第129話 意味深な社の中には・・・
洞窟の壁を壊して進み始めてから10分程が経った頃、私達はこの洞窟の最奥に当たるであろう社へと到着しました。
「結局ここまでにもイリアスはいませんでしたわね。やっぱりこの洞窟には・・・」
「もしかしたら社の影にでもおるんかもしれませんで?おーい!イリアース!返事しー!」
私達は探し人であるイリアスの名を呼び、社の周辺を見回る事にします。
といってもこの社、存在する設備は極々シンプルで、鳥居と社務所の様な小屋、それに本殿でもある社があるのみです。
なので周辺は直ぐに見終わり、どこにもイリアスが居ない事が確認できました。
「やはり居ませんわね。声も空耳、若しくは風の反響音が偶々人の様な声に聞こえただけなのかしら?」
世界には稀に、風が通った時叫んでいるように聞こえる岩等奇妙な物が存在するので、私達が聞いた呼び声の様なモノもそれだった可能性が出てきました。
もしそうだとしたらいつまでもここに居ても仕方がないので、もう一度だけこことループしていた場所を見て洞窟を去るかと考えていたのですが、マルシアが疑問そうに尋ねてきました。
「お姉様、あの小屋と社は確認しないんですか?」
「社務所と社ですの?流石に中には居ないんじゃないかしら?」
ここは何か曰くがある社だという事はイリアスも知っている筈なので、普通ならば社務所と社には入らないはずです。
しかし次の一言で、私のこの考えは崩れ去りました。
「意外とイリアスも天然ちゃんやし、『わ~!困っている所に家があった~!ちょっと休ませてもらいましょう!』とか言って入るかもしれませんで?」
「・・・」
確かにイリアスは以前にも『いや~今日は暑いですねぇ。何でこんなに暑いんでしょうか』とか言いながら熱々のお茶を何倍も飲んでいたり、『私の住んでた所では、昔この石けりってのが流行ってたんですよね』とか言いながら石を蹴りながら歩いていたら迷子になったり、『え?パンが無ければお菓子を食べればいいんじゃないですか?』とか言ったりと、天然というかおっちょこちょいとな所を見せていました。
ん?・・・最後のは何か違いますね。
兎に角です、彼女にはそういう一面もあったので『なくもないかもしれない』なんて思ってしまい、社務所と社を確認する必要が出てきてしまいました。
「明らかに何かある場所ですので、あまり触れたくはないんですけれどね・・・」
「ふふ・・・チラッと・・・チラッとだけならセーフですよきっと・・・ふふふ・・・」
「それ、結局全部見るパターンの言い方ですわよね?」
「・・・そ・・・そそ・・・そんなことありませんし・・・?」
何となく『これもフラグ故ですの?』なんて思いながら、取りあえず触っても害が無さそうな社務所から確認する事に決め、私達はこんな場所にあるのに綺麗な状態という不思議な社務所へと近づきました。
「窓も閉まっとるし隙間もあらへんから中の様子は見えませんね?」
「ええ。イリアース?居ますのー?」
社務所の中は伺う事が出来なかったので、私は取りあえず名前を呼びつつ扉にノックをします。
ですが返事は無く、やはり居ない事が伺えたのですが、もしかしたらという事で扉を開ける事にしました。
「ですけれど、鍵が掛かっていたらそれまでですからね?・・・あ、開いてしまいましたわ。ご、ごめんくださいましぃ~・・・」
私としては開いてほしくなかったのですが、その扉はあっさりと開いてしまいました。
仕方がないのでそのまま中の様子を確認しますが・・・
「特に何もありませんわね」
中にはイスやテーブル等の家具が少しあるだけで特に変わったモノは無く、勿論の事ながらイリアスもいませんでした。
「ちゅうこっちゃ、次はあっちの社やね」
「・・・そうですわね」
あちらこそ触りたくないのですが、幸いにも社は遠くから見ても隙間があるのが解った為、中にまでは入らずにすむでしょう。
ですが何かあるかも知れないので慎重に進み、隙間から中を除く際も全員にニワカ知識ですが『二礼二拍手一礼』を教えます。
「さぁ、先程言った通りにするんですのよ?」
「何やようわからんけど、わかりました」
「はい」
「・・・2回頭を下げて・・・2回拍手で・・・もう1回頭を下げて・・・」
「私が先に1人でするので、その後に続いたらよろしいですわ」
私は見本を見せる様に先に1人で二礼二拍手一礼を行い、その後に他のメンバーも二礼二拍手一礼を行いました。
それを行ったからいいという訳ではないのですが、一応最低限のマナーは守ったと自己弁護をし、社の隙間から中を除きます。
「イリアース?・・・っ!」
「鍵もかかっとるし、誰もおらんみたいやね」
「随分ごつい錠前ですね」
「うふふ・・・中には誰も居ませんよ・・・?」
「・・・」
隠された社の中を見た私は一瞬イリアスの事を忘れてしまい、それに見入ってしまいました。
中にあったのは何と・・・
(ド・・・ドラゴンの石像!しかも中国系の龍の方じゃありませんの!何やらカッコイイ梵字みたいのやら球やらも散りばめてあってイかしてますわ!)
