第132話 アークレッド親子
私は父親に紹介された人物が思いもよらぬ方達だったので一瞬だけギョッとしてしまいます。しかし直ぐに表情を取り繕い挨拶をします。
「御機嫌よう。お初にお目にかかりますわガルタス様、ゴルタス様。私、マシェリー・フォン・オーウェルスと申しますの」
感情を表に出さず、あくまで歓迎しているという事を前面に出し挨拶をすると、2人もにこやかに挨拶を返してきました。
「これはこれはご丁寧に・・・ありがとうございますマシェリーお嬢様。儂は御当主様よりご紹介いただきましたがガルタス・ド・アークレッドと申しまして、アークレッド伯爵家の現当主でございます」
「丁寧なあいさつありがとうございますマシェリーお嬢様。私はガルタスの息子でアークレッド伯爵家の嫡男ゴルタス・ド・アークレッドと申します」
これだけを見ると、2人の一件武人然としたガッチリとした体つきも相まって不正など侵さぬ真面目そうな印象を受けるのですが、やはり人は見かけでは解らないものですね。
「わざわざ呼び出してすまないねマシェリー。だがいい機会だから紹介したくてね。アークレッド家とは以前から付き合いがあるという事は知っていただろう?」
「勿論ですわお父様」
以前・・・本当にこの世界に転生したての時ですが、付き合いがあるとは聞いていたので素直に肯定します。
「何時もは中々タイミングが合わなかったけど漸く紹介出来て良かったよ」
「お父様もガルタス様もお忙しい方ですものね。仕方ないですわ」
「いやいや、そんな滅相もない。しかしお嬢様は噂通り将来有望そうなお方ですなクォース様。まだ成長途中だというのに、既に傾国の美の片鱗と溢れんばかりの知性が見えておりますぞ」
「解るかいガルタス殿?そうなんだよね、ウチのマシェリーは・・・・・」
ガルタスが私をヨイショしてしまったせいで父親が娘自慢を始めてしまいましたが、ガルタスの方にも娘が居るのか『解ります。ウチも娘も・・・』なんて共感してしまい、最終的には双方の娘自慢が始まってしまいました。
「いやいや父上、ゲルダは・・・・・・」
更に何故かゴルタスも妹を自慢したかったのか参戦し始めたので、褒められる側の私は遠い目をしながら別の事を考える事にしました。
(そういえばこの家と取引をしていると知った時からなんですのよね・・・このままいくともうダメだと思ったのは・・・)
考えたのは直近の問題であるアークレッド家の事。
(考えてみたらアークレッド家には恨みしかありませんわね。私の家の事然り、ノワールの事然り。そう考えると、今ここで彼らの顔を確認出来た事は僥倖でしたわ)
ガルタスの事はゲームで見た事はありますが生で見たのはこれが初めて、ゲームとは違う印象もあるのでこの際しっかりと確認しておく事にします。
「ははは!それでですな!ウチの娘は・・・・・」
如何にも娘が大好きで優しそうなパパといった印象のガルタス・ド・アークレッド。
彼は背が高く体つきもガッチリとした赤髪赤目の男で、恐らくですが火の魔法を使い肉弾戦もこなせる強者。今はデレデレとした目をしていますが、最初あった時に見た鋭い目つきからは高い知性も感じられたので頭も切れるのでしょう。
「そうなんですよ。ゲルダはですね・・・・・」
父親によく似た風貌をしているのがゴルタス・ド・アークレッド。
彼はこれほどまでに似るのかといったぐらい父親に似ていて、唯一その目だけが母親に似たのかやんわりとした目をしています。
彼に関してはゲームでも名前くらいしか出てこなかったので姿を見るのはこれが初見ですが、実質仕事のあれこれを差配していたともあるので要注意人物です。
(何とも厄介そうな方々ですわね。後日の作戦では組織のアジトを攻めるので直接は関わる事は無いとは思いますけれど、なるべくならば一切の関わりが無いまま終わらせたい所ですわ)
知力・武力共に優れていそうな人物を敵に回すほど厄介な事は無いので、数日後に控えた作戦で早々とご退場頂きたいと願い、ついでだからと話が収まりかけたところで情報収集をしてみることにしました。
「あの、そういえばどうしてガルタス様方は当家へ?新年の挨拶にしても、まだ年が明けていないので違うと思うのですけれど・・・?」
「ああ、それはですな。実は年が明けて早々重大な仕事がありまして、年が明けてからの挨拶には来れ無さそうなのですよ。なので失礼ながらも年明け前にそのお詫びの挨拶に伺わせていただいたのですよ」
「あら、そうですのね!?ご苦労様ですわガルタス様」
「ああ、いえいえ。調整が上手くできなかった儂等の落ち度ですので」
軽いジャブ程度の質問でしたが、中々にいい情報が聞けてしまいました。なんだか思ったよりも口が緩そうなので、もう少し質問してみる事にしてみます。
「お仕事の方が忙しいんですのね?そんなに好調ですの?」
「そうですな。昔からの伝手が広がり、今では国外の方へも伝手が出来まして絶好調といえるかもしれません」
「すごいですわねぇ・・・。という事は、年明けもずっと忙しいのかしら?」
「いえいえ、忙しいのは最初だけでして。7日頃には終わりそうなのですが、流石にそこから挨拶となると遅いですからな。途中でこちらに伺おうにも今回の仕事の規模は少し大きく、節目となって色々整理も必要となって来るので後回しにできないんですよ。ですから今日来させていただいたわけでして」
「あ・・・あら、そうでしたのね。オホホホ」
「っと、そう言っている間に時間が押していますな。クォース様、少し仕事の話があるのですが・・・」
「ああ。すまないがマシェリー、パパ達は仕事の話があるのでね。いいかい?」
「え・・・ええ。私は失礼いたしますわね」
情報収集は大変上手くいったのですが今後の展開的には大変美味しくなく、丁度仕事の話があるからと席を離れられたので私はそのまま自室へと戻り、ノワールへと相談をしました。
「如何いたしましょうノワール・・・あれって聞くからに良くない感じですわよね?」
「そうですね・・・あの感じから察するに、ちょっと騒がしくなって来たので色々と整理をして少しの間潜る気かも知れませんね。そうなると書類等も組織のアジトからアークレッド家へと動かす可能性もございますね」
ゲームだと慢性的にアークレッド家は動いていたので大丈夫だと思っていたのですが、今回の話を聞く限りでは少し怪しくなってきました。
もしかしたら私が動いた結果で色々ずれ込んだのかもしれませんが、それにしてもこのタイミングで潜られては少々面倒です。
「うぅん・・・となると、私達の計画を少々早めた方がよさそうですわね」
「安全策ならば今回は見送るという手もございますが?」
「いえ、後々に回すと厄介なことになるかも知れませんし、その時にタイミングが合わせられるかも解りませんから、計画を早めて決行しますわ」
可能性の話ですが、私が色々やっている影響で後々に回すと面倒な事になりかねません。
ならばまだ予測の付く今のうちに片付けておいた方が良いでしょう。
「ノワール!手紙を書きますわ!紙とペンを!」
「畏まりました」
予定が変わったという事をマルシア達にも知らせなければなりません。
私はノワールから紙とペンを受け取ると、その旨を綴り始めました。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【私とノワールが言った『潜る』とは隠語みたいなもので、意味は『潜伏する・隠れる・活動を自粛する』みたいなことですわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】