつかっちまったがな・・・」
ドラーガは大きなアジトを任されているだけあって装備も良いモノを貰っていたのか、そのお陰で助かった様でした。
これ以上更に奥の手が出てこないといいなと思っていると、建物の方からガヤガヤと音が・・・
「頭っ!どうしたんですかい!?」
「ようやく来やがってテメェら・・・おせぇんだよ!後、集まったのはそんだけかっ!?」
何と賊の増援が現れたのです。
「いやそれが・・・・・」
悠長に話している賊の会話を聞いていると、どうも増援で現れたのは地下に居た者達で、地上部にいた全員が動けなくなっていたことについてアーダコーダと何やら叫んでいました。
ドラーガはそれを聞いて一瞬苦々しい顔をしましたが、すぐ顔を引き締め指示を飛ばし始めました。
「オメェ等!そいつらは侵入したネズミだ!兎に角突っ込んで取り押さえろ!」
「「「へい!」」」
「後、地下から実験体の中で使えそうな奴を全部連れてこい!」
「へい!」
こちらにも指示が聞こえていますが、単純に前後からの挟み撃ちは少し厄介です。更にドラーガは実験体と言っていましたが、何のことでしょうか?
(実験体って・・・ゲームでそんなもの出てきましたかしら?実は魔物でも使ってキメラでも造っていたんですの?)
少し嫌な考えが頭をよぎりますが、取りあえずは見えている賊を倒す事にしましょう。
「ノワールは私とドラーガへ!他3名は増援へ応戦を!」
ドラーガは強敵とはいえすでにボロボロ、ならば私とノワールだけでも大丈夫でしょうと判断し、増援は3人娘に任せておく事にしました。
私は先の指示だけ素早く飛ばすとドラーガへと素早く近寄り攻撃を繰り出します。
「しつこい方はっ・・・!嫌い・・・でしてよっ・・・!」
「それはどうもっ・・・っと!・・・っちぃ!」
やはり大分ダメージが蓄積している様でドラーガの動きは最初程ではなく、割とあっさり追い込むことが出来ました。
「・・・ハァッ!」
更にです、私だけで追い込むことが出来ているのに、ノワールまで武器を持って近接戦闘に参戦すると・・・
「ガァッ!?ギャッ!!」
「オーッホッホッホ!先ほどまでの勢いがありませんわよー!?」
哀れドラーガはフルボッコ。瞬く間にズタボロのボロ雑巾に・・・
しかし悪党に情けは無用。また『実は未だ奥の手が・・・』なんて言い出さない内に決着をつけようと、ノワールへと合図を送ります。
「ノワール!」
「畏まりました『血蛇』」
「ガッ!クソッ!何だこの剣!?」
ノワールが自慢の蛇腹剣を振るい、敵に拘束を仕掛け・・・
「トドメッ!『焔切り』!」
動けなくなっているドラーガに私がスキルで攻撃を仕掛けます。
タフだったドラーガでも、ここまで消耗した上にスキルを叩き込まれたら終わりだろうと・・・そう考えていたのですが・・・
いきなり横から手がニュっと出て来て、私の剣を手のひらで受け止めてしまいました。
「・・・えっ!?」
「やっと来たかクソがっ!」
ドラーガの叫びに更なる増援が?と思い、手の出て来た先へと視線をやるとそこには・・・巨人が居ました。
「うがぁぁああ!」
「きゃっ!」
巨人が受け止めた剣をブンっとはじくモノですから、私の体も剣にくっ付いて吹き飛んでしまいます。
ですが何とか空中で姿勢を制御し、足から着地を決めます。
「なんですの!?あれ!?」
着地をした後、直ぐに私を吹き飛ばした巨人を見ましたが、そいつは思っていた巨人とは少し違いました。
最初チラリと見た時は人がそのまま大きくなった巨人だと思っていたのですが、離れて全体を見てみるとその体は随分アンバランスで、上半身だけムキムキで下半身はヒョロヒョロ?という漫画のキャラクターみたいな外見をしていました。
そしてその巨人、能力的にも見たままなのか移動スピードは遅いのに攻撃スピードや力は凄いといった具合で、あまり動かずにノワールと交戦していました。
「ほんまなんなんやろあれ・・・。何かいきなり出て来て敵さんごとふっ飛ばしてったんやけど」
「おかげでその隙に一網打尽に出来ましたけどね」
私が巨人の事を見ていると増援の処理が終わったのか、3人娘が話しかけてきました。
なんだかのんびりしていますが『それどころではない!』と叱咤し、巨人へと向かうように指示した後、私は同じくのんびり・・・ではないですが、一息つき始めていたドラーガの元へと向かいます。
「アナタ、なんで『増援が来たから任せておけるぜ、ヤレヤレ』みたいな顔をしていらっしゃるの?」
「げ!?お前はあいつに向かって行かねぇのかよ!?」
「行きますわよ?アナタを倒してからですけどね!」
弱っている奴がいたらそこから攻めるのも一手、というかボスが弱っているのなら攻めるしかないでしょう?
