第136話 誘拐組織との戦い4
街外れにある建物が見える路地にて、私は予想以上にすんなりといっている作戦に絶句していました。
「流石にお酒は飲まないかなと思っていたのですけれど・・・普通にがぶがぶ飲んでいますわね」
本来は『祝い事が有ったのでお酒を振る舞っています』→『いや、今仕事中だから無理』→『ならお酒ではなく温まる飲み物でもどうでしょうか?外に居るから体も冷えるでしょう?』→『お、それなら。あんがとよ(ゴクゴク』という感じを予想していたのですが、実際は初手『お、酒か。あんがとよ(ゴクゴク』という結果に・・・。規律もへったくれもありませんね。
「まぁこちらとしてはすんなりいったのだからいいのですけれど・・・」
「お嬢様、魔法補助具は滞りなく設置完了でございます」
「ウチの方も交渉終わらせてきたで」
独り言を呟いていると2人が帰って来たので、私は一度建物の方から二人の方へと顔を向けます。
「ご苦労様ノワール、サマンサ」
周囲に騒動が広がらないよう魔法を使うために準備してきたノワールと、飲み物を振る舞うよう飲食店等に交渉して来たサマンサ。帰って来た彼女達へとねぎらいの言葉だけかけると、直ぐに賊の監視へと意識を戻します。
「ふむ・・・そろそろ・・・」
再び監視し始めた賊はアルコールとお酒の中に入れられた薬が回ってきた様で、大分様子が怪しくなっていました。
そうなるとそろそろ建物と塀の間の警備をしている賊らも効いてきたかなと思ったので、魔法を使いそちらも確認してみます。
「『覗き見る闇の目』。・・・うん。順調にへべれけ状態になっていますわね」
「やっぱ賊やな・・・規律ゆるゆるやん・・・」
「私もそれには激しく同意ですわ・・・っと、マルシアとシーラも戻ってきましたわね」
魔法を使い賊の様子を確認していると、私と同じように賊にお酒を渡したり監視したりしていた2人も戻って来たので話を聞くと、建物の周囲で見張りをしている賊全員がへべれけ状態になっているのを確認したとの事なのでそろそろ次のフェーズへと移行です。
「ノワール、魔法は何時でもいけますの?」
「はい。発動いたしますか?」
「ええ、やってくださる?」
次のフェーズはへべれけ状態の賊を排除となるのですが、そこで騒ぎが起きて面倒になると困るので先ずはノワールの魔法を発動させ外に感知させない様にします。
なので主に使ってもらう魔法は2つ、音を外へと届かせない魔法と建物と周囲の認識を薄れさせる魔法です。
「・・・ふぅ。無事発動完了でございます」
「魔力がきついようなら休んでもよろしくってよ?」
「いえ、問題はございません。魔法補助具を使い少々複雑になっておりましたのでこう・・・頭がキュッっとなっただけですので」
無事に魔法は発動し、ノワールも問題なく動けそうとのことなので次の行動へと移る事にします。
やる事は先程言った様にへべれけ状態の賊の排除ですが、この作業自体はとても簡単です。
「ごきげんようお兄様方」
「おん?」
「お酒が余っている様で、既に持って行った方にも追加で振る舞うとの事で持ってまいりましたわ。いかがかしら?」
「おう!くれくれ!」
「ええ。それではこちらどうぞ?『眠りの雲』」
なんせ頭がやられている状態の敵へと近寄り魔法で眠らせていくだけなのですから。
「はへぇ・・・?・・・ぐぅ・・・」
しかも薬も盛ってあるので2倍でドン。騒ぐことなく即スヤスヤです。
「後の拘束と移動は任せますわよ?私はその間に魔法をかけて回りますわ」
のんびりしている暇もないので分業で賊を処理し、あっという間に建物の外にいた賊を片付けます。その際建物と塀の間に居る賊は、建物から見えてしまうので少々手間取るかと思ったのですが、ご丁寧に建物の窓はすべて塞がれていたので建物内からの目を気にすることなく事を運ぶことが出来ました。
「ラッキーと言えばラッキーですけど、様子を外から様子を伺うのが難しくなりましたわね・・・」
「この建物、がっちりした造りやもんなぁ。隙間すくないわ」
「魔法で覗いてみては?」
「覗き見る闇の目ですの?あれはなんといいますか・・・不可視の実体がある目を飛ばす様な魔法ですので、こういう場合は使えないんですの」
先程使っていた時は門が鉄格子の状態だったので使えていたのですが、締め切った建物に使用するには向かない魔法なんですよね覗き見る闇の目。
ですが作戦では、建物の隙間から気化させた薬を流し込み敵を行動不能にする予定だったので、何とか隙間を見つけなくてはいけません。
私達はこそこそと建物の周囲を見回り、何とか隙間を見つけて中を確認していきます。
その結果、何とか塞ぎが甘い窓の隙間や老朽化で出来た隙間から中を確認できた私達は、小会議を開きます。
「何とかいけそう・・・ですわよねシーラ?」
「・・・はい・・・あの感じなら8割方の部屋にはお薬が回ると思います・・・」
「地下室があるって話やけど、やっぱ地下室は力づくでやるしかないん?」
「・・・一応・・・下に流れるようなお薬も用意して来たので・・・それを使うくらいしかないんじゃないです・・・?」
「そうですわね。それに恐らく地下の方には商品・・・攫われた方々と少数の見張りくらいしかいないと思いますわ。ですから地下の制圧は恐らく問題ない筈・・・」
ここから先はある程度出たとこ勝負になってしまいますが、多少のリスクは飲まなければ誘拐組織のアジトに襲撃なんてやっていられませんので許容する事にします。その中で出来る限り安全にするという事を話し、いざ行動開始です。
「シーラ」
「・・・はーい・・・お任せあれー・・・姐さん・・・渡しておいた道具を出してくれますか・・・」
「はい」
建物の中に薬を気化させて流し込む為、シーラがごそごそ道具をセットし始めます。5分ほどで準備が出来たのか、『・・・終わりました・・・』とだけ言ってその道具を私達に見せます。
「・・・えっと・・・使い方は簡単です・・・先端を隙間へと押し当ててこのレバーを引くだけです・・・。・・・無色透明無味無臭なのでマスクをお忘れなく・・・」
その道具は例えるなら『殺虫剤を撒く道具』の様な感じで、使用方法もシンプルとの事。なので私達はそれを1つずつ受け取り、それぞれ隙間から流し込んで行く事にします。
『・・・シュコー・・・(プシュー』
私達はガスマスクをつけ、まるで害虫駆除業者の様に建物内へと薬を流し込んでいきます。流し込んだ後隙間から中を伺うと、中に居た賊が何となく眠そうにしていたので恐らく効果はアリでしょう。
『・・・シュコー・・・次・・・』
見つけた隙間に道具の中の薬が無くなるまで入れ続け、薬が切れたところで合流地点へと戻る事にします。
するとすでにノワールが戻ってきていたのでどこら辺まで回れたのかを共有、その後戻って来たマルシア達とも情報を共有します。
結果、5人で何とか建物を1週回れている様だったので、流し込んだ薬の効果が出るまで少し待機する事に。
10分ほど経った後、シーラが「・・・そろそろ効果が出ている筈です・・・」と言ったので、いよいよ建物内へと侵入する事に・・・
私達は正面玄関へと移動し、ゆっくりとその扉を開きます。
さて・・・何事もなく終わるといいのですが・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【覗き見る闇の目、それは全人類が求める叡智の魔法。ですが残念ながら、浴室やトイレは密室なので覗きには使えませんのよ?】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】




