第130話 キャンプへ帰ると・・・
キャンプへと辿り着いたのですが、そこはシーンと静まり返っていました。竈には火が入っているたので人はいると思うのですが・・・
(この感じではやはり未だ見つかっておりませんのね・・・)
なんて思っていた、その時です。
「す・・・すいましぇんでしたぁ~!」
「「「!?」」」
私達はその声が聞こえたシフロート先生のテントへと急ぎます。そして息を切らせて辿り着いたそこには・・・
「こ・・・このたびヴぁハァーン・・・まごどにぃヒィーン・・・ごめいわ゛ぐをぅヒック・・・がげまじだぁ~~~!」
「イリアスさん・・・解ってくれているし、無事だったからよいのですぞ。そもそもは私がこんな企画を考えたのですから、そこまでイリアスさんが気に病む必要はないのですぞ」
泣きながら謝るイリアスとそれを宥めるシフロート先生、それにグウェル殿下達がおりました。
イリアスは泣きながら喋っているので何を言っているのかよく解りませんでしたが、一見して大きな怪我も無さそうなのでホッとし声を掛けます。
「イリアスは見つかっていたんですのねシフロート先生。安心しましたわ」
「ええ。無事に見つかり「びぇ~ん!まじぇでぃーだばー!ごめんなじゃーい!」
「わっぷ!」
シフロート先生へと声をかけたのですが、それに気付いたイリアスに突撃された私は尻もちをついてしまいました。
よっぽど怖かったのか、はたまた迷惑をかけた事に対してなのかは解りませんがイリアスは私に抱き着きながらもびぇんびぇんと泣き続けていました。
「よしよしイリアス・・・もう大丈夫ですわ・・・」
「びぇぇぇん!」
「大丈夫ですから・・・もう泣くのはおやめなさいな・・・」
「びぇぇぇえええん!」
「よしよし・・・・」
そしてここからが大変でした。
イリアスが延々と泣くモノですからそれをあやすために動けなくなるし、シフロート先生やグウェル殿下達から話を聞こうにも泣くイリスがうるさくて話も聞けない。
そうしてついには、大人しくイリアスをあやしているといつの間にか夕食の準備をする時間になっていました。
「ぴぇん・・・」
その頃には何とかイリアスも小康状態になり、泣き疲れたのかご飯だと言うと離れてくれました。
「ふぅ・・・それでシフロート先生、イリアスは何処に居たんですの?」
この合宿中は班毎に分かれていましたが、今日は特例という事で全員が集まった食事の場で私はシフロート先生へと尋ねます。
シフロート先生はノワールから受け取ったシチューを飲みながら答えます。
「食事をしながらで失礼・・・思った以上に体力を消耗してましてな」
「ええ、私も頂きますし問題ありませんわ。それに今は冒険者サークルの合宿中、マナー云々の野暮はなしですの」
私がそう言うとシフロート先生は『ならば』と話してくれたのですが、イリアスは結局の所、テントを張った地点から1キロほど離れた場所に居たそうです。
何故そんなところに?そして意外と近かったのにもかかわらず何故見つからなかったのかも聞いてみたのですが、答えを聞くと『成程』と思う単純な事でした。
「お花を摘みに出かけたけれど視界が悪かったから迷ってしまい、帰るに帰れず雪でカマクラを作りその中に居たからシフロート先生の魔法でも発見できなかったんですのね」
「んで雪も止んで明るうなって出て来た時にウロウロしとったら見つかったと」
「はい・・・ご迷惑をおかけしました・・・」
この食事の場には勿論イリアスもいた訳で、シフロート先生が話している途中から再びションボリしっぱなしになっていました。
ですがそこは皆に迷惑をかけた罰だと思ってもらうためにも聞いてもらわねばなりませんから、途中で話を止めてもらう事もしませんでしたとも。
「まぁ何はともあれイリアスが無事で何よりですわ。それに事件ではありましたけれど、雪山で人が居なくなった時にはどう動けばいいかがよく解ったので、イリアスには悪いですけれど良い訓練になりましたわ」
ですが十分反省もしている様なのでそれ以上は責める事はせず、こんな感じに話をまとめる事にしました。
シフロート先生もそう思ったのか、そこからは今回の様なケースではどう動くのが正解だったか?また、捜索方法のアレコレ等の講義じみた話を始めました。
「ふむ、それではそういう時は・・・・・」
「こういう場合って、それでは・・・・・」
シフロート先生の話は実際体験した事についてでしたので、私達は他人事とならずいつもより真剣に話を聞けたし話し合えたと思います。
こうしてハプニングは有ったモノの、最後の最後で良い学びを得られた今回の合宿は大成功と言える形で終わりを迎えました。