という訳で私はドラーガへと剣を向けたのですが、彼は自分がかなりボロボロなのを解っていたので巨人を呼び寄せます。
「おいデカブツ!コイツにも攻撃を仕掛けろ!早く!」
「うがぁぁぁあ!うがががががぁぁあ!」
巨人はドラーガの声に反応しこちらへと顔を向けたのですが、その顔は随分イっちゃってる様子で、ドラーガが実験体と言った意味が何となく解ってしまいました。
「アナタ・・・あの巨人は薬か何かであんな風になっているのでしょう・・・?」
「詳しい事は知らねぇよ!まぁ多分薬なんじゃねぇか?」
「人を攫って売り飛ばしたり薬の実験台にしたり・・・外道ですわねぇ・・・」
ゲームでは誘拐して売り飛ばす位でしたが、実際は更に人体実験の様な事もしているらしい賊達に『外道が』と罵りの言葉を吐き捨てましたが、彼らにとってその言葉は称賛の言葉の様で、寧ろ機嫌が良くなりました。
「っは!お褒め頂き有難うございますってな!んじゃ、俺ら外道の成果をご堪能あれっと!ウハハハ!」
これ以上外道に言葉を掛けてもどうしようもないので、さっさと巨人を倒してその後でゆっくりドラーガをいたぶってやるかなんて考えていると・・・
「うがぁぁぁああ!!!」
「なっ!このバカ!こっちじゃねぇ!あっちぐぇぇえええ!!」
巨人は何故かドラーガを鷲掴みにしたではありませんか。
「えぇ・・・?」
余りの事にポカーンとなってしまいましたが、呆けている場合ではないので直ぐに正気を取り戻し、何が起こっているのかを考えてみます。
「あ~・・・サマンサが『敵ごとふっ飛ばした』とか言ってましたけど、薬の副作用かなんかで制御が効かないのかしら?」
「多分正解だと思われます。戦い始めてからドンドンと怪しい感じになっていきましたので」
巨人がドラーガにご執心となっているので、フリーになったノワールが私に話しかけてきました。私は今の内だと思い巨人の情報を聞いてみます。
すると相手は防御力が高いらしく、時間をかけて削っていかなければ倒せないかもしれないとの事でした。私達のガチ装備でもあまり攻撃が通らないとは、かなりの強敵の様です。
「時間をかけたくありませんが仕方ありませんわね」
「はい」
この後オーウェルス家の方に報告を入れここの検挙としたいので早めに行動したいのですが、あのような危険物を放置しておくわけにもいきません。
なので地道に削って倒すかと覚悟を決めたのですが・・・
「ぐ・・が・・・こ・・・そが・・・」
「うがぁぁぁぁ・・・ぁぁあ?あぁぁぁああばば『ブチチッ・・・ボンッ』・・・ぐぼぉぁぁ・・・」
何故かいきなり巨人の胸の辺りから変な音が聞こえたかと思うと、血を吐いて倒れてしまいました。
唐突に倒れた巨人に私達は顔を見合わせた後恐る恐る近づいてみますが、巨人はピクリとも動かず死んでいる様でした。
「一体何なんですの?」
「実験体と言っていましたが、失敗作なのではないでしょうか?」
「成程・・・って、あ・・・ドラーガ何某さんも死んでらっしゃる?」
「その様です」
・
・
・
その後釈然としないものの戦闘は終了という事で、私達は次の行動へ移る事にしました。
先ずは建物の中へと戻りドラーガたちが居た部屋を捜索し、書類などを集めます。
戦闘の余波で敗れたり汚れたりしていましたが見つけた分を回収、ノワールのアイテムボックスへと収納します。
