第131話 水魔法の暴発には気を付けよう。
私は2つの失敗を犯しました。
1つはノワールを一緒に寝た事。
『美女と添い寝ヤッホーイ』なんて思っていましたが、何故普段一緒に寝ていなかったかをこの時は疲れ切っていた事によりすっかり忘れていました。
あ、別に一晩中舐め回してくるとか、寝相が超悪いとかそういう事は無いんですよ?唯々抱き着いて来て離さない&1度寝たら3時間は何があっても起きないというだけです。
そしてもう1つは最初の失敗にかかってくるのですが・・・寝る前にトイレへ行かなかった事です。
そうです、薄々解っていただけたと思うのですが、1つ目と2つ目の失敗が合わさり現状とっても不味い状態なのですよ!
「ちょっと・・・ちょっとノワール!起きてくださいまし!お願いですから!」
「・・・すぅすぅ」
寝始めてどれだけ経ったか解りませんが(ノワールの様子から3時間未満?)、ふと尿意を催し目覚めた私は小声で必死にノワールを呼んでいました。
「・・・んんっ・・・ノワールゥ・・・お願いですからぁ後生ですからぁ・・・」
「・・・すぅすぅ」
尿意に必死に耐えながら、私はかなり前にも同じような事があったと思い出し、寝る前に何故トイレへ行かなかったんだ!何故ノワールと一緒に寝てしまったんだ!と後悔していました。
「ひぃひぃふぅ・・・ひぃひぃふぅ・・・」
しかし今は後悔より我慢。素数を数えてみたり、残り少ない明日の時間で何をするかなどを考え、終いの果てには『力を下へ・・・心は無に・・・』という悟りでも開くのですかと言わんばかりの状態になっていました。
「・・・ん・・・んんっ・・・お嬢様・・・」
「・・・っは!ノワール!起きたんですのね?私そろそろ限界ですの!」
と、その時、漸くノワールが深い眠りから目覚めた様なので、早く離してくれと言ったのですが・・・
「んんっ・・・お嬢しゃま・・・かわいい・・・」
どうやら目覚めた訳ではないらしく、私を抱きしめる体勢を少し変えただけの様でした。
ですがその『体勢を少し変える』行為が今の私にとってはかなりクリティカルになるものであり・・・
「ひ・・・ひぎぃ!」
危うく水魔法を使ってしまう所でした。
「ひぃひぃ・・・ノワール・・・早く起きてくださいましぃ・・・」
『後10分!後10分耐えれば助かる!』そんな事を必死に自分へと言い聞かせ、私は耐えました。
その結果・・・
「・・・ぁ・・・」
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そんな事があってから数時間後、私達は設置したテントや竈の後片付けをしていました。
「・・・」
「お・・・お嬢様?」
「・・・」
「姐さん、お姉様になんかしたん?」
「え、あ、その・・・」
最終日である本日は、起床の後に10時くらいまで自由時間、その後片づけをして帰宅となっていたのですが、私は起きてから片づけをする今の今までひたすら無言で過ごしていました。
そしてそれは片づけが終わり、シフロート先生の締めの言葉からの馬車への乗り込みが続くまで続きました。
「なぁお姉様、どないしたん?」
「何かあったのですか?」
「・・・体調でも悪いんです・・・?・・・お薬出しましょうか・・・?」
余りにも長く無言でいたので心配してマルシア達が話しかけてきますが、そんな気分ではなかった私は『ちょっとアレがアレですの。だからアレなので寝させていただきますわね?』とアレすぎる答えを返し寝る事にしました。
するとマルシア達は何かあったんだなとは気づいた様でしたが、長年の付き合いで『この状態なら放置しておいた方がいい』と解っていたのか、それ以上追及などはせずにそっとしておいてくれました。
私はその優しさに一筋の涙を流し、これからは寝る前は必ずトイレへ行く事を心の中で硬く誓い、夢の中へと旅立ちました。
・・・因みにですが、私が水魔法を暴発させたかどうかは『神のみぞ知る』ということで、どうか一つ宜しくお願いします。
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翌日、いつまでも不貞腐れている訳にはいかないので通常運航へと戻った私は、使用人へと荷造りの指示を出していました。