恐らくこの社の御神体なのでしょう、龍の石像がカッコいい感じに『ッバーン!』と祀られていました。
(色がメタリック?っぽいのが好みの別れるところですけど、あれはあれで良いですわね。けどシンプルに木造りとかでもいい気もしますわよ匠のお方!・・・んん、造形も細かそうですわね?もう少し近くで見てみたい・・・)
中2心をくすぐりそうなその造形に見惚れていたのですがどうやらそれは私だけみたいで、マルシア達は不思議そうな目で私を見ていました。
「え?どうしたんですの?」
「いえ・・・熱心に見ているなと思いまして」
「な?んでお姉様、イリアスおらんようやし、戻ります?」
「・・・いないと解ったなら・・・他の処探さないといけませんしね・・・」
「・・・あ~・・・ええ。そうですわね」
マルシア達のあまりの御神体への興味のなさを見て、私は何故ここがゲームでバグデータとして存在しているか解った気がしました。
恐らくですが、一旦は作ったモノの『これ、メインターゲット層である女性に受け無いんじゃね?』という理由から削ったのでしょう。
そして削ったはいいモノの消去の仕方が悪かったのか、バグデータとして偶に出現してしまう幻のエリアになった・・・という事なのでしょう。
しかしです、私は若干少年の心があるので興味がありましたが、純粋なる女の子からしたら『つまんな』という事なのですね・・・気を付けるとしましょう。じゃないと『え?マシェリー様って趣味がおじさんなんですね?ファン止めます』とか言われてしまいますからね!
「・・・ではもう一度だけこの洞窟内をチェックして、違う場所へといきましょうか」
「「「はい」」」
最後に私の精神へとダメージを与えて来た呪いの社?を後にし、私達はもう一度洞窟内を見て回ります。
ですが勿論の事ながらイリアスの姿は無く、私達は入口へとつながる壁を壊し外へと出ます。
「要らぬ時間を食ってしまいましたわ。捜索範囲へと戻りますわよ!」
「「「はい!」」」
ノワールが持っていた地図で居場所を確認するとやはり山の中に居て、指定された捜索範囲を外れていたのでそちらへと戻る事にしました。
そして指定された範囲へ戻って必死で探したのですがやはり見当たらず、いつしか時間となってしまったので一旦キャンプへと戻る事に。
「グウェル殿下達かシフロート先生が見つけられているといいんですけれど・・・」
「先生は魔法も使っとるし、きっと今頃もどってますて。・・・きっと」
「グウェル殿下達も優秀な方々ですし、きっと大丈夫ですよ・・・」
「・・・うぅ・・・イリアス・・・」
駄目だ駄目だと思いつつも、私達は肩を落としながらキャンプへの道を進みます。果たしてイリアスは無事に見つかったのでしょうか・・・。
マシェリーより:お読みいただきありがたく存じますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「イリアス何処行った!?」等思ったら、☆で評価やブックマーク、イイネを押して応援してくだされば幸いですの。
☆やイイネがもらえると イリアスがアナタのポケットの中から出てきますわ。
マシェリーの一口メモ
【龍・・・それは少年の心をくすぐって止まない超絶カッコいい生物ですわ。・・・っは!?女性の方!『唯のウナギやん?』は止めてくださいまし!】
マシェリーより宣伝
【他に作者が連載している作品ですわ。こちら緩く読めるファンタジー作品となっておりますの。
最弱から最強を目指して~駆け上がるワンチャン物語~ https://ncode.syosetu.com/n9498hh/
よろしかったら読んでくれると嬉しいですわ。】