そしてそれが終わると残った地下へ行くのですが、本来ならば薬を流し込んでから行く予定の所を、そのまま何もせずに地下へと進みます。・・・先程のドラーガとの戦闘で地下の人員が出てきましたからね、必要ないのですよ。
そうして地下へと降りたのですが・・・まぁよくこれだけの人数を!というほど人がいました。
地下は沢山の牢屋と幾つかの小部屋があるだけの構造だったのですが、その沢山の牢屋にぎっしりと人が詰まっていました。恐らくですが、100人以上入るのではないでしょうか?
ですがそんな誘拐された人たちも怪我や病気はなさそうで、思ったよりかは元気に過ごしている様子でした。
唯1人・・・大き目の牢屋に居た子供が居たのですが、その子だけあまり宜しくない状態でした。
それは恐らくですが・・・この子がドラーガが言っていた『実験体』の1人だったからでしょう。
「この子は不味いですわね・・・」
「・・・はい・・・なるべく早く処置しないと不味いかと・・・」
「まだ小さい子供なのに・・・外道を越えた超外道組織ですわねここ」
その子は体中に包帯が巻いてあったり周りに何やら手術用の器具が置いてあったりだと、かなりの事が行われていた様子が見え、顔色も土気色をしていて今にも死にそうに見えました。
本当はあまり動かすのも良くないのでしょうが、即刻処置を受け差すために私達はその子供だけ連れ出す事にしました。
「それでは、この子は私が背負いますね」
「・・・私はすぐ後ろについて様子を見ますね・・・」
「頼みましたわマルシア、シーラ。っと・・・ごほん。皆様!もう少ししたら救助の為に人が来ますので、もう少しだけ我慢してくださいまし!」
「「「!?」」」
マルシアがその子を背負った事を確認した後、牢屋に捕まっている方々に後で人が来ることを伝えて去る事にしたのですが、自分達は連れてってくれないのかと騒めきが起こりました。
ですが死にそうなこの子の処置を急がなくてはならない為、取りあえず無視をして地上へと私達は上がっていく事にしました。
「助かるとええな、その子」
「そうですわね」
転生して貴族になった事により多少他人の命を軽く見る節があると自覚はしていますが、それと同時に助けられる善良な命は助けるべきとの価値観も持っています。
なので出来る事なら助かればいいなと思い、私はか細い呼吸をしたその子供の背をそっと撫でました。
「取りあえずドラーガがいた部屋の穴から外へ出ますわよ」
階段を上がり地上部へと着いた後、その子を助ける為急がなくてはと外へ出ようとドラーガが居た部屋へと行こうとした・・・その時でした。
「いや、それは困る」
不意に後ろから声が掛かり・・・
『パンッ!』
そんな軽い音と共に・・・衝撃が私達に襲い掛かりました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「賊さんしぶとい」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
☆やイイネをぽちっと押すと 復活のドラーガ第2章『俺の怒りは有頂天』が始まりますわ。
マシェリーの一口メモ
【ノワールの武器はロマン溢れる蛇腹剣となっておりますわ。因みに私とマルシアは片手剣と盾、サマンサは短剣、シーラはバトルスタッフですの。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