それはこれから実家へと帰るためで、これが終わり次第寮から出て実家行きのゲートをくぐる予定なのです。
「後は言った通りにしておいてくださる?私はあいさつ回りをしてきますわ」
「はい、お嬢様。恐らくその頃には馬車への積み込みも完了しておりますので、直接馬車乗り場へとお越しください」
「解りましたわパルフェ、頼みましたわよ。それではノワール、行きますわよ」
「畏まりましたお嬢様」
今回はそれぞれが実家へと戻る為にマルシア達とも一旦このままお別れなので、その前にと挨拶へ向かいます。
挨拶をすると3人共が『またオーウェルス家にも直ぐに挨拶へ向かうし、その後も出来るだけ早くお姉様の元へ向かう』との事だったのでさっくりと終わらせ、まだ残っている知り合いに挨拶をしに行く事にしました。
それは先生方だったりクラスでも偶に会話をする方だったりと様々で、その中には勿論先日別れたばかりのサークルメンバーも居ました。
そしてついでだからとイリスには・・・
「一応実家へと帰る前に挨拶に寄りましたわ。良い年末をお過ごしくださいませ。あぁ、因みに私の家では毎年年末年始は盛大なパーティーを行うんですのよね。それもうちへ挨拶に来る家が多くて仕方なく何ですけれど、困ったモノですわぁ。オーッホッホッホ!そう言えばイリスさんのお家は・・・・・」
といった感じに悪役ムーブをかましてきました。当の本人は苦笑いで返してきて、あまり効いた様には思えませんでしたけどね!
そうやってあいさつ回りをし、それが終わると私達は馬車乗り場へと行きオーウェル家の領地行きのゲートへと入ります。
いつも通り待たされる事無くゲートを通り、数時間程でオーウェルス家の屋敷へと到着・・・してしまいました。
「あぁ~・・・帰ってきてしまいましたわぁ~・・・」
屋敷へと入ってしまうと両親の目もあるのでそこまで変な動きが取れません。なので帰ってくると少々窮屈だなと思ってしまい、ついそんな言葉とため息が出てしまいます。
ですが何時までもそんな顔をしているとこれまた面倒くさい事になるので、気持ちを切り替えて馬車から降ります。
「お帰りなさいませマシェリーお嬢様。御当主様も首を長くして待っていらっしゃいましたよ」
馬車から降りると使用人達が並んでおり、その中から男の使用人をまとめている執事長が喋りかけてきました。
私はその方へと一旦部屋へ戻ってから父親へ挨拶へ向かうと言ったのですが、何故か帰ったら直ぐに案内する様に言われていたみたいで、そのまままとめ役に連れられて挨拶へと向かう事になってしまいました。
(そんなに慌てなくてもいいではありませんの。ゆっくりさせてくれたらよろしいのに・・・)
内心ブチブチ言いながら、私は執事長の後へつき応接室へと行きます。執務室かリビングじゃないんだな?と不思議に思いましたが、中へと入るとその理由が解りました。
「御当主様、マシェリーお嬢様をお連れいたしました」
「入りなさい」
「失礼存じ上げます。マシェリー・フォン・オーウェルス、ただいま戻りましたわ」
「ああ。勉学に励んでいる様だな?何よりだ」
「ありがたく存じます」
一応の挨拶として丁寧に言いますが、父親は直ぐに真顔を崩しにこっと笑うとイスへ座るように促します。
「ふふ、おかえりマシェリー。まぁ座りなさい」
「ええ、ただいま戻りましたわお父様。で、そちらのお方は?」
「ははは、単刀直入に聞くね」
実は応接室の中には父親と私以外にもう2人いて、父親が私を応接室へと呼んだのはこの方達が居るからだと解りました。
しかしわざわざ帰って来て直ぐに私を呼び紹介するのだから、重要な人物かと思い気になって尋ねたのですが・・・彼らの正体は意外な人物でした。
「まぁいい、紹介するよ。こちらガルタス・ド・アークレッド伯とそのご子息のゴルタス・ド・アークレッド君だ」
何とこの方達、あのアークレッド家の人間だったのです。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【魔力が暴走する事も偶には有りますわ。だって人間だもの。byマシェリー】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】