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「ってまだ後半日残っていますわよ!」
夕食を食べた後、テントの中でゆっくりしている時に私は叫びました。
「「「!?」」」
「どないしたんですお姉様、いきなり叫んで?」
「吃驚しましたよ。そしてなんですか?明日に何かあるんですか?」
「あ、いえ。何でもないですわ。オホホホホ」
あんまりにもいい感じだったので頭の中で勝手に『冬期合宿編・完!』ってモノローグが流れていただなんて言えません、はい。なので適当に笑って誤魔化しておく事にします。
「オホホホホのオッホッホー。さーて、明日もありますしそろそろ寝るといたしましょう?」
「ふふ・・・怪しさ満点です・・・あ・・・すいません・・・私寝る前にお花を摘みたい気分です・・・」
「あ、なら私が付き添いましょう。私も寝る前にはしておきたいので」
「あ、ならうちも」
揃ってトイレだなんて女子女子してるぅ~と思われるかも知れませんが、この揃ってトイレに行くという事は、先程の話し合いの中で決まった事です。
(元々イリアスが迷子になってしまったのも、慣れない土地で視界が悪い中1人で行動したのが原因ですものね。舌の根の乾かぬ内に同じことを仕出かすのは愚の骨頂ですもの。連れション万歳ですわ!・・・おっとっと、お下品でしたわね)
『朝や昼の明るいうちならともかく夜は必ず最低2人で行動する様にするように』と決まったので、マルシア達は連れ立ってお花を摘みに出かけました。
そしてそれによりまた事件が・・・起きる事もなく、スッキリとした表情をしてマルシア達がテントへと戻って来た所で私達は寝袋へと潜りこみました。
「あぁ~・・・あったかいですわ・・・昨日から使っておけばよかったですわね」
昨日は知らない内に寝ていたので使っていなかったのですが、今日はこのぬくぬくした冬対応の寝袋があるので寒さに起こされることは無いでしょう。
「お嬢様、もっと温かくなる為に、こちらの2人用の寝袋を私と一緒に使うのはいかがでしょうか?」
「え?そんなものがあるんですの?」
「はい。新商品だそうで、1つだけ買っておきました」
さぁ寝ようと目を瞑ろうとした時、ふとノワールがそんな事を言ってきたので私はむくりと起きあがりました。
マルシア達も興味があったのか起き上がり、その2人用寝袋とやらを見ます。
「へぇ・・・そんなんあるんやね。初めて見たわ」
「唯の寝袋を大きくしただけ?ですかね?」
「ふふ・・・あまりにも安直な発想・・・」
散々な言われ様ですが、その2人用寝袋は茶封筒の様な形をしているので、ミノムシの様になれる一人用寝袋より首回りが寒そうに見えます。
なので1人用寝袋のままでいいかなと思っていると、ノワールが2人用寝袋にするりと入り込みチョイチョイと手招きをしてきました。
「お嬢様の考えている事は解ります、ですがご安心ください・・・ちゃんとあたたかくなりますとも」
「そうですの?」
ノワールが自信ありげに言うモノですから一人用寝袋から這い出て、ノワールの入っている2人用寝袋へと入り込みます。
大きさもまずまずあり寝るのには十分だとは思いましたが、やはりその分隙間が大きく寒いのでは?なんて考えていると・・・
「おふぅ・・・」
いきなり私の体がいい匂いがするふわふわとする物体に包まれたではありませんか。
「こうすれば・・・どうでございましょう?」
「よろしくてよ!」
その素晴らしい物体の名前は『ノワール』といいます。
ええそうです、ノワールが寝袋の中で私を抱きしめ、ぴったりと密着して来たのです。
「「「あぁ~・・・そういう事か・・・」」」
「そういう事でございます」
そういう事らしいです。・・・いや、何がそういう事なのかはさっぱり解りませんが。
それはともかく、大変温かく、グレート素晴らしい感触なので私はそのまま2人用寝袋で寝る事にしました。
ですが私は忘れていたのです。
なぜ寮では2人で寝ていなかったのかという事を・・・
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
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マシェリーの一口メモ
【2人用寝袋はググったら出てきましたわ。ネタで出したつもりなのですが、本当にあると知って驚きましたわ。】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】